■Crazy! Baby / Jimmy Smith (Blue Note)
膨大なレコーディングを残したジミー・スミスの代表作を決めるのは至難というほど、その完成度の高い演奏は凄いというしかありませんが、中でも私が愛聴しているアルバムが本日の1枚です。
まず、美女とスポーツカーというジャケットが素敵ですねっ♪♪~♪ 如何にも当時という雰囲気が、実にたまりません。
録音は1960年1月4日、メンバーはジミー・スミス(org)、クウェンティン・ウォーレン(g)、ドナルド・ベイリー(ds) というお馴染みのレギュラー・トリオですから、暗黙の了解も鮮やかに纏まった、最高にグルーヴィな演奏が楽しめます。
A-1 When Johnny Comes Marching Home
邦題は「ジョニーが凱旋する時」とつけられた黒人ゴスペル系の伝承曲ですが、やはりジミー・スミスといえば、これっ! というほどにキマッた演奏です。
実際、ドナルド・ベイリーの重心の低いマーチングドラムと勇壮な雰囲気に満ちたジミー・スミスのテーマの弾き方を聴けば、思わず気持ちが引き締まります。
そして痛快な4ビートに移行して始まるアドリブパートでは、クウェンティン・ウォーレンがジャストミートの露払いを務めた後、ジミー・スミスがスピード感満点にして粘っこいフィーリングも両立させた素晴らしいオルガンソロを聞かせてくれます。このあたりは完全にモダンジャズでありながら、ハードロックのオルガン奏者にまでも確実に影響を与えたものと思います。
またビバップのオルガン的表現としては、ブルーノートで本格的にデビューした当初よりは、さらに粘っこいタッチが顕著になっていて、まさにグル~~ヴィ! 残響音を強調した録音も印象的なドナルド・ベイリーのドラミングも、実に適材適所なリックばかりですし、クウェンティン・ウォーレンのコードワークの荒っぽさが、逆に良い感じ♪♪~♪
ついつい、ノセられてしまいますねっ!
A-2 Makin' Whoopee
和み系スタンダードの有名曲を通常のテンポより早めて演奏していくトリオの一体感が、まず素敵です。ウキウキするようなノリが本当に良いですねぇ~♪
しかしジミー・スミスのオルガンは、決して軽いばかりではなく、演奏が進んでいくにつれてグビグビの音使いが出まくりですから、グッと惹きつけられます。左手とフットペダルのコンビネーションで作りだされる4ビートのウォーキングラインも強烈ですよ。
A-3 A Night In Tunisia
モダンジャズの聖典として外させない名曲を、ジミー・スミスはプログレっぽいアレンジを用いて豪快に聞かせてくれます。なにしろメインテーマのリフを丸っきり、イエスかソフトマシーンみたいに演じているんですよっ! 歴史的には逆とはいえ、これを聴いて仰天するのは、私の世代だけかもしれませんが、なかなか痛快だと思います。
しかし、もちろんジャズ本来のグルーヴはきちんと維持されていて、サビからアドリブは完全無欠の4ビートですが、あの胸騒ぎのブレイクは、またまたプログレですからねぇ~♪ もはや辛抱たまらん状態です。
そして演奏の中心に位置するアップテンポのブッ飛ばし方は、オルガンジャズのひとつの典型として不滅でしょう♪♪~♪ 非常に芸の細かいアドリブフレーズの大嵐とバンドの一体感は、驚異的だと思います。
また、その意味で、些かB級グルメ感が強いクウェンティン・ウォーレンのギターに共感を覚えるのも悪くないでしょう。なにしろ最後の最後で、またまたジミー・スミスが暴れてしまうのですから!
B-1 Sonnymoon For Two
ソニー・ロリンズが書いた有名なリフのブルースですから、ここでのハードバップ大会には安心感がいっぱい♪♪~♪ 特にジミー・スミスのオルガンからは黒っぽいムードが溢れ出しています。
そして時折聞かせる得意技というか、右手で強靭なアドリブソロを演じながら、左手と足で粘りの4ビートウォーキング、さらにひとつの和音を連続放射するというブルースのゴッタ煮グルーヴにシビレます。
このあたりはハモンドオルガンという文明の利器の特性を活かしきった必殺技でしょうね。どうやって演じているのかは良く分かりませんが、倍音スイッチとか使うんでしょうか? とにかく快感としか言えない、これが私の好きな瞬間です。
ちなみにキース・エマーソンやロニー・スミスは、鍵盤の間にナイフを突き刺して音を固定させるという見せ技を使っていますが、ジミー・スミスは!?
B-2 Mack The Knife
これもソニー・ロリンズの当たり曲ながら、ここではそのイメージを覆すような、まさにジミー・スミスならではのアレンジと表現が面白いところです。なにしろ、あの耳に馴染んだメロディがちょっぴりしか出ないんですからっ! そして、あくまでもアドリブ主体の演奏にしているのです。
しかしトリオの勢いは素晴らしく、アップテンポでグイグイと突き進んでいく一体感は最高です。グビクビと峻烈なフレーズを積み重ねて山場を作るジミー・スミス、淡々としたコードワークのクウェンティン・ウォーレン、強いバックピートも印象的なドナルド・ベイリー! これもハードバップだと思います。
B-3 What's New
これまた有名スタンダード曲ですが、スローで演じると思わせておいて、強いビートのハードバップにしてしまったという、なかなかジミー・スミスらしい目論見がズバリと成功しています。
実際、ここで聞かれる力強いグルーヴは、ミディアムテンポの勢いと上手く化学反応したような特別なものでしょう。ド派手なオルガン奏法を出し惜しみしない姿勢にも拍手喝采♪♪~♪ 決してラウンジ系ではありませんよ、これは。
B-4 Alfredo
そしてオーラスは曲タイトルからも推察出来るように、おそらくはレーベルオーナーのアルフレッド・ライオンに捧げたブルースです。まず、この弾むのようなグルーヴが実に快適ですねぇ~~~♪
クウェンティン・ウォーレンのギターも上手くツボを押さえたアドリブを披露していますが、やはりジミー・スミスのソウル&ブルースなオルガンは最高! シンプルにして濃厚なオルガンジャズの真髄が楽しめると思います。
ということで、実に傑作としか言えない名盤でしょうね。
ただし、今となっては、これが当たり前という感じも強いのですが……。そのあたりは如何にジミー・スミスの影響力が、その後のオルガンジャズ&レアグルーヴ、ハードロック等々に及んでいるかの証明です。
トリオとしての纏まりも、レギュラーバンドならではの良さが自然体ですから、例えば「A Night In Tunisia」のような凝ったアレンジもワザとらしくありません。むしろ、そういうケレンが潔いほどです。
やっぱりオルガンの王様はジミー・スミス!