■いとしのレイラ / Eric Clapton (Polydor)
A-1 Looked Away
A-2 Bell Bottom Blues
A-3 Keep On Growing
A-4 Nobody Knows You When You're Down And Out / だれも知らない
B-1 I Am Yours
B-2 Anyday
B-3 Key To The Highway / ハイウェイへの関門
C-1 Tell The Truth
C-2 Why Does Love Got To Be So Sad ? / 恋は悲しきもの
C-3 Have You Ever Loved A Woman / 愛の経験
D-1 Little Wing
D-2 It's Too Late
D-3 Layla / いとしのレイラ
D-4 Thorn Tree In The Garden / 庭の木
所謂ロック名盤選において、必ずや推挙されるのが、エリック・クラプトンがデレク&ドミノス名義で1970年末に出した、この「いとしのレイラ」の邦題も面映ゆい2枚組LP「Layla And Other Assorted Love Songs」でありましょう。
もちろん、サイケおやじも吝かではありません。
実際、エリック・クラプトン(vo,g) がボビー・ホイットロック(vo,key) 、カール・レイドル(b)、ジム・ゴードン(ds)、そしてデュアン・オールマン(g) と刻み込んだ上記演目は全く捨て曲が無い、本当に充実したロックの聖典集だと思うばかりなんですが、今や歴史的認識として、この名盤アルバムは当初、全く売れず、評論家の先生方ばかりか、一般のロックファンにさえ軽視されていた現実は、サイケおやじの周辺でも、そのとおりでありました。
というのも、これは以前にも書きましたが、エリック・クラプトン本人がクリーム解散後に我々ファンが望んでいた爆発的なギターを聞かせてくれるレコードを出していなかった悪因悪果であり、例えばブラインド・フェィスでのヘタレから、ジョン・レノンのプラスティック・オノ・バンドへの参加、そしてリアルタイムの日本じゃ~、ほとんど知る人も僅かだったデラニー&ボニーのバックバンドに加入しての巡業等々が洋楽マスコミによって報じられたところで、やっと発売されたエリック・クラプトンの初リーダーアルバムが、これまた裏切り連鎖……。
しかし、その頃、高校生になったばかりのサイケおやじには、件のアルバム「エリック・クラプトン」が自分の感性に合っていたというか、経済的な問題から、聴きたくても聴けなかった現実が、入れてもらっていた校内同好会バンド組の先輩の尽力によって 好転し、貸していただいたLPは滋養強壮!?
ところが同時期の、つまり昭和46(1971)年春の我が国では、ひっそりと世紀の名盤「いとしのレイラ / Layla And Other Assorted Love Songs」が欧米とは約5カ月遅れで発売されていたんですねぇ~~!
いゃ~、これは本当に「ひっそり」って感じだったと思いますねぇ~~。
とにかく、エリック・クラプトン云々って話題性が薄かったいう印象があり、また当時は他に人気が爆発していたロックバンドやミュージシャンが目白押しだった洋楽状況がありましたからっ!
もちろん、時代的には既にロックもアルバムをメインに聴かれる状況になっていたはいたものの、現実的にはLP単位で勝負するバンドやボーカリストであったとしても、そこからカットされる先行シングルのヒットの大小によって、アルバムそのものの売れ行きが左右されていた真相に鑑みれば、デレク&ドミノスの歌と演奏には明らかにシングル向きの楽曲が無く、当然ながら、今や超名曲の「いとしのレイラ / Layla」にしても、当初は饒舌で長尺な演奏時間がマイナスの要因となり、ラジオの洋楽番組でさえも敬遠されていたんですねぇ~!?!
そこで欧米では、例の官能的なピアノとギターの絡みが美しい後半のインストパートをカットして編集した短縮バージョン収録のシングル盤が制作発売されていたほどで、我が国でも、それに追従したリリースはあったものの、世界的に不発……。
ですから、一応は、これまた先輩に連れて行かれたロック喫茶みたいな場所で、問題の「いとしのレイラ / Layla And Other Assorted Love Songs」を聴いていた事はあったんですが、それも「なんとなく」だったんですよ、正直……。
実は、これまた後で分かったんですが、そこでサイケおやじが聞かされていたのは、比較的地味なトラックが並んでいるA面だったという真相もあるにはあったんですが……。
それが変転(?)したのは同年晩秋、サイケおやじがラジオの洋楽番組で聴いてしまったオールマンズの「Statesboro Blues」でして、もちろんこれは同バンドが畢生の大傑作ライブ盤「アット・フィルモア・イースト」に収録の名演なんですが、そこで驚異のスライドギターを鳴り響かせていたのがデュアン・オールマンであり、さらに既に鬼籍に入られていたという非情な現実を知らされてみれば、この早世した天才の過去の偉業を探索する過程において、直ぐに遭遇したのが、デレク&ドミノスのアルバム「いとしのレイラ / Layla And Other Assorted Love Songs」であり、掲載したのは、その2枚組日本盤LP♪♪~♪
いゃ~~ぁ、これには覚醒していた(?)とはいえ、サイケおやじは心底ぞっこん!
特にC面はヘヴィで粘っこいロックサウンドを堪能させられる「Tell The Truth」、アップテンポでカッコイィ~~ギターが炸裂するロッキンソウルな「恋は悲しきもの / Why Does Love Got To Be So Sad ?」、そして狂おしくも叶わない恋情を歌とギターで描き切ったブルースロックの大名演「愛の経験 / Have You Ever Loved A Woman」と続く三連発をサイケおやじは、それこそ朝な夕なに聴きまくっていたものです (^^)
特に「愛の経験 / Have You Ever Loved A Woman」におけるエリック・クラプトンの刹那のギターソロにデュアン・オールマンのエグ味を効かせた泣きのスライドギターが対峙する、その展開の恐ろしさと素晴らしさには震えが止まらないほどっ!
殊更、デュアン・オールマンがアドリブソロを弾き始める、その最初のフレーズにはグッと惹きつけられ、ゾクゾクさせられますねぇ~~♪
これは、何時聴いても、揺るぐ事の無いサイケおやじのブルース衝動であります (^^♪
ですから、いよいよクライマックスを形成するD面ド頭にジミ・ヘンドリックス=ジミヘンのオリジナル「Little Wing」が置かれているのには最初面食らったんですが、ジミヘンの穏やかで霊感的な演奏とは異なり、ここではクラプトン流儀のポップな感覚が滲み出た様な、比較的ライトタッチに仕上げてあるのは以降に収録されている楽曲の流れからしても結果オーライだったと、まあ……、これは後付けの感想ではありますが、それにしても、ジミヘンが夭逝した1969年9月18日の直前、確か9月9日にデレク&ドミノスのカバーバージョンがレコーディングされたという伝説は、このアルバムに尚更の神秘的な存在感を付与している気がしてなりませんねぇ……。
閑話休題。
そして続く「It's Too Late」はイントロからしてビートルズの「Oh! Darling」だったのには正直、浮かれてしまったんですが、楽曲そのものもチャック・ウィリスと名乗る黒人シンガーが、1950年代に自作自演でヒットさせた素敵なR&Bのカバーということで、デュアン・オールマンのスライドギターがドツボのスワンプロック風味を引き立てているという、これまたサイケおやじの大好きなトラックであり、エリック・クラプトンのボーカルからも失恋ソングならではの「泣き」が滲み出ていて、実にイイ感じ♪♪~♪
ですから、いよいよ始まる「いとしのレイラ / Layla」の永久不滅のイントロの高揚感は筆舌に尽くし難いものがありますよねぇ~~~ (^^♪
巷間膾炙しているとおり、この名曲はエリック・クラプトンが当時、親友・ジョージ・ハリスンの妻だったパティを好きになり、その抑えがたい恋情を懇願した、せつない男の演歌節(?)という裏話を知らずとも、なんともネクラな必死さが伝わって来る様なエリック・クラプトンのボーカルと劣情を煽る様な激しいデュアン・オールマンのスライドギターがあればこそ、後半で流れ出す物悲しくも美しいピアノのメロディ、そしてそこへ絡みつくエレック・クラプトンとデュアン・オールマンのギターが文字どおり「すすり泣き」とか思えない痛烈な印象を残すのですから、たまりません♪♪~♪
もちろん、前述したエリック・クラプトンの横恋慕なんて逸話を当時のサイケおやじは知る由も無くて、只管にカッコイイばかりのイントロから全篇がギターロックの神髄と確信させられる熱い歌と演奏にシビレまくっていたわけなんですが、皆様ご存じのとおり、この「いとしのレイラ / Layla」はエリック・クラプトンの代名詞となり、これまでに夥しいライブギグで演奏され、同時に公式・非公式を問わず、そのライブ音源がどっさりのと残されてはいるものの、やはりオリジナルのスタジオバージョンが最高の仕上がりじゃ~ないでしょうねぇ~~♪
異論は重々承知しておりますが、サイケおやじは、そ~思うばかりです <(_ _)>
というのも、このアルバムのクロージングテーマと申しましょうか、オーラスに置かれている「庭の木 / Thorn Tree In The Garden」が、ボビー・ホイットロックによって歌われるアコースティック系のシンプルな楽曲という、全く絶妙としか思えないアルバムの構成があるからでして、「いとしのレイラ / Layla」によってヒートさせられ過ぎたリスナーの気分を心地良くクールダウンさせてくれる役割が課せられたとしたら、逆に「いとしのレイラ / Layla」が愛おしくなっちまうんですよ、サイケおやじは (^^♪
そして、ここまで聴き通した後になると、印象の薄かったA面が妙に人懐っこい感じで聴ける様になり、それは何ともジョージ・ハリスンっぽい曲調の「Looked Away」がエリック・クラプトンのネクラ節とボビー・ホイットロックの熱血ボイスで歌い分けられているという芸の細かさとコンパクトながらも流石のギターソロ、そして同系の趣向が煮詰められた「Bell Bottom Blues」の悶々とした味わいの濃さ!?
う~ん、このあたりの雰囲気は明らかに従来のロックとは一線を画した感じかもしれず、告白すれば当時高校生だったサイケおやじには共感しえないものがあったのは確かです。
しかし、これまた後年知ったところでは、この2曲にしても、結局は人妻パティに対する恋情の歪みを表現していたとか、特に「Bell Bottom Blues」は、その頃の彼女が好んでいたファッションに仮託した肉欲?
そんなこんなの虚実入り乱れた逸話にサイケおやじが感化されてしまった中年期以降は、グッと気持ちを溜めて聴ける様になったのも事実であります (^^;
そして、一転して後にスワンプロックと称されるサウンドスタイルを披露するアップテンポの「Keep On Growing」では、エリック・クラプトンの多重録音と云われるギターソロの怖いばかりの気迫! それが続くブルースの古典曲「だれも知らない / Nobody Knows You When You're Down And Out」では、エリック・クラプトンの 泣き節ボーカルに絡みつくデュアン・オールマンのしぶといスライドギター、さらには後半で歌いまくる御大のギターソロこそは、全く新しいタイプのブルースロック!
そんな思い上がった確信さえ抱かされてしまったですよ、若き日のサイケおやじは。
もちろん、そんな勢い込んだ気持ちで聴くB面がド頭に、またまたジョージ・ハリスンに影響されたかの如きインド風味の英国ポップス(?)という「I Am Yours」というのは肩透かし……。ところが、この楽曲の共作としてクレジットされている Ganjavi Mizami なる人物の「レイラとマジュヌンの物語」という詩集こそは、この大傑作アルバムのタイトルに大きな影響を与えたとか!?
まあ、そんな逸話でも知らなきゃ~、ちょいと聴いていられない違和感満点のトラックというのが、正直な感想でありました…… (^^;
でも、その我慢を通り過ぎた後の痛快ギターロック「Anyday」では、そのギター以上に熱いボビー・ホイットロックとエリック・クラプトンのツインボーカルが最高で、さらに明らかに途中からのフェードインで流れて来るブルースジャムの「ハイウェイへの関門 / Key To The Highway」の心地良さこそは、バンドとしての デレク&ドミノスの真骨頂でありましょう (^^♪
いゃ~~、エリック vs デュアン!!
こんな素晴らしい瞬間が記録されたのは奇蹟に他ならず、ブルースロック永劫の未来が聴かれるものと強く信じるばかりであります (^^♪
ということで、こ~やってアルバムを聴いていくと、つまりはループして鑑賞出来てしまう永久運動の可能性にさえ気が付かされてしまうほどです。
そして、こ~やってレイラの呪縛に捕らわれたサイケおやじは、ズブズブと泥沼に引き摺り込まれていったという、それが本日のオチではありますが、これは決して自分だけでは無いと思っておりますし、そんな人間模様(?)のあれやこれやが、極言すれば人類の歴史の極一部にでも関わっているのだとしたら、「レイラの呪縛」は永遠に解けないもの!?
まあ、あえて解脱する必要もありませんよねぇ~~ (^^♪
失礼いたしました <(_ _)>