原題:LA RAGAZZA DEL LAGO
英題:THE GIRL BY THE LAKE
イタリアのアカデミー賞と言われるダヴィッド・ディ・ドナッテロ賞で史上最多の10部門を受賞。サンツィオ刑事に扮した主演のトニ・セルヴィッロは、今、イタリアで最も忙しい人だそうだ。
当初は、小さな映画館で封切られたが、やがて、口コミで評判を呼び、240館にまで拡大されたというから、観ておくに越したことはない。
なるほど、北イタリアの風景画が美しい。湖畔の小さな村に起きた殺人事件の捜査が進むにつれて、地域や家族の人間関係が次第に明かされていく。親子、恋人、友人・・・・。
障害を持つ子供に素直な愛情表現ができない親。子供のことは全て理解しているという偏った愛。間違った両親の元に生まれてきたと感じる思春期の子供…
一見何事もないかのように過ぎ行く日々の中で、誰もが皆、“一番身近な人にも言えない悩み”を抱えて生きていた―。
主人公の刑事もまた、若年性認知症に冒され、家族のことを忘れていく妻の姿を、娘に見せられないという人知れない問題を抱えていた。
殺人事件が主題の映画にもかかわらず、静謐でスローテンポの展開は、景色をより美しく際立たせている。
ラストの刑事の家族の結末が、味わい深い。
銀座テアトルシネマ。