■真夜中を突っ走れ / John Lennon (Apple / 東芝)
毎年、この時期になると、ジョン・レノンを聴くのが辛くなってきます。また反面、ちょうど今頃は聴き溜めという自然な欲求の所為でしょうか、分かってはいるんですが、ジョンのレコードを取り出してしまいます……。
で、本日は、これを聴きました。
1974年に発売された名作アルバム「心の壁、愛の橋」からの先行シングル曲で、これはもう、ジョン・レノン流儀の自虐的なR&R!
ご存じのようにジョンは最愛のヨーコ共に、1971年秋頃からニューヨークに移り住み、反政府・反体制的な活動を助長するような歌と行動が目立っていましたが、それは当局を刺激するに十分過ぎるほどでした。
そして自宅での盗聴や個人行動の尾行、さらに各種スキャンダルの暴露……等々が官憲主導によって確かにあったことは、今日の歴史で明らかになっているのですが、そんなこんなの抑圧からジョンとヨーコの間に何があったのかは、知る由もありません。
とにかく1973年の晩秋、ジョンはヨーコと「別居」する形でロスへと赴き、気儘で放蕩に満ちた生活を送っていきます。そして制作されていのが、自伝的な独白の傑作盤「ロックンロール」であり、前述した「心の壁、愛の橋」でした。
しかし、そこではプロデュースを担当したフィル・スペクターとの確執やゴタゴタがあって、何れも部分的にしか上手くいったところはなかったようです。このあたりは後に発売された海賊盤もどきのアルバム「ルーツ」や没後に発表された「アンソロジー」でも明らかになっていますが、現実的には既に仕上げられていたアルバム「ヌートピア宣言」が先に発売された記憶も生々しいと思います。
で、そうしたドロドロした内幕が小出しに報道される中、突如として世界中に届けられたのが、本日ご紹介の「真夜中を突っ走れ / Whatever Gets You Turn The Night」というわけです。
これは本当に、痛快でしたねぇ~~♪
私は確か、最初にFENのラジオ放送で聴いたんですが、グワ~ンと迫って来る音圧の勢い、ド派手なサックスのプロー、さらにファンキーすら感じさせるリズムに乗っかったジョンが十八番の早口系な歌い回し! その瞬間、私は真夜中どころかハイウェイの果てなでブッ飛ばされたような!?!♪♪~♪!
あぁ、やっぱりジョンは天性のロックンローラーだと思いましたですねっ!
ちなみに熱い演奏に参加のメンバーはニッキー・ホプキンス(p)、クラウス・ブラマン(b)、ジム・ケルトナー(ds)、ニルソン(vo) 等々、お馴染みの面々ですが、ジョン自身は軽く歌っている気儘な感じが結果オーライだったように感じます。もちろんチャート1位は当然が必然!
そういえば当時、エルトン・ジョンが自分のステージライプで「ジョン・レノンをゲスト扱い」で、この曲を歌ったという報道にも驚いた記憶があります。
まあ、それほどインパンクの強かったヒット曲なんですが、肝心のアルバム「心の壁、愛の橋」はヨーコへの甘えや許しを請う歌詞ばかりが目立つ、ダメ男の心情吐露が情けないかぎり……。
しかし、それもジョン・レノンという偉人の素直な姿として、私は大好きです。というか、そんな赤裸々な告白をやってしまうなんて、自分には決して出来ませんからねぇ……。そういう意味でも尊敬してしまうのですよ。
ということで、ジョンの素直な笑顔が眩しいジャケ写のシングル盤です。
眺めて聴いているうちに、あの悲劇が本当に信じられないですね……。