OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

シングル盤でも満足のザ・フー

2010-01-12 10:34:45 | The Who

I'm A Boy c/w In The City / The Who (Reaction / ポリドール)

私は少年時代から、ザ・フーというバンドが大好きでしたが、そのリアルタイムの1960年代後半の我国では、からっきし人気がありませんでした。

それは契約や権利の関係等々からイギリスで作られていたオリジナル仕様のアルバムが、そのままの形では日本発売が無かったことにもよりますが、ザ・フーの楽曲に特徴的なポップなメロディと素晴らしいコーラスワーク、そして反比例するかのように暴れる強靭なペースと爆裂ドラミングによる強いビートで形作られた歌と演奏が、当時の洋楽を楽しむ最も手軽な手段になっていたAMのラジオ放送では、その魅力が充分に伝わらなかったことによるものと、今は冷静な分析も出来るところです。

また普通のロックバンドではサウンドの要となるはずのギターが、ザ・フーでは一番に目立たない存在というか、燃えるようなギターソロも少なく、どちらかと言えば縁の下の力持ち的な役割だったのも、我国でウケなかった要因かもしれません。

とにかくリアルタイムの我国で、ザ・フーのファンは今とは比較にならないほど少なかったと思われますし、必然的にアルバムも日本独自の編集盤ばかりという偏ったものでしたから、経済的な理由も合わせれば、若き日のサイケおやじはシングル盤を買う他はなく、本日ご紹介の1枚も昭和42(1967)年の初夏に買ったものです。

もちろん本国イギリスでは前年夏に発売され、大ヒットしていたわけですが、我国では全くヒットしなかったと思います。

しかし両面ともに、ザ・フーの持ち味を最高に楽しめることは請け合いで、A面の「I'm A Boy」は一抹の哀愁を含んだ綺麗なコーラスと覚えやすい曲メロが力強いビートで煽られていくという、幾分屈折したポップフィーリングがクセになるほどですが、それは幼い頃から女装で育てられた主人公のせつない叫びを綴った歌詞があればこその説得力が絶大!

またB面の「In The City」はザ・フーの面々が大ファンだというビーチボーイズ風味が極めて強い、実にマニアックな歌と演奏ですから、思わずニヤリ♪♪~♪

ちなみにザ・フーが恒常的に使うコーラスワークは、当然ながらビーチボーイズからの影響も大きく、またオペラチックに展開されるあたりとバックの暴虐的な演奏のコントラストは、後のムーブ、イエス、クイーン等々に受け継がれていくものと確信しています。

ということで、本国イギリスでもシングル盤オンリーの発売ということで、後には様々なベストアルバムに収録される代表曲ですが、唯ひとつ、「I'm A Boy」に関しては、1971年に発売された「ミーティ・ビーティ・ビッグ・アンド・バウンシィ (Track)」に収録の同曲は再録加工した別バージョンなので要注意です。

今では常識になっていますが、ザ・フーのライプステージの凄さは、例の「ウッドストック」の記録映画が我国で公開されて以降の話ですら、個人的にはザ・フーといえば、リアルタイムで発売されていたシングル曲に魅力があるというのが、グループ初期の真相だと思っています。

その意味で当時、小遣いの乏しさからチビチビとシングル盤しか買えなかったザ・フーのレコードも、今ではそれで正解だったのかもしれないと自己満足しています。そしてラジオ放送よりも遥かに勢いが強く感じられるレコードからのザ・フーの歌と演奏は、まさに「ロックの音」の象徴なのでした。

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邦題も素敵だったザ・フー

2009-10-21 11:24:18 | The Who

恋のマジック・アイ / The Who (Track / 日本グラモフォン)

我国で洋楽を売る場合、その曲名に邦題をつけるのは当時の常識のひとつでしたが、その中には噴飯物のトホホもあれば、なるほど! と思わず唸る素敵なものもありました。

本日ご紹介するザ・フーの名曲ヒットの原題は「I Can See For Miles」、つまり「俺はどこまでも遠くを見ることが出来る」なんですが、これを「恋のマジック・アイ」とした意図は、主人公の目を盗んで浮気をする彼女に嫉妬する男の歌ですから、これで正解なんでしょうね。そして実際、歌詞の中には「俺の眼は魔法の眼」という一節があります。

そのあたりを上手く解釈する面白さが、日本で洋楽を愛好する楽しみのひとつになっていたのが、昭和の味わいでもありました。

肝心の歌と演奏に関しては、イギリスで制作・発売された1967年というサイケデリック時代にどっぷりのハードロックがど真ん中!

ヘヴィなベースを主軸にダビングされたエレキギターが鮮烈なアクセントになっていますし、時に激しく炸裂するドラムスが、ますます強烈です。そしておそらくは意図的に引き気味のミックスにされたボーカルに被さるモヤモヤとしたコーラスも良い感じ♪♪~♪

ご存じのようにザ・フーは4人編成で、しかも演奏パートはピート・タウンゼントのギターよりも、ジョン・エントウィッスルの爆裂エレキベース、そしてポリリズムのロックビートを終始敲きまくるキース・ムーンが中心でしたから、必然的にスタジオ録音ではダビングが多用されていても、実際のステージではバンドだけで演奏出来るスタイルが守られていました。

しかし、この「恋のマジック・アイ」だけは、流石にリアルタイムのライプでは演奏が不可能だったという逸話のとおり、本来はポップな持ち味を大切にしていたザ・フーにしては、些か凝りすぎの感が無きにしもあらずです。

そうした所為もあって、ザ・フーの歴史の中では名曲名演の決定版なんですが、それほどのヒットにはなっていなかったようです。

ただし、これが欧米よりは約半年遅れで発売された昭和43(1968)年春の日本では、かなりの勢いでラジオから流れていました。そしてサイケおやじにしても、以前から好きになっていたバンドでしたから、速攻でゲットさせられたのは言わずもがな♪♪~♪

とにかくヘヴィでハード、そしてサイケデリックなムードが横溢した歌と演奏には完全にKOされました。とりわけ強烈に蠢くジョン・エントウィッスルのエレキベース、そしてドカドカビシバシに弾けるキース・ムーンのドラミングには、それこそトランジスタラジオが軋むほどの迫力が確かにあったのです。

ところが後に聴いたアルバム収録のステレオバージョンが、完全に気抜けのビール……。それはミックスが大きく変えられ、エレキベースが極端に小さな音と言うよりも、ほとんど「音圧」だけの存在に成り下がり、またドラムスもカラ騒ぎ状態ですし、反面、ボーカルとコーラスが大きくなっているという、これにはシングル盤で馴染んでいた私の様な者には違和感がいっぱいだったと思います。

ですから、決してシングル盤を手放せないのは、ファンならば当然の仕儀でしょう。

このあたりがCD再発で、どのようになっているのかは、全てを検証していないので一概には断定出来ませんが、少なくとも今日まで、私を満足させてくれたものには出会っていません。

う~ん、ザ・フーって、けっこう罪作りなバンドなんですよ、いろんな意味で……。

でも、それゆえにいろんな楽しみが深~いのも、また事実!

そして最初の邦題の話に戻ってみれば、他にも例えば「恋のピンチヒッター」とか「俺の指図で」、あるいは「恋のサークル」や「ボリスのくも野郎」といった、相当に傑作なものがあるんですねぇ~♪ 原曲タイトルは、あえて省略致しますが、とにかく当時の我国レコード会社の担当者各位には、あらためて敬意を表したくなるほどです。

最後になりましたが、日本でレコードが初めて出た時には「ザ・フゥー」なんて表記されていたバンド名が、ポリドールに権利が移動して以降は、ようやく「ザ・フー」になったことを追記しておきます。

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ザ・フゥーを好きになる

2009-07-20 08:57:13 | The Who

キッヅ・ア・オーライト / ザ・フゥー (Brunwick / テイチク)

1960年代から今も活動を続けるザ・フーの諸作の中でも、伝説のひとつとなっているレコードが本日ご紹介の日本盤シングルです。

まずバンド名が「The Who」を律儀に日本語発音した「ザ・フゥー」ですからねぇ~!

また曲目の表記も原題「The Kids Are Alright」を「キッヅ・ア・オーライト」にしているところにも、苦笑を禁じ得ません。

これは当時の我が国の洋楽事情が、如何に情報不足と歪曲に満ちていたかの証明でもあるんでしょうが、ザ・フーに関して言えば、リアルタイムで正式にデビューした時から既に、契約の諸問題でレコードの配給が混乱していた事実も、確かにありました。

そのあたりの経緯については今回、あえて逃げを打っておきますが、とにかく1965年1月にイギリスでザ・フーがデビューし、忽ち大ブレイクした後、我が国で彼等のレコードが発売されたのは昭和41(1966)年秋頃だったとされていますから、せっかくのブリティッシュビートやエレキの大ブームがありながら、ここまで人気バンドの登場が遅れてしまったのは、後々まで日本での過小評価に繋がった事と無関係ではないと思います。

さて、サイケおやじがザ・フーを初めて聴いたのは昭和42(1967)年の春休み、ラジオから流れた永遠の熱血ロック「My Generation」が最初でした。それは説明するまでもなくモノラル放送だったわけですが、それにしても団子状で襲いかかって来るとしか表現出来ないロックバンドの迫力、その中で暴れるドラムスと要所でキメのリフやブレイクのソロを披露するエレキベースの恐ろしさ! さらに意図的に吃音を使った歌い方や乱れ気味のリズムギターという、その何もかもが当時のロックやポップスの常識を外れていたように、少年時代のサイケおやじは吃驚仰天!

特にベースの物凄さには最初、これはギターだろう!? と思う他はないほどでした。

そこで小遣いを貰うと速攻で足はレコード屋へ向かったのですが、なんと「My Generation」はシングル盤が出ておらず、LPのみの収録……。あぁ、ここでもまた、お金が無いことの辛さ、現実の厳しさを身をもって知るわけですが、その時、お店のお姉様が、これも素敵よ♪♪~♪ なんて聴かせてくれたのが、本日ご紹介のシングル盤でした。

特にB面の「The Kids Are Alright」は、完全に初期ビートルズの味わいがモロにコピーされたような名作メロディが胸キュンの素晴らしさ! しかもハートウォームなコーラスと軽めのギターとは対照的に暴れまくるドラムスと地底怪獣のように蠢くベースが強烈な印象でしたから、サイケおやじは忽ちお買い上げ♪♪~♪

ちなみにA面の「A Legal Matter」も、軽快なビートと如何にもエレキなギターのイントロが印象的という、ちょっとストーンズ風の曲と演奏になっていますが、個人的にはB面ばっかり聴いていましたですね。

それと印象的だったのが、ジャケットに写るメンバー達の鼻が全員、大きいんですねぇ~。

まあ、それはそれとして、当時のバンドはロジャー・ダルトリー(vo)、ピート・タウンゼンド(g)、ジョン・エントウィッスル(b)、キース・ムーム(ds) で、作られるレコードは凝っていながら、あくまでも4人でステージ再現が可能な演奏を第一義にしていたようです。つまりそれだけ、メンバー各人の技量とバンドとしての纏まりが最高だったんですねぇ~♪

そして海外ではザ・フーの圧巻のライブステージが大きな評判を呼んでいたわけですが、我が国で少なくとも私が衝撃を受けたのは、当時の若者向けテレビワイドショウとして朝の7時20分から土日を除く毎日(!)放送されていた「ヤング・セブン・ツー・オー」で、そこでは例のモンタレー・ポップ・フェスティバルで狂乱のステージを展開したザ・フーの熱演と楽器破壊のパフォーマンスがっ!!!

これも強烈でしたねぇ~。

もちろん、と同時にジミヘンの凄すぎる演奏も知ることになるのですが、それは別の機会に譲ります。

こうしてザ・フーが好きになった私は彼等のレコードを集めようとしたのですが、なんと当時はその発売状況が芳しくなく、売れ行きが悪いからレコード屋でも新譜を即座に店頭入荷させないというような感じでした……。

もちろんLPは買えないし、出ているアルバルにしても、ほとんどが疑似ステレオで音質が悪かったのも、マイナスだったように思います。

ということで、今でも大好きなザ・フーの諸作を私が実質的に楽しめるようになったのは、1970年代に入ってからでした。それでも、このシングル曲を含むデビュー期の歌と演奏については発売状況が決して良いとは言えず、それゆえにサイケおやじは尚更に愛着の強い1枚となったわけです。

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ガールジャケットのザ・フー

2007-08-09 16:50:45 | The Who

今日も暑いです。

そして、こういう時にはジャズモードに入らなくなる私ですから、この前に発見した強烈な嬉しい復刻CDから、これを聴いてしまいました――

My Generation / The Who (US Decca / テイチク)

ザ・フーはご存知のように1960年代英国ロックのブームから生まれ、オリジナルメンバーの死去を乗り越えて現存している最高のロックバンドのひとつです。

しかし我国では全盛期での来日が無かったことに加え、レコード発売のイザコザがあったりした所為で、リアルタイムではイマイチ、人気がありませんでした。

しかし、それでもたまに出すヒット曲の威力は絶大でしたし、個人的にはストーンズが麻薬関連で逮捕~裁判という騒動の時に、支援のレコードを出したということで、何となく気になって親しみの持てるバンドでした。

肝心の彼等のレコードについては、まず1965年12月に発売された「My Generation」が史上最高のデビューアルバムとして英米で高い人気と評価を得たにも関わらず、その後の契約の縺れで宙に浮いた形となり、きちんとした形で市場に出回らないという悲劇が……。

で、我国では、昭和42(1967)年に、曲順とジャケットを変えて発売されたのが、本日の1枚です。

しかしバンド名表記が「ザ・フゥー」とされている上に、劣悪な擬似ステレオ仕様とあって、売行きは悲惨だったようです。実際、私も小遣いが乏しかった所為もあって、買う気にはなりませんでした。キッチュなジャケットも???です。

ただし後年、それが通称「ガールジャケット」と呼ばれてウルトラ級のコレクターズアイテムになったのですから、時の流れは恐いものです。その内容は――

A-1 My Generation
A-2 Please, Please, Please
A-3 It's Not True
A-4 The OX
A-5 The Kids Are Alright
A-6 Instant Party
B-1 A Legal Matter
B-2 Out In The Street
B-3 I Don't Mind
B-4 The Good's Gone
B-5 La La La Lies
B-6 Much To Much

以上の12曲ですが、なんと現在、これが紙ジャケット仕様のCDとして復刻発売中です。しかもモノラルマスターが使われているんですねぇ~♪

実は、この「My Generation」は既に1980年代からアメリカでCD化されていますし、オリジナルのイギリス盤を基本にしたリマスターCDもボーナストラックを満載した2枚組で出されているのですが、前者はモノラルと擬似ステレオが混在していますし、後者はステレオのニューミックスに加えて、余計なダビングもあったりして、私にはオリジナル盤の復刻とは認められないものでした。

ちなみにイギリス仕様のオリジナル盤の曲順は――

A-1 Out In The Street
A-2 I Don't Mind
A-3 The Good's Gone
A-4 La La La Lies
A-5 Much To Much
A-6 My Generation
B-1 The Kids Are Alright
B-2 Please, Please, Please
B-3 It's Not True
B-4 I'm A Man
B-5 A Legal Matter
B-6 The OX

――となっています。つまりイギリス盤から「I'm A Man」を抜いて、代わりに「Instant Party」を入れたわけですね。

そして演目・演奏では、まず永遠の代表曲「My Generation」が、やっぱり凄いです! 暴れまくりるキース・ムーンのポリリズムドラミングと豪快うねるジョン・エントウィッスルのリードベースが、強烈至極なんです。当時、こんな烈しいビートを出していたバンドが他にあったでしょうか!? これは今日でも珍しいぐらいのブッ飛び方だと思います。

また限りなくポップでマージービート丸出しの「The Kids Are Alright」や「It's Not True」「A Legal Matter」は1960年代ロックの楽しさに満ちています。そしてR&Bのコピーで強烈な黒っぽさを披露した「I Don't Mind」と「Please, Please, Please」では、ロジャー・ダルトリーの粘っこいボーカルとコーラスワークのポップな対比が楽しく、せつない雰囲気で、たまりません。重たいビートの演奏も最高です。

また直線的なロック魂を表現した「A Legal Matter」や力強いフォーロック調の「Much To Much」、さらにサイケな「Instant Party」や「The Good's Gone」でも、けっしてポップな雰囲気を忘れていない姿勢は、素晴らしいと思います。

さらに個人的に大好きな「La La La Lies」では、モータウンサウンドとビーチボーイズの幸せな結婚のような、最高のポップスが楽しめます。バックの演奏もゲストのピアノ奏者が加わっていますが、とても3~4人で作り出しているとは思えない厚みが凄いです!

そして中心人物のピート・タウンゼントは、リズムカッティング主体のギターワークに加え、ソングライターとしての冴えが抜群です。こんなにポップで力強く、クールに不貞腐れた曲を書ける人は稀でしょう。

ということで、ロックの力強さを持ちながら完璧にポップなバンドのザ・フーを聴くなら、この復刻CDが最適です。なにしろアメリカ経由のモノラルマスターを仕様した音質がド迫力! それゆえに「The Kids Are Alright」が編集バージョンになっているんですが、それもご愛嬌♪

オリジナル盤と異なる曲順については、CDブレイヤーならば簡単に変更出来ますから、好きなように楽しめるはずです。これで「I'm A Man」がボーナストラックだったら最高だったんですが、それは言わないお約束ということで、ご理解願います。

ザ・フーは最高です! 全てのロックファン、音楽ファンは必聴ですよっ! と本日は断言させて下さい。

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