太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

蚊取り線香

2023-05-01 07:22:41 | 日記
私が住む地域は雨が多い。
それでも、1日中雨が降りこめることはなく、サッと降ってサッとあがる、あるいは夜のうちに降って昼間は晴れる、といった具合。
それが、先週は毎日ずっと雨が降っていた。その結果、普段でもジャングルな我が家の庭に、蚊がやたらと出てきた。
庭に撒く殺虫剤は雨で流されてしまい、1分でも庭に出れば数か所刺される。
玄関ドアを開けた隙に家の中に入って来る。
そこで蚊取り線香をつけた。
日本の蚊取り線香とは違うけど、渦巻きで緑の色は同じ。

渦巻きの先に火をつけて、煙が出てくると昔の記憶がフラッシュバックしてくる。

蚊取り線香と畳。
ゆっくりまわる扇風機。
冷蔵庫で冷えている麦茶。
御用聞きの魚屋「うおつる」さんのバイクが止まる音。
お勝手の小さなテレビから聞こえてくる、相撲中継の音。
祖父の会社で働く若い人たちが、夕飯を食べにやってくる。
にぎやかな食卓。
ご飯はお釜で炊いて、「ジャー」と呼んでいた保温器に移し替えた。
寝転んで野球中継をみている父の背中。
母が吊る蚊帳の、独特な匂いとゴワゴワした感触。
家の前のドブ川でホタルを捕まえて来て、蚊帳の中に放つ。
祖父母が頼んだ、夜食の蕎麦の出前が届く。



このほとんどは、令和の時代にはないものだろう。
祖母が電話で、「さいです」と言っていたのが、「左様です」であり、それが「そうです」という意味なのだとわかったのは、ずっとあとになってから。
同じく祖母が言う「かみいさん」は、誰かの名前ではなく、「髪結いさん」であり、それが美容院だということも、やはりあとになってわかったこと。
そんなことまで、尾ひれのように出てくる。

蚊取り線香ひとつで、一気にこんなにもの記憶が映画のようによみがえってくる。