高尾山は東京近郊では誰もが知っており多くの人々が出かける行楽地である。テレビのニュースや色々な番組でもその方面からよく話題として取り上げている所である。それはそれで良いのであるが、高尾山にはその麓に、東京都では最大の戦争遺跡が遺っている事をもっと取り上げてもらいたいものだ。
それは「浅川地下壕」といい、八王子市の高尾町と初沢町にまたがるもので、3地区に分かれた全長約10㌔に及ぶ地下トンネル群である。
この地下壕は、現在の武蔵野市にあった中島飛行機株式会社の発動機(エンジン)製造工場である武蔵製作所の疎開工場として建設されたものである。
この地下壕は、1944年9月頃から着工されたが、発電所やトンネル工事などを専門とする建設会社が請負い、朝鮮人労働者を働かせて建設した。のちには勤労動員の学生・生徒も働かせたが。
工事は空襲が始まった1944年11月末以降本格化した。そして、一部で操業を開始したが、発動機10基を完成させたところで敗戦となり、地下壕は未完成に終わり、大半は未使用のままとなった。
高尾山へ出かける人は、行楽で終わらせる事なく、ぜひ足を伸ばし、神聖天皇主権大日本帝国政府が遂行した侵略戦争の遺跡を訪れてほしいものだ。
参考図書:浅川地下壕の保存をすすめる会編『フィールドワーク浅川地下壕』(平和文化、2006年)
(2023年11月4日投稿)