今日はいろいろとネタを仕入れてきましたが、やっぱり店頭で手に取って買物する楽しみは、ネットでは味わえない貴重な楽しみだと痛感!
その中から、こんなん買ってしまいましたというのが、本日の1枚です――
■赤い鳥逃げた? / オリジナル・サウンド・トラック (Polydor / ユニバーサル)
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映画のサントラ盤には、お洒落でカッコイイ音楽がいっぱい♪
これって、前世紀末頃からの社会常識になりましたが、やっぱりそれは映画そのものを観ているか否かで、ずいぶんと印象も変わろうかと思います。
さて、このアルバムは藤田敏八監督による昭和48年の東宝映画「赤い鳥逃げた?」のサントラ盤ですが、各々の楽曲は、もちろん映画でそのまま使われたわけではありません。真の映画サントラ=フィルムトラックとは別物というか、映画では、ここに収録された楽曲の断片や編集バージョンをカットやシーンの長さに応じて使い分けているのが、本当のところです。
つまり、このアルバムとフイルムトラックは似て非なる別物です。
しかし素直に曲と演奏を楽しむ事においては、全く影響ありません。特に映画本編をご覧になっていない皆様には、むしろ、こっちの方がオススメです。
肝心の内容は、作編曲が近年、局地的に人気があるピコ=樋口康雄♪ インスト主体ではありますが、特に主題歌は安田南によって歌われています。ちなみに彼女は、ディランⅡによって歌われた昭和の名曲「プカプカ」のモデルになったジャズシンガーだと言われておりますが……。
また気になる映画本編は、主演が原田芳雄、桃井かおり、大門正明で、物語は藤田監督が十八番の無気力青春破滅物語です。あてどない恐喝を生活の糧にしている原田芳雄と大門正明の2人にフーテンの桃井かおりが加わって、あれやこれや……。もちろんセックス、ドラッグ、ロックンロールしたくても出来ないという、焦りに満ちた末期的青春物語です。
そして実は桃井かおりは大金持ちのお嬢様というオチがあるのですが、もちろん物語は藤田監督がお得意の無気力節ですから、個人的は??? まあ、正直言って、自分の感性にあっていないトホホです。
しかし使われた音楽は、昭和歌謡フォークのレアグループ的展開とでも申しましょうか、けっしてソフトロックなんて言えない、イナタイ演奏が脱力するほど快感です――
A-1 メイン・テーマ
一瞬、ギル・エバンス!? のイントロからファンキーロックなインストが始まります。もちろんクインシー・ジョーンズ風の展開で短いながらも密度の濃いカッコ良さ♪
A-2 マコのテーマ
一転して、フルートを使った歌謡フォークの室内楽的な展開が心地良いです♪ あぁ、この優しいメロディの妙は樋口康雄の真骨頂でしょう。せつないストリングの響きにシンミリと泣けたりします。生ギターとヴァイブラフォンのコンビネーションも良いですねぇ。エレキベースのイナタイ蠢きも、好きです。と愛の告白♪
A-3 旅の最中に
これまたイナタイ蠢きのエレキベース! ソプラノサックスがリードする素敵なメロディと生ギター、そしてヴァイブラフォンの絡みが爽やかです。
あぁ、本当に「昭和48年」です。って、これはリアルタイムを体験した者にしか通用しないかもしれませんが、そんな思いに浸っていると、またまた爽快なエレピのソロに昇天させられます。
あぁ、歌謡フュージョン♪
A-4 猟銃
ちょっと思いつめたようなメロディが印象的ですし、もっさりとしたエレキベースが、これまた素敵な演奏です。スローな曲なのでストリングも重めになっているあたりがミソでしょうか、厳かにシミジミとしてまいります。
A-5 ビルディング
オトボケ&ファンキーな曲と演奏が見事にキマッています。
イナタイ4ビートのベース&ドラムスにリードされたエレピのアドリブにも和みますし、カントリーロックのエレキギターがオクターブ奏法をやってしまうあたりも、憎めません♪
ブラスもトボケて痛快ですよ!
A-6 猫
厳かなゴスペル歌謡フォークとでも申しましょうか、バロック風味もあったりして正体不明な魅力がある曲です。ユーミンの歌が出てきそうな雰囲気も♪
まあ、実際には様々な要素がじっくりと煮込まれたアレンジが凄いのでしょうねぇ……。何時の間にか虜になってしまう演奏だと思います。
A-7 赤い鳥逃げた?(唄:安田南)
これが主題歌で、安田南の歌唱は溌剌として悪い予感に満たされているという素晴らしさ! 歌詞とぴったりなんですねぇ。
ちなみに曲調は、開放感のある歌謡フォークなんですが、やっぱり♪
B-1 山の手
これまたオトボケ調のインストで、カントリーロックに和製ゴスペルを加えたような雰囲気ですが、エレピが隠し味でしょうか。ギターがパキパキのソロを聞かせた次の瞬間、歌謡曲どっぷりのトランペット出てきて、泣かせますよ。
B-2 愛情砂漠 (唄:原田芳雄)
原田芳雄の歌は、やや暑苦しいので好きではありません。
この曲はCMなんかにも使われていましたから、きっと皆様は知っていらっしゃるでしょうが、個人的には……。
B-3 宏のテーマ
なかなかカッコ良いファンキーなインストです♪
ワウワウなギターは当時の流行ですし、決してグイノリでは無い、もっさりとグルーヴするエレキベースは、このサントラ盤を通して印象的なキモだと思います。
う~ん、エレピや電気サックスも上手い使われ方ですねぇ。
B-4 オレンヂ・ブリッヂ
歌謡フォークをクラシックで煮しめたようなイントロから、ヴァイブラフォンが哀愁のテーマをリードしてフルートにバトンタッチ♪ 緊張感のあるストリングスやエレピ、生ギターのリズムも素敵です。
もちろん、もっさり型エレキベースの蠢きも良いです♪
しかし、この演奏はあくまでもメロディラインに絡むストリングスの素晴らしさに尽きるでしょう。何回聴いてもシビレます!
B-5 封筒を開けたら
なかなかジャズロックっぽいアレンジがハードボイルドです。エレピが最高ですねぇ~♪ チープなソプラノサックスと無理矢理グルーヴしてくるエレキベースがイナタイ! あぁ、たまりませんねぇ♪
ペラペラのエレキギターも逆に痛快♪
なんと和製フュージョンの夜明けが、ここにあったというわけです。
B-6 赤い鳥逃げた?(イントスルメンタル)
なかなかバロックにアレンジされた主題歌のインストバージョンで、チェンバロが印象的♪ そしてクラリネットやフルート、ストリングスも使われていますが、リズム隊がグルーヴしまくるエレキベースにリードされているんですから、グッときます。場違いな生ギターのリズムも結果オーライでしょう。
ということで、このサントラ盤は個人的に愛聴している1枚なんですが、なんと現在、1300円でCDが買えます! あぁ、速攻で買って車の中で鳴らしまくりです♪ そして映画の中にトリップする成りきりモード♪
う~ん、なんか急激に映画本篇が観たくなっています。DVD、出ていないのか!?