処遊楽

人生は泣き笑い。山あり谷あり海もある。愛して憎んで会って別れて我が人生。
力一杯生きよう。
衆生所遊楽。

お菓子とフランス料理の革命児 ぼくが伝えたいアントナン・カーレムの心

2014-11-01 23:10:18 | 

著  者 千葉好男

出版社   鳳書院

定  価 1600円+税

 

グルマン世界料理本大賞2014グランプリ受賞。

この賞は約20年前に創設され、「料理本のアカデミー賞」と称されている。今年度は187カ国2000冊以上がエントリー、そのグランプリ本である。

 著者は、1949年生まれ。高校卒業後日本一の菓子職人を目指して単身渡仏。数多く菓子店・フランス料理店で修業ののち80年にパリにサロン・ド・テ兼菓子店をオープン。菓子コンクールで幾度となく金賞を獲得、95年には日本人初のフランス料理アカデミー会員となる。 

 

    

アントナム・カーレムはフランス料理を芸術の域まで高めた天才料理人。ロシア皇帝、イギリス皇太子、ロスチャイルド家など王侯貴族のシェフをつとめて名声を不動のものとする。

武者修行時代、最も影響を受けたのが、外務大臣のタレイランだった。フランス革命の波を恐れたヨーロッパ各国との交渉の武器となったのが、タレイランから「365日違う献立で食卓を飾れ」と命題を与えられたカーレムの料理だった。まさにウィーンの踊る会議の影の主役だった。

カーレムの生涯は、ナポレオンのそれにほぼ重なる。ナポレオンが最も華々しく活躍した時代に才能を見いだされ、一人の料理人としてナポレオンの治世に華を飾ったと言える。

それにしても、料理職人が自らが創作した料理について、これほど心血を注いで書き残す行為というのは何だろうか。しかも料理という限られた世界ではなく、広範な社会の各層に支えられて。全集にまでなっている。日本料理と比べてどうだろうか。

理に、経営に、業界に多忙の著者がこうして料理本をものにする。そのことの中に、フランス料理のDNAがあるとすれば、こうして著作に挑戦し続ける著者はまさに正真正銘のフランス料理人と言える。

 


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