■The Sound Of Silence / Paul Simon (Columbia / CBSソニー)
バンドなんてものをやっていると楽器への拘りもそれなりに強くなるのはひとつの宿命なんですが、特に憧れのミュージシャンが使っているとなればっ!
サイケおやじにしても、エレキギターならばレスポールが大好きで、なにしろブルースブレイカーズ時代のエリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ゼップのジミー・ペイジ、フリートウッド・マックのピーター・グリーン、デュアン・オールマン、ミック・テイラー、マイク・ブルームフィールド等々、尊敬するブルースロック系のギタリストが常用していますからねぇ~~♪
少年時代から洋楽雑誌やレコードジャケットに載っている彼等の写真を眺めては、そこから弾き出されている「音」にシビレていた前科があるわけです。
で、実は最近入れてもらったおやじバンドの先輩ギタリスト氏はアコースティックギターに強い思い入れがありまして、特にポール・サイモンを徹底的にコピーした成果はとてもとても上手いわけですよ。
もう、サイケおやじなどはその場に居たたまれないほどの腕前で、しかも愛用しているのがマーチンの「D-35S」という大名器なんですねぇ~~♪
それは掲載したシングル盤のジャケ写でポール・サイモンが抱えているギターと同じです。
う~ん、上手い人には素晴らしい楽器も相応ですし、先日の土曜にバンド練習に参加させていただいた時も件のA面曲「The Sound Of Silence」をやりながら、あらためて上手いなぁ~~、と驚嘆させられたわけですが、当然ながらバンド形態である以上、それはサイモンとガーファンクル=S&Gのヒットバージョンであるエレクトリック仕様ということで、なんとかサイケおやじも出番を作ってもらった次第も、全く額に汗が滲むばかりです。
ちなみに掲載盤収録の両面2曲は共にポール・サイモンの初めてのライブアルバム「イン・コンサート」からカットされたもので、その「The Sound Of Silence」にしても耳に馴染んだS&Gのバージョンとは異なり、ゴスペル風味のアレンジで披露されているんですが、あえて今回はポール・サイモンのギターについて書きたかったので、これを使わせていただきました。
あっ、買ったのは当然ながら「S&G結成10周年記念」というキャッチコピーに惹かれたわけです。
閑話休題。
ということで、好きなミュージシャンのライブに接する時の楽しみは、ステージに居並ぶ面々の楽器を見るという事も含まれます。
おそらくは今もそうなんでしょうが、サイケおやじが若かった頃は外タレにしても、ようやく大物がリアルタイムで来日してくれるようになったもんですから、双眼鏡持参でそれを観察するという事も度々でした。
また、既に拙ブログでは何度も書いていますが、サイケおやじはレスポールといっても、我が国で作られていトーカイのコピーモデルを愛用しておりまして、それでもバブル期には本物を入手出来たという幸運もありながら、むしろトーカイが自分好みに鳴ってくれるという現実をあらためてご報告させていただきます。
■冬の散歩道 / Simon & Garfunkel (Columbia / 日本コロムビア)
この季節になると急激に聴きたくなるのが、本日掲載のシングル盤A面曲「冬の散歩道 / A Hazy Shade Of Winter」です。
もちろん寒~い冬の訪れがあり、しかも現在のサイケおやじは雪国での気儘な単身赴任状態ですから、真相は厳しい仕事があったとしても、本音は微熱気分でウキウキする日が多いわけでして、まあ、こんな事は家族には絶対言えないにしても、ついついこの歌の強烈なギターリフのイントロが心を占めているんですねぇ~~♪
演じているサイモンとガーファンクルは説明不要、とにかく不滅のデュオとして未来永劫聴き継がれる存在と確信していますが、それは詩情豊かな歌詞とメロディばかりではなく、例えば「冬の散歩道」に代表されるような、実に辛辣で自己啓発的な歌詞を強烈なロックフィーリングで演じていた事にも無関係ではありません。
思わず心に突き刺さってくるような鋭さがあってこそ、もうひとつの染み入るような優しい世界も提供されるのでしょう。
さて、そこでサイケおやじは昨夜から、前述した「強烈なギターリフ」を特訓していますが、理由は明日に告白するとして、やればやるほど根性が試されるような凄い構成は快感ですよっ!
ちなみに件の名曲「冬の散歩道 / A Hazy Shade Of Winter」は本国アメリカでは1966年晩秋、日本では翌年初めから春にかけて大ヒットした事により、タイトルどおりに冬の歌のイメージが強いのも当然でしょう。
また演奏パートには有名セッションミュージシャンが参加も確実ですから、全体の力強さやグッと惹きこまれるキメ、中でもイントロフレーズの素晴らしさは、これまた未来永劫でしょうねぇ~♪
1980年代になって、バングルスというお姉ちゃんバンドがカパーヒットさせてしまったのも、何か必然性さえ感じられます。
ということで、さあ、これから練習再開!
繰り返しますが、その真意は明日書かせていただきます。
■My Little Town c/w Rag Doll / You're Kind
/ Simon & Garfunkel (Columbia / CBSソニー)
1970年代の洋楽ファンにとって、ぽっかりと虚ろな気分にさせられたのがビートルズ、そしてサイモンとガーファンクルの活動停止だった事は、独りサイケおやじだけの体験では無いと思います。
その要因は様々に報じられ、各方面でも多様な分析が飛び交うほどの錯綜した物語があろうとは思いますが、ビートルズの場合が人間関係の縺れであった事に対し、サイモンとガーファンクルは???
そんな結論めいた推理が何時しか真相と受け取られたのですから、ファンにとっては溜息しか……。
しかしサイモンとガーファンクルが、1970年に出した傑作アルバム「明日に架ける橋」が今も超絶の存在である以上、ポール・サイモンは音楽的主導権を明示するためでしょうか、以降は逸早く自身名義のレコードを出しているのに対し、アート・ガーファンクルは俳優と歌手の並立活動へと進んだわけですから、なにか独り暮らしの気楽を求めていたような気もします。
つまりビートルズのその後と決定的に違うのは、既に現在までの実績が示されているとおり、サイモンとガーファンクルの活動停止と再結成は、最初っからの「お約束」だった言われても、それは嬉しい誤算だったのかもしれません。
そこで本日掲載のシングル盤は、1975年に発売されたサイモンとガーファンクルの久々の再会を記録したものとして、昔っからのファンには涙の1枚でありました。
とにかく、これが世に出るという報道は、まさにセンセーションだったんですよっ!
そして登場した「My Little Town」は、如何にもサイモンとガーファンクルらしい、穏やかな曲調と辛辣な歌詞の融合がニクイばかりではありますが、やはり5年のブランクがあった所為でしょうか、妙な疎外感が滲む仕上がりは??? という思いが隠せません。
もちろん曲を書いたのはポール・サイモンであり、レコーディングの過程におけるアート・ガーファンクルとの共同作業によって、そのメロディ&ハーモニーが熟成される方法論は、ここでも普遍だったと思います。
一説によると、ソロシンガーとして大傑作アルバム「天使の歌声」を作り出したアート・ガーファンクルに対し、その甘っちょろい歌の中身には苛立ちを隠せなかったポール・サイモンが、あえてダーティーな隠し味が効いた歌詞の「My Little Town」を盟友にやらせようと画策したのが、このシングル制作の発端だった!?
そんな報道もあったのですから、隙間風を感じてしまうのは、ファンなればこその宿業なのかもしれません。
ところが、流石にサイモンとガーファンクルの細工は流々!
なんとっ! 件のシングル盤のB面はアート・ガーファンクルとポール・サイモン各々のリーダーレコーディングが入った2曲仕様なんですから、侮れませんねぇ~♪
特にアート・ガーファンクルの「Rag Doll」は、曲良し、歌良し、雰囲気良しの決定版! ちなみに邦題も「悲しきラグ・ドール」とされながら、フォー・シーズンズの人気ヒットとは別曲なのが要注意! こちらは後にカーペンターズに「ふたりのラブ・ソング / All You Get From Love Is A Love Song」を提供するスティーヴ・イートンの会心作なんで、サイケおやじは一発で気に入ってしまったですよ♪♪~♪
ほとんど、こればっかり聴いていた時期があったほどです。
一方、ポール・サイモンの「You're Kind」は「優しいあなた」の邦題どおり、相手の優しさに感謝しつつも、辟易する男の心情をタイトなリズムセクションをバックに歌った、如何にも「らしい」名曲なんですが、こういうヒネクレタ内向きの表現こそが作者本人の持ち味と思うばかり……。
結局、サイモンとガーファンクルが多くのリスナーの心を捕らえたのは、そういうポール・サイモンのネクラな感性に基づく自作曲を明るく澄んだ声質のアート・ガーファンクルが歌い、ハーモニーを演じてくれる事によるもの!
それが絶対的に再認識させられたのが、このシングル盤の意義じゃ~ないでしょうか?
ということで、そういう共同謀議による「My Little Town」はリアルタイムで世に出たポール・サイモンとアート・ガーファンクルのソロアルバムにも収められ、B面曲も各々同様の扱いになった事は言うまでもありません。それがポール・サイモンの「時の流れに / Still Crazy After All There Years」であり、アート・ガーファンクルの「愛への旅立ち / Breakaway」でありましたが、もちろん前者は内省的、後者は穏やかなポップスフィーリングが滲み出る、共に傑作盤の称号に偽りは無いはずです。
問題は、そこで接着剤の役割を果たした「My Little Town」が、明らかに浮いている現実だと、サイケおやじは思います。
そして皆様がご存じのとおり、サイモンとガーファンクルは時折の再結成巡業、さらにはそこから作られたライプ盤を出しつつも、正式な意味合いでのスタジオレコーディングによる新作アルバムは、未だ姿を見せていません。
それは噂の域を出ないものの、ポール・サイモンは独善的であり、アート・ガーファンクルは頑固な完全主義者という個性が強くては、前述した「明日に架ける橋」のような音楽史に屹立するLPを越えられない以上、何をやっても、サイモン対ガーファンクル!?
ソロレコーディング作品の充実があればこそ、それは解消されない、解消する妥協もしてはならない境地なのでしょう。
う~ん、ますますB面の2曲が愛おしいですねぇ~~♪
■哀しみにさよなら / Paul Simon with Phoebe Snow (Columbia / CBSソニー)
人は誰でも夢を見るし、それはもちろん寝ている間だけでなく、終りなき日常の合間にも所謂夢想は尽きませんが、特に自分が様々な事に対して煮詰まりを感じていればこそ、せつなくなるほどです。
あぁ、こうであったらなぁ……、なればいいなぁ……。
しかし、それが本当にせつないのは、文字通り「夢」は「夢」でしかない事を自分自身が一番良く知っているからでしょう。
さて、そこでサイケおやじが思い出してしまうのが、本日ご紹介のシングル曲「哀しみにさよなら / Gone At Last」で、自作自演のポール・サイモンにフィービ・スノウが加わったデュエットというよりも、ふたりがそれぞれに主役として歌いきった潔さが最高の名唱♪♪~♪
なにしろ曲メロとその展開は完全なる黒人ゴスペルからの転用であり、イントロのピアノはそれが十八番のリチャード・ティー、そしてゴードン・エドワーズ(b) やグラディ・テイト(ds)、さらにはジェシー・ディクソン・シンガーズによるコーラスが立派な仕事をやっていますから、思わずグッと惹きつけられるのは必定でしょう。
そして気になる歌の内容は、自分の人生に行きづまりを感じている冴えない男が、凍てつく冬のドライヴインで、これまた運もツキにも見放された女と出会い、ふたりでもう一度だけ未来を見つめようとする、現実には有りそうで、決してない物語なんですが、もちろん男のパートはポール・サイモンが、女のパートはフィービ・スノウが演じる事により、尚更に刹那の状況が表現されていると思います。
しかも全篇が既に述べたとおり、実に力強いアップテンポのゴスペル調ですから、当然ながら最終章は男女混声の歌となり、バックコーラスや演奏共々の大団円に向かう高揚感は、まさに絶品のグルーヴが満喫出来ますよ。
ところが、これが実に巧いところだと思うんですが、現実ではそう簡単に前向きの解消にはならない大人の悩みを、ひとつの「夢の過程」に仕上げてしまうのは、流石ポール・サイモン!
またフィービ・スノウの実質的に主役となった歌唱力も素晴らしいかぎり!
ですからこれを最初に聞いた瞬間のサイケおやじは、迷わずレコード屋に直行し、シングル盤をゲットさせられましたですよ♪♪~♪
ちなみに同曲はポール・サイモンの代表的名盤アルバムとして1975年に発売された「時の流れに」にも収録されていますが、本来は先行シングルの役目を果たしていた事を付け加えておきます。
ということで、例え叶わぬ夢だとしても、自らの煮詰まりを何とかするためには、夢は持ち続ける必要があるんじゃないか?
そんな事をポール・サイモンは主張しているのかもしれません。
個人的にはそこまでの共感も賛同も無いんですが、しかし歌唱と演奏の素晴らしさには震えがくるほどですから、これで良いんでしょうねぇ~。
■夢の動物園 c/w 59番街橋の歌 / Simon & Garfunkel (Columbia / 日本コロムビア)
昨日書いたとおり、ニッポンの洋楽事情には、それなりの邦題がヒットの要因だと思いますが、ひとつ間違えると、思わず失笑!?!?
文字どおり、礼を失しているとは思いますが、そんな状況場面はこれまでに多々ありまして、例えば本日ご紹介のシングル盤はサイモンとガーファンクルという、我国でも絶対的な人気を獲得している説明不要の二人組が昭和42(1967)年初夏に出した1枚で、そのローテーションは本国アメリカに準拠しているんですが、それにしても原題「At The Zoo」を「夢の動物園」とする邦題は凄過ぎませんかねぇ~~!?
そりゃ~、確かに穏やかでアコースティックな歌い出しから一転、ウキウキするようなフォークロック王道の展開は、4ビートジャズの風味と効果音を上手く使ったサイケデリックなムードをも滲ませる楽しさですから、「夢の~」という形容を振り充てた意図は理解出来ます。
しかし動物園を閉塞した社会状況に譬え、中で暮らす種々雑多な生き物達を人間のように描写した鳥獣戯画を深読みすれば……。
動物園ではあらゆる事が行われている
と、誰かが私に言った
そのとおりだね、全く
という意味深な最初の部分の歌詞がある限り、表面上で強調されている楽しい雰囲気を素直に受け取るのは、どうなんでしょうか?
実は告白しておくと、サイケおやじが掲載のシングル盤を入手したのは、決してリアルタイムではなく、サイモンとガーファンクルを蒐集する一環として、昭和50(1975)年に中古屋から掘り出したものです。
つまりこれは完全なる後追い漁盤で、一応はサイモンとガーファンクルの音源を聴き通し、この「At The Zoo」も日本では発売元がCBSソニーに移って以降の「動物園にて」という、客観的な邦題で親しんでいたわけですから、その歌詞の中身の皮肉っぽさが素敵な曲メロの逆説的効果と相まっている事を鑑みれば、思わず……。
ただし、さらに裏読みすれば、そうした表面上のウキウキ感は、まさに「うつし世は夢」という江戸川乱歩の座右の銘に通じるものがあって、「夢の動物園」と邦題をつけた担当者の懐の深さを流石と思う気持も、同時にあるんですよ。
結局、今日はサイケおやじの短絡と悔悟を綴っている事になりましたが、その意味でB面収録の「59番街橋の歌 / The 59th Street Bridge Song (Feelin' Groovy)」は、まさに「そのまんま」の直訳邦題が良い感じですし、サブタイトルの「Feelin' Groovy」に偽り無し♪♪~♪
当然ながら、これは日本コロムビア盤もCBSソニー盤も共通したほどのジャストミートだったんですが、実はここにもうひとつの迷い道があって、それは近日中に書きますんで、今日はここまでと致します。
ということで、洋楽の邦題は罪作りでもあり、また親しみ易さの源泉でもあります。そして、それが無かったとしたら、せっかくの素敵な音楽が埋もれてしまう結果も数多残されたと思いますねぇ~、心底。
■Live Rhymin' / Paul Simon (Columbia)
オリジナルヒットとカバーバージョンの関係で言えば、もうひとつ欠かせないのが本人によるリメイクやセルフカバーという、ある意味での自虐的行為もあります。
特にグループ活動していた中のメンバーが独立したり、解散後の再結成等々の経緯から必要に迫られての行いは、ファンにとっても悲喜こもごも……。
なにしろ、オリジナルバージョンが高い評価を得ていた場合には、それが決して成功し難いものという経験則がリスナーにはありますし、なにか悪あがきのような結果が哀しくもありますからねぇ。
しかし一方、それがライプの現場においては、これほど嬉しいことは無いという現実は否定出来ず、「悲喜こもごも」と書いたのは、そこです。
例えば本日ご紹介のアルバムは、サイモンとガーファンクル=S&G解散後のポール・サイモンが、なんとか「ポール・サイモン」と「ひとりごと」のソロアルバム2枚を出し、ヒットシングルも放った勢いで敢行された1973年の巡業ステージを収めたライプ盤なんですが、素直にファンが嬉しかったのは、S&G時代の演目が入っている事じゃないでしょうか。
A-1 Me And Julio Down By The Schoolyard / 僕とフリオと校庭で
A-2 Homeward Bound / 早く家に帰りたい
A-3 American Tune / アメリカの歌
A-4 El Condor Pasa / コンドルは飛んでいく
A-5 Duncan
A-6 The Boxer
B-1 Mother And Child Reunion / 母と子の絆
B-2 The Sound Of Silence
B-3 Jesus Is The Answer
B-4 Bridge Over Troubled Water / 明日に架ける橋
B-5 Loves Me Like A Rock / ママはご機嫌
B-6 America
さて、ここまで述べて来たように、ポール・サイモンがS&G時代の演目を歌うという事は、当然ながら素晴らしい相方という以上に、天才ボーカリストとしての存在が眩しいほどのアート・ガーファンクルが不在という現実に直面……。
ですから、このアルバムが発売された1974年当時、一番の話題だったのは、ポール・サイモンが独りで「明日に架ける橋」を歌っているという点に尽きた感もありました。
なにしろ件の名曲は、アート・ガーファンクルの美声テノールで歌われてこその豪華絢爛と静謐な説得力が魅力でしたので、果たしてポール・サイモンは……。そんな不安が期待を上回っていたのは否めないところです。
しかし結論から言うと、なんとポール・サイモンはジェシー・ディクソン・シンガーズという本物のゴスペルグループを助っ人に、自らの作詞作曲が黒人ゴスペルの焼き直しであったという種明かしを演じることで、見事に乗り切ったのですから、流石!?
まあ、このあたりの賛否両論はリアルタイムから今日まで、途切れることなく続いているわけですが、サイケおやじは決して悪い感じはしていません。
それどころか、なんと「The Sound Of Silence」までもがゴスペル仕立に演じられ、ほとんど新しい味わいが表出されてしまったという、瓢箪からコマ!?
ちなみにアナログ盤B面は、そのジェシー・ディクソン・シンガーズとの共演がメインで、そこには多分、グループ専属らしい、如何にものオルガンやエレキベース&ドラムスが付いていますから、そのイナタイ味わいが妙にたまりませんよ♪♪~♪
中でもオリジナルのスタジオバージョンではスッキリしたレゲエビートだった「母と子の絆」が、ここではもっさりした黒人ビートとレゲエの緩やかなグルーヴがミョウチキリンに化学変化したような不思議さで、クセになりそうです。
当然ながら、黒人ゴスペルならではの、魂を揺さぶれるようなコーラス&ハーモニーも良い感じ♪♪~♪
ですから、既に述べたように「The Sound Of Silence」がゴスペルフィーリングで演じられたとて、それが自然に楽しめてしまうのですから、ポール・サイモンの企みはズバリ直球のストライクだったのです。
そこで気になる「Jesus Is The Answer」は、期待の新曲かと思ったら、実はジェシー・ディクソン・シンガーズの独演という肩すかしも、続く「明日に架ける橋」への露払いとしては最高!
いゃ~、本当に力が漲ってくる流れの受け、何気ないチューニングからスタートする「明日に架ける橋」のしぶとさは、これが俺流という作者の意気地でしょうか。
確かにアート・ガーファンクル不在の物足りなさは否定しようもありませんが、これはこれで納得させられてしまうところも確かにあると、サイケおやじは思います。
その意味で、アンコール的に演じられる黒人ドゥワップ風な「ママはご機嫌」の楽しさは絶品♪♪~♪ あぁ、心底ウキウキさせられますねぇ~♪
と、ここまで書いてきて、スッ飛ばしていたA面なんですが、こちらも「コンドルは飛んでいく」から続く3曲がウル・バンバという、南米ペルーのグループとの共演で、もちろんS&Gでのヒットバージョンの意識的な再現を狙ったことはミエミエでしょう。
しかし、ここで意外に良いのは、やはりS&Gの代表作だった「The Boxer」が、同じく南米フォルクローレのスタイルで演じられた事で、独得の哀愁が滲む笛の音色が、ポール・サイモンのアコースティックギターと見事に溶け合って、これがなかなか魅力的♪♪~♪
ご存じのとおり、ポール・サイモンは自身のルーツたるユダヤ系ジャズモードに加え、例えばイギリス民謡、さらには南米や南アフリカ等々のエスニック系メロディとリズムを巧みに取り入れた曲作りをしていますから、こうした目論見も成功して当たり前なんでしょうねぇ。
ですから完全なソロパフォーマンスの「僕とフリオと校庭で」「早く家に帰りたい」「アメリカの歌」という冒頭三連発では、名人技のアコースティックギターも冴えまくりで、おそらくはマーチンD35-Sの素晴らしい音色も堪能出来ますし、なによりもシンガーソングライターとしてのポール・サイモンが存在感を誇示しています。
そして圧巻なのがオーラスの「America」で、やはりギターの弾き語りながら、見事に終ってしまったS&Gの夢と幻想を現実に再現してくれるのは、名演としか言えません。
ということで、最初に聴いた時よりも、繰り返して鑑賞する毎に楽しみが増していくような、これぞっ、愛聴盤というLPです。
ちなみに告白すると、サイケおやじは「コンドルは飛んでいく」が、なにか山口百恵の「ひと夏の経験」を歌ってしまうので、好きではないのですが、ここでのライプバージョンは素直に聴いています。
それと繰り返しではありますが、特筆したいのはポール・サイモンのギターの上手さと音色の綺麗さで、これは録音の関係もあるんでしょうが、そのあたりも楽しめるんじゃないでしょうか。
アコースティックギターが苦手なサイケおやじは、憧れてしまいますねぇ~~♪
最後になりましたが、ポール・サイモンが独りで「明日に架ける橋」を歌わなければならなくなった時、アレサ・フランクリンのバージョンを聴いていたか?
そんな下衆の勘繰りを抱き続けているのでした。
■サウンド・オブ・サイレンス / Simon & Garfunkel (Columbia / 日本コロムピア)
都市生活を代表する乗り物のひとつが地下鉄でしょう。
喧騒と渋滞の街の、さらにその下を轟音けたたましく駆け抜ける列車は、暗いトンネルばかりの中から密度の高い人生のような駅構内へ滑り込む繰り返しで、その1日を終えていくのですから、なかなか意味深な日常だと思います。
さて、そんな街のひとつであるニューヨークへサイケおやじが初めて行ったのは1981年でしたが、この時は乗り継ぎの飛行機の関係等々で強烈な時差ボケに襲われ、一緒に行動していた仕事での同僚もそういう状態でしたから、現地時間の極めて早朝から、2人で泊っていたホテル周辺を徘徊する仕儀となりました。
もちろんニューヨークは治安が悪く、そんな深夜の延長である時刻に無防備な日本人がふらふら歩き回るのは愚の骨頂だったかもしれませんが、こっちは2人だし、あまり考えもしませんでしたねぇ。
そして近くの地下鉄駅構内に入った時、そこで声を掛けて来たのが、観光客相手にポラロイドの記念写真を売りつけるカメラマンでした。
まあ、普通なら無視してしまうところだったんですが、何んとそいつは小道具まで用意していたという商売熱心さに感動!?
それが本日掲載したジャケ写と同じ構図と道具立てによる記念写真だったんです。
とはいえ、その時はギターを持たせられ、ポーズを指示されていたにもかかわらず、それが何の意味なのか理解出来なかったのが本当のところでした。
しかし出来上がったポラロイド写真を渡されて、思わず唸りましたですねぇ~♪
これは、俺たち、S&Gじゃないかっ!!!
ということで、その時の思い出はポラロイド写真よりも強く鮮やかな記念になりました。
さて、肝心の掲載したシングル盤は、サイモンとガーファンクルによる説明不要の大名曲ではありますが、ジャケットには「トラディショナル・フォーク・ソングを唄う、ニュー・グループ!」なぁ~んて記載があるんですから、いやはや微笑ましいかぎりです。
このシングル盤はサイモンとガーファンクル名義では、、おそらく我国で最初に発売されたものかもしれません。
ご存じのようにサイモンとガーファンクルは、この「The Sounds Of Silence」によって欧米で大ブレイクを果たしたわけですが、以前にも書いたとおり、日本では例の映画「卒業」が流行って以降の人気沸騰だったように思います。
最後になりましたが、そのポラロイドを撮影して売りつけたカメラマンは、当然ながら賭け出しだったようですが、そのアイディアの卓抜さがあるかぎり、きっと成功したに違いないと思っています。
そして素敵な思い出を、ありがとう♪♪~♪
■Bye Bye Love c/w You Don't Know where Your Interest Lies
/ Simon & Garfunkel (Columbia / CBSソニー)
すっかりLP優先主義がまかり通っていた1970年代の洋楽シーンにおいて、しかしそれでもラジオのチャート番組は絶好調でしたから、シングル盤そのものは未だ必要とされていました。
それは例えサイモンとガーファンクルのような、LPが売れまくっていた超人気グループであったとしても、そこからカットされるシングル盤は、また同様の需要があったのです。
何しろ1970年に発表され、忽ち世界中で大ベストセラーとなった傑作アルバム「明日に架ける橋」からは、収録全11曲中、先行シングルも含めて、リアルタイムの我国だけでも、なんと9曲がカットされ、それぞれが大ヒットしている異常事態!?!
おそらく世界中を調べれば、全曲がシングルかコンパクト盤で出されたんじゃないでしょうか。それほど当時のサイモンとガーファンクルは充実した楽曲を生み出していたのです。
さて、その中にあって、本日ご紹介のシングル盤はアメリカではカットされなかった「Bye Bye Love」を、我国独自のカップリングで昭和45(1970)年末に発売したという優れもので、既に前述のLP「明日に架ける橋」を持っていたサイケおやじにしても、買わざるをえないブツでした。
何故ならば、B面収録の「You Don't Know where Your Interest Lies」が、当時はここでしか聴けなくなっていましたからねぇ~♪
というのも、実は本国アメリカでは1967年初夏にシングル「Fakin' It」のB面曲として発売され、我国でも同じカップリングで出されていたのですが、その後の日本では発売権が日本コロムビアからCBSソニーに移った所為で、大袈裟に言えば幻化していたのです。
それがようやく手に入るとあっては、アルバムで聴き過ぎるほど親しんでいた「Bye Bye Love」のB面であろうとも、苦しい経済状態を棚上げにさせる快挙だったのです。
ちなみに日本コロムビア時代の邦題は「涙の瞳」でしたが、このCBSソニー盤では「君の可愛い嘘」に変更されたのもコレクター魂を刺激されるところで、後になって日本コロムビア盤を中古で入手したサイケおやじは、ひとりでニヤニヤしたという嫌な性格です。
肝心の楽曲そのものは、ドラムスとベースを従えながらも、アコースティックギターが全体をリードするシリアスなフォークロックで、如何にもサイモンとガーファンクルらしい厳しさが心地良いんですが、中間部で短く提示されるソフトでお洒落なパートが、これまた「らしく」て素晴らしいですよ。またアコースティックのリズムギターがスカビートっぽいのも要注意でしょう。
現在では、やはり名盤認定のアルバム「ブックエンド」のボーナストラックとしてCD化されていますから。鑑賞は容易です。そしてアナログ7インチでは当然ながらモノラルミックスになっていますので、そのステレオミックスとの聴き比べもマニア心を刺激されますよ♪♪~♪
一方、A面の「Bye Bye Love」がサイケおやじにとっては侮れません。
ご存じのように、この曲は兄弟デュオのエヴァリー・ブラザースが1957年に大ヒットさせた所謂オールデイズのカパー物なんですが、サイモンとガーファンクルがエヴァリーズの影響を受けているのは明々白々ですからねぇ~♪
ここに収録されたのは、恐らくは1969年の巡業で録音されたと思しきライプバージョンで、それゆえに観客の手拍子も楽しく盛り上がった雰囲気の中で、自らネタばらしを演じるという潔さは憎めません。
というか、観客が百も承知の大歓声は、そのまんまレコードを聴いているファンにも共通するものでしょう。
実はサイケおやじが、エヴァリー・ブラザースに真から接したのは、このサイモンとガーファンクルによるところが非常に大きく、そういえばビートルズやピーター&ゴードンも件の兄弟デュオから少なからず影響を受けている云々という洋楽雑誌の記事を実感することになります。
つまり、この「Bye Bye Love」のオリジナルバージョンを聴きたくて、エヴァリー・ブラザースの世界に踏み込んだわけですから、その素晴らしき扉を開けてくれたサイモンとガーファンクルには、いつまでも感謝の気持が絶えないのです。
それと、これが一番重要な事なんですが、前述のLP「明日に架ける橋」に収められているバージョンは、最後の拍手の終りの部分に次曲「Song For The Asking」のイントロが重なっていますから、カセットテープによる自作のベスト選集を作る時は困難を極めるところが、このシングル盤では綺麗に解決出来るんですよねぇ~♪
ということで、実に有用なレコードでした。
思えば当時の我国では、サイモンとガーファンクルがビートルズ以上の人気といって過言ではありませんでした。そこへ加えて歌謡フォークの大ブームが重なり、音楽好きの若者はアコースティックギターを弾きながら彼等の曲を歌っていた中で、この「Bye Bye Love」は覚え易くて楽しいところから、特に人気があったように思います。
というか、実はサイモンとガーファンクルのオリジナル曲は、耳に残る親しみ易さやクールな心地良さとは逆に、演じることは難しいんですよねぇ。特にメロディ展開とリズム感を大切にした語感の歌い回しは、伴奏のギターの巧みさと相まって、なかなかの修練が必要!
ですから、一説によればライプの現場では最後に歌っていたという「Bye Bye Love」のような、皆さんご一緒に歌いましょう~♪ 的な演目は必須だったんでしょうねぇ。また、それが無くては人気が出るはずもないのが、芸能界では当然の掟だったと思います。
今となっては、あんなに凄い「明日に架ける橋」という名盤アルバムに入れられているのも不思議なほどではありますが、あえてオリジナルでは無いオールデイズをラス前に置いた流れの深淵な企みは、このシングル盤だけ聴いていれば、知る由もありません。
そして逆に言えば、それだけサイモンとガーファンクルの「Bye Bye Love」が、如何にシングル向きだったかの証明かもしれないと思うのでした。
■早くうちへ帰りたいc/wみどりの木の葉 (Columbia / 日本コロムビア)
私、故あって旅中です。
なぁんていう口上仁義が全く通用しないのは、現代の出張地獄でしょうねぇ……。
実際、サイケおやじは、もう何日も家に帰っていません。
しかしそんな出張中にも、訪れた土地の中古盤屋にはフラフラと入って行けますから、これはこれでストレス発散には良い環境なのかもしれません。
で、そんな気分でゲットしてきたのが、本日ご紹介のシングル盤♪♪~♪
ご存じ、サイモン&ガーファンクルが1966年初頭に発表した「Homeword Bound」がA面収録で、これは同コンビがリアルタイムで大ヒットさせていた「Sounds Of Silence」に続く追い撃ちの名曲♪♪~♪
またB面は、その「Sounds Of Silence」をメインに据えた同名アルバムからのシングルカット「Leaves That Are Green」なんですが、件のLP発売が1966年2月だったということは、この「Homeword Bound」も同じスタジオセッションで録られていたんじゃないでしょうか。
ちなみに「Homeword Bound」がLP収録されたのは、1966年秋に出る大名盤「Parsley, Sage, Rosemary And Thyme」ですから、相当に録音時期の幅が広いにも関わらず、アルバム全体の中では違和感がそれほど無いという、つまりは既にサイモン&ガーファンクルの基本姿勢は、このシングル盤あたりで確立していたように思います。
ただし我国でサイモン&ガーファンクルがブレイクしたのは、以前にも書いたとおり、映画「卒業」が公開された昭和43(1968)年以降だと思いますから、リアルタイムでこのシングル曲がラジオから流れ、またレコード屋の店頭に並んでいた現物を確認したとしても、若き日のサイケおやじは特別に意識することがありませんでした。
ところが前述の映画「卒業」を鑑賞し、「Sounds Of Silence」のシングル盤を買って以降は忽ち、サイモン&ガーファンクルの虜です。
しかしそんな中、我国でのサイモン&ガーファンクルのレコード発売契約が日本コロムビアからCBSソニーへと変更されましたから、いよいよ本気で聴こうと構えていたサイケおやじにとっては、混乱の肩すかし……。
この「早くうちへ帰りたい」のシングル盤が市場から姿を消していた時期があったのです。
そうして時が流れました。
CBSソニーへ発売権が移って以降の昭和49(1969)年5月になって、ようやく「Homeword Bound」はシングル盤が再発されたものの、それは何故かステレオミックス……。つまりアルバム収録バージョンと同じになっていたんですねぇ。
しかも邦題までもが「早く家へ帰りたい」と、微妙に変更され……。
ちなみにB面の「」も、CBSソニー以降は「木の葉は緑」になるんですよねぇ。
まあ、このあたりは特にモノラルとステレオで異なる部分は極微細なんですが、それでもオリジナルでは無い!? という、しょ~もない蟠りがサイケおやじには既に当時からあって、前述の再発シングルは買いませんでした。もちろん経済的な理由もあったことは、言うまでもありません。
ですから、ここで本日掲載のシングル盤に出会えたが最後通告、ナット・ア・セカンド・タイム! 二度目は無いよ! それが中古屋の掟でしょう。
ということで、ゲット出来ましたという報告だけで、本日はご了承下さいませ。
当然ながら旅先ですのが、聴いていません。