OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

素直に突っ走ったジョンの笑顔

2009-10-31 12:08:08 | Beatles

真夜中を突っ走れ / John Lennon (Apple / 東芝)

毎年、この時期になると、ジョン・レノンを聴くのが辛くなってきます。また反面、ちょうど今頃は聴き溜めという自然な欲求の所為でしょうか、分かってはいるんですが、ジョンのレコードを取り出してしまいます……。

で、本日は、これを聴きました。

1974年に発売された名作アルバム「心の壁、愛の橋」からの先行シングル曲で、これはもう、ジョン・レノン流儀の自虐的なR&R!

ご存じのようにジョンは最愛のヨーコ共に、1971年秋頃からニューヨークに移り住み、反政府・反体制的な活動を助長するような歌と行動が目立っていましたが、それは当局を刺激するに十分過ぎるほどでした。

そして自宅での盗聴や個人行動の尾行、さらに各種スキャンダルの暴露……等々が官憲主導によって確かにあったことは、今日の歴史で明らかになっているのですが、そんなこんなの抑圧からジョンとヨーコの間に何があったのかは、知る由もありません。

とにかく1973年の晩秋、ジョンはヨーコと「別居」する形でロスへと赴き、気儘で放蕩に満ちた生活を送っていきます。そして制作されていのが、自伝的な独白の傑作盤「ロックンロール」であり、前述した「心の壁、愛の橋」でした。

しかし、そこではプロデュースを担当したフィル・スペクターとの確執やゴタゴタがあって、何れも部分的にしか上手くいったところはなかったようです。このあたりは後に発売された海賊盤もどきのアルバム「ルーツ」や没後に発表された「アンソロジー」でも明らかになっていますが、現実的には既に仕上げられていたアルバム「ヌートピア宣言」が先に発売された記憶も生々しいと思います。

で、そうしたドロドロした内幕が小出しに報道される中、突如として世界中に届けられたのが、本日ご紹介の「真夜中を突っ走れ / Whatever Gets You Turn The Night」というわけです。

これは本当に、痛快でしたねぇ~~♪

私は確か、最初にFENのラジオ放送で聴いたんですが、グワ~ンと迫って来る音圧の勢い、ド派手なサックスのプロー、さらにファンキーすら感じさせるリズムに乗っかったジョンが十八番の早口系な歌い回し! その瞬間、私は真夜中どころかハイウェイの果てなでブッ飛ばされたような!?!♪♪~♪!

あぁ、やっぱりジョンは天性のロックンローラーだと思いましたですねっ!

ちなみに熱い演奏に参加のメンバーはニッキー・ホプキンス(p)、クラウス・ブラマン(b)、ジム・ケルトナー(ds)、ニルソン(vo) 等々、お馴染みの面々ですが、ジョン自身は軽く歌っている気儘な感じが結果オーライだったように感じます。もちろんチャート1位は当然が必然!

そういえば当時、エルトン・ジョンが自分のステージライプで「ジョン・レノンをゲスト扱い」で、この曲を歌ったという報道にも驚いた記憶があります。

まあ、それほどインパンクの強かったヒット曲なんですが、肝心のアルバム「心の壁、愛の橋」はヨーコへの甘えや許しを請う歌詞ばかりが目立つ、ダメ男の心情吐露が情けないかぎり……。

しかし、それもジョン・レノンという偉人の素直な姿として、私は大好きです。というか、そんな赤裸々な告白をやってしまうなんて、自分には決して出来ませんからねぇ……。そういう意味でも尊敬してしまうのですよ。

ということで、ジョンの素直な笑顔が眩しいジャケ写のシングル盤です。

眺めて聴いているうちに、あの悲劇が本当に信じられないですね……。

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シュガー・タウンのナンシー

2009-10-30 11:58:23 | Pops

シュガー・タウンは恋の町 / Nancy Sinatra (Reprise / 日本ビクター)

往年のポップスファンならば、今でも強い印象となっている美人歌手のひとりが、ナンシー・シナトラでしょう。ご存じ、フランク・シナトラの愛娘です。

そして当然ながら、幼少の頃から父親やその仲間達と一緒の芸能活動をやっており、また如何にもハリウッド的な贅沢とお嬢様の生活は彼女の場合、それしかないという境遇だったと思います。

ちなみに父親の十八番にして、ジョン・コルトレーンの心のパラードも残されいる愛らしい名曲「Nancy」は、彼女のイメージで書かれたのもムペなるかなですよ♪♪~♪

それが正式にデビューした1960年に最初の結婚、そして5年後の離婚を経て、所謂「大人の女」になってからが、ナンシー・シナトラの本当の絶頂期でしょう。もちろん、それ以前の「レモンのキッス / Like I Do」や「いちごの片思い / Tonitht You Belong To Me」等々のアイドルポップス路線も魅力的なのは言わずもがなでしょうが、私にとってはプレ熟女というか、バツイチの素敵なお姉さま時代の彼女が、本当に好きなのです。

さて、本日ご紹介の「シュガー・タウンは恋の町 / Sugar Town」は本国アメリカで1966年の秋から翌年春にかけて、それこそ大ヒットしまくりの名曲♪♪~♪ 我国でも昭和42(1967)年に洋楽チャートを賑わせ、またテレビの音楽番組では歌謡ポップス系の女性歌手によって、しっかりとカパーされていました。

印象的なリフレイン「シュシュッシュ~、シュシュッシュ~♪」というパートを一緒に歌った皆様も大勢いらっしゃると推察しておりますが、ナンシー・シナトラの微妙にハスキーでソフトな声質と天性のポップスフィーリングが完全融合した歌い回しは、実に最高ですよねぇ~~♪

正直、当時は彼女のルックスばかりに魅了されていたのが少年時代のサイケおやじではありますが、後に離婚とか様々な家族の問題を抱えていたナンシー・シナトラという女性の心情が、華やかな生活や芸能活動の裏に大きな影響を及ぼしていたことを知るにつけ、ますます、この「シュガー・タウンは恋の町」が好きになりました。

ちなみにルックスという点では、美少女時代から所謂ピンナップガール的な人気もあったそうですし、そうしたジュニアアイドルからお嬢様スタアになってからも、けっこう男心を魅了する衣装の着こなし、さらに離婚してからのミニスカ姿やSM風な演出も入った振付、セミヌード♪♪~♪ その行き着いた先が熟女のヘアヌードだったいう世間が仰天の話題の数々も、流石は……、という言葉だけでは納得出来ないものがあろうかと思います。

結局、ナンシー・シナトラという美人歌手は、1960年代という素晴らしくも混濁した中に咲いた花一輪だったのかもしれません。

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ドロドロにエグイ! モカンボのストーンズ

2009-10-29 10:35:34 | Rolling Stones

Stereo Mocambo Reels 1977 / The Rolling Stones (Idol Mind = bootleg)

1977年の所謂「トロント事件」は、ストーンズファンにとって、決して忘れられない出来事だと思います。

それは後に2枚組アナログLPのライプ盤として発売されるアルバム「ラブ・ユー・ライブ」制作の追加セッションとして、カナダはトロントのライプハウス「モカンポ」で少数の観客を前に演奏する企画が発端でした。

そして現地に集合したストーンズの面々の中で、キース・リチャーズとアニタ・パレンバーグが当局に麻薬所持と密売の容疑で逮捕されたのが、2月27日です。

しかし、肝心のライプセッションが3月4&5日に予定されていたことから、ここはなんとか保釈金を払って切り抜けたキースにしても、後の出廷から裁判の結果如何によっては、ストーンズの存続そのものが危うい立場になっていることに変わりはありません。カナダの法律では麻薬の密売は終身刑なのですから、ミック・ジャガーは相当に落ち込んでいたとか……。

それでも、そんなこんなが良い方向に作用してしまうのが、ストーンズというバンドの恐ろしさです。

前述したライプアルバム「ラブ・ユー・ライブ」のアナログ盤C面、通称「モカンボサイド」に収録された演奏を聴けば、当時のテンションの異様な高さは証明済み!

それゆえに、この2日間を含めた当時のストーンズの状況、その全貌を知りたくなるのがファンの願いというものですから、これまでも様々な関連音源のプートが出回り、その度の一喜一憂は刹那の学習効果に近いものがありました。そして今回、またまた驚愕の発掘となったのが、本日ご紹介のブツです。

なんとCDとDVDからなる2枚組仕様で、CDがモカンボでのライプ演奏をステレオライン録音をメインに纏めた音源集! そしてDVDは残念ながら動画ではありませんが、リアルタイムでの関係者インタビューと関連スチール写真、BGMが入った、如何にもアイドル・マインド・プロらしい濃厚なセットになっています。

☆Stereo Mocambo Reels
 01 Hand Of Fate ★
 02 Route 66 ▲
 03 Mannish Boy ▼
 04 Crackin' Up ▲
 05 Dance Little Sister ◆
 06 Around And Around ★
 07 Worried About You ★

 08 Let's Spend The Night Together (edited) ▲
 09 Band Introduction ▼
 10 Little Red Rooster ▲
 11 Crazy Mama
(mono / incompletet)
 12 Route 66 ★
 13 Crackin' Up
(incompletet)
 14 Let's Spend The Night Together (un-edited)
 15 Little Red Rooster ◆
 16 Route 66 ◆
 17 Crackin' Up
(combination mix)
 18 Little Red Rooster (combination mix)

  ★Reel A - rough mix
  ▲Reel B - rough mix
  ▼Reel C - final mix
  ◆Reel D - off acetate

 今回の収録は上記の18テイクになっていますが、現実の2日間では初日の3月4日に15曲、翌日には19曲が演奏されたという記録がありますから、これは一部にすぎません。
 しかしそれがまず、どういう経緯か、アセテート盤にコピーされた◆の3曲だけがヨーロッパの某ファンクラブ会員向けの7インチEPとして配布され、それがまたプートにコピーされて出回っていました。
 そして残りの演奏も追々、様々なプートで発掘され続けたのですが、それはライン録音がメインでありながら、モノラルとステレオの両ミックスが混在し、また音質もバラバラ……。
 それが今回、新発見のリールから唯一「Crazy Mama」を除いてリアルステレオの良好ミックスで楽しめるようになったのは、最高に嬉しいプレゼント♪♪~♪ もちろんキースが右、ロニーが左という「お約束」のギター定位になっていますし、当然ながら公式レコーディングを前提にしていましたから、ベースやドラムスの迫力もグッと生々しいかぎりです。
 もちろん中には公式テイクに極力近いミックスもありますし、また同時にダビングや編集が施されていない演奏が大部分を占めているとあって、これがなかなかにワイルドなR&Rのストーンズ的真髄が、たっぷり♪♪~♪ 特にラフミックスの「Around And Around」はキースとロニーのギターアンサンブルがブライアン・ジョーンズ時代の突進力を見事に再現する感涙名演ですし、ミックの「やさぐれた」歌いっぷりも高得点! 完全に「ラブ・ユー・ライブ」の公式テイクを上まわっていますよ。
 さらに「Hand Of Fate」や「Worried About You」といった、公式盤未収録のライプテイクにしても、意想外に鋭く細いキースのギターが良い感じ♪♪~♪ 逆にロニーのギターは粘っこく、持ち味を存分に活かした、これも隠れ名演でしょうねぇ~♪ そしてミックのボーカルが実にソウルフルなんですよっ! あぁ、たまりません。
 気になる複数テイクが収められている曲の中では、まず「夜をぶっとばせ / Let's Spend The Night Together」がボロボロになって完奏出来ず、欠落パートを編集したものの、結局はオクラ入りした真相が明かされています。それが編集されたトラック「08」と未編集の「14」という、このあたりにもブートならではの楽しみがあるわけですが、その意味では公式テイクが残されている「Crackin' Up」が、ここで3バージョン収録されているのも嬉しいかぎりでしょう。ただしトラック「13」はイントロだけなのが残念……。
 また「Mannish Boy」や「Little Red Rooster」はボーカルや諸々の手直しが入らない、まさに「生」のまんまのストーンズ流ブルースロックが、これまた最高♪♪~♪
 ちなみにトラック「17」と「18」は、このブツを制作した業者による恣意的なミックス&編集によって、公式テイクでの仕上げのポイントが種明かしされる、相当にマニアックな楽しみがありますが、個人的には、なんだかなぁ……。
 それと今回も残念だったのが、各トラックの録音年月日が、またしても特定されなかったことです。ただし当時の資料を基に演目の流れが極力、リアルタイムの曲順にしてあるようですから、そうした努力は表彰物でしょう。
 何よりも音質の大幅な改善とリアルステレオの嬉しい発掘は、絶対です!

☆Rare Interviews & Live M.C. On Still Pictures (日本語字幕付き)
 01 IMP Slate
 02 El Modambo Bartender
 03 A Rock Critic
 04 Comment On “Love You Live”
 05 Interview With Ron Wood
 06 Interview With Mick Jagger
 07 Interview With Keith Richard
 08 El Modambo Live M.C. & Band Introduction

 09 Mannish Boy (edited)
 10 Crackin' Up (edited)
 こちらはDVDのパートですが、既に述べたように動画ではなく、全てがスチール画像と音声だけの構成ながら、日本語字幕が入っていますから、何の問題もなく当時のストーンズのあれこれが楽しめます。
 それはネタばれがありますから、詳らかには致しませんが、公式盤等々ではカットされていた悪ノリのメンバー紹介は、まさにミック・ジャガーならではの話術が最高の極みつき! 各メンバーへのインタビューも貴重ですが、いろんな本音がチラチラ吐露されるあたりも、今となっては感慨深いものがあります。

ということで、実に濃厚な楽しみに溢れたブツです。

リアルタイムの状況としては、キースとアニタの逮捕と裁判、ストーンズの乱痴気ライプ、さらに当時のカナダ首相夫人とロニーやミックとの火遊び的なスキャンダル、打ち上げパーティに参加した各方面の著名人達が巻き込まれていく様々な醜聞……等々が、世界各国でトップニュースとして報道されていました。

そして一番の問題はキースの行く末!?!

今となっては温情判決でストーンズも存続出来たのですから、懐かしくもホロ苦い思い出かもしれませんが、当時は完全に袋小路だったのです。

そんなこんなも含めて聴く今回のブツは、やっぱり味わい深いものがありますし、何よりも世界最高のロックバンドはストーンズ! それを痛感させてくれますよ♪♪~♪ ここでのライプで楽しめる毒々しいまでの雰囲気とノリは、本当に唯一無二だと思います。

ちなみに当時の幸運な観客は、カナダのラジオ局が主催した「私はどうしてストーンズとパーティへ行きたいのか?」という懸賞論文の当選通過者が、300人ぽっきり! もしタイムマシンがあったとしても、当日のモカンボクラブへは入場が不可能ですから、こういう発掘プートが、限りなく愛おしいわけです。

願わくば、この歴史的な名演ライプ2日間のコンプリート音源が出ますようにと、ますます祈念するばかりです。

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ブル~スへの若き情熱

2009-10-28 10:02:43 | Rock

John Mayall's Blues Breakers With Eric Clapton (Decca / キング)

クリームによってエリック・クラプトンに夢中になった私が、ど~うしても聴きたくて買ったのが、この日本盤LPです。

内容はエリック・クラプトンがクリーム結成参加直前まで在籍していた白人ブルースバンド、所謂ブルースロックの元祖のひとつとも言うべきブルースブレイカーズが1966年に発表した歴史的なアルバムですが、そう評価されるのも、全てはエリック・クラプトンの存在に尽きるでしょう。

失礼ながら、リーダーのジョン・メイオールを聴きたくて、このアルバムを入手する人がいるのか? そんな疑問を呈すること自体が虚しいと思うほど、ここでのエリック・クラプトンは素晴らしいかぎりです。

 A-1 All Your Love
 A-2 Hideaway
 A-3 Little Girl
 A-4 Another Man
 A-5 Double Crossing Time
 A-6 What'd I Say
 B-1 Key To Love / 愛の鍵
 B-2 Parchman Farm
 B-3 Have You Heard
 B-4 Rambling On My Mide / さすらいの心
 B-5 Steppin' Out
 B-6 It Ain't Right

ブルースブレイカーズは既に述べたように、ジョン・メイオールが1963年頃に結成したグループで、当初はブルースばかりでなく、ジャズやR&B、さらに黒人伝承歌までも追及していたマニアックなバンドだったようですが、所謂ブリティッシュビートのブームの中でロック色を強め、ついにヤードバーズを辞めたエリック・クラプトンを招いて制作されたのが、このアルバムというわけです。

ちなみに田舎で無垢な情熱を燃やしていたジョン・メイオールがロンドンに進出するきっかけとなったのは、アレクシス・コーナーという英国の白人ブルースのパイオニアともいうべき人物の手助けによるところが大きく、この人はブライアン・ジョーンズやミック・ジャガーを育てた実績もありますから、ロック史では大きな足跡を残した偉人だと思います。

そしてヤードバーズ時代のエリック・クラプトンに本物のブルース、つまり本場アメリカのレコードを聞かせまくっていたのが、ジョン・メイオールだったと言われています。

こうして新編成となったブルースブレイカーズの当時のメンバーはジョン・メイオール(vo,key,g,hca)、エリック・クラプトン(g,vo)、ジョン・マクヴィー(b)、ヒュー・フリント(ds) の4人をレギュラーにしつつ、レコーディングやライプでは助っ人のホーン&打楽器奏者も加えた、実にロックがど真ん中のブルース、つまりブルースロックの神髄が楽しめるのです。

ただし、そこは白人バンドの宿命というか、今となっては、一途な情熱が時として気恥ずかしくなる瞬間も確かにあります。

例えばA面ド頭の「All Your Love」は有名なオーティス・ラッシュの代表曲ですが、そのコピーの忠実度、さらにエリック・クラプトンの「なりきった」姿勢が潔くも、こそばゆい感じです。

そのあたりはジョン・メイオールが黒人音楽に敬意をこめて作ったオリジナル曲の「Little Girl」や「Double Crossing Time」、そして「Have You Heard」に聴かれる、まさにエリック・クラプトンの代表的名演! そのギタープレイに集約されているのですが、ここまでやってくれれば、もう何も言えないほどに、その青春物語的な情熱が眩いほど♪♪~♪

さらにエリック・クラプトンのギタースタイルに決定的な影響を与えたと断言されるフレディ・キングの十八番「Hideaway」、また同系の「Steppin' Out」というインスト演奏が、これまた圧巻! おそらくはギプソン・レスボールとマーシャルのアンプによる組み合わせから弾き出される強靭なフレーズの洪水は、ブルースロックのお手本でもあり、また後のハードロックの源流的存在感を示していると思います。

そして今ではエリック・クラプトンの伝説の始まりのひとつとなった、初めてのリードボーカル曲が「さすらいの心 / Rambling On My Mide」です。ご存じのとおり、後々まで自身のライプステージでは定番演目となる黒人ブルースの古典ですが、一節によると、エリック・クラプトンは歌入れの時には非常に緊張していたそうで、その所為でしょうか、ビートに合わせて足で拍子をとっているような音も聞こえるあたり、初々しさと真摯な姿勢が感度良好♪♪~♪ 何時聴いても、なんか不思議な感動があるんですねぇ~。

当時のエリック・クラプトン、弱冠二十歳!

そんな天才は、この頃から「神様」扱いになっていたのもムベなるかな、あえてシンプルなバンド編成とアレンジで、その神業ギターを存分に歌わせ、録音したジョン・メイオールの度量の大きいプロデュースは流石としか、今は言えません。

なにしろリアルタイムでこれを聴いていた昭和45(1970)年の若かりしサイケおやじには、ジョン・メイオールのボーカルは迫力が無いなぁ~とか、ドラムスとベースが淡白だなぁ……、なんて不遜な事しか思えなかったのです。しかし、それゆえにエリック・クラプトンのギターばかりに耳が集中出来たという結果オーライがあったわけですねぇ。

きっと、そうだと思います。

しかし後々になって聴き直していくうちに、ジョン・メイオールの弾くオルガンから発散される不思議なクール感覚とか、もしかしたら、自ら恥ずかしがっているような一途なブルースへの憧れに、胸が熱くなる瞬間もあるほどです。

この時、ジョン・メイオールは32歳!

なんとなく、共感出来ますねぇ~♪

コメント (4)
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ベストセラー「狂気」の哀しき宿命

2009-10-27 10:47:57 | Rock

The Dark Side Of The Moon / Pink Floyd (Harvest)


ロックの記録的な大ヒットアルバム「The Dark Side Of The Moon」と言うよりも、日本人には「狂気」と呼んで相応しいピンク・フロイドの大名盤です。

1973年春に発売されて以降、なんと741週もチャートインしていたという伝説は今も不滅でしょうし、もちろん評論家の先生方も発売直後から絶賛した大名盤に他なりませんが、正直に告白すれば、サイケおやじはピンク・フロイドが苦手です。

と言うのも、もうひとつの名盤とされる牛ジャケットのアルバム「原子心母 / Atom Heart Mother」が、私には今もって何が良いのか理解出来ず、またその前後の作品群も???

このあたりはピンク・フロイドが同じプログレ系のバンドであるキング・クリムゾンのようなテンションの高いアドリブと様式美の鬩ぎ合いによるスリル、あるいはイエスのような高度な演奏テクニックに基づいた完成度の希求という音楽性とは異なる、ある種のユルキャラっぽい和みや倦怠がサイケデリックロックのひとつの形態だとしても、私の感性には合っていなかったということでしょうか……。

ちょっと上手く表現出来ませんが、平たく言えば相性が悪かったんでしょうねぇ。

しかし、このアルバムだけは素直に聴けました♪♪~♪

もちろん自分で買ったものじゃなくて、友人が「最高~、最高~♪」というので、貸してもらって聴いたんですが、流石に最初の1回で、テープコピーさせてもう決意をしたほどです。

 A-1 Speak To Me - Breathe
 A-2 On The Run / 走り廻って
 A-3 Time
 A-4 The Great Gig In The Sky / 虚空のスキャット
 B-1 Money
 B-2 Us And Them
 B-3 Any Colour You Like / 望みの色を
 B-4 Brain Damage / 人は心に
 B-5 Eclipso / 狂気日食

上記演目はアナログLP時代特有の片面ぶっ通しの構成になっている、如何にもプログレですが、それにしてもA面に針を落として、しばらくは無音が続き、心臓の鼓動と思われる響きから不気味な含み笑いと意味深な叫び声!?! まず、これが強い印象のツカミになっています。

そして気だるいメロディで歌われる「Breathe」は、モヤモヤした雰囲気の構築が、まさにピンク・フロイド流儀の「お約束」なんでしょうか、このムードがアルバム全体の中でモチーフ的に幾度か再登場するあたりが、実に上手いと思います。

と、後追いの「こじつけ」をする間もなく入ってくるのが、電子音と単調なリズムに導かれた「駆け足」で、これがスピーカーの左右を行き交い、次の瞬間、いろんな時計が鳴り響くという、実にハッさせられる展開は見事! これが「On The Run」から「Time」へと続くメドレーというわけです。そして、こうした説得力を増幅させるのが、最高に気持良いデイヴ・ギルモアのギターなんですねぇ~♪ 曲メロとしては「Breathe」のフェイクなんですが、数人の女性コーラスと力んだリードボーカルの対比から続く強靭なギターソロ!

あぁ、これにシビれなかったら、ロックを理解する能力が無いと言われてもっ!?!

で、さらに素晴らしいのが、続く「The Great Gig In The Sky」です。

前曲のムードをそのまんま引き継いで展開させる「泣き」のメロデイと女性コーラスのソウルフルで神秘的なスキャット、厳かにして神聖なピアノに導かれ、思わせぶりなメロディ展開の中で各種キーボードやギター、打楽器が決定的なムードを盛り上げていきます。

いゃ~、もう、これで完全に「分かった」ような気分にさせられるんですよねぇ♪♪~♪ まさにピンク・フロイドが一世一代の魔法が素晴らし過ぎます。

またB面は初っ端にピンク・フロイド流儀のハードロック「Money」配置され、グッと気分が高揚した後からは、A面の流れを踏襲したフィール・ソー・グッドなムードが繰り返され、終盤の盛り上がりが感動的な大団円が提示されるのです。

あぁ、わかっちゃいるけど、やめられない!?! ですよ♪♪~♪

失礼ながらピンク・フロイドは演奏力に長けたグループだとは思いませんが、当時のレギュラーだったデイヴ・ギルモア(g,vo)、リック・ライト(key,per)、ロジャー・ウォーターズ(b,vo,g)、ニック・メイソン(ds,per,key) の4人が各々の役割分担をきっちりとこなして作り上げていく楽曲は、その波長と方向性さえ合っていれば、これだけの分かり易い大作を作り上げて当然の実力です。

そして、今でも問題になるのが、この「狂気」というアルバム邦題でしょう。

あくまでも私見ですが、原題にある「Moon = 月」は西洋において「不吉なもの」の象徴であり、また同時に「神聖」ものという感覚ですから、そこに神秘性や残酷な美しさを重ね合わせても違和感がないのでしょう。そうしたイマジネーションがあればこそ、例えば「虚空のスキャット」での恐ろしいばかりの美しさとか、B面終盤の3曲メドレーにおける、あえて甘美な幻想を自ら打ち砕いていくかのような目論見が成功したんじゃないでしょうか。

聴いていくうちに、アルバム全体で暗示されるのが「狂気」という解釈だとしたら、それはそれで正解なのかもしれません。

ということで、本日は完全に独善的な内容に終始するばかりで、申し訳ございません。

最後になりましたが、掲載した私有盤は私が1979年に初めてイギリスへ行った時、現地で入手してき来た中の1枚ですが、既に述べたように売れまくっていたアルバムだけに、中古屋では過剰在庫の捨値でした。

このあたりは1980年代の我国中古盤市場と共通する問題点というか、実際、ピンクレディやカーペンターズ、アバやドナ・サマーあたりLPが3枚千円とかいう箱の中に放置されていた状況と似ています。

しかし、これほどの所謂名盤が中古とはいえ、そんな値段で売られていたのは嬉しくもあり、哀しくもありました。

これもベストセラー盤の宿命なのでしょうか……。

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ダサジャケでも売れたT.レックス

2009-10-26 10:23:58 | Rock

Get It On / T.Rex (Fly / 東芝)

1970年代前半、グラムロックというブームがあったのも今は懐かしい話になりましたが、その花形グループだったのが、マーク・ボラン率いるT.レックスでした。時代はちょうどビートルズが分裂していた後ということもあり、その頃のT.レックスの人気は我国でも爆発的といって過言では無かったと思います。

で、本日ご紹介のシングル曲「Get It On」は、その大ブレイクのきっかけになったシンプルで楽しく、それでいてミステリアスな物悲しさも秘めた永遠のR&Rヒット♪♪~♪ その基本は本当に簡単なエレキギターのリフとブギのリズムなんですが、意外なほどにヘヴィなビートとグッと濃厚なストリングが彩るアレンジを得て、マーク・ボランの倦怠して不思議な熱気を孕んだボーカル、さらに自棄的なコーラスが最高の化学融合を聞かせてくれますから、これがヒットしなかったら大衆音楽の神様が激怒するという傑作になっています。

実際、聴くたびに新しい発見があるというか、何気なく登場するサックスのプロー、ダサダサ寸前の手拍子、中性的なコーラスとわざとらしい掛け声シャウト! もはや細部にわたって絶品のプロデュースの結晶が、この曲でした。

そしてご存じのように、主役のマーク・ボランは外人にしては華奢な身体つきに濃厚なメイク、さらに気だるそうに弾くギターからは煌めくビートにハッとするほど新鮮でシンプルなキメのリフを放出するという、まさに新感覚のロックヒーロー像を確立させたのです。

当然ながら我国の音楽マスコミは、こぞってT.レックスをイチオシでしたし、ラジオの洋楽番組ではチャート上位の常連となり、レコードはバカ売れでした。

それが昭和47(1972)年頃の出来事で、こうして時代の寵児となったマーク・ボランは、実は下積みも長く、今日ではそうした音源も復刻されていますし、全盛期の未発表トラックも様々に発表されていますが、それというのもマーク・ボラン本人が1977年9月、交通事故で呆気なく天国へ召されてしまった悲劇と無関係ではありません。

言われているように、グラムロックとは退廃の美学であり、享楽と虚無の狭間で輝く刹那の音楽だとすれば、マーク・ボランの短い人生も神様の思し召しと納得する他はないのでしょうか……。

ちなみにこの「Get It On」を出していた頃のT.レックスはマーク・ボラン(vo,g)、ミッキー・フィン(per)、スティーヴ・カーリー(b)、ビル・リジェンド(ds) という4人組ながら、レコードでは鬼才エンジニア兼プロデューサーのトニー・ヴィスコンティと共同作業のように熱気溢れる活動を繰り広げていましたから、続いて連発されるヒット曲の数々や制作発売されたアルバム群にはムンムンする全盛期の勢いが充満しています。

もちろんグラムロックを象徴するギンギラギンのファッションとメイク、スタイリッシュなライプステージの佇まいは、同時期にブレイクしたディヴィッド・ボウイやアリス・クーパーにも感じられますが、何かしらマーク・ボランには、さらに強い破滅の美学が感じられました。

しかし、まさかそれが早世だったとは、知る由もなく……。

最後になりましたが、この日本盤シングルのジャケ写は最低ですよね。今日までのグラムロックのイメージが完全に否定され、マーク・ボランの表情も見えなければ、本来はスティールギターを弾いている場面なんでしょうが、場末の工場で手作業をしているような構図には??? 当然ながら、これ以前に我国で発売されていたT.レックスのレコードと比べても、失礼ながら正視できないほどの酷さです。

サイケおやじにしても、レコード屋でこれを手に取った時には、雑誌のグラビア等で見知っていたT.レックスの姿とはあまりにも違いすぎていて、愕然としたほどです。察すれば女性ファンの心情は如何ばかりか……。

ただし、それでも「Get It On」のシングルは良く売れたそうですよ。つまりそれだけ楽曲の魅力が絶大だったというわけです。

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高揚するピンボールの魔術師

2009-10-25 09:32:10 | Singer Song Writer

ピンボールの魔術師 / Elton John (Polydor / 東芝)

シンガーソングライターの人気者だったエルトン・ジョンが、今に至るド派手なイメージを確立した頃の代表的な演技&歌と演奏が、本日ご紹介のシングル曲でしょう。

ここで「演技」と書いたのは、この楽曲がご存じ、ザ・フーのロックオペラとして永遠に語りつがれる「トミー」がケン・ラッセル監督により映画化され、1975年に公開された劇中にはエルトン・ジョンも出演し、この「ピンボールの魔術師 / Pinball Wizard」を享楽的に歌いまくった姿が強い印象を残したからに他なりません。

なにしろ件の映画にはザ・フーの面々以下、エリック・クラプトン、ティナ・ターナー、アン・マーグレットやジャック・ニコルソン等々、凄すぎる出演者が揃っていたのですから、その中でも突出していたエルトン・ジョンは、やはり全盛期の証明というものでしょう。

しかも当該サントラ音源のプロデュースは当然ながらザ・フーのピート・タウンゼントだったのですが、この「ピンボールの魔術師」に限ってはエルトン・ジョンが御用達のガス・ダッジョンが担当しているのですから、そのハマり方に半端はありません。

本来、この楽曲は「トミー」中でも、特にハイライトのひとつだったとはいえ、ザ・フーのオリジナルをある意味で凌駕するエンタメ系のアレンジと歌、さらに強められた高揚感は、もう最高♪♪~♪ 聴いていて、思わず拳を突き上げたくなるロック天国って、これでしょうねぇ~♪

ただし作品そのものの解釈としては、ピンボールの魔術師は主人公のトミーのことなので、この映画でのキャストは間違いなんですが、実際に映画の中に登場する人物としては、エルトン・ジョンの快演が決定的なイメージになっていましたから、ここでのアレンジも歌も、そして演奏も結果オーライ♪♪~♪

荘厳なコーラスパートから始まり、一転して華麗なピアノが鳴り響くイントロからそのパのムードが高揚し、はしゃぎ過ぎた中にもヘヴィな情感を込めたエルトン・ジョンの歌いっぷりが痛快です。アップテンポでドライヴしまった演奏も素晴らしいですねぇ~♪ 思わずキメを一緒に歌ってしまっても、文句は出ないでしょうね。

そしてサントラ音源アルバムはポリドールから発売され、当然ながらエルトン・ジョンのこのバージョンも当初はそこへ入っていたのですが、後に自身の「グレーテスト・ヒッツ第二集」にもレーベルを超えて収録され、我国では東芝レコードからシングル盤として発売されたというわけです。

そしてジャケットからも一目瞭然、激ヤバ寸前のトンボメガネにギラギラの衣装! 当時はグラムロックなんていう化粧バンド系の流行もあったんですが、やはり私の世代のイメージとしては、例えば「僕の歌は君の歌」に代表される、ネクラで優しいシンガーソングーライターというイメージがありましたからねぇ……。

まあ、こういう「転向」は1973年の「Crocodile Rock」の頃から表出していたとはいえ、まさかここまでやってしまうとは、呆気にとられるばかりでした。

しかし同時に、こうした姿も、また魅力的なのがエルトン・ジョンの本質でしょう。ご存じのように長い下積み時代には正統派R&Rやヒットポップスのカパーを演じていた時期もあり、またスタジオセッションや職業作家としての仕事で培われた実力があれば、何をやっても結果オーライ!

実際、1972年に発表した、これは私の愛聴盤でもある「ホンキー・シャトー」から、続く「ピアニストを撃つな!!」「黄昏のレンガ路」「カリブ」「キャプテン・ファンタステック」と連発された傑作アルバム群は高い評価と売れ行きを示し、シングルヒットも過剰な勢いで放たれていた時期の頂点が、この「ピンボールの魔術師」だったように思います。

人生は波乱万丈、山あり谷ありという常の中で、流石のエルトン・ジョンも1976年頃からは勢いを失ってしまったのは歴史上の事実として否定出来ないものがあります。折しも当時はパンクロックなんてものが鼻白んだブームになったことと重なるのも意味深……。また本来は自作自演の歌手だったエルトン・ジョンが、あえてカバーに挑んだ名演名唱というのも、同様です。

つまりロックが最初のピークに達した時の証かもしれませんね、この「ピンボールの魔術師」は!?

そう思えば、意想外の高揚感も納得して、尚更に堂々と拳を突き上げるサイケおやじであります。

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ポールの天才メロディに酔う

2009-10-24 10:54:41 | Beatles

Red Rose Speedway / Paul McCartney & Wings (Apple)

先日掲載したウイングスのライプ盤以来、なんとなくポールの諸作を聴きかえす日々になっていますが、本日ご紹介のアルバムは現在のサイケおやじにとって、最高に愛おしい1枚です。

発売されたのは1973年の春でしたが、ご存じのようにポールは当時、ウイングスを結成して新たな意気込みの時期だったとはいえ、諸々の世評は決して芳しいものではありませんでした。

まずウイングスとしての最初のアルバム「ワイルドライフ」が、その雑な作りが狙ったものだったとしても、結果的にはメッタメタの評価しか得られず、実際、ファンにしても言い訳無用の駄盤と認めざるをえないものがありました。

まあ、このあたりは今日、それなりの再評価もされ、ジワジワと効いてくる流石のメロディも楽しめるのですが、さらに???だったのが、如何にもジョンとヨーコに対抗したかのようなポール&リンダによるファミリーバンド形態が納得出来なかった側面も、悪い方向に働いていました。

しかしポール・マッカートニー(vo,b,g,key,ds)、リンダ・マッカートニー(vo,key)、デニー・レイン(g,vo,b,key)、ヘンリー・マッカロウ(g)、デニー・シーウェル(ds) という陣容でバンドを固めたウイングスは、イギリス各地でケリラ的なコンサート活動を展開しているニュースが我国にも伝えられ、また「Hi Hi Hi」と「My Love」の連続シングルヒットを出してしまえば、ニューアルバムへの期待も高まるというもんです。

こうして、ついに発売されたのが豪華なブックレットも付いたLP「レッド・ローズ・スピードウェイ」だったわけですが……。

 A-1 Big Barn Bed
 A-2 My Love
 A-3 Get On The Right Thing
 A-4 One More Kiss
 A-5 Little Lamb Dragonfly
 B-1 Singl Pigeon
 B-2 When The Night
 B-3 Loup
 B-4 Medley
        a) Hold Me Tight
        b) Lazy Dynamite
        c) Hands Of Love
        d) Power Cut

結論から言うと、リアルタイムでの評価は低く、実際、相当に期待して聴いた若き日のサイケおやじには完全に肩透かしでした。告白すれば、レギュラーバンドによる作品ということで、もっとビートルズっぽい色合いを期待していたのです。それが……。

つまり最初の印象では、「Singl Pigeon」に往年のポール・マッカトニー節が感じられるぐらいで、先行シングルとして大ヒットした「My Love」にしても、虫歯になりそうなほど甘く、このアルバムの中では浮きまくっていると感じたのです。

こうして時が流れました。

そして今に至って、このアルバムを聴いてみると、そこには豊潤なメロディとロックの利点ともいうべき力強いビートが確信犯的に融合され、さらにアルバム片面&両面の曲の流れと構成が絶品! まさに、そう感じる他はないのです。

まずA面ド頭「Big Barn Bed」からして、リアルタイムでは捨て曲としか思えなかったところが、今はファンキーロックな名演として、実に楽しく聴けるのですから、時の流れとは恐ろしいものです。特にビシバシにキメを入れ、終盤へ向けて爆発していくデニー・シーウェルのドラミング、それとは対照的に終始、朴訥としているポールのエレキペース、また猥雑なボーカルとコーラスが不思議な楽しさを醸し出しているのです。加えてデニー・レインの生ギターも良い感じ♪♪~♪

そして曲の終了から間髪を入れずに繋がる「My Love」の豊潤なメロディ♪♪~♪ シングルで聴いていた時の甘々のムードが、ここではこれ以上無いほど絶妙な味わいで楽しめるんですねぇ~♪

う~ん、ポール・マッカートニー、恐るべし!

というか、こんな事は、当たりまえだのクラッカーなんでしょうねぇ~♪

パワーポップな「Get On The Right Thing」からハートウォームな「One More Kiss」、そして「Little Lamb Dragonfly」と続く隠れ名曲3連発の流れも流石と唸る他はありません。地味ながら、何れもポールでなければ書けない素晴らしいメロディばかりだと思いますし、当時は「でしゃばり」だと思われたリンダのコーラスが、今では必須じゃないでしょうか。それがあればこそ、ポールのシャウトや個性的な節回しが活きていると感じるのですよ、今は。

ですから、B面初っ端のホノボノとして気分はロンリーな「Singl Pigeon」は言わずもがな、ノスタルジックな哀愁路線の「When The Night」が、尚更に、せつないですねぇ~♪

さらに繋ぎのインスト的な「Loup」を経てスタートする、ポールが十八番のメドレー演奏では、これでもかというべき素敵なメロディがテンコ盛り! ただし正直な感想としては、そのひとつひとつを完成出来ずに、こうした逃げを打ったのかという不遜な事も思うわけですが、後に知ったところによると、ポールは当初、このアルバムセッションの為に膨大な楽曲を作り、2枚組の新作を想定していたそうですから、実に勿体ない話です。

そして実際、ここで披露される4つのパートは、何れも珠玉の掌編! 個人的には特に「Hands Of Love」が大好きです♪♪~♪

ということで、繰り返しますが、最高に愛おしいアルバムです。

しかし何故にリアルタイムで、これがあまり評価されず、サイケおやじにしても肩すかしだったかと推察すれば、それは当時の流行だったハードロックなギターソロもなければ、反体制的な歌詞も歌われず、妙に楽観的なものになっていたからでしょう。

つまり地味なんですが、それは同時代で人気を得ていたシンガーソングライター達のヒット盤に比べても、所謂ネクラな雰囲気が無く、かえって夢物語的な明るさが顕著でした。

ただし、このあたりはビートルズ時代のポールにも特徴的だったわけですから、結果的には良い方向へ進みだした証なんでしょうが、やはり時代にアクセクしていない唯我独尊が裏目に出たのかもしれません。

ジョンやジョージ、さらにリンゴが同時期に発表していた人気アルバムとは逆に、ポールは何を出しても批判される状況の中、ここまで充実しながら、地味~なイメージの作品を作ってしまった天才性は、やはり不滅だと認識しております。

今では決して聴くことが出来ない珠玉のメロデイに酔いましょうね。繰り返しになりますが、このアルバムは意図的に曲間が切り詰めてあるようですから、尚更に素晴らしい世界が楽しめるのでした。

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ベンチャーズで楽しむニッポンのポップス

2009-10-23 12:52:14 | Ventures

Pops In Japan No,1 & 2 + 7 / The Ventures (東芝=CD)


人気グループの過去音源や人気盤の復刻に伴い、特にCD時代になって嬉しいプレゼントだったのが、所謂ボーナストラックの存在だと思います。そして本日ご紹介のCDについても、発売されたのは既に10年ほど前ですが、サイケおやじは全く、それに魅了されてゲットしたもののひとつです。

内容はご存じ、エレキインストでは大御所のベンチャーズが、その全盛期にタイトルどおり、我国の歌謡ポップスを演じてくれたベストセラー盤の復刻なんですが、既に述べたようにオマケが侮れません。

☆Pops In Japan
 01 ブルー・シャトウ
(A-1)
 02 恋のハレルヤ (A-2)
 03 涙のギター (A-3)
 04 別れた人と (A-4)
 05 東京ナイト (A-5)
 06 夕陽が沈む (A-6)
 07 北国の青い空 (B-1)
 08 この手のひらに愛を (B-2)
 09 霧雨の歩道 (B-3)
 10 横浜の灯は遠く (B-4)
 11 ブラック・サンド・ビーチ (B-5)
 12 銀色の道 (B-6)
 以上は昭和42(1967)年6月に発売された、日本制作による名演集です。
 もちろん中身は当時のGSやフォークソングのヒット曲がメインであり、また同時に所謂Jポップのルーツにもあたる、なかなかお洒落なメロディばかりですが、加えてベンチャーズが特に書いてくれた所謂「ペンチャーズ歌謡」の自演もあるという大サービス♪♪~♪
 言うまでもなくエレキインストを生業にしているベンチャーズは、名曲ヒットのカパー演奏が得意技であり、ギターアンサンブルと最高のロックビートを上手く融合させたアレンジ、そして痛快なバンドスタイルは他を寄せつけない唯一無二の魅力として、忽ち世界中を熱狂をさせましたが、特に我国では社会現象となるほどの影響力がありました。
 ですから、それがGSブームに直結したことを思えば、ここでブルーコメッツの「ブルー・シャトウ」や黛ジュンの「恋のハレルヤ」をカパーしているのは至極当然です。そしてこのアルバムとほとんど同時に発売され、奥村チヨの歌で大ヒットした「北国の青い空」、そのシングル盤B面に収録され、後には山内賢&和泉雅子のデュエットでも歌われた「東京ナイト」の本家バージョンが演じられているのも、また必然でした。
 さらにお目当てなのが、寺内タケシが十八番の持ちネタ大ヒット「涙のギター」のベンチャーズバージョン! 加えて加山雄三がベンチャーズとの共演を想定して書いたという「ブラック・サンド・ビーチ」も、オリジナルよりはエグイ味わいの名演として楽しめますよ。サイド&リズムギターが、実に素晴らしいんですねぇ~♪
 現実的なベンチャーズの人気は、本国アメリカでは下降線をたどっていた時期ですが、ドン・ウィルソン(g)、ボブ・ボーグル(b,g)、ノーキー・エドワーズ(g,b)、そしてメル・テイラー(ds) という最強の4人組が演じてくれる「ニッポンのポップス」は、やはり一味違います! ここでは適宜、キーボード等々も加えたアレンジが妙に媚びることなく、これまでと同様のベンチャーズサウンドを構築しているのも嬉しいかぎり♪♪~♪
 ただし、リアルタイムの当時から言われていたことですが、最先端のロックファンからは軽視されてしかるべき企画という側面は確かにあると思います。しかし、実際に大ベストセラーとして今日まで我国で親しまれ、海外のファンからも熱い支持を得ていることは、決して忘れてはならないと思います。

☆Pops In Japan No.2
 13 いとしのマックス
(A-1)
 14 小指の思い出 (A-2)
 15 霧のかなたに (A-3)
 16 恋 (A-4)
 17 マリアの泉 (A-5)
 18 あの人 (A-6)
 19 真っ赤な太陽 (B-1)
 20 青空のある限り (B-2)
 21 輝く星 (B-3)
 22 風が泣いている (B-4)
 23 北国の二人 (B-5)
 24 ボンベイ・ダック (B-6)
 前作の大好評に応えて翌年に制作・発売された「第二集」は、またまた魅力あるヒット曲ばかり♪♪~♪ 些かの試行錯誤もあった前セッションのアレンジから、グッとキマった演奏の流れは冴えわたりです。
 特に荒木一郎が畢生のエレキ歌謡としてヒットさせた「いとしのマックス」は、個人的にベンチャーズの名演百選へ入れたいほど大好きですし、気になる「真っ赤な太陽」もストレートな味わいが高得点♪♪~♪
 また随所に演目の「元ネタばらし」ともいうべきアレンジやオカズを配置しているあたりには、思わずニヤリ♪♪~♪ あえて、いちいち書きませんが、これは本当に楽しいですよ。
 ちなみに「ボンベイ・ダック」はメイド・イン・ジャパンのインスト傑作曲で、書いたのはジャズ評論家の本多俊夫ですが、イギリスのシャドウズを筆頭に世界各国のインストグループから愛好されています。
 それとワイルドワンズのヒット曲から「青空のある限り」と、そのシングル盤のB面だった「あの人」が演じられているあたりは、やはり東芝なんでしょうかねぇ。いやはやなんともです。

☆ボーナストラック
 25 上を向いて歩こう
 26 二人の銀座
 27 君といつまでも
 28 夜空の星
 29 夕陽は赤く
 30 京都慕情
 31 君といつまでも (コーラス入りバージョン)
 以上はシングル盤オンリーの発売やオムニバス盤に収録されていたレアトラックですが、なんといってもサイケおやじのお目当ては、オーラスの「君といつまでも (コーラス入りバージョン)」で、ほとんど、これ1曲のために、このCDを買ったといって過言ではありません。基本的にはトラック「27」と極めて近いテイクなんですが、ミックスの雰囲気も含めて、なかなかハートウォームで、しかも「せつない」度数がアップしている隠れ名演だと思います。

ということで、私の拙い文章が虚しくなるほど素敵なメロディが溢れている名演ばかりです。ただしCD化のリマスターの所為でしょうか、音が良くなりすぎて、些かの隙間が感じられるミックスが、個人的には違和感……。と言うよりも、アナログ盤に親しみすぎた贅沢な弊害でしょうね。

そしてこの大ヒットアルバムを出し、また歌謡曲ヒットにも手を貸したベンチャーズは以降、同一路線を大切にした第二の全盛期を迎えています。ただしそこにはノーキー・エドワーズが脱退するという現実もありますから、最強メンバー末期の演奏が楽しめるという意味でも貴重だと思います。

昭和の我国喫茶店には、この2枚のアルバムをBGMにしているところが普通に存在していました。やはり日本の文化史においてもベンチャーズは偉大です。しかし何よりも、グッと惹きつけられる音楽を気負わずにやってくれたことに、嬉しくなるばかりです。

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ギターを持てば、渡り鳥さえ、カッコイイ

2009-10-22 10:06:15 | 歌謡曲

ギターを持った渡り鳥 / 小林旭 (コロムビアレコード)

ギタリストはカッコイイ!

これが常識になったのは、ロックンロールがロックへと進化した1960年代に入り、そのバンドでのギタリストの存在でしょう。時にはボーカリストよりもカッコイイですし、演奏しながら歌うというバディ・ホリーという大スタアも既に登場していたとはいえ、やはりギターを持っている姿、そのものがカッコイイという真実も確かにあると思います。

それを直截的に証明してくれたのが、我国では小林旭でしょう。

本日ご紹介のシングル曲は、自身が主演して大ヒットとなった昭和34(1959)年の日活作品「ギターを持った渡り鳥」の主題歌として、全く特別な名曲名唱ですが、何よりも「ギターを持った」という部分が映像的にもカッコイイ!

しかも「渡り鳥」と称される、つまりは流れ者という不良性が、イカシているんですねぇ。

物語は流れ者とはいえ、一応は流しの歌手で稼いでいる小林旭が、気の向くままにやって来た地方都市で、悪い奴らに苛められている人達を助けるというヤクザな勧善懲悪を描いていますが、その演出スタイルの基本は西部劇! 後に「無国籍」と称された日活お得意のアクション物ですから、必然的に主題歌も、そのムードが色濃いメロディになっています。

そして哀愁と一抹の虚しさを歌い込んだ歌詞が、これまた小林旭のハイトーンボイスで表現される時、そこにはスマートで気分はロンリーな、所謂ハードボイルドな風情が横溢するんですねぇ~~~♪

もちろん映画は小林旭の代表作となるほどのヒットを記録し、以降はシリーズ化される人気を呼びますが、それもこれも、この主題歌の存在効果が絶大だったゆえの事じゃないか? と私は思います。

ちなみに歌う映画スタアといえば、些か逆説的なところもありますが、アメリカのエルビス・プレスリーが代表的なところで、なんと1964年に公開された主演映画「青春カーニバル」では、ギターを担いでバイクで放浪するエルビス・プレスリーがドサ回りのサーカス一座を助けるという物語が展開され、まさに小林旭っぽいスタイルを披露しています。当然ながら劇中では歌いまくっているんですが、本家の小林旭は日本国内を馬に乗って放浪するんですよねぇ~♪

そんなこんなから、子供時代の私は、エルビス・プレスリーって小林旭のようなスタアかと、本気で思っていたほどです。

それと昭和50(1975)年に公開された東映作品「新仁義なき戦い・組長の首」では、劇中で「こばやしあきら」を名乗る三上寛が、この「ギターを持った渡り鳥」をシミジミと歌っていましたが、そこはボロい安宿に背景が夕陽という、なかなか味わい深い演出でした。

ということで、やはり映画は、こうでなくっちゃ~! という演出にはジャストミートの歌なんですよ、これは♪♪~♪

後年、「エレキは不良」なんて戯言が実しやかに喧伝された昭和の日本のある時期も懐かしいですが、その本元は案外、不良な小林旭がギターを持っていた、このあたりの作品から来ているのかもしれませんね。もちろん持っているのはアコギなんですが……。

ズパリ、カッコイイ奴は妬まれる!?!

この世には、女にモテたくて、ギターの練習をする奴が大勢出現し、そのうちの何人かは歴史を作ってきた事実は間違いないところですが、しかし誰もが小林旭のように自然体ではギターを持てないでしょうねぇ……。

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