OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ノロノロと和む

2007-05-31 16:54:15 | Weblog

今日は、まあまあ安逸な日だったなぁ、と思っています。

ここんとこ、ゴタゴタが多かったし、仕事もメッチャ、忙しかったですから、たまには良いでしょう。

ということで本日は、のっそり聞いて和むという――

Far Away Lands / Hank Mobley (Blue Note)

モブレー大好き人間の私にしても、かなり後になって入手したアルバムですが、元々レコーディングされてから、かなり長い間オクラ入りしていた作品です。

つまり発売された時、ハンク・モブレーは既に第一線から引退していたわけで、時代は肝心のリーダーを置き去りにしていたという、現実の厳しさがあったのです。

しかし内容は、如何にもモブレー流というハードバップ! もちろんリアルタイムで流行のボサロックとかモード色が強い演奏も入っています。

録音は1967年5月26日、メンバーはドナルド・バード(tp)、ハンク・モブレー(ts)、シダー・ウォルトン(p)、ロン・カーター(b)、ビリー・ヒギンズ(ds) という、お馴染みの面々です――

A-1 A Dab Of This And That
 アタックの強いリズム隊のテンションを活かしたテーマ曲が、なんとも魅力です。もちろん作曲はハンク・モブレーですから、アドリブパートがシンプルなテーマメロディを凌駕する「モブレー節」の大洪水♪ リズム隊との相性もバッチリです。
 続くドナルド・バードも気心の知れた面々との共演だけあって、お約束のフレーズを巧みに使っておりますが、このあたりは、所謂マンネリという感がありますねぇ……。これは、まあ、ハンク・モブレーにも言えるわけですが……。
 しかし、それを救っているのが、シダー・ウォルトンを中心したリズム隊のハードのウネリ! 豪快で整合性もある煽りは強烈です。

A-2 Far Away Lands
 アルバムタイトル曲は黒人テナーサックス奏者のジミー・ヒースが書いた、なかなかに緊張感のあるテーマメロディです。
 アドリブパートでは、まずシダー・ウォルトンがアップテンポで疾走する大名演! ロン・カーターの図太いベースワークと歯切れの良いビリー・ヒギンズのシンバルとの、一蓮托生のノリが素晴らしいです♪
 するとフロント陣も煽られたような快演で、まずはドナルド・バードがモード系のフレーズを用いながら熱演すれば、ハンク・モブレーは悠々自適に自分だけの世界を作り出していきます。
 しかし、やっぱりここはリズム隊の強靭なグルーヴが、本当に最高だと思います。

A-3 No Argument
 ハンク・モブレーが作曲の上手さを知らしめるような、実に緊張感があるテーマを提示してくれます。
 しかしそれも、続く作者のアドリブの妙にはかないません。全くモブレーマニアが歓喜悶絶のフレーズとノリ♪ これがハンク・モブレーです。力んでいない姿勢も好ましいところ♪
 そしてドナルド・バードも、このセッションでは一番の快演かもしれません。
 またリズム隊の充実度は言わずもがなで、ビリー・ヒギンズは、ある意味でブルーノート・レーベルの真髄を敲き出している名ドラマーだと痛感! シダー・ウォルトンの気持ち良いピアノも、当たり前になってしまう力感があります。

B-1 The Hippity Hop
 ハンク・モブレーが作曲した擬似ジャズロックですが、ややオトボケ気味……。というか、リズム隊の頑張りにもかかわらず、アドリブパートが面白くないんですねぇ……。ホント、マンネリでしょうか。
 いやいや、こういう当たり前の事が、他のミュージシャンに出来るでしょうかねぇ……。ハンク・モブレーやドナルド・バードだからこそ、許される世界!?
 それに比べて、リズム隊は素直に凄いです。ツッコミ鋭いロン・カーターやビシバシのビリー・ヒギンズ!
 そしてラストテーマに入る直前のホーン陣のリフは、異様なカッコ良さがありますねっ♪

B-2 Bossa For Baby
 これもハンク・モブレーが作曲したボサロックの隠れ名曲だと思います。ちょっと哀愁をおびた魅惑のテーマメロディには、実にホノボノとさせられます♪
 もちろん、こういう曲になるとビリー・ヒギンズの妙技が冴えまくりで、リムショットとタムのコンビネーションやシンバルの歯切れの良さを聴いているだけで、満足させられてしまいます。
 肝心のハンク・モブレーは、幾分、朴訥とした音色と全てが「歌」のアドリブフレーズが魅力です。まあ、はっきり言うと、やや緊張感に欠けているところもあるんですが、やっぱり和みます♪
 それに比べるとドナルド・バードとシダー・ウォルトンは、やや不調気味……。
 ですから、ラストテーマが一層、楽しく響くのでした。

B-3 Soul Time
 ロン・カーターがベースを担当している所為でしょうか、基本のリフがマイルス・デイビスの「All Blues」にそっくりです。そんな思惑を秘めたテーマメロディの重さも意味深長でしょうか、作曲はドナルド・バードです。
 で、アドリブパートに入っては、モード系の印象が強いドナルド・バードに対して、ハンク・モブレーはR&B風のノリで勝負に出ていますが、途中に入る2管の絡みも良い感じです。
 それとシダー・ウォルトンの力感溢れる伴奏が、凄いです。ほとんどソロパートみたいなところまであるんですねぇ♪ アドリブに入っても、正統派ハードバップブルースからモードの展開まで、自由自在のノリは流石です!
 もちろんロン・カーターのベースは重く蠢き、ビリー・ヒギンズのドラムスはビシッと場を引き締めています。

ということで、けっして構えて聴くアルバムではありません。何気なく聴いて、ジャズの魅力というか、和みに浸るという感じでしょうか。

しかし、ここに収められた曲は、いずれもテーマメロディがカッコ良くて、素敵です。誰かがカバーしても良さそうなんですがねぇ~。

中身とはウラハラに、ジャケ写のハンク・モブレーは、何を悩んでいるのでしょうか?

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

クールビューティ

2007-05-30 16:17:08 | Weblog

ミス・ユニバースに選出された美女が日本人♪

暗い世相の中で、久々に明るいニュースでしたが、彼女はダンスとか手話通訳のボランティアを自然体にやっていたそうですねぇ。

綺麗でスタイルが良いだけでは、ダメということなんでしょうか。人間は内面も大切なのは分かっているんですが、美女に弱いのは私だけではないでしょう。

ということで、本日は美貌もピアノも素晴らしい、この人の演奏を――

The Legendary Jutta Hipp Quitet 1954 (Fresh Sound)


ドイツ出身の美人ピアニスト=ユタ・ヒップは、高名なジャズ評論家のレナード・フェザーに発見され渡米、名門ブルーノート製作による所謂「1500番台」に3枚の人気アルバムを残していますが、これはその直前の1954年にドイツで録音された音源を纏めたCDです。

これらは今まで、様々なレーベルに分散して発売されていたもので、一部は前述のブルーノートがライセンスを取って10吋盤に纏めたほどの名演ばかり♪ そのスタイルはレニー・トリスターノ派のクールジャズそのまんま! つまりサックス奏者はリー・コニッツ(as) やウォーン・マーシュ(ts) あたりを忠実にコピーしていますし、リズム隊はひたすらにタイムキープに勤しむという、これが好きなファンには、たまらないものです。

しかしユタ・ヒップのピアノは、決してレニー・トリスターノのような冷徹なスタイルだけではなく、ビバップとクールの融合から、よりドライヴするハードバップ系のグルーヴが感じられ、なるほど、これは本場アメリカの業界が目をつけるわけだ……、と納得出来る才女! 加えてクールビューティな美女ですから♪

さて、このCDには4セッションが収められていますが、メンバーは Emil Mangelsdorff(as)、Joki Freund(ts)、Jutta Hipp(p)、Hans Kresse(b)、Karl Sanner(ds) が基本メンバーです――

★1954年4月13日録音
01 Simone Ⅰ
02 Anything Goes
03 Yogi
04 Frankfurt Special
05 Mon Petit
06 Blue Skies
07 Lover Man
08 Diagram

 初っ端「Simone Ⅰ」からクールスタイル全開のアップテンポ曲は、なんと Emil Mangelsdorff のオリジナル曲! 当然、作者のアルトサックスはリー・コニッツ生き写しです。しかしユタ・ヒップのピアノからは、クールな感覚と共に、なかなか黒人色が強いグルーヴが発散されているんですねぇ~♪ 強いアタックと歯切れの良いフレーズ展開は、同時期に我国でバド・パウエルに心酔していた秋吉敏子と双璧の素晴らしさだと思います。
 またバンド全体としてのスタンダード解釈も鮮やかで、「Anything Goes」の爽快感、「Blue Skies」での秘めた哀愁は、クセになりそう♪ ドラムスの Karl Sanner も、かなりの実力者ぶりを示しています。
 しかし、その中でユタ・ヒップはクラシック系のフレーズやカクテル風の甘いスタイル、さらにはエキセントリックな正統派ビバップの展開を、臨機応変に使い分けているんですから、凄いです。
 そして「Diagram」は彼女のピアノが存分に楽しめる、最高のトリオ演奏!
 ちなみにこのセッションからは「Mon Petit」と「Blue Skies」がブルーノートの10吋盤「New Faces - New Sounds From Germany (5056)」に採用されていますが、やはりこの2曲は特に素晴らしいと感じています。

★1954年4月24日録音
09 Cleopatra
10 Variations
11 Don't Worry About Me
12 Ghost Of A Chace
13 Laura
14 What's New

 このセッションの全曲は、前述したブルーノートの10吋盤に収録され、アメリカで発売されましたが、愕いたことに本国ドイツでは長い間、聴くことが出来なかったそうです。う~ん、ジャズは何時の世も冷遇されるんですかねぇ……。
 演奏はいずれも3~4分の短いものばかりですが、バンドとしての纏まりは最高ですし、クールからハードバップへの過渡期といえるリズム隊の快適なグルーヴが、とにかく気持ち良いです。
 もちろんユタ・ヒップのピアノは冴えまくり! 意表を突いてアップテンポでブッ飛ばす「Don't Worry About Me」、白昼夢のような「What's New」という2曲のピアノトリオ演奏は、本当に何度聴いても飽きません♪ いずれも両手をフルに使ったテクニックがさり気なく、嫌味になっていませんからねぇ~。
 それに比べるとフロントのサックス陣は、ややデッドコピーの感がなきにしもあらず……。まあ、このあたりは良くも悪くもクール派が好きなファン向けのお楽しみでしょうか。個人的には嫌いではありません。

★1954年7月28日録音
15 Frankfurt Special
16 Don't Worry About Me
17 Simone Ⅱ
18 Morning Fun

 以前と同じ曲も再演されたセッションなので、安定した演奏が楽しめます。
 ただしユタ・ヒップの調子はイマイチでしょうか……。やや雑な雰囲気ですが、それもジャズの楽しみだと思います。
 しかし「Morning Fun」は、かなりイケイケのハードバップになっていて、Karl Sanner のドラムスがビシバシです。ちなみにこの曲の作者が、後にユタ・ヒップと共演するズート・シムズという因縁も興味深いところですね。

★1954年6月6日、Deutsche Jazz Fes. でのライブ録音
19 Mon Petit
20 Frankfurt Special

 さて最後のセッションは、ボーナストラックというか、ライブ音源です。
 その所為でしょうか、演奏にも自然体の熱気があって、特にアルトサックスの Emil Mangelsdorff が気合の吹奏♪ 「Frankfurt Special」では、バド・シャンクっぽい西海岸派のスタイルを披露しています。
 またリズム隊は、ほとんどハードバップに近くなっていますが、ユタ・ヒップのピアノスタイルはウネウネクネクネのクールスタイルとカクテルピアノの中間の様な、やはり独特の個性を発揮して見事だと思います。

ということで、あくまでもユタ・ヒップという、稀有のモダンジャズピアニストの演奏を楽しむためのCDです。

実際、ここに聴かれるような演奏をしていたら、アメリカの業界が誘いをかけるのも無理からん話です。しかも美人ですからねぇ~♪

と、またまた冒頭の話に逆戻りですが、当時のバンド内は彼女を巡っての確執があったとか、渡米しても下心満点の業界人がウヨウヨしていたとか、とにかく純粋の音楽を追求することの難しさがあったようです。

その所為か、彼女は渡米してほどなく引退するのですが、残された音源の素晴らしさは保証つき♪ 一度虜になったら最後、ちょっと抜け出せない魅力があるピアニストです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

そっくりショウ

2007-05-29 18:54:54 | Weblog

今日は気持ちの良い晴れでした。

ところが世の中はドロドロで、ある事件に関する、くだらん自殺者が後を絶たないなんて……。申しわけなくも、冥福を祈る気分にはなりません。

あぁ、嘆き節ばっかりだなぁ……。

ということで、本日は――

An Homage To Sonny Rollins / Emanuele Cisi (Philology)

アルバムタイトルとジャケ写から、偉大なテナーサックス奏者のソニー・ロリンズへトリビュートが一目瞭然!

本来、私は所謂「トリビュート」企画のオムニバスアルバムは、他人の褌の生温さがあって好きではないのですが、ひとりの情熱家が自分の存在意義を賭けて取り組む作品は、逆に気になってしまいます。

リーダーの Emanuele Cisi はイタリアを中心に活動している中年のテナーサックス奏者で、スティーブ・ガッド(ds) にソックリな面構えなんですねぇ。

まあ、それはそれとして、録音は2000年7月20日、一応ライブセッションのようですが……。メンバーは Emanuele Cisi(ts)、Sandro Gibellini(g)、Dario Deidda(b)、Luigi Bonafede(ds) となっており、ブックレットの写真からして、全員が白人の中年オヤジです。そしてもちろん、演目は全てソニー・ロリンズ所縁の名曲ばっかり――

01 Why Don't I
 原典は大名作「ソニー・ロリンズ Vol.2 (Blue Note)」に入っていた熱血ハードバップ! それにしてもノッケから、こんな歴史的名演にチャレンジするバンドの勢いには、中年者の居直りを超えたものを感じて、ちょっと熱くなります。
 もちろん Emanuele Cisi のテナーサックスからは、本家のフレーズとノリが生き写しで飛び出してきます。このあたりを物真似とかデッドコピーと蔑むか、情熱のパロディと許容するかで、このアルバムの楽しみ方が違ってくるはずです。
 リズム隊では、ギタリストの Sandro Gibellini がオクターブ奏法バリバリの痛快なアドリブを聞かせて、結果オーライ♪

02 Kids Know
 原典は「プレイズ・フォー・バード(Prestige)」に入っていた和みの小品ですが、本家のノリとメロディ展開の妙技を完全に会得したと言っては問題でしょうか……。なかなか上手くツボを押えた吹奏に撤する Emanuele Cisi のビュアハートは、微笑ましいところ♪

03 Strode Rode
 原典はジャズ史上に屹立する名盤「サキソフォン・コロッサス(Prestige)」ですから、これもかなり無謀な選曲です。なにしろ天才のアドリブに挑戦するわけですからねぇ。
 しかし Emanuele Cisi はソニー・ロリンズ十八番のリックをコピーしまくった成果を遺憾なく発揮! というか、オリジナルよりもテンポアップした中で、非常に上手いトリビュートを敢行しています。う~ん、わかっちゃいるんですが、思わず惹き込まれてしまいます♪
 中盤ではドラムスとの一騎打ちまでが用意されており、なかなか熱いです!
 それと Sandro Gibellini のギターが猛烈な熱演! またまた熱気が充満していきますよっ♪

04 Wynton
 原典は1984年録音の「サニー・デイズ(Milestone)」に入っていた、比較的新しめの演目で、優しさ溢れる隠れ名曲ですから、Emanuele Cisi 自身の歌心は? という疑問が氷解する演奏を聞かせてくれます。
 それはなんと、スタン・ゲッツ~ウェイン・ショーターあたりの音色とフレーズを巧みにイタダキ! なかなか味な真似をやってくれます。
 またリズム隊の落ち着いた伴奏も秀逸ですねぇ~♪ 不思議な和みが広がっていく素敵な時間が過ごせます。

05 Duke Of Iron
 これも新しめの原典で、1987年録音の「ダンシング・イン・ザ・ダーク(Milestone)」に入っていた、十八番のカリプソジャズ♪ とくれば、バンドは楽しくグルーヴしまくりです♪
 まず Sandro Gibellini が最高に楽しいフレーズを連発すれば、Emanuele Cisi はソニー・ロリンズのコピーに撤していて、良くも悪くも凄いの一言です。まあ、楽しければ、それで良いんでしょうけど……。

06 Without A Song
 またまた大名盤「橋(RCA)」でソニー・ロリンズが畢生の名演を記録したスタンダード曲を取上げています。
 しかもその時とバンド編成が同じなんですから、たまりません。なんか別テイクを聴いているような気分にもさせられます……。このあたりは物真似芸に接しているような感じなんですが、素直に似ていることに拍手して楽しむのが疲れないでしょう。
 うん、まあ、いいか。
 演奏そのものはアップテンポの快演です。

07 No More
 初期の名盤「ソニー・ロリンズとMJQ(Prestige)」に入っていた正統派ビバップ曲なので、ここでも極めて真っ当なハードバップを聞かせてくれるバンド全員の姿勢が潔い限り!
 特にミディアムテンポながら弾むようなビートを生み出しているリズム隊は見事ですし、素直にノセられてソニー・ロリンズの物真似に勤しむ Emanuele Cisi の屈託の無さが素敵だと思いますねぇ。
 しかも、所々でジョン・コルトレーンの痕跡が見え隠れするあたりに、この人のルーツが垣間見えて、ニヤリとさせられます。

08 Airegin
 出ました! オーラスはソニー・ロリンズのと言うよりも、これぞハードバップという大名曲です。あぁ、バンドの勢いも熱いです。
 Emanuele Cisi は前曲に続いて、ソニー・ロリンズばかりではなく、ジョン・コルトレーンの影響も滲ませた大熱演! このアルバムの中では一番の快演を聞かせています。う~ん、スティーヴ・グロスマンになっているところまでもっ!
 個人的には、こういう路線に撤した方が、この人の為かと、余計なお世話を焼いてしまいますねぇ……。とにかく大嵐の爆裂吹奏なのでした♪

ということで、あまりにも露骨というか見事なソニー・ロリンズ物真似大会なので、笑っちゃいますという皆様もいらっしゃるでしょうねぇ。これを楽しさとするか、猿真似として激怒するかは、リスナーの感性が全てだと思います。

何かの機会があったら、聴いてみて下さいませ。それなりに、おっ、と感ずるものがあるかと……。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

デフランコ、グッドマン&ショウ

2007-05-28 18:13:10 | Weblog

農水大臣の自殺には仰天!

訃報に対して、あまり言いたくはありませんが、現職大臣の自殺なんて、政治的に行き詰まりが動機だとすれば、国の恥だと思います。

という嘆き節は、これくらいにして、本日はこれで楽しみます――

Wholly Cats / Buddy De Franco (Verve / Lonehill)

バディ・デフランコは白人クラリネット奏者ですが、レッキとしたモダンジャズ派の天才です。なにしろ、それまでベニー・グッドマンに代表されるスイング派の花形楽器だったクラリネットで、チャーリー・パーカー以降のモダンジャズのフレーズを吹きまくった第一人者ですから!

その豪快でウネリのあるアドリブのグルーヴ、豊かな歌心と緩急自在なノリ、情感と真情吐露が滲み出るスローな表現……等々、どこを聴いても、すぐにバディ・デフランコ♪ と分かる個性派でもあります。

しかし偉大な先人に対する畏敬の念は蔑ろにしておらず、全盛期に録音した企画盤として、ベニー・グッドマンとアーティ・ショウという、偉大なクラリネット奏者の十八番ばかりを演奏したアルバムを出しています。

それはヴァーブというレーベルがお得意のマラソンセッションから、合計5枚のLPに編集され、粋なジャケットに入れられて発売されましたが、それはもちろん録音順序に忠実なものではありません。しかしジャズ者にとっては、セッション毎・録音順に聴いてみたいという欲求が少なからずあり、そこをフォローして発売されたのが、本日ご紹介のCD♪

ですから、ジャケ写は一応「Wholly Cats」が使われておりますが、サブタイトルが「The Complete“Plays Benny Goodman And Artie Shaw”Sessions Vol.1」となっていて、まず2回のセッションから14トラックが収録されております。

ちなみに付属ブックレットには、前述5枚のLPジャケ写も掲載されておりますし、メンバークレジットの謎も解明されています――

1957年10月29日録音
01 Benny's Bugle (Buddy De Franco Plays Benny Goodman)
02 A Smooth One (Buddy De Franco Plays Benny Goodman) 
03 Air Special (Buddy De Franco Plays Benny Goodman) 
04 More Than You Know (Wholly Cats)
05 Wholly Cats (Wholly Cats) 
06 Goodbye (Buddy De Franco Plays Benny Goodman)
07 Seven Come Eleven (Buddy De Franco Plays Benny Goodman)
 メンバーはバディ・デフランコ(cl)、ドン・ファガキスト(tp)、ジョージ・オールド(ts)、ビクター・フェルドマン(vib)、カール・パーキンス(p)、バーニー・ケッセル(g)、リロイ・ヴィネガー(b)、スタン・リーヴィ(ds) という、豪華なオールスタアズです。
 演奏曲が、どのLPに収録されたかは、曲目の後に記載しておきましたが、いずれも名曲・名演ばかり♪ スイングスタイルを基本にしながらも、ハードバップ感覚のリズム隊が、まずグルーヴィで最高です。
 もちろんバディ・デフランコは全曲で絶好調! チャーリー・パーカー直伝のドライブするビバップフレーズが冴えわたりで、ゾクゾクさせられます。特に初っ端の「Benny's Bugle」はアップテンポで間然することの無いアドリブの嵐です。
 また「A Smooth One」では、時代的に粘っこいファンキー感覚までも打ち出していますし、「More Than You Know」や「Goodbye」という、スローな歌物における温かい表現は、クラリネットならではの味を大切にした名演だと思います。
 それと全篇のアレンジがさり気なく、好感が持てます。バーニー・ケッセルやビクター・フェルドマンの入れるオカズも良い味ですねぇ~♪ もちろん隠れ名手のドン・ファガキストやジョージ・オールドのシブさ加減も、存分に楽しめるのでした。

★1957年10月31日録音
08 My Blue Heaven
(Colsed Session)
09 Stardust (Buddy De Franco Plays Artie Shaw)
10 Cross Your Heart (I Hear Benny Goodman And Artie Shaw) 
11 Frenesi (Buddy De Franco Plays Artie Shaw) 
12 Medley:Danceing In The Dark - Moonglow - Time On My Hands
      (I Hear Benny Goodman And Artie Shaw)
13 Indian Love Call (I Hear Benny Goodman And Artie Shaw) 
14 Summit Ridge Drive (Buddy De Franco Plays Artie Shaw)
 1日おいてのセッションメンバーは、バディ・デフランコ(cl)以下、レイ・リン(tp)、ポール・スミス(p)、バーニー・ケッセル(g / 08-11)、ハワード・ロバーツ(g / 12-14)、ジョー・モンドラゴン(b)、ミルト・ホランド(ds) という、こちらは些かシブイ面々です。
 ここでもオリジナル収録されたLPを記載しておきましたが、実はヴァーヴレーベルの悪しき慣例というか、同じ曲を別なアルバムにダブリ収録するという節操の無さがありますから、こういうセッション毎に纏まった演奏集が必要になるのです。
 実際、どのアルバムを買えばコンプリートに演奏を集められるのか、ジャケットやコンパイルを変更した再発が多いヴァーヴは、コレクター泣かせなんですねぇ……。
 ちなみに、このセッションのピアニストはジミー・ロウルズという説もありましたが、ここではポール・スミスと断定してあります。
 肝心の演奏は、前半に比べるとハードバップ色が少し稀薄になっていますが、その分、お洒落で粋なフィーリングが横溢♪ もしかしたらチェンバロを弾いてるようなポール・スミスやレイ・リンの楽しさ優先のトランペットが、実に良い雰囲気です。
 もちろんバディ・デフランコの卓越した柔らかい歌心も、満腹するほどに楽しめますよ♪ このあたりは最初の「My Blue Heaven」で、気恥ずかしくなるほどです♪
 それと、お目当ての「Stardust」は、全く期待どおりのアレンジと演奏が展開されて嬉しくなりますし、微妙なロックンロール感覚を盛り込んだ「Frenesi」とか「Indian Love Call」のリズム解釈の面白さは、アドリブパートで一転して熱い4ビートを聞かせてくれるジャズの魅力に溢れていると思います。
 あぁ、ジャズは楽しい音楽なんですよぉ~♪

ということで、些か古臭い部分もありますが、それを温故知新で楽しまなければ、はっきり言って損をするという演奏集です。

実を言うと、この2つのセッションの間、つまり10月30日にはもうひとつのセッションが行われていますし、続けて11月1日にも、締めのレコーディングがありました。それらは続くCDの「vol.2」で纏められるそうですから、もう私には必須になりそうです。

いずれにせよ、オリジナル盤は高嶺の花というか、今となっては状態の良い盤に出会える可能性が低くなっておりますので、CDに抵抗の無い皆様には、これをオススメ致します。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

鬱陶しいバトル盤

2007-05-27 16:24:37 | Weblog

中国で「デスノート」の禁止取締りが行われているそうです。

でも、出回っているのは、DVDも本も海賊版でしょう? そういう取締りを強化する方が先だと思うんですけど……。

尤も先日行った上海~マレー出張では、そういうブツをゲットしてきたんで、大きな事も言えない私ですが。

ということで、本日は――

Hot Line / Bill Barron (Savoy)

モダンジャズの名門レーベルのひとつであるサボイは、主流派をメインにしつつも、相当に先鋭的なミュージシャンを録音していました。

本日の主役=ビル・バロンも、結局は大成しなかったものの、一時は期待されたテナーサックス奏者だったようです。まあ、現在はケニー・バロン(p) の実兄として知られているかもしれませんが、残されたレコードを聴いてみると、確かにジャズの本質に根ざした素晴らしさを感じます。

このアルバムは、多分、ビル・バロンの3枚目のリーダー盤でしょう。

録音は1962年3月31日、メンバーはビル・バロン(ts)、実弟のケニー・バロン(p)、ラリー・リドレイ(b)、アンドリュー・シリル(ds) に加えて、特別にブッカー・アーヴィン(ts) が参加しています――

A-1 Bill's Boogie
A-2 Groovin'
A-3 Now's The Time
B-1 A Cool One
B-2 Jelly Roll
B-3 Playhouse March
B-4 Work Song

上記のような演目は、ほとんどがブルースを主体にした熱気溢れるハードバップです。しかもビル・バロンとブッカー・アーヴィンのテナーサックスが、音色、フレーズともに酷似し過ぎています。そして私の所有盤がモノラル仕様ということもあって、聞き分けが非常に困難というか、鑑賞する度に自分の耳の悪さを痛感させられます。

う~ん、それにしても各々の演奏には、ムンムンするような猥雑で黒~い空気が充満していますね。

例えばリズム隊の定型リフが全体をリードするような「Bill's Boogie」や「Jelly Roll」は、粘液体質の演奏が満喫出来ますし、タイトルどおりにマーチテンポの「Playhouse March」でもリズム隊の強靭さが印象的です。

しかし、その中のお目当てであるケニー・バロンの出番は、ほとんどありません。つまり演奏の大部分が2人のテナーサックス奏者のアドリブばっかり! しかもスタイルと音色が似通っていますから、鬱陶しい限りです。

まあ、そのあたりが快感になる瞬間も確かにあるんですが、曲想も似通ったものばかりですから、キツイです。あぁ、これじゃ、売れないよなぁ……。

その中ではアダレイ兄弟のヒット曲「Work Song」が、素直なテーマ吹奏とグルーヴィな演奏で、なかなか和みます。それと埃っぽいようなドライブ感が痛快な「Now's The Time」も、バンドメンバー全員の意地の張り合いのようなところがあって、面白い出来だと思います。

ということで、ほとんど白昼の残月のような鬱陶しいアルバムなんですが、これがある時になると妙に聴きたくなるという、麻薬盤です。けっして万人向けとは言えない作品ですが、たまには良いかと思います。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ミラノのマイルス1964

2007-05-26 20:47:11 | Weblog

人間、長く生きるとロクなことが無い!

なんて言われますが、やっぱり天寿は全うしたいし、生きてればこその喜びや楽しみは、間違いなくありますね。

本日のブツなんか、当に生きていて良かったという、これを――

Milano 1964 / Miles Davis Quintet (Impro-Jazz)

マイルス・デイビスがウェイン・ショーターを迎えてスタートさせた、通称「黄金のクインテット」の、最も初期の姿を捕らえたライブフィルムをDVD化したものです。

内容は1964年のイタリア巡業からテレビ放送に収録された、全体で1時間ほどの演奏です。もちろん映像はモノクロですし、経年劣化も目立ちますが、一応公式盤というリマスターが施されていますから、これまで出回っていた海賊盤とは一線を隔する画質・音質になっています。

録音は1964年10月11日、イタリアはミラノでのライブで、メンバーはマイルス・デイビス(tp)、ウェイン・ショーター(ts)、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、トニー・ウィリアムス(ds) という説明不要の五重奏団です――

01 Autumn Leaves
 左右に開くカーテンが、まず良い雰囲気です。
 するとマイルス・デイビスがミュートで枯葉ですよっ♪ あの繊細な歌心を秘めた思わせぶりなテーマ吹奏にシビレます。伴奏のリズム隊も緊張感がありますし、ビシッとキメたファッションもカッコイイですねぇ~♪
 肝心の演奏はハービー・ハンコックが相当に挑発的で、マイルス・デイビスもそれに呼応して熱くなったしますが、やはりクールな姿勢は崩していないのが、流石だと思います。
 そして気になるウェイン・ショーターは独特の浮遊感と意味不明な音選びで、全く未体験のアドリブ世界を構築していきますから、リズム隊も油断がなりません。明らかに前任テナーサックス奏者とは別次元のグルーヴが凄いところ! 演奏が進むにつれて激烈なフレーズを繰り出すウェイン・ショーターは、もう最高です。背後で爆発するトニー・ウィリアムスも嬉々としていますねぇ~♪
 もちろんハービー・ハンコックのノリも素晴らしく、アドリブパートのグルーヴィな雰囲気は、全くこの人だけの良さが満喫出来ます。ロン・カーターとトニー・ウィリアムスとの息もバッチリ合った、当に快演♪
 演奏はこの後、ロン・カーターのベースソロにマイルス・デイビスが途中から割り込んでラストテーマが奏でられますが、ここでのミュートプレイは、もはや人間国宝でしょうねぇ。
 ところが、最後の最後で、ハービー・ハンコックが味な真似の伴奏を入れるので、マイルスは激怒フレーズからブッツリ、演奏を止めてしまいます。もちろんそれは、最高の緊張感に満ちたエンディングですから、お客さんは立ち上がっての大拍手なんですが、マイルス・デイビスはハービー・ハンコックのピアノへ歩みより、こうやってやれっ! と言うようなピアノフレーズを自ら鍵盤で指示します。
 う~ん、これにはハービー・ハンコックも不貞腐れ気味! するとロン・カーターがマイルス・デイビスに何やら耳うちして、演奏は次に進むのですが……。

02 My Funny Valentine
 これまたマイルス・デイビスが十八番の人気曲♪
 前曲の最後でミソをつけたハービー・ハンコックがロマンチックな雰囲気のイントロを提示すると、マイルス・デイビスは常套手段の思わせぶりでテーマメロディを変奏していきますが、この展開は同時期に残されているライブバージョンとほとんど同じです。
 しかし、それでも何時しか虜になってしまうんですねぇ~♪ マイルス・デイビスだけの完成された様式美が、たっぷりと楽しめるわけです。スローなスタートから少しずつグルーヴィな4ビートに持っていくバンド全員の一体感は、連日のライブで会得したものかもしれませんが、緊張感と楽しい雰囲気が両立していて、流石だと思います。
 またウェイン・ショーターは幽玄の響きとブッ飛びフレーズの併せワザで迫ります。異常に長いフレーズを一息で乗り切ってしまうテンションの高さ、ひとつの音も無駄にはしないという潔さが素晴らしいですねぇ~。もちろんリズム隊の思惑にも合わせる協調性がありますから、ウルトラ過激を演じても、単なるデタラメではありません。
 そしてハービー・ハンコックのピアノソロが短めにあって、再び登場するマイルス・デイビスのラストテーマ吹奏が、これまた素晴らしく、背後で真剣にそれを聴いているトニー・ウィリアムスの姿が印象的です。

03 All Blues
 前曲が終わるやいなや、いきなり始るグルーヴィなロン・カーターのベースリフ! これが何ともジャズの魅力に溢れていますから、マイルス・デイビスのミュートによるテーマ提示にはゴキゲンになります♪
 そしてアドリブハートでは、一転してオープンで吹きまくるマイルス・デイビス! しかも途中から正統派4ビートに持って行きますから、十八番のリックがビンビン飛び出してきて、気分は最高です♪ またトニー・ウィリアムスの押え気味のドラムス、グイノリのロン・カーター、弾みまくるハービー・ハンコックというリズム隊が、なかなかのグルーヴを生み出しているんですねぇ。
 するとマイルス・デイビスは、後年の電化ジャズロック時代を先取りしたような、ツッコミ鋭いフレーズまで吹いてしまいます。開始から30分位のところからは、もう耳と目を疑うほどですよっ! ジャック・ジョンソン!?
 おまけにトニー・ウィリアムスは、なんとかロックビートを敲きたいという真情吐露までしてしまうのですが、それはウェイン・ショーターの登場で遮られます。しかし、ここからが本当の山場というか、緩急自在のノリと異次元フレーズの連発に、その場はブラックホール状態!
 ですから続くハービー・ハンコックは完全に迷い道……。せわしないトニー・ウィリアムスのドラムスも逆効果なんでしょうか……。と思った次の瞬間、トリオはグルーヴィな正統派4ビートの世界に立ち返るんですから、たまりません♪
 これにはマイルス・デイビスも満足したんでしょうか、ラストテーマに入る前には、またまたハービー・ハンコックの横でピアノの鍵盤にちょっかいを出します♪ そして大団円は、見事な盛り上がりとなるのでした。

04 All Of You
 万来の拍手の中、またまたミュートで迫るマイルス・デイビスが十八番のスタンダード曲♪ ここでは従来のテンポよりも、やや早めの演奏にしていますが、緊張感と和みのバランスは失われていません。
 それは寄り添うロン・カーターのペースのセンスの素晴らしさ、トニー・ウィリアムスの繊細なブラシがキモでしょうか。なかなかジャズっぽい気持ちの良さが楽しめます。
 またウェイン・ショーターは初っ端からグイノリというか、珍しくもストレートな表現を聞かせてくれます。ただし常套句のようなフレーズは、ほとんど出ません。あくまでも俺流を貫く潔さ! このあたりはショーターフリークが感涙のところでしょう。あぁ、もう最高で歓喜悶絶させられます♪ 背後で炸裂するトニー・ウィリアムスのドラムスも強烈です!
 そしてハービー・ハンコックにしても、この曲は得意中の得意ですから、多くのバージョンで名演を残していますが、これもそのひとつになるでしょう。快適なテンポの歯切れの良いピアノタッチは、本当に見事ですし、歌心の妙にも感心させられます。映像で初めて分かるコードの使い方や音選びの妙も見逃せません。
 ラストテーマでのマイルス・デイビスの思わせぶりは、言わずもがなでしょう。

05 Joshua into The Theme
 さてオーラスは、マイルス・デイビスの指パッチンから、これも十八番の激烈モード曲が始ります。
 もちろんこういうアップテンポの演奏では、トニー・ウィリアムスの大爆発を期待してしまうんですが、肝心のシンバルがあまり良く録音されていないのが、ちょっと残念です。ただしバスドラはド迫力!
 で、マイルス・デイビスは、何時ものパターンというか、幾つかのキメのフレーズを繋げたような、ややマンネリ気味でしょうか……。しかし強烈なリズム隊に煽られて吹きまくるその勇姿は、映像作品ならではの快楽です。
 そしてウェイン・ショーターが、これまた凄い! ジョン・コルトレーンも真っ青のグリグリブヒブヒのモード節に加えて、浮遊感満点の異次元節を駆使して、リズム隊を翻弄していく様は痛快です。
 しかしバックをつける3人は、百も承知なんで動じません。トニー・ウィリアムスなんか、若造のくせに余裕で楽しんでいる雰囲気ですし、ドラムを敲く姿そのものが、とにかくカッコイイです♪ あぁ、ついついボリュームを上げてしまうですよぉ~~~♪
 演奏はラストテーマの後に短めのテーマがあって、ステージは終演となりますが、トニー・ウィリアムスは明らかに物足りないという熱気が漂うのでした。

ということで、映像作品的な面白さも含めて、演奏は極上です。またロン・カーターのベースがしっかりと録音されているので、その繊細で豪胆なベースワークが、このバンドの要? なんて妄想させられる瞬間もあるほどです。

肝心の画質はモノクロとはいえ、ややブルーっぽい感じなのが、好き嫌いの分かれ目でしょうか。ランク的にはB+ぐらいなんで、過大な期待は禁物です。

しかし、贅沢を言ってはバチがあたりますよ。

とにかく全てのジャズファンは必見のお宝作品だと思います。

結論として、これまでの記録「マイルス・イン・ペルリン」から2週間ほどしか経ってないのに、この過激さは、何なんだっ! と声を大にしたいです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ピアノトリオの四季

2007-05-25 17:40:58 | Weblog

ようやく仕事も一段落という雰囲気になってきました。

しかし最近の天候の異常不順は???

今日も朝はカンカン照り、昼と突風、そして今は大雨です。

そこで――

All Kinds Of Weather / Red Garland (Prestige)

レッド・ガーランドは和み派の名人ピアニストですが、その中でも一等の秀作盤が本日のアルバムです。

内容はタイトルどおり、四季の天候にちなんだ有名無名のスタンダード曲を、本当に気持ち良くモダンジャズにしたピアノトリオの決定盤でしょう♪

録音は1958年11月27日、メンバーはレッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、アート・テイラー(ds) というお馴染みの面々ですから、悪いはずもないのです――

A-1 Rain
 いきなり「雨」の曲なんで、憂鬱な雰囲気かと思えば、全く逆に明るく小粋な演奏です。レッド・ガーランドが十八番のブロックコード弾きによるテーマメロディの歌わせ方が、とにかく絶品♪ 続けて入るアドリブパートでの単音弾きでは、コロコロと転がるようなスイング感も素晴らしく、もちろん歌心も最高です。
 もちろんブリブリのドライブ感が満点のポール・チェンバースのベース、小気味良いアート・テイラーのブラシも、当たり前の凄さが強烈です。
 当にレッド・ガーランドが全盛期というよりも、生涯の名演だと思います。
 あぁ、何回聴いても飽きません♪

A-2 Summertime
 説明不要の名曲を、レッド・ガーランドは幾分陰鬱に弾いてくれますが、緩いテンポでもダレていないのは流石です。
 まあ、一時は、スロー物が苦手なレッド・ガーランド……、と言われていた事もあったようですが、この演奏あたり聴いていると、ブロックコードでグイグイに盛り上げていく力強さがあって、こういうテンポで勝負に出ている感じがしています。

A-3 Stormy Weather
 これもリラックスしたテンポでレッド・ガーランドのソフト&ソウルフルなピアノスタイルが楽しめる名演になっています。
 また寄り添うポール・チェンバースが素晴らしいですねぇ~♪ 何気ないようでいて、モダンジャズの真髄を披露しているような凄みが感じられます。
 全体的には所謂カクテルピアノに近い雰囲気ですが、それを硬派なジャズにしているのが、ポール・チェンバースだと思うのですが……。
 う~ん、やっばり、このトリオは最高だと痛感させられますねっ♪

B-1 Spring Will Be A Little Late This Year
 またまた小粋にスイングする名曲・名演♪
 しかもレッド・ガーランドの元ネタというか、アーマッド・ジャマルの音符を切詰めたスタイルとか、エロル・ガーナーの意図的遅れビートあたりを良いとこ取りしていますから、これが本当に快適なんですねぇ~♪
 もちろんレッド・ガーランド自身の歌心の豊かさやドラムス&ベースのグルーヴィな助演が一体となった、当然の結果ではありますが♪

B-2 Winter Wonderland
 お馴染みのクリスマスソングを、レッド・ガーランドは楽しく快適に弾いてくれますから、年末にはジャズ喫茶で良く鳴っていたという名物トラックです。
 実際、全篇が完璧に素晴らしい演奏なんですよっ♪
 けっこうブルース魂も入っていますし、コロコロ転がるスイング感、ブロックコードのソフト&ハードの使い分け等々、これまた何度聴いても最高です。
 またポール・チェンバースのアルコ弾きも、なかなか良いと、納得出来たりします。

B-3 'Tis Autumn
 オーラスは泣きと涙が入った、リラックス&グルーヴィな快演です。
 あぁ、このテーマの解釈なんて、原曲の良さを存分に引き出して、尚且つピアノトリオとしての魅力を、たっぷりと披露した代表的名演ではないでしょうか!?
 もちろんアドリブパートでの充実度も高く、レッド・ガーランドのピアノからは、とても即興とは思えない美メロが連続して流れ出します。
 余計な手出しをしないアート・テイラーのドラムスも逆に存在感があり、どっしり構えたポール・チェンバースは、グループの源でしょう。

ということで、一種のトータルアルバムとしての企画も素晴らしい作品です。

レッド・ガーランドとしては、時期的にマイルス・デイビス(tp) やジョン・コルトレーン(ts) と別れた直後あたりの演奏で、これ以降、ほとんどが自己のトリオ中心の活動・レコーディングとなり、ますますソフト&リラックス路線に進む、その端境期に残された名演というわけです。

つまり後年の演奏よりは緊張感が維持されているというか、それでいてリラックスした雰囲気が最高なんですから、レッド・ガーランドを代表する名盤ではないかと思います。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

爽快な暑さ

2007-05-24 19:30:54 | Weblog

今日も暑かったですねっ。

仕事場では一足早く、クールビスを奨励しています。

というか、点検で冷房が使えなかったのが真相ではありますが。

ということで、本日は熱くて痛快な――

Cannonball Enroute / Julian Cannonball Adderlly (Mercury)

モダンジャズはアドリブが主体の音楽なので、個人芸という趣が強いが故に、ロックと違って、なかなかレギュラーのバンドというのが維持出来ません。

逆に言えば、ジャズメッセンジャーズとかデイブ・ブルベックのカルテットとか、そういう名門バンドを率いていた者は、ジャズ的な実力と人望&マネージメントの才覚に恵まれた天才と言えるかもしれません。

本日の主役、キャノンボール・アダレイもそのひとりで、フロリダからニューヨークに出てきた時から一躍注目を集めた天才アルトサックス奏者です。そして生涯の大部分をリーダーとして過ごした凄い人です。

しかしその歩みは決して順風というわけではなく、本格デビュー直後から結成したバンドはレコードの売行きも芳しくなかった所為もあって、1年半ほどで活動停止に追い込まれています。

そして結論から言うと、キャノンボール・アダレイはマイルス・デイビスに雇われる事になります。そして再び独立し、ファンキー&ソウル路線のバンドを率いて人気を獲得するのですが、だからと言って、最初のバンドの演奏が劣っていたわけではありません。

本日の1枚は、当にそうした中の傑作盤!

録音は1957年2月と1958年3月、メンバーはキャノンボール・アダレイ(as) 以下、実弟のナット・アダレイ(tp,cor)、ジュニア・マンス(p)、サム・ジョーンズ(b)、ジミー・コブ(ds) という、今では夢のオールスタアバンドです――

A-1 A Foggy Day (1957年2月6~8日録音)
 イントロは理路整然としたアレンジになっていますが、キャノンボールがリードするテーマ・メロディは開放的なジャズの喜びに満ちています。そして再び、イントロのリフが入って始まるアドリブパートでは、もちろんキャノンボールがパワー全開!
 このドライブ感、この野放図なファンキーさには脱帽です!
 すると一転、ナット・アダレイはミュートでマイルス・デイビスの世界に近づいていきます。ただし中盤以降は兄譲りの陽気なノリが出ますから痛快です。
 リズム隊もタイトで快適なビートを送り出してきますので、軽く聴いていても楽しめる演奏だと思います。

A-2 Hoppin' John (1957年2月6~8日録音)
 いきなりアップテンポで弾けるジュニア・マンスとリズム隊の凄さ! それに導かれて襲い掛かってくるアダレイ兄弟のリフから、もちろんアドリブ先発はキャノンボール! これがまた強烈な凄さです!
 何と言うか、暴風の中でリッターバイクを疾走させているような、猛烈な勢いなんですねぇ~。一瞬の弛みもありません!
 ですから続くナット・アダレイも正統派の吹奏で、この人はやっぱりディジー・ガレスピーを基本としているのが分かります。
 そしてジュニア・マンスが、これまた快演です。しかもパウエル派の早弾きの中に、ちゃ~んと独自のファンキー感覚を打ち出しているんですねぇ~♪
 さらにクライマックスではジミー・コブ対アダレイ兄弟の対決があって、ジミー・コブのタイトで力強いドラムスが存分に味わえるのでした。

A-3 18th Century Ballroom (1957年2月6~8日録音)
 ちょっと優雅でファンキーな不思議な味わいがある隠れ名曲ですが、なんと作曲が、あの名ピアニストのレイ・ブライアントとナット・アダレイになっています。リズム隊の動きもアレンジが入っているようですが、弾むような雰囲気がたまりません♪
 そしてアドリブパートでは、まず先発のナット・アダレイがクール&ファンキーにキメると、キャノンボールはウネリの強いフレーズで兄貴の貫禄を聞かせてくれます。続くジュニア・マンスのピアノも、独特のハネたところが良い感じですねっ♪
 

A-4 That Funky Train (1957年2月6~8日録音)
 サム・ジョーンズのベースとジミー・コブのドラムスがファンキー&ゴスペル感覚に蠢くイントロから、ゾクゾクさせられますが、続けて入ってくるジュニア・マンスとアダレイ兄弟の雰囲気の良さも最高という、黒~いハードバッブです♪
 そして先発で蠢くサム・ジョーンズの軋みのベースソロが素晴らしく、続くジュニア・マンスのピアノもブルースの塊です。
 またナット・アダレイのミュートもタメとツッコミのバランスが、これぞモダンジャズですねぇ~♪ なかなかの名演かと思います。
 うっ、リーダーのキャノンボールのソロが出ないで終わるのかっ!
 それもあり!? と妙に納得してしまうのは、リズムがあまりにも素晴らしいからでしょうか……。

B-1 Lover Man (1957年2月6~8日録音)
 天才チャーリー・バーカーが色々な意味で歴史的な演奏にしてしまった名曲ですから、同じアルトサックス奏者のキャンボール・アダレイがどんな演奏をしているか? 大いに気なるトラックということで、私はジャズ喫茶でこのアルバムを最初にリクエストしたのが、このB面でした。
 で、ここでは最初からファンキーなアレンジが施されていますが、テーマからアドリブまで、ほとんどがキャノンボールの真摯な吹奏による一人舞台! 忽ち、暗く情熱的な歌心を聞かせるアルトサックスの魅力の虜になってしまいます。

B-2 I'll Remember April (1958年3月8日録音)
 これも有名スタンダード曲ですが、このバンドの猛烈な演奏には心底参ってしまいます♪ テーマ演奏終了から、待ってましたとばかりにアドリブに邁進するキャノンボールの瞬発力は最後まで衰えず、シャープで豪快なリズム隊のツッコミにも屈しません。
 ちなみにキャノンボールは、このセッションの直後にブルーノートで名盤「Somethein' Eles 」を録音していますから、その好調さは言わずもがな! そう思って聴くと、ナット・アダレイがマイルス。デイビスに聞こえる瞬間さえありますが、すぐにディジー・ガレスピー直系のスタイルに逆戻りしますから、痛快です。
 あぁ、それにしてもジミー・コブのドラムスは最高です♪

B-3 Porky (1957年2月6~8日録音)
 アダレイ兄弟が合作した楽しいファンキーオリジナル♪
 アドリブ先発では、ナット・アダレイがまたまたマイルス・デイビスをやってしまいますが、ジミー・コブのドラムスがあるが故に、ますますそう聞こえてしまうんですねぇ~。しかし今回はリー・モーガン風もやっていますから、憎めないです。
 そしてリズム隊のグルーヴィな雰囲気は天下一品! 思わずノセられてしまうキャノンポールもウキウキしているのでしょう、短いながらも鋭くうねるアドリブソロは、余人に真似が出来ないところだと思います。

B-4 The Way You Look Tonight (1957年2月6~8日録音)
 これも有名スタンダードで、定石どおりにアップテンポの激烈演奏を聞かせてくれます。しかもテーマ部分の2管の絡みが素直に凄いんですねぇ~♪
 もちろんアドリブパートも明るく楽しく烈しいという全日本プロレスモード! こういうストレートな演奏こそが、ジャズの本質かもしれません。

ということで、全篇が痛快な演奏ばかりですが、聴き通すと少しばかり飽きが来るかもしれません。

実はこのアルバムは、セッションから大分時が流れた1961年中頃に発売されたようです。つまりお蔵入りしていた演奏の寄せ集め的な性格があるのです。

しかし演奏そのものは極上のトラックばかりですから、本当にスカッとしますよ。

ちなみに前述したように、キャノンボール・アダレイはレコード会社との軋轢もあって、上手く行かなかった自己のバンドを解散させ、ジミー・コブと一緒にマイルス・デイビスのバンドに雇われるのですが、マイルス・デイビスはキャノンボール兄弟がニューヨークに出てきた時から契約はブルーノートを勧めていたそうですから、渡に舟だったでしょう。

邪推すれば、以前から目をつけていたジミー・コブを欲しいがために、キャノンボールを入れたとするマイルス・デイビスの目論見か!?

まあ、そんな妄想も楽しいというのが、このアルバムの聴き方かもしれません。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

自戒と熱気

2007-05-23 17:26:23 | Weblog

大リーグでの日本人選手の活躍、日本プロ野球では交流戦、ゴルフ界には新星登場と、スポーツが大いに盛り上がっているのに、昨日の横綱・朝青龍の失態というか、品格の無さには呆れ果てました。

折りしも某週刊誌では八百長疑惑の核心に触れるような報道があり、ただでさえ実力に疑問符がつけられている横綱が、真剣勝負で負けて本性をムキ出しにするようでは、見苦しい!

なんだ……、やっぱり……。

と思われたら、真剣勝負をウリにしているプロスポーツ団体は終りです。

人のふり見て、なんとやら……。

私も最近、キレる寸前が何度がありますが、やはり冷静さは必要と、自戒しています。

ということで、本日は――

Blue Stroll / Ira Sullivan (Delmark)

シカゴはブルースで有名かもしれませんが、けっこうジャズも盛んな都市です。街の雰囲気もニューヨークほど汚くないし、ロスほどノーテンキでもなく、東京に近い感じでしょうか。

そんな街で発足した「デルマーク」というレーベルは、これまたモダンブルースの秀作を発売していましたが、もちろんモダンジャズでも隠れ名盤を製作しています。

本日のCDは、そんな中のひとつ、「Ira Sullivan (DL-402)」にボーナストラックを付けた再発盤ですが、これが何故、ウラ人気盤かと言えば、ジョニー・グリフィンが参加しているからです。しかも大爆発なんですねぇ~♪

まあ、それは後で触れるとして、まずリーダーのアイラ・サリバンはトランペッターであり、サックス奏者でもあるという、所謂マルチプレイヤーです。しかも独特の歌心とグルーヴを持っているんですから、ジャズ史的には有名ではないけれど、けっこう隠れファンが多いと推察しております。

さて、このアルバムの録音は1959年7月26日、メンバーはアイラ・サリバン(tp,sax,peck-horn)、ジョニー・グリフィン(as,ts,bs)、ジョディ・クリスチャン(p)、ビクター・スプローズ(b)、ウィルバー・キャンベル(ds) とされていますが、このリズム隊はシカゴのローカルミュージシャンとしては過去にスタン・ゲッツのバックも務めていますから、ピカイチの存在だったと思われます――

01 Wilbur's Tune
 如何にもこの時代らしい、ゴリゴリのハードバップです。録音もエグミと埃っぽいところがあって、好ましいですねぇ。
 アドリブパートの先発はジョニー・グリフィンですが、やや調子が出ていません。しかし続くアイラ・サリバンのトランペットからは温か味のあるフレーズが連発され、ジョディ・クリスチャンは硬質なピアノタッチで迫ります。
 そして素晴らしいのがビクター・スプローズのベースです♪ ソロはもちろんのこと伴奏でもグイノリのグルーヴを作り出して、如何にもハードバップです。
 演奏は終盤でドラムスとホーン2人の対決となりますが、これは雑な雰囲気で良し悪しかと……。

02 My Old Flame
 ジョニー・グリフィンが抜けたワンホーン編成で、有名スタンダードが緩やかに演奏されますが、ここでのアイラ・サリバンはバリトンサックスで勝負しています。
 もちろんアドリブパートでは定石どおり、テンポを上げてグリグリのフレーズも吹いていますが、総じて歌心を大切にした好演だと思います。
 またジョディ・クリスチャンも崩れそうで崩れないという、味わい深いアドリブで印象的♪ ちなみにこの人は名前からして女性かと思ったら、CD解説書では「he」が使われていますから、男なんでしょうか?
 まあ、それはそれとして、ラストテーマでのアイラ・サリバンは強烈ですよ。

03 Blue Stoll
 浮かれ調子の楽しいハードバップ曲で、テーマメロディはひとつ間違えるとチンドン屋になりそうです。
 しかしアドリブパートに入ると、まずはジョニー・グリフィンが初っ端から大暴走! するとアイラ・サリバンはトランペットでクール&ファンキーなフレーズを連発です。ソロの受渡しに使われるリフもグルーヴィですねぇ~♪
 そして作者のジョディ・クリスチャンは薬籠中の名演と書きたいところですが、どこかしらぎこちなく……。しかし続くビクター・スプローズのベースが軋みつつ聴かせる最高のソロ♪ それが抜群のコントラストになっているのでした。
 ラストテーマの吹奏は完全ゴスペルです。

04 63rd Street Theme
 これはお馴染み、ジョニー・グリフィンが自作した十八番のファンキーハードバップですから、ここでもスローミディアムでグルーヴィに演奏されます。蠢くビクター・スプローズのベースも実に良く、あぁ、こんなに黒い演奏があるなんてっ!
 ですからアイラ・サリバンのトランペットからも思わせぶりなファンキー節がたっぷりと噴出していますし、リズム隊のバラバラ感もエグイと思います。
 そしてジョニー・グリフィンはヒステリックでありながら、実はじっくりと場の空気を黒くしていくという、恐るべき充実度です!
 さらにビクター・スプローズのドス黒いベース! この人は当時、ニューヨークでも伸し上がっていた若手で、後にはジャズメッセンジャーズにも入団した才人でしたが、こういうブンブンブリブリから歌伴での地味な寄添いまで、堅実にこなすという名手です。

05 Bluzinbee
 このセッションの超目玉演奏です。
 曲は快適なハードバップのブルースですが、20分近い長尺の熱演には凄まじい目論見があって、それはアイラ・サリバンとジョニー・グリフィンが楽器を持ち替えてバトルを繰り広げるという、無謀なものです!
 それにはまず、ジョディ・クリスチャンが露払い的にイカしたアドリブを聞かせます。あぁ、この硬いピアノタッチとフレーズは妙にクセになっちゃいます。
 そして続くバリトンサックスがアイラ・サリバン、するとジョニー・グリフィンがアルトサックスで対抗します♪ バックをつけるリズム隊も異常なほどの熱気です♪ するとアイラ・サリバンは幾分ハスキーな音色のトランペットで素晴らしい歌心を披露! 鋭いツッコミも良いですねぇ~~~♪
 こうなるとジョニー・グリフィンも負けておられず、本職のテナーサックスで猛烈な疾走! 辺りは修羅場と化しますが、それを受けるアイラ・サリバンは、なんと小型チューバのようなペックホーンという秘密兵器で応戦です。あぁ、これがまた、良いんですねぇ~。痙攣するようなフレーズまで繰り出すアイラ・サリバンは、本当に憎めません♪
 さらに続けて飛び出すバリトンサックスは、もちろんジョニー・グリフィンですが、あの「高速グリフィン節」が全く変わらずに放出されるのには吃驚仰天です!
 そして続くアイラ・サリバンのアルトサックスが、これまた痛快です。なんとジョニー・グリフィンのアドリブにそっくりな雰囲気なんですねぇ~♪ これまた吃驚です。
 演奏は大団円でウィルバー・キャンベルのドタバタしたドラムソロになりますが、この熱気と痛快な雰囲気は、ハードバップの核心にズバリと触れた名演だと思います。 

06 Wilbur's Tune (alternate)
 オーラスは冒頭曲の別テイクで、リズム隊の纏まりがイマイチながら、熱気は逆に濃いという感じでしょうか。ジョニー・グリフィンのアドリブも、こっちの方が良い感じです。

ということで、10年前に出たブツなんですが、ハードバップ好きの皆様には特にオススメです。ジャズ喫茶の大音量で聴いたら、中でも「Bluzinbee」には悶絶必至でしょう。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ユーミンボサ

2007-05-22 18:04:00 | Weblog

今日は完全に初夏モードでした♪

珈琲が好きな私ですが、本日はアイスティなんて、注文してしまったですよ。

そこで――

海を見ていた午後 / ベベール・ジルベルト (meldac)

なんとユーミンのオリジナルをボサノバでやってしまったという、和み盤です。

こういう企画は、バブルの頃に良くあったらしいですが、その当時の私は海外での仕事が多くて、ちょっと浦島太郎状態……。発売されたのは1991年でしょうか?

実は、このアルバムの存在も知らなくても、フラリと入った中古屋で数年前に見つけたものです。確か値段も480円だっかなぁ……。

ベベール・ジルベルトについても、全く知らない私ですが、どうやら本場ブラジルの女性歌手でしょう。演目は以下のとおり――

01 卒業写真
02 何もきかないで
03 やさしさに包まれたなら
04 翳りゆく部屋
05 瞳を閉じて
06 きっと云える
07 海を見ていた午後
08 ルージュの伝言
09 少しだけ片思い
10 曇り空

と、まあ、荒井由美時代の有名曲ばっかりですが、「曇り空」はデビューアルバムに入っていた擬似ボサノバでしたから、さもありなん♪ 暗く我侭に歌ってくれるユーミンのバージョンが大好きな私は、それでこのCDをゲットしたようなわけです。

で、中身の演奏はシンセ中心のフュージョン風アレンジが主体で、ちょっと肩すかしというか、やっぱりこれかっ!? と納得出来ますが、原曲の良さをそれなりに活かしているので、結果オーライでしょう。一応、打楽器や生ギターも全面に出ています。

またベベール・ジルベルト本人の歌は、もちろん現地語なんで、ボサノバの雰囲気はバッチリ♪ ということで気楽に流し聞きしていると、ちょっとダサい和みがあって、逆に良い感じです。

そして個人的には「卒業写真」や「きっと云える」「海を見ていた午後」あたりに、正統派ボサノバの味わいを感じて、気に入っています。

反面「瞳を閉じて」はハズシ気味……、また「翳りゆく部屋」と「ルージュの伝言」には、あまりのドC調さに激怒しそうです。ユーミンの音程の危なさを逆手にとったような「やさしさに包まれたなら」は擬似カントリーロック……。

ですからオーラスの「曇り空」が、一層、素敵なんですねぇ~♪

さあ、これからユーミンのオリジナルでも聴きましょうかっ♪

たまには、こんなんも良いでしょう♪

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする