■涙のテディ・ボーイ c/w 番格ロックのテーマ / キャロル (フィリップス)

この季節、この時期になると思い出す歌のひとつが、本日掲載のシングル盤に収録された「番格ロックのテーマ」です。
それはこの歌がタイトルどおり、昭和48(1973)年9月に公開された東映映画「番格ロック(内藤誠監督)」のテーマ曲であって、サイケおやじがリアルタイムで鑑賞し、シビれまくったからに他なりません。
歌っているキャロルについては説明不要、ジョニー大倉(vo,g) と矢沢栄吉(vo,b) を中心に、内海利勝(g)、相原誠(ds)、ユウ岡崎(ds) 等々が参加して、昭和47(1972)年に公式デビューしたロックバンドであり、特筆すべきはオールディズ調のR&Rポップスに英語と日本語をゴッタ煮とした歌詞を融合させるという、まさに当時の論争であった「日本語のロック」云々という、些か答えの難しい問題に、あっさりと決着をつけた功績は偉大だと思います。
もちろん皮ジャンにリーゼントというオールドロッカーのスタイルは、忽ち模倣されたとおり、ルックスが既にロケンロール!?!
というイキの良さが人気のポイントだった事も否めませんが、しかし天の邪鬼なサイケおやじにはキャロルの全てが、どうにも自分の感性に合っていないという本音がありました。
さて、そんな時代の真っ只中、サイケおやじは前述した映画「番格ロック」を劇場鑑賞したわけですが、そんなところにキャロルが出ているとは知らずにと言うよりも、もしかしたらそういうインフォメーションがあったのかもしれませんが、キャロルにはほとんど感心が無かったサイケおやじですから、お目当ては東映十八番のスケバンアクションとエロティックバイオレンス、そして出演者の山内えみ子や片山由美子等々の怖くて綺麗な女優さんを観ることが第一義!
当然ながら内容は、それまでのプログラムシリーズの定番である不良女子グループの対立から、実はそれを利用して、悪辣な商場で儲けているヤクザ組織との最終決着戦という、本当に面白くて、胸キュンと痛快なアクションが炸裂した青春映画の大傑作が「番格ロック」と確信を得た時、そこにあったのがキャロルの「番格ロックのテーマ」でありました。
あ~ぁ~ あ~ぁ~ アイム ジャスト ア ロンリ~ガァ~~ル
恋はぁ~ うそつきぃ~
すべては消えたぁ~
靄ったストリングスとハープシコードのイントロから、ジワッと歌われるミディアムスローの流れから、中間部ではブラスも入れたメリハリの曲展開は、随所で得意のビートルズっぽさを隠そうともしない矢沢栄吉の潔さなんですが、やっぱり大倉洋一=ジョニー大倉の作詞が最高に映画の世界にジャストミート!
何度聴いても、傑作映画「番格ロック」のあの場面、この場面が蘇ってまいります。
ちなみに同時上映の「仁義なき戦い・代理戦争(深作欣二監督)」が、些か複雑な人間関係と錯綜する物語展開ゆえに、一度観ただけでは納得出来ないモヤモヤの仕上がりであればこそ、実質的な添え物扱いの「番格ロック」が目的意識の高いストレートな纏まりに感じられるのは当然で、何故ならば、その時に鑑賞していたサイケおやじは高校生でありましたからっ!
翌年2月に発売された掲載のシングル盤をゲットしたのは、思わず強い印象を与えられた自分なりの決意表明、それゆえの事でした。
そして話は逆というか、あえてカップリングとさせていただきたい「涙のテディ・ボーイ」は作詞作曲が矢沢栄吉の独り舞台で、それは制作時にジョニー大倉が例の問題で失踪していたからでしょうか?
ジャケ写にジョニー大倉が入っていないのも、その所為と思えば、納得する他はありません。
ただし、それでも「涙のテディ・ボーイ」は大野克夫のアレンジも秀逸な、せつなくも熱い名曲名唱と思います。
ということで、既に述べたとおり、なんだかなぁ……、と思っていたキャロルに対し、幾分の偏見が取れたのは、このシングル盤であり、つまりは映画「番格ロック」を観たからです。
もちろん劇中でキャロルが演奏する場面もきっちりあり、「ルイジアンナ」と「ファンキー・モンキー・ベイビー」をやっていたんですが、悲しいかな、それがあるので、肝心の映画「番格ロック」がキャロル側≒矢沢栄吉からの許諾が得られず、未だパッケージ化は叶わず……。
そりゃ~、キャロルにはキャロルの言い分や内部事情があるのは理解出来ますが、夥しいファンが何を望んでいるのか、そこを少しは斟酌して欲しいですよっ!
何よりも「番格ロック」という傑作映画が、特に現代の若者に観られないというのは、悲劇というよりも、犯罪じゃ~ないかと思うほどです。
最後になりましたが、その「番格ロック」に出演された片山由美子のプログには、当時の逸話のあれこれがスチールカット入りで紹介されていますので、ぜひともご訪問下さいませ。
あぁ、今も胸に残る「番格ロック」の残滓が……(敬称略)。