■The Unissued Cafe Bohemia Broadcasts / Miles Davis (Domino = CD)
またまた出ましたっ!
というマイルス・デイビスの発掘音源CDで、内容はジョン・コルトレーンを擁していた1956~1958年のクインテットによるライプ演奏がメインになっています。
しかもネタ元がニューヨークにあったモダンジャズの聖地「カフェ・ボヘミア」からのラジオ中継ですから、ブツを開封する前からワクワクしてしまうのは、もはやジャズ者の宿業とばかりも言えません。
ところが、こう書いていながら、サイケおやじはバチアタリにも昨年買ったまんま、他にも買っただけで安心満足している夥しいCDやDVD等々の中に埋もれさせていたのですから、深く反省し、お詫びを申し上げる他はございません。
そして中身は、やっぱり凄いモダンジャズの神髄が堪能出来たのですから、サイケおやじの改悛の情を以下のご紹介でご理解願えれば、幸いでございます。
☆1956年9月15日
01 Theme / Announcement
02 Well You Needn't
03 It Never Entered My Mind
既に述べたとおり、ここから1957年4月13日までの3回のギグはマイルス・デイビス(tp) 以下、ジョン・コルトレーン(ts)、レッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) という所謂オリジナルクインテットの演奏になっていますで、世に言うところの「プレスティッジのマラソンセッション」を経ながらのハードパップなマイルス・デイビスが楽しめますよ。
気になる音質も全く普通に聴けるレベルというか、現在のような高音質ブートに慣れきっているお若い皆様の感覚は知る由がなくとも、ジャズという今では伝統芸能になってしまった音楽ジャンルに親しんでおられるのであれば、このメンバーによる極めて日常的なライブ演奏に接する幸せは大切な宝物と思います。
なにしろグイノリのベースにリードされるアグレッシヴな「Well You Needn't」では、なんとかクールな素振りを保つことに腐心するマイルス・デイビスとハズシ気味のジョン・コルトレーンの対比、さらに和みのレッド・ガーランドと若さ溢れるポール・チェンバースの間に立って絶妙のクッションを作り出すフィリー・ジョーという、これが当時ののマイルス・デイビス・クインテットの終わりなき日常だったんでしょうねぇ~~♪
その意味で続くスローな歌物「It Never Entered My Mind」が皆様ご推察のとおり、マイルス・デイビス十八番の繊細な表現に徹して演じられるのは、ファンが一番に望むところと思います。
ちなみに録音状態ではポール・チェンバースのベースが強くミックスされているのが個人的には高得点♪♪~♪
☆1956年9月29日
04 A Gril In Galico
05 StableMates
06 How Am I To Know (imcomplete) / Closing Announcements
いきなりマイルス・デイビスが得意技であるミュートによるアップテンポの歌物演奏「A Gril In Galico」とあって、スピーカーの前のサイケおやじもテンションが高くなるのを抑えきれませんが、フィリー・ジョーのドラミングも冴えまくりですよ♪♪~♪
ですからそれなりに快調なジョン・コルトレーンと定番フレーズ連発のレッド・ガーランドにはジャズ者歓喜の瞬間が満載でしょう。
そしてご存じ、モダンジャズのスタンダード「StableMates」が続けて演奏されるとあつては、ジャズが好きで良かったぁぁぁぁ~!
とジコマンを超えた感慨に浸る他はありません。
音質も「9月15日」のセッションと同等ですので、素直に楽しめると思います。
ただし残念過ぎるのが「How Am I To Know」が完奏バージョンで聴けないという……。まあ、これはラジオ中継放送ならでは事態なんでしょうが、かなり早いテンポで演じられている事からして、なにか時間を気にしていたと思えば、意想外の迫力にも納得です。
☆1957年4月13日
07 The Theme
08 Woody‘n You
09 Walkin'
この日もなかなか快調な演奏が聴かれるので、一説によるとバンド内部には相当に悪いクスリが蔓延していた事から、マイルス・デイビスは困っていたという逸話も???
それほど熱いんですねぇ~、このパートは♪♪~♪
とにかくハードボイルドな「The Theme」から爆発的な「Woody‘n You」の突撃姿勢、さらに「Walkin'」におけるグルーヴィな押し出しは、今更ながらモダンジャズが一番にヒップだった時代を再認識させられてしまいます。
ちなみに歴史的な考察として、おそらくはこのライブギグ直後あたりにマイルス・デイビスは自己のバンド、つまりはオリジナルクインテットを解散させたと言われていますから、感慨も深いですよねぇ~。
もちろん音質も普通に聴けるレベルなので、ご安心下さいませ。
という以上の音源は少なくともサイケおやじは初めて聴けた、素晴らしい「お宝」です。
☆1958年5月17日
10 All Of You (imcomplete) / Announcement
11 Announcement / Four
12 Bye Bye Blackbird
13 Walkin'
14 Closing Announcement / Two Bass Hit
さて、しかしこのパートは、これまでにも度々ブートやハーフオフィシャル盤で広く人気を集めた音源で、メンバーはマイルス・デイビス(tp) 、ジョン・コルトレーン(ts)、ビル・エバンス(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) という、今では夢のクインテットなんですか、何といってもジョン・コルトレーンの急成長というか、例のシーツ・オブ・サウンドが完成間近の吹きまくりスタイルがたまりません♪♪~♪
それは「Four」の突進力で一発明快、まさにハードパップの痛快を楽しめると思いますが、もうひとりの看板スタア(?)であるビル・エバンスの存在感も地味ながら侮れないでしょう。
そりゃ~、確かに黒人音楽的なノリとは異なっていますが、同時にポール・チェンバースとフィリー・ジョーの名コンビによる躍動的な保守本流のジャズビートがあればこそ、今も不思議な新感覚がニクイばかりで、「Bye Bye Blackbird」における変態イントロとか、それはそれでカッコマンの親分を「その気」にさせるんじゃ~ないか?
なぁ~んて、生意気な妄想も止まず、確かにマイルス・デイビスのミュートはジャズ者の琴線に触れるのであります。しかもジョン・コルトレーンが意図的に歌心を無視せんとするような態度!? ですから、そこに続くビル・エバンス特有の前ノリっぽいアドリブスタイルが愛おしいわけですが、当然ながら好き嫌いは十人十色ですから、ここでの「Walkin'」を前述1957年4月13日のセッションと聞き比べるのも一興かと思います。
う~ん、マイルス・デイビスって、何時も同じようなフレーズしか吹いていないのに、それは麻薬なんですよねぇ~、実際♪♪~♪
☆1958年11月:ニューヨークでのテレビショウ「Art Ford Jazz Party」
15 What Is This Things Called Love?
さて、これはボーナストラックとはいえ、かなり問題の音源で、一応確定とされているメンバーはナット・アダレイ(cor)、ベニー・グリーン(tb)、キャノボール・アダレイ(as)、ジェリー・マリガン(bs)、レッド・ガーランド(p)、バリー・マイルス(b)、キャンディド(per) に加えて他数名というのが定説なので、マイルス・デイビスの参加は疑問が残るところ……。
しかし演奏終了間際に入るMCでは、マイルス・デイビスも含めて、上記のメンバーの名前が飛び出しています。
もちろん実際に聴けばジャケット記載のクレジット諸々を素直に信じる事は出来ず、気になる演奏はラテンバーカッションが効いたアップテンポのハードパップに仕上がっているわけですが、このギターは誰? このピアノは本当にレッド・ガーランド? という不思議も打ち消せず、まあ、それを推察するのも楽しいと思いましょうよ。
そこでサイケおやじの当て推量は、キャンノンボール・アダレイじゃ~なくて、ジジ・グライス(as)、またギターはケニー・バレルかもしれないと思うんですが、いかがなものでしょうか?
☆1953年2月21日:ワシントンD.C.
16 A Night In Tunisia
そこでこれもボーナストラックながら、おそらくは初CD化の音源と思います。
メンバーはマイルス・デイビス(tp)、アレン・イーガー(ts)、テリー・ソウプ(p)、マックス・ローチ(ds)、そして正体不明のベース奏者が繰り広げるのがモダンジャズの聖典曲で、しかもアドリブパートも含めて、ほとんどマイルス・デイビスの独り舞台という熱気は危険極まりないです。
特にマックス・ローチのドラムスはポリリズムの恐ろしさが既に全開!
ええぇ~ぃ、ブラウニーは出ないのか!?
なぁ~んていう不条理な思いは、決して不遜ではないと書けば、お叱りでしょうか?
サイケおやじは正直を貫きたいです。
以上、これは本当に素晴らしい音源集で、冒頭で書いたように、ゲットしながら聴いていなかった自らのバチアタリを深く反省後悔しているのが、サイケおやじの現況……。
どうかジャズ者の皆様には、ぜひとも聴いていただきたく、強くオススメしたい「秘宝」というわけです。