OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

にがい涙はソウル歌謡ナンバーワン!

2016-09-30 17:02:53 | Soul
にがい涙 / Three Degrees (PIR / CBSソニー)


R&Bやソウルミュージックは雑食性の高い我が国の歌謡曲には好んで用いられる要素ですから、所謂「歌謡ソウル」とか「ソウル歌謡」とか、まあ、どっちで呼んでも問題が無いほど素敵な楽曲は数知れず、しかし、それをあえて本場の黒人ボーカルグループに歌ってもらうためのオリジナル作品となれば、本日掲載のシングル盤A面曲「にがい涙」は忘れられないでしょう。
 
歌っているスリー・ディグリーズはフィリーソウルを代表する女性ボーカルグループとして、日本でも昭和49(1974)年に「荒野のならず者 / Dirty Ol Man」のメガヒットから人気が爆発し、レコード会社も次々に新譜を出したいという期待があったのは逆に、本国アメリカでは何故かレコーディングが停滞……。
 
そこで我が国で発売権を持っていたソニーレコードは、スリー・ディグリーズが同年に来日した機会に新曲制作の独自企画を立案し、それが実現したセッションの中の1曲が「にがい涙」でした。
 
ちなみにこのレコーディングからは3曲がリアルタイムで世に出ていて、まずは彼女達が全米でも大ヒットさせた「天使のささやき / When Will I See You Again 」の日本語バージョン、次にバックの演奏が鈴木茂(g) や林立夫(ds) を含むキャラメル・ママ~ティン・パン・アレイの人脈で作られた和製フィリーソウル「ミッドナイト・トレイン / Midnight Train」でしたから、いよいよ昭和50(1975)年2月に発売された「にがい涙」こそは、既にして真打の存在感が期待されていたのかもしれません。
 
なにしろ楽曲の制作に携わったのが作詞:安井かずみ&作曲:筒美京平、そしてアレンジが深町純!

しかも既に述べたとおり、レコーディングセッションの時間が限られていた事から、「ミッドナイト・トレイン / Midnight Train」が前述したとおりキャラメル・ママ~ティン・パン・アレイ組であれば、こちらの「にがい涙」は深町純(key)、矢島賢(g)、高水健司(b)、村上秀一(ds) というメンバーがリズムセクションを担当したと言われていますので、楽曲共々、そういうサウンド作りのニュアンスやセンスの違いをあれやこれやと聴きながら推察するのも、リスナーの楽しみでありましょう。
 
そして、そんな裏事情を知る由もなかったリアルタイムのサイケおやじには、この「にがい涙」が完全に日本語で歌われていながら、全く本場のフィリーソウルと遜色が無いという仕上がりに浮かれてしまい、てっきり最初はオリジナルの英語バージョンの存在を疑う事がなかったんですが、実はこのシングル盤収録の「にがい涙」こそが、本家本元のオリジナル!
 
言うまでもなく、当時の筒美京平はモータウンやフィリーソウルを思いっきり取り込んだ歌謡曲を出し続けていた時期で、昭和49(1974)年だけでも例えば朱里エイコの「二時から四時の昼下がり」、リンリン・ランランの「恋のインディアン人形」「恋のバッコンNo.1」、平山三紀の「熟れた果実」、南沙織の「夏の感情」等々がありましたから、この「にがい涙」が傑作となったのも当然が必然だと思うばかりですよ♪♪~♪
 
また、実際にスリー・ディグリーズの日本語歌唱が妙にキャッチーな節回しで、ミテタァ~ハズヨォ~♪ と節回す最初のワンフレーズだけで、気分はすっかりソウルトレイン日本行きってなもんでしょう♪♪~♪
 
伝聞ではありますが、当時の彼女達のマネージャーやスタッフも仕上がった「にがい涙」がとても気に入って、きっちり世界発売のアルバムにも入れてしまったのは、その証だろうと思います。
 
しかし、我が国のコアなソウルマニアは、こ~ゆ~歌謡曲をやらかしたスリー・ディグリーズを白眼視するようになり……。
 
また、悪い事には以降、本国アメリカでも些か人気が落ち目になり、欧州や日本を含むアジア各国での巡業やレコーディングに活路を求めたことから、どんなに素晴らしい歌を出しても、何か二流扱いになってしまったのは辛い現実でしょうか。
 
それでもスリー・ディグリーズは今でも来日公演は続けていますし、もちろんメンバーチェンジは度々あったんですが、世界各国の地域性も考慮した旺盛なサービス精神が満点のステージは、近年2回ほど接したサイケおやじにしても、たっぷり楽しめるものなんですよっ!
 
機会があれば、彼女達が現役で元気なうちに、お楽しみ下さいませ。
 
もちろん、「にがい涙」はお約束のプログラム♪♪~♪
 
ということで、ついに今日で9月も終わり、いよいよ気分は年末へ向かっているのでした。
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アイドル歌謡はファン・不安・Fun

2016-09-29 17:26:05 | 歌謡曲
不安タジー・ナイト / 横田早苗 (CBSソニー)
 
何事も業界が活性化すれば、比例して素晴らしい成果が表れるとしたら、1980年代の歌謡アイドルの世界に秀逸な楽曲が頻出したのも納得されます。
 
逆に言えば、既にその頃の職業作家やプロミュージシャンが所謂ロック世代でありましたから、堂々と洋楽最先端をパクったり、自分が好きだった洋楽ヒットの替え歌のような作品を提供出来る場としてのアイドル業界は、ひとつの実験室みたいになっていたような気さえします。
 
そしてだからこそ、その時代に発売された歌謡曲のレコードは、殊更アイドル物にマニアック&カルトなシングル曲が多いんじゃ~ないでしょうか?
 
つまり当時は激烈を極めていたアイドル業界の中で、全然ヒットしていなくても、素敵な楽曲は確かに残っていると言いたいわけですよ、サイケおやじは。
 
例えば、本日掲載したシングル盤A面収録「不安タジー・ナイト」は、ポスト松田聖子と期待されながら、結局はブレイク出来ずにフェードアウトしてしまった横田早苗が昭和58(1983)年に出したデビュー曲で、原真弓が綴った歌詞は曲タイトルも含めて些かダジャレっぽい感覚が出過ぎたところもありますが、しかし水谷公生の作編曲はフックの効いたメロディ展開と間然する事のない産業ロックなアレンジが最高で、これぞっ! アップテンポのアイドル歌謡の傑作という他はありません!
 
いゃ~、現代の集団アイドルが歌ったって、全く違和感無く通用するんじゃ~ないですかねぇ~~。
 
ところが、正直言って、横田早苗の歌唱力がど~にもならないというか……。
 
もちろん本人は一生懸命やっているんでしょうが、音程も節回しもキケンがいっぱいというか、スタジオレコーディングですから、そんなことは無いと分かってはいても、次の瞬間にどっかへワープしてしまうじゃ~なかろうかっ!?
 
そんなハラハラドキドキ感も、実はアイドル歌謡のひとつの魅力かもしれませんが、でもねぇ……。
 
楽曲が最高に良く出来ているだけに、裏腹の残念感が逆に気になると言えば、贔屓の引き倒しかもしれません。
 
また、横田早苗は既に述べたとおり、既にトップアイドルだった松田聖子を堂々と後追いするという戦略で売り出されたと思えば、そのヘアスタイルや衣装も彼女自身の個性というものが希薄だったように思います。
 
そして失礼ながら、決してキュートな面立ちとは言えない佇まいとアイドルにしてはオーバーエイジの18歳デビューということも、せっかくシングル盤とビデオソフトと同時発売なぁ~んていう厚遇を裏目にしてしまった感が無きもあらず……。
 
サイケおやじとしては、あくまでも楽曲そのものを楽しむのが、このレコードに対する素直な気持ちであり、そんな本音を持っていれば、続けてもう2枚ほど出た彼女のシングル盤には「サマー・ブリーズ」と「哀愁Dream」という名曲がきっちり入っていたんですから、たまりませんよ♪♪~♪
 
繰り返しますが、その失礼は百も承知で言うと、横田早苗がもっと歌が上手かったら、彼女のレコードは大きなヒットになっていた事は推察に易く、しかし、もしもそうだったとしたら、楽曲の良さがここまで印象に残ったか否かは、ちょいと分からないかもしれません。
 
それほどアイドル歌謡のレコードは微妙でアンバランスな世界の素敵な宝物だと思います。
 
ということで、この春から半端無く忙しかった仕事も、ようやく落ち着きそうな気配になってきました。
 
この間、皆様からのコメントにもお返事が滞り、本当に申し訳ない思いで反省している次第です。
 
どうか、今しばらくのご猶予をお願い致します。
 
そして何かと独断と偏見ばかりの拙ブログではありますが、サイケおやじは精進を重ねる所存でございます。
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ベンチャーズ必殺の来日公演 1972 !!

2016-09-28 18:19:58 | Ventures
The Ventures On Stage '72 (東芝)


 A-1 Cruel Sea
 A-2 Driving Guitars
 A-3 I'm A Man
 A-4 Apache
 A-5 Diamond Head
 A-6 二人の銀座 / Ginza Lights
 B-1 輝く星座 / Medley: Aquariuus ~ Let The Sunshine In
 B-2 10番街の殺人 / Slaughters On 10th Avenue
 B-3 Bulldog
 B-4 Proud Mary
 B-5 Medley: 京都の恋 / Kyoto Doll ~ 黒のぬれ / Paint It Black
 B-6 Wipe Out
 C-1 Gimme Some Lovin
 C-2 朝日のあたる家 / House Of The Rising Sun
 C-3 ゴッドファーザー 愛のテーマ / Love Theme From The Godfather
 C-4 Honky Tonk
 C-5 雨の御堂筋 / Stranger In Midosuji (歌:欧陽菲菲)
 D-1 Walk Don't Run
 D-2 さすらいのギター / Manchurian Beat
 D-3 Pipeline
 D-4 Caravan

サイケおやじが初めてベンチャーズのフルコンサートライブに接したのは昭和46(1971)年の来日巡業で、当然ながら本物のエレキサウンドとロックビートの洪水には大興奮させられたんですが、その時のリードギタリストはジェリー・マギーだったので、翌年になって今度はノーキー・エドワーズが復帰しての黄金の4人組による来日が決定したというニュースには大袈裟ではなく、心底ワクワクさせられましたですねぇ~~♪
 
もちろん、それは決してジェリー・マギーを軽視しているわけではありません。
 
しかしエレキブームが最初に爆発していた時の立役者だったベンチャーズのノーキー・エドワーズという存在は過言ではなく、既に神格化されていたわけですから、遅ればせながらエレキのバカ大将を目指していたサイケおやじの心持ちを察していただきとうございます。
 
また、皆様ご存じのとおり、その頃は所謂ベンチャーズ歌謡が我が国で大当たり状態で、渚ゆう子の「京都の恋」や「京都慕情」、欧陽菲菲の「雨の御堂筋」、牧場ユミの「回転木馬」、そして厳密にはベンチャーズとは申せませんが、やはり同様の味わいが濃厚な小山ルミの「さすらいのギター」等々が売れまくり、それに呼応するように以前ヒットしていた奥村チヨの「北国の青い空」や山内賢&泉雅子の「二人の銀座」がリバイバルするという事に加えて、北米や欧州各地でもベンチャーズの人気が再燃していたという、まさに絶好のタイミング!
 
ところが世間の目は厳しいというか、日本におけるリアルタイムの洋楽最前線はブリティッシュ系のハードロックやプログレ、あるいはシンガーソングライターの大ブームからウエストコースロックが人気を集めていたもんですから、既にベンチャーズは過去の遺物という扱いで、しかも歌謡曲の世界でウケていた事が尚更に……。
 
ですからサイケおやじが、その昭和47(1972)年夏の来日コンサートに馳せ参じようと算段を重ねている姿は、例えば校内同好会のバンド組の面々からは呆れられ、そのチケット代を無駄遣いとまで蔑まれたのは今に至る悔しい思い出です。
 
まあ、そりゃ~、その頃にはいよいよ外タレの来日がラッシュとまで称される状況になっていましたから、せっかく安くもないお金を払うのならば、最先端のグループやバンドのライブに行くべきだという論拠は分かるんですけどねぇ~~、しかし先輩や友人諸氏からのありがたいアドバイスも、思い込んだら試練の道というサイケおやじの志には馬耳東風でありました。
 
そしていよいよ接したベンチャーズのライブが昭和47(1972)年9月30日の渋谷公会堂で、いゃ~~、これがもう、迫力満点の大興奮コンサート!!
 
とにかくサイケおやじにとっては近くて遠い夢の存在になっていたノーキー・エドワーズがそこにいるベンチャーズですからっ!!
 
しかも既に写真や様々な情報から知ってはいたのですが、ベンチャーズの面々が使う楽器が往年のモズライトではなく、ノーキー・エドワーズは所謂キャンディーアップルレッドのテレキャスター、ドン・ウィルソンはギブソンSGとジャズマスター、そしてボブ・ボーグルはカール・ヘフナーのバイオリン型ベースを弾いていましたし、ステージ衣装にしても揃いのユニフォームっぽいものではなく、各人が好みで選んだようなサイケデリック&ニューロック風なスタイルになっていた事も強い印象でした。
 
それでもアンプは多分テスコだったように思うんですが、出てくる音はマーシャル系というか、上手い具合の歪みが感度良好♪♪~♪
 
おまけに当日はゲスト歌手として欧陽菲菲、牧場ユミ、林美香の3人が登場したという豪華版で、全体としては二部構成になっていました。
 
そこで本日掲載したのは、その昭和47(1972)年9月30日の感激のライブから作られた偉大なる2枚組LPで、前述したゲスト歌手では牧場ユミと林美香の歌はカットされていますが、ステージの起承転結はきっちり入っていますので、これが第二期黄金時代というベンチャーズの真髄がハナからケツまで、存分に楽しめますよ♪♪~♪
 
なにしろド頭「Cruel Sea」からメンバー全員の意思の統一も鮮やかな突進力が全開ですし、続く「Driving Guitars」にしてもお馴染のフレーズやキメが手抜き無しで披露されるんですから、たまりません。
 
そうです、ベンチャーズはインストバンドでありながら、決して無闇なアドリブに走るなんて事はせず、何時も同じ出来上がった演奏をやってくれるところが凄いんですよっ!
 
まあ、そのあたりが当時の最先端だったハードロックやプログレのようにアドリブを無意味に膨らませたような長時間演奏とは真逆なスタイルでしたから、保守的で古い体質のバンドと決めつけられていた大きな要因でしょう。
 
しかし、ベンチャーズのように、ここぞっ! というところで、こちらが望む「お約束」のリフやフレーズを常に安定的に聴かせてくれるスタイルが出来るバンドは、その頃のトップを争っていた連中の中に幾つあるのかっ!
 
と考察すれば、何人もベンチャーズには勝てないと思うばかり!
 
ですから、「Apache」「Diamond Head 」「10番街の殺人 / Slaughters On 10th Avenue」「Wipe Out」「Walk Don't Run」「Pipeline」等々の十八番の大ヒット演目にしても、その偉大なるマンネリこそが最高の極みであり、そこには例の「テケテケ」やブリッジ外奏法、そしてメル・テイラーのダイナミックなドラムスを要にしたビートとリズムの興奮が充満し、ロック永劫の未来へ向かって激しく放出されていく瞬間が感じられるんですよ。
 
また、今回の来日巡業ライブでは、ひとつの楽しみだったと思うんですが、ジェリー・マギーが弾いていた時の演目をノーキー・エドワーズがどんなふうに聴かせてくれるのかっ!?
 
という興味も深々だったんじゃ~ないでしょうか?
 
少なくともサイケおやじは、そうでした。
 
で、結論から述べさせていただければ、どちらも自分だけの個性を大切にしながら、非常に共通項の多い演奏で、しかしそれは決して相手に遠慮しているわけじゃ~ないと思うばかりっ!
 
つまりノーキー・エドワーズもジェリー・マギーもカントリーやロカビリー、そしてカントリーロックのルーツに深く根差した音楽性に基づいたギタースタイルが得意だとすれば、前者はスピード&スリル、後者はソウル&スワンプというか、サイケおやじとしては、どちからと言うとジェリー・マギーにロック寄りの味を感じてしまうんですが、さりとてノーキー・エドワーズがロックじゃ~ないとは決して申せません。
 
むしろ瞬発力ではノーキー・エドワーズが明らかに凄く、フレーズやリズムのキレも素晴らしいと思います。
 
しかしジェリー・マギーには、これまた特有のファンキーさが感じられ、聴きなれたお馴染のキメやフレーズの随所に織り込むロック系のオカズには、ハッとさせられる事が度々あるんですねぇ~♪
 
そこで具体的な例としては、既に前年の来日公演からやっていたエレキシタールも使う「Medley: 京都の恋 / Kyoto Doll ~ 黒のぬれ / Paint It Black」がジェリー・マギーのバージョンはジョン・ダリルのキーボードが入っていた事もあり、なかなかロックぽいのに対し、このLPで聴ける1972年のバージョンでは、妙にカラッと抜けが良く、また別の魅力になっているように思いますが、いかがなものでしょう。
 
それは「輝く星座 / Medley: Aquariuus ~ Let The Sunshine In」についても似て非なる魅力として、特に後半の「Let The Sunshine In」 のパートではジェリー・マギーのドロ臭さに比べて、ノーキー・エドワーズが明るいファンキーフィーリングを表出させているあたりは、なかなか面白いと思います。
 
また、その意味でも凄いのが「Proud Mary」におけるノーキー・エドワーズのギターワークで、攻撃的なリズムのアタック、神業のフィンガーピッキングで弾きまくる多彩なフレーズはカントリーロックの真髄というよりも、これぞっ! エレキインストの醍醐味ってやつですよっ! 当然ながらジェリー・マギーも昭和45(1970)年の来日公演でライブバージョンを残していますが、そちらはジョン・ダリルのキーボードが入った些か長閑な演奏になっていて、もちろんそれはそれで魅力があるんですが、両バージョンを聴き比べた場合、サイケおやじは圧倒的に今回の方が好きで、まさにベンチャーズがギターバンド本来の姿を感じさせてくれた証のように思います。
 
それはビル・ドゲットが1950年代に大ヒットさせたR&Bインスト「Honky Tonk」にしても同様で、実はこの曲は既にベンチャーズが1960年に最初に出したLPとされる「ウォーク・ドント・ラン」に収録されていましたが、そのバージョンのリードを誰が弾いていたかは、ノーキー・エドワーズなのか、あるいはボブ・ボーグルなのか、はたまた名前不肖のセッションミュージシャンなのか、不勉強のサイケおやじには知るところもありませんし、この来日公演が終わった年末に突如して(?)日本で発売された新録(?)LP「ロックンロール・フォーエバー」では、ブルースロックで有名なハーヴィー・マンデルがリードを弾いたスタジオバージョンが残されているという、なかなかマニアックな演目なんですが、流石にノーキー・エドワーズが本気(?)で弾いてるライブバージョンは、バンド自体の纏まりの良さもあって、素晴らしいですねぇ~~♪
 
さらに今回のベンチャーズがリスナーを圧倒してくれるのが「I'm A Man」や「Gimme Some Lovin」といった、ブリティッシュロック上昇期にスペンサー・デイビス・グループが十八番にしていた演目をきっちり新しい感覚で披露している事でしょう。
 
この2曲はジェリー・マギーも、この来日直前に発売されたアルバム「黒いジャガーのテーマ」に収録のスタジオバージョンで演じているので、それなりに聴き比べは可能なんですが、ノーキー・エドワーズというよりも、ドン・ウィルソン(g) もボブ・ボーグル(b) も、そしてメル・テイラー(ds) にしても、決して過去ばかりに拘ってはいないわけで、その極みつきが、これまたベンチャーズが絶対の人気曲「Bulldog」であり、そこで聴かれるノーキー・エドワーズのギターソロにはワウワウペダルが大胆に使用され、まさに火傷しそうな圧巻のプレイ!
 
とにかく会場でそれをダイレクトに聴けた高校生のサイケおやじは、絶句して悶絶!!
 
そしてそれが同年晩秋に発売されたこのアルバムに収録されている事は僥倖であり、また必然としてロックギターの真髄が聴けますよっ!
 
告白すればサイケおやじは、この2年後にワウワウを入手した時、そのアドリブソロをコピーしようともがき苦しんだ前科があり、その不遜な行為を大いに反省させられたほどのアンタッチャブルな演奏は、ぜひとも皆様にもご堪能いただきたいと切に願うばかりです。
 
ちなみに当時のノーキー・エドワーズはフラットピックよりはサムピックをメインに使用していたようで、当然ながら他の運指の細かい技も多く、加えてビブラートアームが無いテレキャスターですから、押弦の平行移動とか、メリハリの効いたチョーキング等々 なかなか簡単にはフィーリングを掴めないテクニックが盛り沢山と推察するのがやっとの状態ですから、サイケおやじにはあまりにも高い山なのですが……。
 
閑話休題。
 
それと気になるのは、当時第二期黄金時代に入っていたベンチャーズを象徴するほど盛り上がっていた「ベンチャーズ歌謡」のプログラムでは、流石に本家本元の演奏はツボを押さえた上手さがあって、「二人の銀座 / Ginza Lights 」や「さすらいのギター / Manchurian Beat」における独特の歌心は言わずもがな、この一撃で大ブレイクした欧陽菲菲が特別参加の「雨の御堂筋 / Stranger In Midosuji」も、ベンチャーズが伴奏してこその楽しみが確かにあります。
 
また、もうひとつ気になったのが「ゴッドファーザー 愛のテーマ / Love Theme From The Godfather」で、これはてっきりベンチャーズの新演目かと思っていたら、実は直前に日本主導で制作されたノーキー・エドワーズのソロアルバムに収録されていて、つまりはこの時点でベンチャーズのスタジオバージョンは無かったのですから、尚更にこのライブバージョンは貴重じゃ~ないでしょうか。
 
さて、ここまで、ど~してもノーキー・エドワーズ中心に書いてまいりましたが、ベンチャーズ最大の魅力はバンド全体から発散されるリズム的な興奮だと思うサイケおやじにすれば、やはりメル・テイラーの存在は欠かせませんから、アンコールは当然ながら、この人気ドラマーのショウケースである「Caravan」はお約束!
 
千変万化のドラムソロは説明不要、ベンチャーズのライブステージでは絶対的なお楽しみであるのが、その途中に入れる「スティック・オン・ベース」で、これはベースの弦をドラムスティックで敲くという、どうやらスイング時代のジャズでは普通にあった「芸」らしいんですが、それをあえてエレキがビンビンのロックでやってしまうところに、逆説的に普遍なベンチャーズサウンドの快楽性があるように思います。
 
これは実際にステージライブに接した皆様ならば、充分に納得されるはずですし、具体的には頃合いをみてドラムスのセットに近づくボブ・ボーグルがベースを捧げるように差し出せば、メル・テイラーは自分のソロを中断させる事なく、自然の流れでベースの弦にスティックを持っていき、リズムとビートに合わせてそれを敲くと、ボブ・ボーグルはフレットの指を動かして音程をつけるという共同作業なんですねぇ~~♪
 
その痛快さは、今日まで多く出ている映像作品でもご覧いただけますし、このライブ盤でも音だけとはいえ、たっぷりと楽しめますので、どうぞご確認下さいませ。
 
ということで、冒頭に述べたように、高校生だったサイケおやじが周囲の嘲笑もなんのその!
 
勇躍接した昭和47(1972)年夏のベンチャーズ来日公演は、最高にして大興奮のライブでした。
 
はっきりと断言させていただきますが、これまで自分が体験してきた外タレの来日ステージの中では、かなり上位の思い出になっています。
 
惜しむらくは、この時の完全版ステージライブ映像が未だ発表されていない事ではありますが、それでもこの2枚組LPは何度聴いても飽きませんし、CD化もされているので、ひとりでも多くの音楽ファンにお楽しみいただきとうございます。
 
あぁ……、あれから既に44年かぁ~~、それでも感激感動は些かも失せていないのでした。
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ありがちな風景に嫉妬…

2016-09-27 17:59:32 | 歌謡曲
優しさゲーム / 石立鉄男・山内絵美子 (ワーナーパイオニア)


掲載したのは、山内絵美子の大ファンというサイケおやじが長い間探索し、先日になってようやく入手が叶ったシングル盤です。
 
ただし、これは決して彼女がメインのレコードじゃ~なくて、石立鉄男とのデュエット作品であり、それにしても面白くないのがジャケ写に登場している石立鉄男のミエミエのスケベ野郎っぷりでしょう。
 
まあ、こ~ゆ~雰囲気は、例えばホテルのラウンジバーとかではありがちな光景ですし、もしもサイケおやじが石立鉄男の立場であって、同じ態度を見せなかったかと問われれば、それは否!
 
つまりこのショット、山内美絵子には、どんな男にも本性を晒させてしまうフェロモンと佇まいがあるという証明のような気がします。
 
と、最初っから苦しい言い訳を弄してしまいましたが、肝心のA面曲「優しさゲーム」は作詞:中里綴&作曲:高山狭が提供した、如何にも発売された昭和57(1983)らしい、下世話さとAORなムードが両立したスローバラードで、男女間の本能を巧みにサポートするような安川ひろしのアレンジもニクイですよ。
 
あと、気になるというか、本音で羨ましいのが石立鉄男の俳優としての恵まれた環境というか、この山内絵美子とのデュエットはもちろん、昭和45(1970)年から放送され、爆発的な人気を集めたテレビドラマ「奥様は18歳(TBS)」における岡崎友紀との夫婦役とか、その役得には常に嫉妬心を隠せないサイケおやじではありますが、それでも、ここで救い(?)になっているのは、両者のクレジットの間が「&」ではなく、「・」になっている事だと、自分に言い聞かせている始末です。
 
ということで、気は早いですが、これからの季節は何かと宴会も多く、その流れからこのような場面や状況が多発しそうな予感は嬉しいと言えば、そのとおりでしょう。
 
しかし、同時に節度って言葉を忘れないようにしないと、後腐れが怖いというのが現実です。
 
本能に従うのが一番の幸せとは分かっていても、なかなかそれが出来ないのが、人間という生き物の哀しさなのかもしれません。
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生き残ったビークル

2016-09-26 17:11:22 | Rock
Vehicle / Ides Of March (Warner Bros. / 東芝)
 
殊更1970年代前半に大きな流行となったブラスロックには様々なバンドが登場し、幾多のヒット曲を放っていましたが、その中でも老舗であろうグループが、1970年に本日掲載のシングル盤A面収録「Vehicle」で人気を集めたアイズ・オブ・マーチです。
 
当時のメンバージム・ペトリック(vo,g,key) をリーダーに、レイ・ハー(vo,g)、ラリー・マイルス(key,vo)、ボブ・バーグランド(b,sax,vo)、マイク・ボーチ(ds,per)、ジョン・ラーソン(tp)、チャック・ソマー(tp) とされていますが、アイズ・オブ・マーチは最初っからブラスロックのバンドではなかったようで、1966年のレコードデビュー時には出身地シカゴをメインとしていたローカルスタアだったと言われています。
 
しかし本格的にブラスセクションを用いたスタイルが固まったのは、小さなヒットを放った後の1969年、新規にワーナーブラザーズと契約した頃だったようで、それは同じイリノイ州シカゴ出身のシカゴの大ブレイク、またその少し前にアル・クーパーが立ち上げたブラッド・スウェット&ティアーズ=BS&Tの成功に刺激されたであろう事は推察に易いと思います。
 
で、この「Vehicle」は、とにかくソウルっぽさが強く、ジム・ペトリックのボーカルは前述したBS&Tのデヴィッド・クレイトン・トーマスを強く意識した感じですし、加えてブラスセクションがやってくれるキャッチーなイントロのフレーズが最高なんですねぇ~~~♪
 
まさにヒット曲の要件を満たしきった典型のような仕上がりだと思いますし、間奏のギターソロが如何にもその頃らしいジャズっぽいところも、なかなかニクイですよ。
 
ちなみに、このホーンリフって、昭和40年代後半の東映アクション映画、セクシーバイオレンス系の諸作にも度々再利用(?)された、如何にもパクリ易いものだという事を付記させていただきます。
 
しかし、アイズ・オブ・マーチは実質、この「Vehicle」が大当たりし過ぎた所為か、以降は尻つぼみ……。レコード会社の移籍やメンバーチェンジもあったりして、1973年末頃には解散に至ったようです。
 
ところがリーダーだったジム・ペトリックのソングライターやプロデューサーとしての才能は業界でも認められていたようで、自己名義のレコーディングからアルバムも出していますし、サヴァイヴァーという新バンドを結成し、再びの大ブレイク!
 
それが1982年、映画「ロッキー3」の主題歌として提供した「Eye of the Tiger」の大ヒットで、確かグラミー賞にも輝いたと記憶していますが、実はそんなこんなの経緯から、サヴァイヴァーと名乗るバンドメンバーの中に、ジム・ペトリックの名前を発見した時には驚かされましたですねぇ~~! 
 
さらに後追いで知った事ではありますが、そもそもサヴァイヴァーというバンドは1978年末頃、アイズ・オブ・マーチと同じジャンルのブラスロックで大ブレイクしながら、飛行機事故で主要メンバーを失い、解散に追い込まれたチェイスの残党だったデニス・ジョンソン(b,vo) とゲイリー・スミス(ds) を誘ったのが始まりだったそうで、そのふたりも1982年当時はバンドを去っていたらしいんですが、如何にも名は体を表すというか、生き残っていこうとするヤル気が有ればこそっ!?
 
ということで、やはりこの世は執念というものも必要なんだなぁ~、と思うことが最近はしばしばです。
 
実は7月の交通事故の後始末で加害者側の保険屋が横暴な態度なんで、サイケおやじも頑迷になって、ついつい意地悪な言葉を相手に発してしまう事があり、それでも曲げられないものは自分の立場ですから、ここは長丁場になっても、そりゃ~相手がねぇ~~、とばかりに世の中の厳しさを思い知らせてやろうかなぁ~~。
 
示談書に印鑑なんてこたぁ~、絶対に無いからねっ!
 
あぁ、またまた意地悪な自分を感じています。
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原因不明の苦しさ…

2016-09-25 17:37:36 | Weblog

と言っても自分の体調じゃ~なくて、PCが全然ダメなんですよ……。

とにかく保存していた画像ファイルは開けないし、クラウドは応答しないし、文字入力も安定しません。

様々な方策を検討実行したものの、時間が無いのも現状で、申し訳ございませんが、本日はここまでとさせていただきます。

失礼致しました。

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天下一品だったよねぇ~♪ 水野きみこ!

2016-09-24 17:24:42 | 歌謡曲
私のモナミ / 水野きみこ (ポリドール)


一時期流行った「癒し系」というジャンルに相応しいアイドルと言えば、サイケおやじは昭和57(1982)年にデビューした水野きみこを思い出します。

もちろん失礼ながら、大きなブレイクも無く、短期間だけの芸能活動だったと思うんですが、そう書いたのも、デビューした頃は相当に強く売り出されていた印象でありながら、アッという間に芸能マスコミから消えてしまったというか……。

しかし、それでも水野きみこが忘れられないのは当時、本当に活況状態だったアイドル業界に登場してくるアクの強い(?)面々の中において、逆に自分が積極的に前に出ようしない佇まいが良い方向に作用していたように思うんですよ。

つまり、「おとなしい」とか「慎み」とか、そ~ゆ~古いタイプの日本人が好む女性の姿が彼女からは自然に滲み出ていたんじゃ~ないでしょうか。
 
既に何度も書いていますが、サイケおやじには所謂ロリ趣味ってのが全く無いので、むしろ彼女のようなアイドルには前向きな興味も同様に無く、それでいて妙に守ってあげたいような、そんな気分にさせられたのは、自らの「OLD WAVE」を証明する事象のひとつと思います。
 
さて、そこで掲載したのは、水野きみこのデビューシングル盤で、本当にアイドルど真ん中のルックスも可愛さ余って憎さ百倍ってところでしょうが、A面に収録されたウリの曲タイトルが「私のモナミ」ってのは、あまりにも倒錯的!?
 
というか、歌詞の中身で使われている「モナミ」という意味合いが、どうやら憧れの男から自分の事をモナミと呼んで欲しいという願望なんですよっ!
 
フランス語はあんまり分からないサイケおやじにしても、「モナミ」という意味については、男同士ならば「親友」とか「盟友」でしょうが、男女間では「愛人」とか「妾」というニュアンスが強くなるんじゃ~ないんですかねぇ~~~!?
 
それをこんなに可愛いアイドルに歌わせてしまうという狙いは、確信犯と思うばかりです。
 
ちなみに作曲:尾崎裕司&編曲:大村雅朗が提供したのは、全くアイドル歌謡が丸出しの曲調でしたから、尾崎昌也の綴った歌詞の特異性(?)が尚更に心に響くというか、しかも水野きみこの歌唱力がターヘに大きく傾きながら、如何にも芸能を仕込まれたような中途半端なところも、実に勿体無いですよ。
 
極言すれば、もっと大胆に下手だったらなぁ~~、なぁ~んて失礼な事を妄想してしまうほどで、もしもそ~なっていたら、彼女は浅田美代子大場久美子あたりの路線を歩めたような気がするんですが、いかがなものでしょう。
 
以上、思いっきり失礼な事ばっかりを書き連ねてしまったので、各方面からのお叱りや顰蹙は覚悟せねばなりませんが、サイケおやじとしては水野きみこのアイドルとしての資質は天下一品だと思っていた信念(?)の逆説的表現と解釈していただきとうございます。
 
そして冒頭に述べたとおり、もしも「癒し系アイドルの系譜」という様な研究が行われているのであれば、水野きみこが対象になっているのかは大いに興味があるところです。
 
最後になりましたが、それでもサイケおやじは彼女のレコードは、これっきりしか持っていません。
 
知り合いのアイドルマニアの話では、他のシングルやLPも素敵な仕上がりになっているらしいんですが、個人的にはここで満足する事に納得しないと、後が怖いような……。
 
それほど水野きみこは……、ですよ♪♪~♪
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ドナルド・バード&ペッパー・アダムス組 vs ハービー・ハンコック・トリオ

2016-09-23 16:19:49 | Jazz
Complete Live At Jorgie's 1961 / Donald Byrd - Pepper Adams Quintet (Solar = CD)
 
これまたネットで注文していながら、既に3年以上も梱包を解いていなかったブツの中からのご紹介です。
 
それはドナルド・バード(tp) とペッパー・アダムス(bd) という、ハードパップ愛好者にはお馴染みのコンビが組んでいた実際のレギュラーバンドによるライブ音源集で、実は収録されている全5曲はアナログ盤時代にブートで聴かれていたトラックばかりなんですが、LP片面ずつという制約から、その全てが1枚物に纏められてはおらず、しかもレコードの塩ビ素材そのものが悪かった所為もあって、せっかくの力演が些か勿体無い扱いになっていた印象がありました。
 
ところが今回の再発では、CDというメディアの特質を活かしての全曲纏め収録は当然ですし、アナログ盤ではカットされたいたと思しきパートの復活(?)やデジタル作業による音質の改善が顕著ですから、いよいよじっくりと楽しめるのは高得点♪♪~♪
 
しかも録音がセントルイスの「Jorgie's」という店における1961年6月24日のライブステージで、メンバーは前述したとおり、ドナルド・バード(tp) &ペッパー・アダムス(bs) の双頭リーダー以下、ハービー・ハンコック(p)、クリーブランド・イートン(b)、セオドア・ロビンソン(ds) という顔ぶれは、まさにハードパップの王道から所謂新主流派への過渡期を踏まえた演奏を楽しませてくれますよ。
 
01 Jorgie's
 如何にも新主流派というムードが横溢したハービー・ハンコック以下のリズム隊が思わせぶりな露払いを演じた後、いよいよ登場するドナルド・バード&ペッパー・アダムスがやってくれるのは、1959年にブルーノートに吹き込んだ名盤アルバム「バード・イン・ハンド」に収録されていた「Witchcraft」だと思うんですが、いかがなものでしょう。
 と書いたのも、実はこのタイトルの曲は、ここでのライブセッションから約3ヶ月後にブルーノートでスタジオ録音が行われ、人気アルバム「ロイヤル・フラッシュ」に収録されていますが、なんとなくテーマメロディが異なっている印象が……。
 しかし、十八番のキメを使ったバンドの纏まりの良さがありますから、ドナルド・バードが緊張と緩和の構成を活かしたアドリブを展開すれば、ペッパー・アダムスもハード音色で迫ってきますが、やはり優先してハービー・ハンコックの新しい感覚に惹きこまれてしまうあたりは、後の歴史を知っていればこその感慨とばかりは言えないでしょう。
 また、クリーヴランド・イートンのベースワークも秀逸で、輪郭がはっきりしたピチカートプレイは必聴! この人は後にラムゼイ・ルイスのグループやカウント・ベイシー楽団でも活躍した名手なので、要注意かと思います。
 あぁ~、ミディアムテンポで、このテンションの高さが素敵ですねぇ~♪
 
02 6 M's (Blues In 3/4)
 タイトルどおり、変則テンポを用いたアップテンポのブルースということで、イントロからファンキーな雰囲気を提供するリズム隊に呼応するべくジワッと登場してくるフロントコンビのテーマ吹奏♪♪~♪
 もう、このあたりだけで気分はすっかりハードパップにどっぷりですよ♪♪~♪
 しかもドナルド・バードのアドリブは何時もの安心印、続くペッパー・アダムスも心地良いマンネリ感という和みの展開が、ハイテンションなリズム隊の勢いに押されていくという、これが実にたまらない展開で、出しゃばり寸前のハービー・ハンコックのピアノと手堅いツッコミで煽りまくりのセオドア・ロビンソンのドラミングには熱くさせられますねぇ~♪
 ちなみにこの曲も前述した「ロイヤル・フラッシュ」にスタジオレコーディングのバージョンが収録されていますが、そこでの落ち着いた感じのテイクに比べると、やはりライブならではの熱気が強く出ている結果はオ~ライ♪♪~♪ 嬉しくなります。
 
03 Hush
 これまた当時のドナルド・バード&ペッパー・アダムスの代名詞とも言うべきゴスペルファンキーなヒット曲ですから、堂々の盛り上げ演奏はお約束以上!
 もちろん、ここでもリズム隊の熱血な煽りは物凄く、極言すればガサツなところこそが黒人ジャズの魅力であるならば、ここではそれが全開でしょう♪♪~♪
 そしてさらに味わい深いのが、リズム隊だけの演奏となる終盤のパートで、ここではファンキーと新主流派の幸せな結婚というか、ソウルフルなピアノを披露するハービー・ハンコックが瞬時に勿体ぶったムードに転じたり、そこにドラムスとベースが入り込んでのハードパップに引き戻し作戦という鬩ぎ合いがニクイです。
 そして前曲同様、この「Hush」も件のアルバム「ロイヤル・フラッシュ」にスタジオバージョンが入っていますので、聴き比べも楽しいところです。
 
04 Amen
 そして続くのが、またまたゴスペルファンキーな人気曲♪♪~♪
 既に1959年にブルーノートの傑作人気アルバム「フェゴ」にて発表済みでしたので、おそらくは当時のステージでは定番プログラムだったと思われますから、例え手慣れた雰囲気があろうとも、聴いているこっちは、それこそが希望する高い満足度ってやつでしょう。
 当然ながら、ここでもリズム隊メインに聴いてしまうのがサイケおやじの本性であります。
 
05 Like Someone In Love
 オーラスは、そんな気分を増幅させてくれる絶妙のプレゼントとして、リズム隊だけのピアノトリオによる人気スタンダードの素敵な快演と書きたいところなんですが……。
 正直、ここまでの演目でのテンションの高さが些か感じられず、なんとなく普通っぽいのが物足りないところです。
 しかし、時代を考慮すれば、これはこれで新しいフィーリングが滲む演奏なんでしょうし、中盤のベースソロで何度か客席が湧くという、音だけ聴いていては分からない現場の雰囲気の良さは、如何にも日常的なライブの味わいでしょうか。
 ピアノトリオだけにしては10分を超える長い演奏ですが、それなりに退屈せずに聴けると思います。
 
ということで、全篇で57分弱の収録時間は、アッという間に聴かされてしまうほどで、本当のモダンジャズに接しているという気持ちにさせられました。
 
そしてジャケ写には特に「Featuring HERBIE HANCOCk」と記載されている事に偽りはありません。
 
つまりドナルド・バードとペッパー・アダムスは従来どおりでも、ハービー・ハンコックがリードしているであろうリズム隊の積極的な働きにより、新旧が見事に融合した演奏が熱いんですよっ!
 
音源としては決して新発掘ではありませんが、こうしてCD化されているのであれば、未聴の皆様には、この機会にぜひっ! とオススメしたく思います。
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チャーミングとは朝加真由美のこと

2016-09-22 17:43:57 | 歌謡曲
ハロー・チャーミング / 朝加真由美 (CBSソニー)
 
掲載したのは朝加真由美がアイドル時代の最後の1枚と思われるシングル盤で、しかも彼女がアシスタントを務めていた「オールスター家族対抗歌合戦」のエンディグテーマ曲という別格の扱いだった「ハロー・チャーミング」がA面!?
 
と書く他はなかったのは、失礼ながら相変わらず彼女の歌唱力が??? 
 
なもんですから……。
 
しかし、それでも作詞:さいとう大三&作曲:佐藤健、そして編曲:高田弘によるプロの仕事は流石に素晴らしく、ちょっとユーモラスなオチが利いた歌詞に溌剌チャーミングなメロディ、さらには演奏パートの要所でスライド、もしかしたらトーキング・モジュレーターを使ったかのようなギターサウンドの隠し味もニクイばかりのアレンジには耳を奪われてしまいます。
 
と同時に朝加真由美の声質というか、ルックスには色っぽい風情が隠しようもないのとは逆に、歌いっぷりがブリブリのぶりっ子歌謡という倒錯性が♪♪~♪
 
このあたりの感じ方は例によってサイケおやじの変態性の証なんでしょうが、それでもジャケ写に登場している朝加真由美は既にしてセクシーなお姉様ですよねぇ~~♪
 
ちなみに前述したトーキング・モジュレーターとは、当時のジェフ・ベックやピーター・フランプトン、ジョー・ウォルシュ等々が使っていたことで知られるようになったエレキギターのアタッチメントのひとつで、そこから伸びているホースを口に加え、呼吸と発声を組み合わせて振動させた空気を増幅するという仕掛けになっていて、サイケおやじも日本製のマクソンを今でも愛用しているという、ちょっぴり好き嫌いがある道具です。
 
手入れをしっかりしていないとホースの中にカビが発生したり!?
 
ということで、これは如何にも発売された昭和51(1976)年らしいと言えば勘違いかもしれませんが、前述したトーキング・モジュレーターの使用に関しては、その頃のロックでは流行の一端でもありましたし、正統派アイドルの仕事先としてのテレビ番組アシスタントという、所謂「感じの良さ」が優先される立場としての彼女の存在の確かさも相まって、レコード蒐集の趣味には格好のブツかもしれません。
 
ただし、毎日聴くという作業(?)は必要が無いという事も正解であり、時折に取り出してジャケットを眺め、中身のレコードの手触りだけを楽しむのも、決して悪い事じゃ~ないかと思えば、なかなかイヤミな自分に嫌悪感も……。
 
うむ、奥の細道は、またまだ続きそうです。
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ハンク・クロフォードとの出会い

2016-09-21 16:14:06 | Soul Jazz
It's A Funky Thing To Do / Hank Crowford (Cotillion)
 
我が国のイノセントなジャズファンからは、ほとんど人気も得られないハンク・クロフォードではありますが、サイケおやじは妙に肩入れしたくなるサックス奏者でして、そのきっかけとなったのが、1971年にアメリカで発売された本日掲載のLPでした。
 
しかし、告白すれば、サイケおやじがこれをゲットしたのは決してハンク・クロフォードを聴きたくてじゃ~なくて、バックを務めるリズム隊の凄い顔ぶれを裏ジャケ記載のクレジットで確認したからであって、そこにはなんとっ!
 
エリック・ゲイル(g)、コーネル・デュプリー(g)、リチャード・ティー(p,el-p)、チャック・レイニー(el-b)、ロン・カーター(el-b)、バーナード・パーディ(ds) というニューヨーク派のジャズソウル系セッションミュージシャンが集結しており、加えてアルバムタイトル曲「It's A Funky Thing To Do」にはジェームス・ブラウンのバンドで音楽監督を務めていたピィー・ウィー・エリスが特に作編曲とエレピで参加しているという豪華さですよっ!
 
つまりサイケおやじは、その面々が作り出すグルーヴに酔いたかったのが真相でありまして、折しもチャック・レイニーのリーダー盤に感化されていた1974年当時、所謂「虫の知らせ」とでも申しましょうか、その頃の銀座にあった「ハンター」という中古屋で邂逅した瞬間、これは何かあるっ!?!
 
という気分に急かされ、前述したとおりにアルバムジャケットを裏返しての吃驚仰天というわけです。
 
ちなみにハンク・クロフォードについては、もちろんその頃はクロスオーバーと称されていたフュージョンというジャンルで売れていた「CTI~Kudu」レーベルの人気スタアとして、我が国でも局地的な人気はあったと思うんですが、未だジャズ喫茶という独自の文化が栄えていた状況の中では、そのあまりにシンプルなソウルっぽいスタイルは軽く扱われ、そこで堂々と鳴らされるなんてことは無かったように記憶しています。
 
それでもハンク・クロフォードが後に少しは注目されたのは、フュージョン系人気アルトサックス奏者のデヴィッド・サンボーンが強い影響を受けた尊敬するプレイヤー云々という逸話が伝わってきたり、タモリが自分のラジオ番組でハンク・クロフォードを絶賛した翌日から、急にハンク・クロフォードのレコードが売れ出したという伝説も残されているほどで、失礼ながら他力本願といえばミもフタもないわけで……。
 
確かにテクニックや音楽理論、あるいは精神性とか社会状況を踏まえて演奏することが不必要とは思いわないまでも、もっとストレートにハート&ソウルを感じさせてくれるプレイヤーだって、この世には必要とされるはずという真実からすれば、ハンク・クロフォードの妙に逆らい難い魅力にも素直になっていいはずです。
 
また、追々に知る事になったその芸歴にしても、生まれ育ったメンフィスでは幼少期からピアノを習い、教会ではゴスペル聖歌隊に入っていた少年時代を経て、高校生の頃には後にモダンジャズの世界で大物となるジョージ・コールマン(ts) やブッカー・リトル(tp) と一緒にアマチュアバンドでアルトサックスを演奏していたそうですが、そんな日々の中、ついにレイ・チャールズに見出され、御大のバックバンドに入団するや、主にバリトン&アルトサックスを担当し、後には現場の音楽監督も任されていたというのですから、既にその時代から自己名義のアルバムを幾枚も出せたという実績も納得するしかありません。
 
しかし、そうしたウケの良さは、悩んで聴くのが本物という認識が強かった我が国の正統派ジャズファンには通用しなかったわけで、生粋のR&Bに染まったハンク・クロフォードの演奏を収めたレコードが、その頃までに日本盤で何枚発売されていたのか?
 
そんな疑問さえ無意味に思えるほど、ハンク・クロフォードという存在が広く洋楽ファンに知らされていなかったのは確かでしょう。
 
極言すれば、似た様な共通項をルーツにしながら我が国でも受け入れられたサム・テイラーというテナーサックスの偉人が既に存在していたのですから、もしもハンク・クロフォードが歌謡曲を吹いたイージーリスニング盤を出していたら?
 
なぁ~んていう妄想も捨てきれないのがサイケおやじの本音であり、つまりはそれほどストレートに琴線に触れてくる「ソウル」が、ハンク・クロフォードのアルトサックスには感じられるのですが……。
 
A-1 It's A Funky Thing To Do
 アルバムタイトル曲は既に述べたとおり、ファンクを創生した縁の下の力持ちともいうべきピィー・ウィー・エリスの提供作ですから、イントロからずっしり重心の低いリズム隊のグルーヴが素晴らしく、おそらくは左チャンネルのエレピがピィー・ウィー・エリス、そして右チャンネルのリズムギターはコーネル・デュプリーでしょうか、いゃ~、本当にたまりませんねぇ~♪
 肝心の主役たるハンク・クロフォードは、それが熟成された中盤から登場し、伸びやかな泣き節を披露していますが、ミステリアスな甘さが魅力です。
 そして全篇、3分半ほどの演奏ですが、聴くほどにシビレが強くなっていく感じです♪♪~♪
 
A-2 If Ever I Should Leave You
 グッと落ち着いたスローな演奏で、おそらくは歌物スタンダード曲だと思いますが、ハンク・クロフォードの人気がアメリカで高いのも、こ~ゆ~正統的な分かり易さがあるからかもしれません。
 というか、モダンジャズでは、もっと崩したテーマ解釈をやらなきゃ~いけない? みたいな強迫観念が滲んでしまうんじゃ~ないでしょうか?
 あえて、それをやろうとしないところにハンク・クロフォードの評価が分かれる要因があるような気がしますが、個人的には、これは好きです。
 ちなみに左チャンネルでオカズに専念するギターはエリック・ゲイルでしょうか、なかなかにジャズっぽい正統派ですから、ほとんどストレートにテーマメロディを吹いているハンク・クロフォードには最良のサポートだと思います。
 
A-3 Hills Of Love
 ラテンリズムのライトタッチな演奏で、イントロだけ聴いているとフュージョン期の渡辺貞夫が出てきそうな雰囲気ですが、ハンク・クロフォードも負けて(?)いません。
 この曲、このカラオケで、両者の競演があっても違和感は無いような気がするほどです。
 また、左チャンネルのラウンジっぽいギターはエリック・ゲイル、ベースはロン・カーターと思われますが、いかがなものでしょう。
 
A-4 Sophisticated Soul
 如何にもという曲タイトルだけでワクワクさせられるハンク・クロフォードのオリジナルですが、やってくれるのはサイケデリックなギターも印象的なジャズファンクで、左チャネルからのギターソロはエリック・ゲイルなのか、ちょっと推察に自信は持てませんが、イカシていますよ♪♪~♪
 そしてハンク・クロフォードの程好いヒステリー節(?)からは、ソウルジャズの魅力が放出されまくっています。
 ただし、個人的にはバーナード・パーディのドラムスにもうちょっとツッコミが欲しかったような……。
 
B-1 You're The One
 ミディアムアップのシャッフルビートも心地良い、これぞっ! ファンが期待するハンク・クロフォードのジャズ&ブルースソウルが全開の楽しさが満点!
 左チャンネルからのファンキーなギターはコーネル・デュプリーでしょうか? ニクイほどにカッコイイ~~♪
 しかし、それが左~右へと移動しては戻って来るというミョウチキリンなミックスになっているのは、如何にも時代ってやつなんでしょうかねぇ~~!?
 それでも、おそらくはチャック・レイニーと思われるベースとバーナード・パーディのドラムスによるグルーヴコンビネーションは鉄壁!
 
B-2 Parker's Mood
 モダンジャズを創生した天才アルトサックス奏者のチャーリー・パーカーが十八番のスローブルースですから、ハンク・クロフォードも神妙です。
 しかし、このリズム隊がバックアップするのですから、ゴスペル味はお約束以上で、だからこそハンク・クロフォードの個性も存分に発揮された、これはこれで名演だと思いますし、物足りないと感じるのも、イノセントなジャズファンの気持ちかもしれません。
 ちなみに人気者のリチャード・ティーが、いよいよここで本領を発揮しているのも嬉しいところでしょう。それに煽られて激情のブローに入って行くハンク・クロフォードに熱くさせられてしまうのが、サイケおやじの本音です。
 
B-3 Kingsize Man
 オーラスは、これまた如何にもというハンク・クロフォードのオリジナルで、アップテンポのソウルジャズが存分に楽しめますよ。
 もちろんリズム隊の強靭なノリは最高で、蠢きまくるチャック・レイニーのベース、ファンキーなリズムギターでキメまくるコーネル・デュプリー、リチャード・ティーのエレピも気持ちが良いですし、ビシッとツッコミがタイトなバーナード・パーディは言わずもがな、ハンク・クロフォードも主役の存在感を堂々と示してくれます。
 あぁ~、これの生演奏に接することが出来るなら、そのまんま昇天するのが幸せってやつかもしれませんねぇ~~♪
 
ということで、このアルバムに出会って以降のサイケおやじは、ようやくハンク・クロフォードの諸作を様々に聴いていこうという気持ちになったわけで、しかも前述したとおり、その頃にはちょうどクロスオーバー&フュージョンのブームが到来していた運の良さもあったもんですから、新旧のリーダー盤に何枚か接してみたんですが、結果的にこのLPが今でも一番好きです。
 
確か以前にはCD化もされていたはずですので、気になる皆様は、ぜひっ!
 
 
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