太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

人からどう思われるか気にならない崖

2020-08-25 14:19:23 | 日記
ウォーキングしながらゴミを拾っている人がいる。
最初に見かけたのは、8年ほど前。
彼は長い傘を横にして持ち、そこにゴミを入れる袋を吊って、ゴミを拾うトングを片手に、驚くほど遠くまで歩く。
住宅地からハイウェイを歩き、街まで行って、戻ってくると、10キロ以上はあるだろう。
道々には、集めたゴミで一杯になった袋が置いてあり、あとで車で回収する。
きっと、殆どの人が彼を知っていて、通り過ぎる人が声をかけ、
車から手を振り、立ち止まって話をする。


今朝、通りに出たら、歩いてきた彼と鉢合わせした。
私はこの8年間、ずっと聞きたかったことを聞いた。
「お名前を聞いてもいいですか?」
彼は白い歯をにかっと見せて笑った。
「ハーマンっていうんだ」
「私はシロ。いつもきれいにしてくれてありがとう、ハーマン」
「もう何年もやってて、歯を磨くのと同じなんだよ」
「ずっと前から知っていたよ、今日やっと名前が聞けてよかった」
「シロ、声をかけてくれてありがとう」
「こちらこそ、ありがとう」



日本に住んでいた時、休日に夫が、町内のゴミを拾っていた。
街路樹の根元に捨てられたファーストフードのゴミや、空き缶などで
スーパーの袋はすぐに一杯になった。
何度か私も同行したのだけれど、道行く人がジロジロと見る。
それは夫がガイジンだからなのか、ゴミを拾っているのがただ珍しいからなのかわからないが、
私はいたたまれないような気持ちになって、早く家に戻りたかった。
ゴミを拾いながらどんどん駐車場にまで入ってしまい、
ガイジンが駐車場で何か良からぬことをしているのでは、と思われるのではないかとさえ思った。


資源ごみの日に、拾ったゴミをゴミ置き場に持って行ったら、見張りのオジサンが険しい顔で言った。

「ちょっとちょっと、それなに?勝手に置いていかないでよ!ガイジンはこれだから困るんだよ、どこに住んでんの!」

アッタマに来た私は

「この町内で拾ってきたゴミだけど?そこの大石さんの隣のアパートに住んでます!!」

と言い、文句あっか?とばかりに睨みつけると、オジサンは黙ってしまった。
何を言われたかわかっていない夫が、ニコニコしながらオジサンにお辞儀をして、
オジサンはますます困った顔をしていた。


これは明らかな人種差別だ!と怒りまくった私だったが、
ガイジンがゴミ拾いをして怪しまれるのでは、と先に思ったのは私であり、
だから、怪しく思うオジサンと出会っただけだということを、後になって知る。

「どうしてゴミを拾うの」
と聞いたら
「僕はこの町が大好きだから」
と言った夫の、人からどう思われるかが気にならない人間性を思う時、
まるで切り立った崖のてっぺんを下から眺めるような気持ちがしたものだ。


自由度において、私はまだまだ遠く夫には及ばないが
あのとき、人からどう思われるかが気にならない崖の1番下にいた私は、
今は崖の真ん中近くにいるのではないか。
ハーマンと話して思い出したことである。










なんでも冷凍庫

2020-08-25 09:26:33 | 日記
夫は冷たいものが大好きで、なんでも冷凍庫に入れる。

帰宅すると、まず、買ってきたビールを冷凍庫に入れる。
冷蔵庫に在庫のビールがあるときは、
「4時になったらビールを6本、冷凍庫に入れておいてね」
と電話をしてくる念の入れようだ。
野菜スティックのディップにするハムス(ひよこ豆のディップ)やサワークリームも、
食べる30分前に冷凍庫に入れる。
チョコレートも。
さきイカも。
ブルーベリーも。
おせんべいも。
冷やし中華を乗せるプレートも。

「冷たいものはキンキンに冷たいのがいいんだよ」

グラスに入ったビールに氷を浮かべて飲むのは、夫だけじゃない。
ハワイの人の独特な飲み方だろう。
私も最初は「えー・・・」と思ったけど、
「ジンジャーエールだってスパークリングウォーターだって氷を入れるのに、
なんでビールはだめなのさ」
と言われれば、そうかもしれない。

凍らせたほうが美味しいと私が思うのは、ブルーベリーブドウ
買ってきたブルーベリーやブドウを水で洗って、水けをきって凍らせて
凍ったまま食べる。
凍らせると、甘さが増すように思うし、シャーベットのようだ。



暑くても、私はシャワーは温かいお湯のほうがいいのだが、夫は水。
仕事中も、大きなサーマスに入れた氷入りアイスティを、
アイスティがなくなったら冷たい水を足して、1日中飲んでいる。

こんなに冷やしても、夫はいつも「熱い」。
皮膚の表面に手を近づけると熱気を感じる。
日本でも、冬でも天気が良ければ半袖で、11月に北海道を訪れたときも
夫だけが半袖Tシャツで歩いていた。
こういう暑がりは白人アメリカ人に多いようで、寒空の下、半袖短パンで歩いているのは、たいてい彼らだと思っていい。


それでもこれじゃあ内臓が冷えてしまうんじゃないかと思い、
毎朝の夫の味噌汁に、これでもかの大量の生姜をおろして入れているが
焼け石に水のような気がしないでもない。