友人Nは、毎年この時期にハワイにやって来る。
Nと出会ったのは、最初に就職したTV局で、私が21、Nがハタチだった。
初めから、Nはみんなと違っていた。
すごい美人というわけではないが、愛嬌のある顔、豊かな表情、歯に衣着せぬ物言い、すらりとしたスタイルに似合う独特なファッション。
頭がよく切れて回転が速く、男子など簡単にやり込めてしまうのだった。
私たちは、よくNの母親がやっているBARに飲みに行った。
そこでNはカラオケでアン・ルイスを絶唱し、そのままマイクを持って店を飛び出し、家に帰ってしまう。
Nの行動は時々不可解で、Nが苦手な人もいたかもしれないが、私はNが好きだった。
「うまくお得に生きよう」としている多くの人たちの中で、Nは本音で生きていたからじゃないかと思う。
Nは結婚し、あっというまに離婚した。
そして数年後、連れ子のいる男性と再婚し、3人の子供を産み、4人の子供の母となった。
ここ何年も年賀状のやりとりだけで、直接会うこともままならなくなって久しい。
昨年、もう上の子供達が忙しいらしく、末娘だけを連れてハワイに来るというので会った。
私の再婚のお披露目の食事会で会ったのが最後だから、5年ぶりだったが、Nは何も変わっていなかった。
そして娘は、顔は似ていないが、中身が笑ってしまうぐらいNにそっくりだった。
Nは、人が自分をどう思うか、気にならない。
だから、気を遣うけれども遠慮はしない。
Nは、自分をあまり縛らない。
だから、人を縛ることがなく、とても楽だ。
彼女が嫁いだ家は資産家で、経済的には豊かなのだが、
宝石もブランドものにも興味がない。お土産を買って支払う時に出した財布は、財布ではなくチャック付きのポーチで、
「だってこれが1番楽なんだもの」
と言って笑う。
Nが今年もハワイに来た。
先週も会ったような自然さで、私たちは会い、
珍しく昔の話をした。
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