太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

天使に出会った実話 4

2023-05-09 07:11:22 | 天使に出会った実話
Carmel Reilly著『True Tales of Angel Encounters』より

アニー(34) ニューキャッスル イングランド

子供の頃、私は多くの時間をローズおばさんと過ごした。おばさんといっても、血のつながりはなく、彼女は家から何件か先に住んでいた。ローズおばさんは退職したあとも、オフィスの掃除の仕事をしていて、それはオフィスの始まる前の早朝か、閉めたあとの夜なので、私の母が仕事に行く昼間に私の面倒をみてくれていたのだ。私が学校に通うようになってからも、長い休みや、学校がひけた後にはローズおばさんが来てくれた。

ローズおばさんが亡くなったのは、私が10歳のときだ。私はお葬式に行きたかったのだけれど、幼すぎるからといって行かせてもらえず、私は泣いて過ごした。母は、私とローズおばさんとの絆がどれほど強いかを知らなかったのだ。私は母のこともむろん好きだったけれど、ローズおばさんはどんなことでも話せる、ただ一人の大人だった。
母に、大人になるってどういうこと?結婚するってどんなふう?人は死んだらどうなるの?と聞くと、母はそれに答えることができずに曖昧にごまかしたが、ローズおばさんはいつもそれらの質問に、丁寧に答えてくれたものだ。

13歳のとき、親友が引っ越してしまい、彼女以外に友達がいなかった私はとても孤独になってしまった。
この世に置き去りにされたような寂しさを感じて過ごしていた。
ある夜、私はふと目覚めて階下に降りていった。すると誰かがドアをノックする。ドアを開けると、なんとそこにローズおばさんと、その背後に一人の女性が立っていた。
ローズおばさんは、部屋に入ってもいいかと私に尋ね、もちろん部屋に招きいれて、私たちは椅子に座って、ローズおばさんが亡くなってから今までのことを話した。
私は再びローズおばさんに会えたことがとても嬉しく、昔のように話せたことで気分が落ち着いた。

そのあとどうしたのか覚えていない。母に起こされて目が覚めたら、リビングの床でまるくなって寝ていた。
あれが現実だったのか夢だったのか、でも私は確かに階下に降りて行ったのだ。たぶん夢遊病のようなものかもしれないが、まるで本当にローズおばさんに会えたような気がしてならなかった。

そしてその後、同じようなことが何度もあった。
それはいつも、私が何か悩みを抱えているときで、ローズおばさんは私の話を聞いてくれた。
そんなとき、私は変な場所で目がさめるのだ。あるときは階段の途中で寝ていたことだってあった。母は私の夢遊病を心配して、寝室のドアに柵をつけてくれたが、たいして役には立たなかった。

ローズおばさんが来るときは、いつも同じ女性が一緒だった。私たちが話をしているとき、女性はドアの外で待っていて、話が終わると一緒にどこかに帰ってゆく。
あの女性は誰なのかローズおばさんに尋ねたら、詳しくは説明せず、その人が自分をここに連れてきてくれるのだ、とだけ言った。
私はその人は天使なのだと思う。

ローズおばさんは、数年にわたって私を助けに来てくれた。
もう長いこと、ローズおばさんには会っていないけれど、私が本当に必要になったときには、必ず来てくれて、話を聞いてくれると固く信じている。








鈍感

2023-05-09 06:39:04 | 日記
同僚のF(男性)は70代手前の古株で、ドアでお客様を迎えるグリーダー専門。
パンデミックを境にいったん辞めたのだけれど、数か月前から再び働くようになった。
その日、勤務中は携帯電話を使ってはいけないことになっているのに、Fが携帯電話に見入っている前をお客様が行き来しているのを見て、

「F、F、Better put your phone down(F,電話をしまったほうがいいよ)」

と、レジスターの場所から注意した。
するとFは、やおらこちらに向かって歩きながら、

「My wife is sick!◇△#&(ここは聞き取れず)!I punch in your face!!(妻が病気なんだ!お前の顔をぶん殴るぞ!)」

とわめきたてた。
それを聞いたマネージャーがオフィスから飛び出してきたほどの剣幕だ。

「Why are you yelling at me?(なんで私にわめくのさ?)」

私はなぜFがこんなにいきり立っているのか不思議だった。
大騒ぎしているのは周りの人達で、ゼネラルマネージャーに電話するマネージャー、私をランチに行かせて、代わりにレジに立つ同僚。
休憩時間にFがやって来て、私に謝った。
15歳年上の奥さんが調子が悪いのは知っているし、Fも辛いのだろう。
けれど、だからといって人に暴言を吐いていいということじゃない、というようなことを私は言った。Fはしおたれて、反省しきり。
Fは早退し、しばらく出勤停止となった。

その夜、ゼネラルマネージャーから電話があり、謝り、慰め、Fに怒り、私のことを心配した。
実は私はそれほどショックを受けたのでもなく、すごく怒っているというのでもない。
誰かの言動にショックを覚えたり、怒りが湧くのは、

・その相手がとても近い存在だったとき
・言われた内容を自分で認めているとき
・無防備でいたとき

だと思う。
Fはただの同僚で、それはFの問題であって私には関係ない、と思っているからどうでもいいが、これが夫だったら大問題。

私は顔を殴られるようなことをした覚えはないので、これも平気。
たとえば誰かが「この成金野郎!」と私に言ったとしても、私は成金でも男でもないので何も感じないのと同じ。
が、「このヘンテコ英語ババア!」と言われたら、確かにそうだと自分で認めていることなので、ショックだし怒ると思う。

日々、たくさんの人と会うので、私は仕事の前に自分のオーラをしっかりガードするように努めている。それをしないでいたときは、状況が変わるかもしれない。


翌日も、入れ替わり人が来て、私に声を掛けてくれる。オーナーからもお見舞いの電話が来て、もしFがいることでストレスになるようなら、Fを解雇すると言った。
暴力や差別に関して、アメリカは日本よりも厳しいと感じる。
それは言葉であっても同じこと。
Fは仕事が必要だから再び働き始めたのであり、仕事を探すのも難しいだろう。
私は平気だと答えた。

しかし今頃になって、そういえば誰かに「ぶん殴るぞ」なんて言われたことはなかったな、と思い、なんだか少しショックかも、という気になってきた。
ようするに、鈍い。
いつも、あとになってから、ああ言えばよかったと思うことが多い。
神経と頭のめぐり具合が、非常に残念。


昨日、Fは謹慎が解けて出社してきた。
Fは週に5日勤務を希望しているが、とりあえず2日か3日というところで落ち着いている。