OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

背信と羨望がザ・フー

2013-10-20 15:33:54 | The Who

ワイルド・アクション / The Who (Track / 日本グラモフォン)

日本盤シングルの大きな魅力のひとつが、ピクチャースリーヴの素晴らしさでしょう。

もちろん確かに日本のレコードは全体的に値段が高く、特にサイケおやじが子供の頃は自らの乏しい小遣いに比較して、とてもとても、その歌が好きだからといって、気易く買えるものではありませんでしたからねぇ~、ジャケ写の魅力というのも、実に大きな楽しい要素でありました。

しかし……、それが裏目に出る事だって、少なからずあったわけですよ……、思い込みと言われれば、まあ、それまでなんですけど、本日掲載の1枚は、まさにそれが先行して、肩すかしを極められた傑作でした。

だって、演じているのがザ・フーであり、暴虐のアクションがモロに堪能出来るにちがいない曲タイトル「ワイルド・アクション」に、ド派手なステージショットを使ったジャケ写が鮮烈ですからっ!

しかもこれが発売されたのは昭和47(1972)年2月、という事は例のウッドストックの熱演が映画でも公開され、その勢いがアルバム諸作はもちろん、シングル曲「Summertime Blues」や「無法の世界 / Won't Get Fooled Again」等々を我国でも大ヒットさせていた頃ですから、ザ・フーという稀代のロックバンドの新曲に期待するなというのは、殊更ファンにとっては無理な話です。

そこでサイケおやじはザ・フーの新譜シングルをゲットする心意気に燃えていたところに、レコード屋の店頭で出会ったのが、しつこいようですけど、このジャケ写にして、この曲タイトル!!

当然ながら、それまで全く聴いた事も無かったのに、絶対に凄いはずっ!

そう思うのが、これまたザ・フー信者の素直な気持でありましょう。

ところが速攻で帰宅して、レコードに針を落せば、クリビツテンギョウ~~!?!

ザ・フーをザ・フーに成らしめている爆裂のドラムスも地鳴りのペースも出ず、なんとっ!? 大人しい(?)アコースティックギターの地味なカッティングやピアノに導かれた、いやはやなんとも、曲タイトルとは裏腹の……。

うわっ、これは……、と思った次の瞬間、それでもドラムスが入ってくるあたりから、ボーカルに力が漲ってくるというか、グイノリの曲展開と中間部での十八番のコーラスワークがザ・フーならではの仕掛の妙♪♪~♪

そこであたらためて確認してみると、「ワイルド・アクション」という曲タイトルは完全に「邦題」であって、本当の曲名は「Let's See Action」なんですから、納得する他はありません。

いや、と言うよりも、これはこれでザ・フーでしか演じられない唯一無二のロックであり、似た様な事は当時の他のバンドでもやっていたんですが、お叱りを覚悟で書かせていただければ、これをもしもフェィセズあたりが?

と思っただけで、些か額に汗が滲むでしょう。

流石はザ・フー! それが最終回答であります。

ということで、実は何度でも聴きたくなるほど、魂が高揚させられるのが、この「ワイルド・アクション / Let's See Action」です。

あぁ~、この構成万全の様式美♪♪~♪

最後になりましたが、実は「ワイルド・アクション / Let's See Action」については諸説云々、制作過程には噂ばかりが先行した幻のアルバム「ライフハウス」絡みの音源である事は確かと言われていますが、演奏メンバーが果たしてザ・フーだけでなく、セッションミュージシャンの存在も含めて、どうにもはっきりしません。

そのあたりも含めて、サイケおやじはザ・フーの全盛期を感じる諸々が、ここに聴けると思っているのでした。

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ザ・フーは予告篇も最高!

2013-03-16 15:49:35 | The Who

無法の世界 (シングルバージョン) / The Who (Track / 日本グラモフォン)

長いキャリアを誇るザ・フーの全盛期は何時であるか?

それは諸説や個人の自由意思による好みによって、まさに十人十色でしょう。

しかし永遠の傑作アルバム「フーズ・ネクスト」が送り出された1971年が、そうだっ! とするのが、一般的なロックファンの共通認識のように思うのは、それなりにザ・フーの狂信者であるサイケおやじなりの社会常識(?)でしょうか。

本日掲載のシングル盤A面曲「無法の世界 / Won't Get Fooled Again」は、まさにそれを導き出した最高の予告篇として、リアルタイムのラジオ洋楽番組では流れまくったパーフェクトなハードロックの決定版でしたから、「トミー」~「ウッドストック」~「ライプ・アット・リーズ」と続いてきたザ・フーの上り調子が凝縮されていたんですねぇ~~♪

あぁ~、十八番のパワーコードの裏を固めるシンセ系キーボードの存在も無視出来ませんが、持ち前のポップな曲メロを自ら破壊&再構築していくバンドメンバー各々の深淵な策謀は、流石に侮れませんよっ!

特に終始、ブッ敲きドラミングのキース・ムーン、ジョン・エントウィッスルの野太く蠢くベースがあってこそ、ロジャー・ダルトリーの熱血シャウトもストレートに伝わる事は、もはやザ・フーの公式であり、あえて大味を狙っているかのようなピート・タウンゼントのギターも、多層的に重ねられたサウンド構成の結果であれば、それは絶対!

何度聴いても、これが最初にラジオから流れてきた時の感動と興奮が蘇ってきますねぇ~~~~~♪

所謂「青春の一曲」ってやつかもしれませんが、実は既に述べたように、これは素晴らしく良く出来た予告篇でありました。

というのも、皆様ご存じのとおり、シングル盤収録の「無法の世界 / Won't Get Fooled Again」はアルバム「フーズ・ネクスト」の本篇8分超のフルバージョンを3分半ほどに編集した短縮バージョンだったんです。

しかし、それで満足出来ないかと言えば、それは、否!

ほとんど完璧にして永遠のハードロックアンセムだと思うばかり!

そして当然ながら、いよいよ「フーズ・ネクスト」のLPを買った時でさえ、その充実度に激しく興奮させられながらも、こっちのシングルバージョンだって、決して負けない密度を再認識!

う~ん、今日は書いていて、思わず「!」を多用してしまうのは、そういう気分の表れとご理解願いたいところであります。

ということで、予告篇だって、素晴らしいというのが結論でありまして、告白すれば映画好きのサイケおやじは、その予告編の方が好きだという作品が少なからずあるのです。

またビデオ時代になって、そういう予告篇だけを集めた編集作品が売られていた事も、明白な証明じゃ~ないでしょうか。

ただし、ザ・フーに関するかぎり、予告篇も本篇も隔てなく強烈に最高なのは、どんな作品にも共通する真実です。

そしてそこに何時を全盛期とするか? という答えが提示されている事は、言わずもがなでしょう。

個人の好みは尊重するのが、サイケおやじのとるべき態度であります。

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この曲で弾こうぜっ! アコースティックギター!

2012-09-09 15:50:37 | The Who

ピンボールの魔術師 / The Who (Track / 日本グラモフォン)

昨日の土曜日はプログにも書いたとおり、やっぱり自分も楽しむべきという大義名分(?)を用意して、夕方からは映画鑑賞、その後に楽器屋とかCD&DVD等々のソフト屋、そして中古レコード店を含む、様々な欲望のツアーを展開させていただきました。

まあ、その中に下半身系(♪)が疎遠であった事は些か情けないかぎりではありますが、一応は昔馴染みの飲み屋に顔を出すという、所謂クラブ活動もやりましたから、それはそれで自分を納得させるばかり……。

さて、そんな中の楽器屋での話なんですが、一般的にギター売り場の試し弾きとなれば、ゼップの「天国への階段」、あるいはイーグルスの「Hotel California」あたりのイントロが大定番でしょう。

またリズム系としては、ストーンズの「Jumping Jack Flash」でしょうかねぇ~~♪

尤もこれは天の邪鬼なサイケおやじの好みであって、あまりその場の店員さんには良い顔もされないわけですが、実は、そういうところで、それでもやってしまうのが、本日掲載のシングル盤A面「ピンボールの魔術師 / Pinball Wizard」のイントロだと言えば、またまた顰蹙でしょうか?

しかし曲展開の決定的な部分をリードしていくイントロからのギターカッティングは、アコースティックだからこその魅力に溢れている事は、誰もケチのつけようが無いと思っています。

ちなみにこの曲は、ザ・フーが1969年に出した畢生の傑作アルバム「トミー」に収録されていますが、現実的には先行シングル扱いだったようですし、既に皆様ご推察のとおり、当時のサイケおやじは2枚組だった前述のLPが買えず、シングル盤をゲットしたのが真相ではありますが、正直に告白すれば、その頃の後追いで聴いた件の名盤「トミー」は綺麗(?)な曲が多すぎて、ちょいとばかりピンっときませんでした。

それは今にしてみれば、物凄い不遜ですし、自らの若気の至りを恥入るばかりなんですが、逆に言えば、それだけ「ピンボールの魔術師 / Pinball Wizard」というシングル曲のインパクトが絶大であった!

という言い訳も決定的に成り立つのです。

そして実際、この曲のイントロ~全篇のリズムギターをコピーしてアコギで弾く時の快感は筆舌につくし難く、レコードに合わせて演奏を続けるジコマンは中毒性がありますよ♪♪~♪

もちろん曲そのものの高揚感も唯一無二!

ですから後年、エルトン・ジョンが同名映画出演時に「ピンボールの魔術師 / Pinball Wizard」の大名演を披露したのは言わずもがな、自らのカバーバージョンを大ヒットさせ、臆面も無くレギュラー演目にしてしまった事についても、罪深さよりは共感を覚えるほどです。

ということで、ギターを弾かれる皆様であれば、本日のサイケおやじの戯言なんて、全くのお笑い草でしょう。それは言い訳ではありますが、自覚するところでもあります。

しかし同時に、分かってもらえるところも、本当はあるんじゃ~ないかなぁ……、等々の甘えも顔を出してしまうですねぇ、恥ずかしながら。

どうか、そのあたりをご理解いただけますよう、お願い申し上げます。

 

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ザ・フーの真髄ライブを堪能しようっ!

2012-01-04 16:17:19 | The Who

The Who Live At The Isle Of Wight Festival 1970 (Warner Vision = DVD)

今年はパァ~~ッと行こう!

その第二弾は、1970年夏のザ・フーが世界最高のライプバンドだった証明映像です。

 01 Introduction
 02 Heaven And Hell
 03 I Can't Explain
 04 Young Man Blues
 05 I Don't Even Know Myself
 06 Water
 07 Shakin' All Over / Spoonjul / Twist And Shout
 08 Summertime Blues
 09 My Generation
 10 Magic Bus
 11 Overture
      It's A Boy
     Eyesight To The Blind
      Christmas
 12 The Acid Queen
 13 Pinball Wizard
 14 Do You Think It's Alright
 15 Fiddle About
 16 Go To The Mirror
 17 Miracle Cure
 18 I'm Free
 19 We're Not Gonna Take It
 20 Tommy Can You Hear Me?

巷間定説となっている、当時のザ・フーは最強ライプバンド説は、確かに間違いの無い真実なんですが、しかしその時期に来日してくれなかった事もあり、我国の洋楽ファンにとっては、あくまでも「噂」や「幻」でしかなかったそれに接する幸せと驚愕が、まず、ここにあります。

もちろん我々は1967年の「モンタレーポップフェス」や1969年の「ウッドストック」等々の記録映画で、ザ・フーが如何に物凄いステージをやっているかは知っていました。しかしリアルタイムで接することが出来たのは結局、その極一部分でありましたから、1996年になってようやくここに纏めてられて世に出た約85分間のぶっ通しライプ映像は、まさに待望久しいお宝の発掘に他なりません。

というのも、この映像の元ネタである第3回ワイト島ロックフェスティバルは、当初から記録映画が作られる前提にありながら、主催者側の資金難や出演者側との権利関係でゴタゴタが続き、せっかく撮影した映像や録音された音源は死蔵……。

ですから、当然のようにブート市場では絶大な存在価値が認められ、ザ・フー以外にもジミヘン、ドアーズ、マイルス・デイビス、ムーディ・ブルース、エマーソン・レイク&パーマー等々の大物ミュージシャンのマテリアルが裏流出していましたし、どうにか部分的に権利関係をクリアしたものでも、疑似オフィシャル扱いになっていた現実もありました。

そこでザ・フーの場合は、1970年8月30日というよりも、現実的には観客とのトラブル等々によるステージ進行の遅れで翌31日の午前2時から敢行されたライプということで、バンドは初っ端から異常なハイテンション!?

もちろん相当に荒っぽい、ミスも散見される歌と演奏が逆にロックの醍醐味を生み出せる幸せな時代という点を差し引いても、ザ・フーの真骨頂をここまで堪能出来る映像は無いでしょう。

ただし、こういう作品にはありがちなんですが、音声部分の要である演奏音源のミックスがイマイチ、ロックっぽく無いところが勿体無いばかりで、具体的にはオープニングの「Heaven And Hell」から「I Can't Explain」あたりは、演奏パートとボーカル&コーラスが遊離したような聴こえ方なんですねぇ……。

しかし続く「Young Man Blues」からはそれも改善され、抜群のカメラワークと編集作業に負けず劣らずの演奏そのものが、これぞっ、ハードロックの極みつき! とにかくロジャー・ダルトリーのメリハリの効きまくったボーカル、ドカドカ煩くて、しかもシャープなビートを敲き出すキース・ムーン、激しいアクションから立体的なコードとツッコミ鋭いソロフレーズを弾き続けるピート・タウンゼント、さらに驚愕のフラッシュフィンガーでバンドを煽るジョン・エントウィッスルのリードベース!

もう、これにシビれなかったら、ロックを感じる基本的感性が無いと断じますよ。

それほどの大名演だと、サイケおやじは絶対的に思います。

また今となっては瞠目する他はない「Water」が、ここに堂々のライプバージョンでリアルタイムの実相を明かしているところも高得点!

なにしろこれはピート・タウンゼントが当時の意欲的新作として目論んだ「ライフハウス」という、結果的にはザ・フーの幻のアルバムになった中核の曲だと言われ、デモテープをなんとか仕上げたトラックが1973年にひっそりとシングル盤B面扱いで世に出たり、公式レアリティーズ集やブートのウリになっているネタなんですから、ファンとしては穏やかではありません。

そしてザ・フーは、これを強靭なブルースロックの手法を大胆に使いながらも、十八番の短編小説的な組み立ても見事なライプバージョンで聴かせてくれるんですから、こんな贅沢はありません。

また、この曲をやる前のMCが寸劇調で、なかなかドメスティックなジョークや毒気のあるザ・フーならではのステージ進行は、これを見ないと収まらないほどでしょう。

ここでもカメラワークと編集の上手さは流石だと思いますが、その意味で続く暴走のロック大会とも言うべき「Shakin' All Over / Spoonjul / Twist And Shout」「Summertime Blues」「My Generation」、そして「Magic Bus」は実際のライプでは中盤のトミーメドレーの後に演じられた、つまり本当のクライマックスだったんですから、それを強引(?)に組み替えたのは賛否両論でしょう。

またお目当てのトミーメドレーにしても、ここでは抜粋編集ですから、またまた納得出来ないファンも多いはずです。

しかし、このあたりは同時期に発売された音源だけの、ほぼ完全収録版2枚組CDがありますので、心配はご無用です。冒頭に書いたような音声ミックスの問題も、これはそれなりに解消してありますよ。

ただし個人的には、一度でもこのステージの映像を観てしまうと、ど~しても音源だけでは物足りなく思うのが本音です。

なにしろメンバーの衣装がロジャー・ダルトリーのフリンジジャケット、ピート・タウンゼントは白のツナギという、あのウッドストックと同じところも嬉しいですが、アッと驚くジョン・エントウィッスルの骸骨スーツは今や伝説! またキース・ムーンのTシャツ姿の潔さも強い印象を残すはずです。

そして彼等が動くだけで、そこにはロック魂に満ちたオーラが発散され、加えて真性ハードロックの本物の輝きが眩しいんですよねぇ~~~♪

その意味で幾分短縮されたトミー・メドレーが荒っぽく演奏される展開は、オーラスの「Tommy Can You Hear Me?」が最高の余韻を伴って終る演出に収斂するという、とても良く出来た流れが秀逸!

なんだかんだ文句を言う前に、絶対にこれを堪能しなければウソですよ、ロックな人生は。

さらに繰り返しになりますが、全体の流れが実際のライプ演目順を変更組み換えしてありながら、その編集の上手さは素晴らしく、例えば「My Generation」~「Magic Bus」に続くパートでは、実際にはその間に「Naked Eye」が入っていたんですが、それがカットされた事が問題無く楽しめるほどですよ。

そして最後になりましたが、既に述べたとおり、このフェスティバルで撮られた映像からは、「輝かしきロックの残像」という記録作品が作られ、これも今ではソフト化されていますが、内容は関係者の苦労話の回想がメインで、出演者のライプパートは少ないのが悔しいところではありますが、ザ・フーでは割愛された件の「Naked Eye」が、そこで鑑賞出来るので要注意でしょう。

ということで、これもまた、特段に気合いが入るブツですよっ!

真の全盛期であり、まだまだ上り調子だったザ・フーの凄さは、これでも全てではないと思いますが、まちがいなく観ないで死ねるか!

皆様には、ぜひともご覧いただきたいと強く思います。

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ザ・フー、10年目の開き直り

2011-08-29 14:34:23 | The Who

不死身のハードロック / The Who (Track / Epicソニー)

高齢化社会の現在、言うまでもなくロッカーだって老人になるし、だからこそ往年の大スタアが老残の醜態を晒す姿に接すると、もはや伝統芸能なんて言い訳すら哀しく響いてしまいます……。

もちろん、やっている側には、それなりの意気地も事情もあるでしょう。昔っからのファンがそれを許容する姿勢だって、理解出来ますし、お若い皆様が伝説を確認しようとする行動も大切だと思います。

しかし、それにしても、限度ってものがあるんじゃないでしょうか……。

と、ノッケから嘆き節を書いてしまったのは、最近は何を考えているのか分からないような再結成ツアーとか、ほとんど意味を為さないリメイクレコーディングとか、昔の名前で出ていますという以前にトホホなものが……。

そんな状況は具体的に名前を挙げなくとも、皆様には先刻ご承知でしょう。

ところが、それを逸早く自嘲的に居直ったのが、本日ご紹介のシングル曲! ご存じ、ザ・フーが1974年に出したレア・トラック集のLP「オッズ&ソッズ」に収録されていた数少ない新録音のひとつで、実は積極的にシングルカットしたのは日本のレコード会社の思惑だったようですが、今ではグループの代表作になっているのですから、まさに先見の妙でした。

ちなみに、この前後のザ・フーは前年に傑作2枚組アルバム「四重人格」を出し、まさにバンドは絶頂期と思われていたのですが、後に明らかにされた周辺事情によれば、1971年発表の歴史的名盤「フーズ・ネクスト」以降、燻り続けていた幻の企画「ライフ・ハウス」の頓挫やマネージメントとの訴訟問題、悪いクスリや飲酒等々によるメンバー達の体調不良と精神障害、さらにはショウビジネスそのものの変化が重なり、バンドの状態はどん底だったと言われています。

しかし、とにかく新作が要求される中、ジョン・エントウィッスルが過去の音源を引っ張り出し、リミックスやオーバーダビングを施して、なんとか纏め上げたのが前述の「オッズ&ソッズ」という真相は、個人的には気に入った仕上がりだったので、ちょいと驚いた記憶が今も鮮明です。

中でも、この「不死身のハードロック / Long Live Rock」は如何にもザ・フーらしい、実にストレートなハードロックであり、1979年に公開されたバンドのドキュメント映画「キッズ・アー・オールライト」のラストテーマに選ばれて人気が再燃したのもムペなるかなっ!

なによりも、ズバリと最高の邦題が全てを物語っています。

 アストリアに入れば眺めが変わる
 ビンゴやロックは、成人指定らしいぜっ
 それで俺達ゃ~、初めて飲み屋でロックンロールを演じたバンドさ
 最初のステージは、とってもショボかったなぁ
 夜の10時を過ぎるまではねぇ
 ロックは死んだ、なぁ~んて言われるけれど
 ロックは長生きなんだぜっ!

 長生きロック! 俺には毎晩必要さっ!
 長生きロック! こっちへ来て、いっしょにやろうぜっ!
 長生きロック! 死のうが、生きようが!

どうですっ、この開き直った勢いはっ!?!

だって、ザ・フーはデビュー当時、バンドのイメージを決定づけた名曲名演の「My Generation」で、「老い前に、死にたいぜっ」と歌っていたんですよっ!

それが10年を経ずして、既にパンクスあたりからは過去の遺物と罵られていたんでしょうかねぇ。

冗~~談じゃ~、ねぇっ!!

確かに当時は「30歳過ぎたら、ロックは出来ねぇ」と、信じられていましたが、それが今ではねぇ~~~!?

まさか、ザ・フーにしても、二人っきりの現在の活動を想定していたとは思いませんが、それでも来るべき高齢者ロックの現実を見据えていたと言っては、贔屓の引き倒しでしょうか。

否、そんな事よりも、少なくともサイケおやじはリアルタイムで「不死身のハードロック」にシビれ、しかし歌詞の中身を知ってしまえぱ、なんだかなぁ……。そんな気分のモヤモヤは今も晴れていません。

ですからリアルタイムで入れてもらっていたバンドで、この曲をやろうぜっ! となった時も、頑なに反対していたほどです。

そして実際、やることはありませんでしたが、齢を重ねた今日、おやじバンドでは必須り演目じゃないのかなぁ?

と都合の良いことを考えているのですが……。

結局、良い歌と曲は時代を超えて美しく残っていくという事なんでしょうねぇ。

本当に、そう思います。

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ザ・フーよ、お前もかっ!?

2011-01-04 15:56:41 | The Who

マジック・バス / The Who (Track / 日本グラモフォン)

トホホなジャケ写のシングル盤・クリーム篇が望外にウケまくったので、同じ路線(?)で思い出したのが、本日ご紹介のこれっ!

ご存じ、ザ・フーが今日でもライプでは欠かさない人気定番曲の初出シングルで、我国では昭和44(1969)年に発売され、この偉大なバンドの大ファンだった青春期のサイケおやじは、もちろんリアルタイムで買っています。

それは昨日掲載した「スクラップ・ヤード」以前の事だったんですが、ここで問題になるのは、そうしたトホホのジャケットを付けられたシングル盤が、「日本グラモフォン」「洋楽」「昭和44(1969)年発売」に集中しているという、そんな結論が導かれる三題話になっているんですねぇ……。

なにしろ一目瞭然という、雑な切り抜き製版で用いられたグループショットは、その所為で丸っきりアンガールズみたいなヘアスタイルになっているピート・タウンゼント(vo.g)、ノーテンキ表情のキース・ムーン(ds) は地金が出たと言えばそれまででしょうが、心ここにあらずのロジャー・ダルトリー(vo) と居心地の悪そうなジョン・エントウィッスル(vo.b) は、これ如何に!?

あぁ、こんなの使われたら、果たして当時から最強のライプバンドと言われていたザ・フーの真価を疑われても、反論は出来ないでしょう。

おまけに括り記号を使ったデザインの安易なダサダサフィーリングも、情けない……。

さらにジョンとロジャーの頭部付近にある汚れはインクのシミ???

しかし、これを乏しい小遣いで買ったサイケおやじは、当時から全くイケていないジャケットとは正逆の歌と演奏に、それこそ心底シビれたことが不思議なほどでした。

そして今になって思うと、そうした落差はレコード会社の担当者が狙ったものかもしれない!?! そんな風にも理解出来るのですが、いかがなもんでしょう。

う~ん、日本グラモフォンから昭和44(1969)年に発売された洋楽シングル盤は、侮れない!

ということで、今年は一丁、集中的に集めてみる決意までさせられた次第です。

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ウケる前にやれっ!

2010-12-14 15:46:14 | The Who

Summertime Blues c/w Shakin' All Over / The Whe (Track/ Polydor)

まあ、とにかくバンド、やろうぜっ!

というきっかけは、気の合う仲間と好きな曲をワイワイ歌う!

それに尽きると思いますが、つまりはカラオケ衝動と一緒かもしれませんね。

しかし同時に、それでウケれば、女の子にもモテるはずっ!?!

なぁ~んていう、下心も充分にある事は否めません。

ですから、出来るだけ、カッコE~~、演目をやろうとするのですが、いきなり誰もがディープパープルやクリームを演じられるわけも無く、もちろんイエスやキング・クリムゾンは雲の上の存在でしたから、サイケおやじの世代では、必然的にシンプルで熱いという、本日ご紹介のシングル曲が常に筆頭候補のひとつだったと思います。

それは両面収録の2曲が、揃ってR&R不滅の古典であり、ザ・フーは所謂カバーバージョンのハードロックスタイルで演じていましたから、親しみ易くてド迫力!

もちろんリアルタイムでは歴史的名盤となったライプアルバムの傑作「ライブ・アット・リーズ」からのカットでしたし、なによりも「Summertime Blues」は例のウッドストックでの熱演が映画で拝めたという僥倖も大きかったですねぇ~♪

また、これはサイケおやじの全くの妄想的推察なんですが、おそらくこのシングル盤こそが、我国におけるザ・フー最大のヒットじゃないでしょうか? とにかくラジオの洋楽番組を中心に広く一般にまで浸透した歌と演奏だったことは間違いありません。

斯くして「Summertime Blues」はアマチュアバンドには必修科目となり、もちろんプロでも多くのミュージシャンが演じているのは、例えば、うじきつよし率いる「子供ばんど」のバージョンが時代を超えて定番化しているように、説明不要の世界になっています。

しかし、シンプルであるがゆえに、R&R本来のノリを出すのは容易なことではありません。

そこがプロと素人の決定的な違いだと思います。

ただし、バンドをやっている誰もがプロになろうなんて、そんな大それた野心を持っているはずもありませんから、結局はその場が楽しければOK♪♪~♪

という環境に最も相応しいのが、ザ・フーが本来の持ち味とジャストミートしています。

最後になりましたが、既に「ライブ・アット・リーズ」のLPを持っていたサイケおやじが、何故にこのシングル盤をゲットしたかといえば、それはモノラルミックスだったからに他なりません。

尤も、これは単純にステレオミックスをモノラルに落としただけのものかもしれませんが、ラジオでオンエアする事を考慮したのでしょうか、ギュ~~っとスリムに凝縮されたような音像が感じられます。

ということで、おやじバンドはそれなりに年寄り趣味と思われがちな選曲になりますが、いえいえ、R&Rは何時までも若く! ですよ♪♪~♪

それには、「Summertime Blues」をハードロックでブチかます事が一番だと思うのでした。

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ザ・フーの、これがベストのベスト盤

2010-10-02 16:37:53 | The Who

Meaty, Beaty, Big & Bouncy / The Who (Track)

2人っきりになっても活動を継続中のザ・フーは、今や最もベスト盤を多種多様に発売したバンドじゃなかろうか……?

と、サイケおやじはザ・フーが少年時代から大好きだった所為もあって、複雑な心境を隠せません。そして結局は、そういうブツが出る度に、僅かな新曲やミックス&エディット違い、あるいは別テイクなんかのエサに釣られて買ってしまうんですから、情けないと言われれば、全くそのとおりです。

しかし1970年代には契約の問題から、ザ・フーの特に初期の音源は入手が難しい事もあり、けっこう重宝したファンも多いんじゃないでしょうか。

例えば本日ご紹介のアルバムは1972年頃に出たベスト盤なんですが、明らかに意図的としか思えない別バージョンが押し込まれていたりして、侮れません。

 A-1 I Can't Explain
 A-2 The Kids Are Alright (US Short Version) ▲
 A-3 Happy Jack
 A-4 I Can't See For Miles / 恋のマジック・アイ
 A-5 Pictures Of Lily / リリーのおもかげ

 A-6 My Generation
 A-7 The Seeker
 B-1 Anyway, Anyhow, Anywhere

 B-2 Pinball Wizard / ピンボールの魔術師
 B-3 A Legal Matter

 B-4 Boris The Spider / ボリスのくも野郎
 B-5 Magic Bus (alternate take) ▲
 B-6 Substitute / 恋のヒンチ・ヒッター
 B-7 I'm A Boy (alternate take)

  ●モノラルミックス
  ▲疑似ステレオバージョン  

上記した収録演目は、まさに1970年までのザ・フーを代表する名曲名演ばかりで、それはシングルA面扱いでヒットした13曲に加え、特にアルバム収録ながら、やはりザ・フーには欠かせない「ボリスのくも野郎」を入れたという優れもの♪♪~♪

ただしアルバム全体がステレオ仕様ということで、この時点でモノラルミックスしか存在しない曲に関しては、当然ながら疑似ステレオバージョンが中途半端に用いられているのは賛否両論でした。

それらについては▲印を付けておきましたが、「I Can't Explain」や「My Generation」等々が、きっちりとモノラルミックスで収められているのですから、一般的には納得出来ないと思います。

しかし天の邪鬼なサイケおやじは、そういう疑似ステレオ効果で発生するエコーの雰囲気が、如何にも当時のロックらしい味わいとして嫌いではありません。

まあ、それはそれとして、このアルバムの大きなウリは「Magic Bus」と「I'm A Boy」の初出バージョンでしょう。

まず「Magic Bus」は1968年10月に発売されたシングル曲なんですが、ここに収録されたのはエンディングがフェードアウトしていませんし、ボーカルも異なっています。そしてこの終盤のパートが、なかなか心地良いんですねぇ~♪

一方、「I'm A Boy」は1966年夏に発売されたシングルバージョンとは完全に異なる別テイク! 全体にちょいとスローなテンポで演じられており、中間部のホルン(?)が妙な気分にさせてくれるという味わいは???でしょうか。ちなみにブートではイントロがカットされたバージョンやリアルステレオミックスも出回っています。

ということで、サイケおやじにとっては、完全に件の2曲を目当てにゲットしたアルバムなんですが、これが今となってはザ・フーの最高のベスト盤じゃなかろうか? と思うばかりです。

もちろん、ここには「Summertime Blues」も「無法の世界 / Won't Get Fooled Again」も、また「The Real Me」も「Love Reign O'er Me」も、そして当然「Long Live Rock」さえも入っていませんが、しかしザ・フーがロック全盛期を伸し上がっていった軌跡の中で、それはポップでワイルドな個性が抜群だった1960年代の活躍を濃縮して楽しめるアルバムに仕上がっています。

またジャケットデザインが実に秀逸で、ロジャー・ダルトリー(vo)、ピート・タウンゼンド(g)、ジョン・エントウィッスル(b)、キース・ムー(ds) という最強4人組の子供時代と思しき少年モデルを使ったあたりは、上手いですねぇ。そして、よくもまあ、これだけ雰囲気が似ているメンバーを集めたもんだと思いますが、おそらくはザ・フーの4人は、典型的なイギリス人の顔立ちなのかもしれませし、各人が揃って鼻が大きいという個性は、そのまんまバンドのイメージに直結していましたですね。

その意味で、裏ジャケットは現物を見てのお楽しみになっています。

いゃ~、やっぱりザ・フーは良いですねぇ~♪

と、秋の日にシミジミ思うサイケおやじでした。

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ザ・フーの気力充実

2010-07-01 16:32:20 | The Who

リリーのおもかげc/wDoctor, Doctor / The Who (Track / 日本グラモフォン)

今日から7月!

つまり今年も、アッという間に半分が過ぎ去りました。

いゃ~、早いですねぇ~。

個人的にも仕事では月末から月始めが特に忙しいんで、あまり歓迎する日ではありません。

しかし少年時代は毎月1日に小遣いを貰っていたんで、この日が本当に待ち遠しかったですよ。

そして練りに練った計画に基き、慎重を極めて買うシングル盤の大切さは言わずもがな、今になって思うと、家を出てレコード屋に赴き、その場で尚且つ自らの欲望に熟慮しつつ選ぶ1枚の尊さは、もうひとつの儀式だったかもしれません。

まあ、このあたりの感覚は何時もながらに大袈裟なサイケおやじの本性として、お笑い下さい。

で、本日ご紹介のザ・フーのシングル盤も、そうやって入手したもののひとつですが、我国では全くヒットしていません。

しかし本国イギリスでは、ザ・フーが自ら設立に関与したトラックレコードからの最初のリリースとあって、歌と演奏に気力と才能が充実しきった名演盤!

まずA面の「リリーのおもかげ / Pictures Of Lily」は、ジョン・エントウィッスルの地鳴りのようにヘヴィなベースに導かれ、それとは正逆のポップな曲メロが抜群に綺麗なコーラスに彩られて歌われるという、最高に素晴らしいロック黄金期の証明♪♪~♪

当然ながら自在に暴れるキース・ムーンのドラミングはサウンドの要であり、それゆえのテンションの高さがハードなバンドアンサンブルを盛り立てるという、まさにザ・フーならではの構図と魅力が、僅か3分に満たないシングル盤片面に凝縮されています。

ちなみに歌詞の内容は、悶々としている息子に夜のオカズの用のピンナップを与える父親の物語で、まあ、こういう親子関係はR&Rの極北かもしれませんが、発売されたリアルタイムの1967年春はもちろんのこと、現在でもその過激さは問題化すること必至でしょう。

その意味で間奏に使われているホルンのような楽器の咆哮は、なかなか意味深!?

しかし我国では英語が直截的に理解されない所為もあって、なんらの話題にもならなかったと記憶していますし、当然ながら少年時代のサイケおやじも、そんな歌詞の中身は完全に知ることもなく、単にザ・フーだけのハードでポップな歌と演奏に酔い痴れていたのです。

そしてB面が、これまたジョン・エントウィッスルのペースが唸る、楽しくも変態なハードロックで、終始ファルセットボイスで歌われる曲メロには、呪術的中毒性が秘められているように感じます。実際、この曲あたりは我国のGSが作り変えて演じても、それなりにウケたように思いますねぇ~♪

ということで、こんな素敵なシングル盤が何故に日本でヒットしなかったのか? 今も昔も不思議でなりません。

ご存じのようにザ・フーの場合、その大半の楽曲はピート・タウンゼントの天才性によって、バンドイメージよりは遥かにポップな魅力に溢れているんですが、それを軟弱にしていないのがジョン・エントウィッスルとキース・ムーンの暴虐のリズムコンビであり、ロジャー・ダルトリーの臨機応変なボーカルスタイルでしょう。

ですからピート・タウンゼントは、もしかしたらバンドを纏めるために妥協の連続だったかもしれませんが、「妥協」と「腰抜け」は明らかにちがうわけで、それゆえにザ・フーは一筋縄ではいきません。

なにしろ後に明らかになったように、このシングルA面曲「リリーのおもかげ」は日本盤とオリジナルのイギリス盤ではミックスが僅かに違うと言われています。つまり幾通りものサウンド作りを当たり前のようにやっていたんですねぇ~♪

尤も「リリーのおもかげ」に関しては、あまり拘るほどの違いは無いと思うんで、素直に楽曲の素晴らしさを楽しむのが正解でしょう。

むしろ、そのA面に顕著なポップなフィーリングはピート・タウンゼントの曲作りの魅力であり、対照的に変態性が些か滲み出るのがB面のジョン・エントウィッスルのオリジナルというバランスの妙が、ザ・フーの根本要素のひとつかもしれませんね。

やっぱりザ・フーは最高♪♪~♪

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ザ・フーのステージは狂熱

2010-03-05 17:30:04 | The Who

The Who  Live At Leeds (Track)

ライプアルバムにはジャズもロックもR&Bも、とにかく分野を問わない魅力があって、選曲の妙にはベスト盤的な趣向があったり、あるいは全くの新曲だけで構成された意欲的な作品、はたまた契約履行の成り行きで作られてしまった云々、とにかく話題性が尽きません。

もちろんそこには録音の良し悪しも含めて、演じる側の事情がリアルに封じ込められているのがファンにとってはお目当てですから、中途半端は許されないのです。

極言すれば、海賊盤まがいの劣悪な録音でも、中身のパフォーマンスが素晴らしければ全てが良い方向に作用しますから、ブート業者にとっては決定的な大義名分であり、またオフィシャルレコード会社側にすれば、切り札的な意味合いがあると思われます。

さて、本日の1枚は、そうした様々な思惑が見事に一致した奇蹟の名盤といって過言ではありません。

まず演じているザ・フーにとっては、世界有数のライプバンドとしての実直な姿を記録した成果であり、それに接することの出来ないファンにとっては溜飲が下がると言うよりも、初めて真実に触れたような幸せな気分にさせられる、まさにザ・フーの魔法にどっぷり♪♪~♪

しかもジャケットからもご推察のように、その体裁が当時の海賊盤を強く想起させるデザインというのも洒落が利いています。

 A-1 Young Man Blues
 A-2 Substitute / 恋のピンチヒッター
 A-3 Summertime Blues
 A-4 Shaking All Over
 B-1 My Generation
 B-2 Magic Bus

これまでも度々書いてきたように、サイケおやじは少年時代からザ・フーが大好きでしたが、それはラジオの洋楽番組か、乏しい小遣いの中でようやく買っていたシングル盤で楽しむのが精いっぱいでした。

しかしそうした音楽マスコミによれば、ザ・フーのライプステージは他のバンドや歌手の誰よりも凄い!?! そういう情報があったのです。そして今や伝説の若者向けテレビワイドショウ「ヤング720」で流されたザ・フーのライプフィルムからは、それが真実だと直感されましたですねぇ~。

ちなみにその映像は、これまた伝説となっている1967年のモンタレーポップフェスティバルのライプから、映画として記録されている場面のさらなるダイジェストだったんですが、ドラムセットはひっくり返す! ギターやアンプはぶっ壊す! それでいて演奏はカチッと纏まった轟音系! という当時の我国GSには絶対ありえない世界でした。しかもレコードで楽しめるザ・フーの類稀なるポップス性とは完全に異なる印象だったのです。

う~ん、凄いステージとは、これだったのか!?

と思わず震えたサイケおやじではありましたが、さりとて現在と違ってビデオやDVDがありませんでしたから、唯一の望みはライプアルバムなんですが、ザ・フーの場合はそれも出ていませんでした。

そして満を持して昭和45(1970)年に発売されたのが、この「狂熱のステージ」と邦題が付いたライプ盤! サイケおやじにとっては、初めて買ったザ・フーのLPでもありましたから、その感激は更に大きいとはいえ、まずはA面ド頭「Young Man Blues」からして衝撃的なギターのキメ、炸裂するドラムスとハードにドライヴするベースの暴れが圧巻でした。

もう、ほとんど各人が好き勝手にやっている感じの中、なんとか曲を纏めているのがロジャー・ダルトリーの歌いっぷりという有様なんですよねぇ。しかしブレイクを多用した演奏が少しずつ形を整えていくにつれ、カッコ良すぎるピート・タウンゼントのギターは痛快だし、大蛇のウネリのようなジョン・エントウィッスルのペースとキース・ムーンの乱れ打ちドラムスが最高のロックビートを提供してくれますから、血が騒ぎます。

このあたりの遣り口は、ボーカルのシャウトの仕方も含めて、レッド・ツェッペリンと似ているんですが、もちろんザ・フーが本家! またイエスも、このあたりを真似ながらプログレに進化した真相も含まれています。

それは極めてポップな「恋のピンチヒッター」を、こんなドカドカ煩いハードロックで演じてしまうという暴挙にも明らかでしょう。キメのコーラスワークの素晴らしさは唯一無二ですよ。

また、そうしたR&Rがど真ん中の本質は、エディ・コクランの「Summertime Blues」とジョニー・キッドの「Shaking All Over」という、爆裂カバーバージョンに引き継がれ、本物のハードロック桃源郷を現出させるのです。

ご存じのように、この2曲はシングルカットされ、恐らくは我国でのザ・フーの最大のヒットになったほど、リアルタイムのラジオからは流れまくりでしたよ♪♪~♪ とにかく熱いです!

しかし更にヤバイのがB面の大熱演で、「My Generation」は説明不要のロックアンセムですが、激しいハードロックに徹しながら、中間部には例のロックオペラ「トミー」からの抜粋もハイライト的に混ぜ込んで、劇的に演奏を構成していく15分近い大熱演!

さらにこれもザ・フーのテーマ曲のひとつである「Magic Bus」が、例えばボ・ディドリーが専売特許の土人のビートを使っているというバンド自らのネタばらしで大団円♪♪~♪

というように、とにかく暴虐のロックライブとしては最右翼の1枚なんですが、その音作りも、当時の他のミュージシャンが出していたライプ盤と比べて、実に強い印象を残します。それはおそらく8トラック程度のアナログテープ録音のはずなんですが、各楽器とボーカル&コーラスの存在感が素晴らしく、それでいて団子状に迫ってくるエネルギーが最高!

まあ、欲を言えば、もう少し観客の拍手歓声が大きく入っていれば……、と思います。

で、この名盤を作るにあたっては、1968年頃から計画があって、絶え間ない巡業の幾つかが実際に録音されていたそうです。ところがバンド側が、常に納得していないというか、それだけ当時のザ・フーが日進月歩の上昇期だった証なんでしょうが、中にはテストプレス盤まで作られてオクラ入りした音源もあるほどです。

幸いなことに、それらの一部はプートとして流出し、聴くことが出来ますが、それゆえに公式ライプ盤のジャケットがブートを模したという結果も泣き笑いかもしれません。

そして結局、本物の需要に迫られたバンド側が、ついに意を決して1970年2月14日、イギリスのリーズ大学でライプ録音を敢行! それを編集したのが、このアルバムというわけです。

もちろん当然ながら、ここに収められているのは、その音源の中の抜粋に過ぎません。

実際のステージでは、当時のザ・フーのウリだったロックオペラ「トミー」の全曲演奏、そしてヒット曲の数々が披露されていたのです。

そしてファンにとっては待望というか、まず1995年にCDリマスターの一環として拡大された14曲入り盤が登場♪♪~♪ さらに近年になって、ついに完全版としてCD2枚組のデラックスエディションが登場していますが、実はそれすらも不完全という真相はさておき、音質のリアルな追及によって、さらに楽しめるようになりました。

しかし、やっぱり最初に熱狂した、このアナログ盤の味わいは格別というのが、当時からのファンの気持じゃないでしょうか。それはザ・フーという稀代のロックバンドが、リアルタイムで示した意気地であり、これをもって次なる高みへと躍進する決意表明をファンが素直に受け止めたことによると思います。

ちなみにザ・フーは、このアルバムの前に今では歴史のロックオペラ「トミー」という2枚組のアナログ盤LPを出していたのですが、当然ながらサイケおやじはリアルタイムでは聴くことが叶わず……。

ですからザ・フーの深淵な企みには、些か乗り遅れたのかもしれませんが、後追いで聴いた時の肩すかしと以降の味わいの深さは、やはりこの「狂熱のステージ」を聴いていればこそだったなぁ、と今は思っているのでした。

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