OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

真夜中のソウルサキソフォン

2019-12-28 16:51:34 | Soul Jazz

Soul Of The Ballaad / Hank Crawford & The Marty Paich Orchestra (Atlantic)

  A-1 Blueberry Hill
  A-2 I Left My Heart In San Francisco
  A-3 Stormy Weather
  A-4 Sweet Slumber
  A-5 If I Didn't Care
  A-6 Stardust
  B-1 Any Time
  B-2 Whispering Grass
  B-3 Time Out For Tears
  B-4 I'm Gettin' Sentimental Over You
  B-5 There Goes My Heart
  B-6 Have A Good Time

帰宅するのは、ほぼ連日午前零時を過ぎた深夜なので、その後のリラックスタイムに自室で鑑賞する音楽にしても、音量を抑えて聴きつつ、心に染み入るレコードを取り出す事が多く、本日掲載のLPは最近のヘビロテ盤であります。

それはタイトルもスバリとそのまんま、ソウルジャズ派のサックス奏者としては名前を知られているはずのハンク・クロフォードが、有名スタンダード曲をマーティ・ベイチが編曲指揮したオーケストラをバックに、じっくりと吹いてくれるという、本当に偽りの無いアルバム ♪♪~♪

いゃ~~、なにしろ上記した演目をご覧下さいませ。

このアルバムが世に出たのは1963年と思われますが、それゆえにジャズ者やポップス愛好者にはお馴染みの曲が選ばれていますし、例え知らない曲名であっても、実際にハンク・クロフォードが吹いてくれるメロディに接すれば、あぁ~~、この歌はっ!

と感じ入る事は必至でありましょう。

しかも、ここでのハンク・クロフォードはテーマの原メロディを素直に吹いているだけで、そのフェイクは聞かせても、アドリブなんて無粋なものは、すっぱりと切り捨ている潔さは最高 ♪♪~♪

そ~ゆ~演奏に対し、イノセントなジャズファンからは、これはジャズじゃ~なくて、ムードミュージックだっ!

という烙印が押される事も、そりゃ~確かにあるでしょう。

それはマーティ・ベイチのアレンジによるストリングスが本当に美しく、同時にリズム隊が慎ましいという仕上がりがアルバム全篇の味わいを決めている結果にもポイントはあるかもしれません。

しかし、他のジャズミュージシャン、例えばジョン・コルトレーン(ts,ss) にしても、スタンダード曲のスローな演奏においては、ほとんど素直にメロディを吹奏するだけでリスナーを気持ち良くする結果を鑑みれば、ハンク・クロフォードをジャズの世界から疎外する必要も無く、当然ながらジャズだのソウルだのというジャンルに拘泥するのは愚の骨頂!?

このアルバムは、それをサイケおやじに教えてくれましたですねぇ~~♪

美しく魂の入ったハンク・クロフォードのアルトサックスの音色と紡ぎ出されるお馴染みのメロディに酔わされつつ、その日を終えるのが、最近のサイケおやじの日常であります。

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メンフィスの魂のシチューで高揚!

2019-10-17 17:32:37 | Soul Jazz
Memphis Soul Stew / King Curtis (Atco)

アメリカのメンフィスという地方都市は、エルヴィス・プレスリー所縁の地というだけでなく、古くから黒人音楽の名演・名唱が夥しく生産されていた事は歴史的にも認められるところですが、その多くには白人スタッフが関与していた事もまた、確固たる現実でした。

特に有名なのはオーティス・レディングやルーファス・トーマス等々が所属していた名門レーベルのスタックスは白人経営であり、レコーディング現場のエンジニアやミュージシャンにしても、ほとんどが所謂ホワイトボーイズでありました。

また、同様の実情は他にもアラバマ州マッスル・ショールズのフェイム・スタジオが知られるところです。

そして、それらの場所で作られたレコードが全国的なヒットになるにつれ、ニューヨークやハリウッド等々からもレコーディングをするべく来訪するスタア歌手や有名グループが次々に増えていった事から、逆説的に名を上げたのがアメリカ南部のローカルなレコーディング会社だったのですから、これもひとつの地方創生だったのかもしれません。

ちなみに、これはサイケおやじも不思議に思っていた事なんですが、何故にアメリカの地方都市には小さなレコード会社、つまりはインディーズレーベルが多数存在しているのか?

という疑問なんですが、これはやはりアメリカの特殊事情というか、広大な国土に暮らす人種毎に聴く、あるいは聴かれる音楽が強く分類選別されていたので、必然的にローカルスタアが求められていた事が大きな要因だったようで、しかも地方のレコード会社は弱小資本なので自前のレコーディングスタジオが無く、結果として独立したレコーディングサービスの会社が演奏パートを担当する専属ミュージシャンを付けて、レコード制作の実務を販売(?)するという産業システムが普通だったのです。

ですから、メンフィスに限らず、各地の主要都市にあったレコーディングスタジオで作られたサウンドは、そこだけの独独の雰囲気が刻み込まれているのは自然の成り行きだったのでしょう。

今日、所謂「スタックスサウンド」と呼ばれる、ディープソウルな黒人音楽は殊特徴的な代表格と思います。

ちなみに件の「スタックスサウンド」は、その初期段階で機材もスタジオもチープの極みだった事から、マイクや機材のセッティング場所がスタジオ内で常に決められた位置だった事が結果オーライというか、毎度同じ様な音が作り出されていたのも納得されるところです。

さて、そんな中で本日のお題は、やはりメンフィスに設立されたアメリカン・サウンド・スタジオでありまして、経営者は以前にスタックスでレコーディングエンジニア兼ギタリストとして働いていたチップス・モーマンなんですが、その設立の経緯については皆様ご推察のとおり、金銭面に関しての喧嘩別れであり、すったもんだの末に手にした和解金を元手にしたと云われています。

これが1964年頃の事で、そこに集められたセッションプレイヤーで常連だったのがレジー・ヤング(g)、トミー・コグビル(b)、ジーン・クリスマン(ds)、ボビー・ウッド(p)、ボビー・エモンズ(org) 等々でしたが、他地域からも、例えば全国区のスタアになる前のボビー・ウーマック(g)、フェイム・スタジオに出入りしていたダン・ペン(g) やスプーナー・オールダム(p,org) という優れたソングライターとの交流もあった事から、決して黒人音楽だけに留まらない幅広いジャンル、例えばロックやカントリー&ウエスタン等々を含むポップス全般のレコードの製作現場として、アトランティックやEMI、そしてRCA等々の大手レコード会社やその系列レーベルに所属の歌手やバンドが、チップス・モーマンにプロデュースを依頼するという業界の流行が、1960年代後半には出来上がっていたようです。

その中から作り出されたヒット曲としては、ボックス・トップスの「あの娘のレター / The Letter」やエルヴィス・プレスリーの「Suspicious Minds」が日本でもお馴染みですし、他にもダスティー・スプリングフィールドの「Son-Of-A Preacher Man」、ジョー・テックスの「Skinny Legs And All」等々、普通に黒っぽいだけじゃ~なく、カントリー&ウエスタンやフォークロック的な要素も含んだサウンドプロデュースの雰囲気は、それまでの南部系ディープソウルとは絶妙に異なる味わいが感じられるんですが、いかがなものでしょう。

もちろん、そこには黒人音楽ならではのグルーヴがびっしり刻まれていますから、ノー文句でカッコイィ~イわけです。

そして本日掲載のシングル盤A面収録「Memphis Soul Stew」は、キング・カーチス(ts) が1967年にアメリカン・サウンド・スタジオで吹き込んだ、まさにそれがたっぷりと楽しめる名演で、ソウルジャズのインスト曲なんですが、アメリカ南部のソウルフードの調理過程に見立てたメンバー紹介により、リズムとビートが順次構成され、いよいよ飛び出すリーダーのテナーサックスに呼応してのホーンセクションのリフは、黒人集会のコール&レスポンスを強く想起させ、これが本当に魂を熱く高揚させるんですねぇ~~♪

演奏メンバーはキング・カーチス(ts) 以下、前述したレジー・ヤング(g)、トミー・コグビル(b)、ジーン・クリスマン(ds)、ボビー・ウッド(p)、ボビー・エモンズ(org) に加えて、R. F.テイラー(g)、ジーン・ミラー(tp)、チャールズ・チャーマーズ(ts)、ジミー・ミッチェル(ts)、フロイド・ニューマン(bs) が脇を固めているらしく、実は告白すると、サイケおやじが初めて聴いた「Memphis Soul Stew」は、アレサ・フランクリンと一緒に出ていたフィルモアでのライブバージョンであり、それはコーネル・ドュプリー(g)、ジェリー・ジェモット(b)、バーナード・パーディ(ds) を核としたキングピンズの物凄く有名な演奏でしたから、てっきりこのオリジナルのシングルバージョンもキング・カーチス率いる自前のキングピンズかと思いきや、真相(?)に触れた時には愕然とさせられましたですねぇ~~~!?!

だって件のフィルモアにおけるライブバージョンでのベースやドラムスのキメのパターン、ギターのオカズの入れ方等々が、スタジオレコーディングされたオリジナルバージョンと一緒ですからねぇ~~、極言すれば、あの印象的なコーネル・ドュプリーの「メンフィスギター」は、完コピだったのかぁ~~~!?!

という素朴な疑惑というか、真実はひとつと申しましょうか、つまりはそれほどにアメリカン・ミュージック・スタジオ専属のプレイヤーは凄腕だったという事なんですよっ!

ちなみに問題(?)のギタープレイがレジー・ヤングなのか、あるいはR. F.テイラーなのか、そのあたりも大いに気になるところです。

ということで、今回は本当に簡単にしか書けませんでしたが、メンフィス地域からは今も不滅な歌や演奏が夥しく作られて来ましたので、これからも追々にご紹介しつつ、現地で活動していたミュージシャンや業界人についても何かしら書き残していきたく思います。

個人的にはチップス・モーマンと結婚していたソングライターでもあり、美人ボーカリストでもあったトニ・ワインが大好きなのでした。
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ファンクか4ビートか、ルー・ドナルドソンの物思い

2019-10-11 20:32:29 | Soul Jazz
Cosmos / Lou Donaldson (Blue Note)

とても進歩的なジャズメンのひとりがルー・ドナルドソン

というのは、例によってサイケおやじの独断と偏見かもしれませんが、しかしビバップ~白人主導のクールジャズや所謂ウエストコーストジャズが全盛だった1950年代前半、逸早くハードバップと称された如何にも黒人らしいファンキーなスタイルを推進し、その盛り上がっていた最中にオルガンやギターを入れたロッキンソウルな快楽ジャズ路線へ転進しての人気獲得は、今も売れているアルバム群やシングルヒット「Alligator Bogaloo」等々に刻まれている事は言わずもがな、さらに進化したクロスオーバーやフュージョンが大流行した1970年代になると、今度は素早く往年の4ビートを基調とした伝統的なスタイルに回帰したのですから、これには変わり身が早くてカメレオンとまで呼ばれる(?)ハービー・ハンコック(p,key) や所謂新伝承派を標榜したウイントン・マルサリス(tp) あたりも脱帽するしかないでしょう。

しかし、ルー・ドナルドソンが世渡りだけで様々なスタイルの演奏をやっていた事は決してないはずで、そのターニングポイントと推測可能なレコードが後付けながらも確認出来ると思えば、1971年に発売された本日ご紹介のLPも、サイケおやじに様々な感情を呼び覚ましてくれる1枚です。

録音は1971年7月16日、メンバーはルー・ドナルドソン(as) 以下、エド・ウィリアムス(tp)、レオン・スペンサー(key)、メルヴィン・スパークス(g)、ジェリー・ジェモット(el-b)、アイドリス・ムハマッド(ds)、レイ・アルマンド(per)、さらにエッセンスと名乗るミルドレッド・ブラウン、ナオミ・トーマス、ロザリン・ブラウンの3人組ボーカルグループ等々がアルバム裏ジャケに記載されておりますが、他にも助っ人の参加があるのかもしれないという疑惑(?)は、アルバムを聴き進めていけば納得されると思います。

A-1 The Caterpillar
 覚悟はしていたつもりでも、これは凄まじい嵐のジャズファンク!
 総論、終わり!
 と書いてしまえばミもフタも無いほどに熱いソウルが噴出した演奏で、いきなりシンプルなベースのリフからファンキーなリズムギター、16ビートのドラムスにエッセンスのクールでブラックなゴスペルユニゾンのボーカルがテーマメロディを歌い上げ、電子オルガンの下支えに煽られ(?)たようにトランペットとアルトサックスが出てきますが、ここはやっぱりリズムセクション&コーラスボーカルの存在が強いですねぇ~~!?
 曲調は、なんとなく初期のスライ&ファミリー・ストーンみたいな感じで、それゆえにルー・ドナルドソンのアドリブが聊か間延びした雰囲気に思えますが、キメるところはきっちりキメてから、レオン・スペンサーに美味しいパートを譲っているのは親分の貫禄でしょうか。
 あぁ~~、このオルガンのアドリブソロとバックのギター、ベース&ドラムスの演奏は、もっともっと長く続いて欲しいと思わざるを得ないです。

A-2 Make It With You
 おぉ~~、これはブレッドのヒット曲「二人の架け橋」のカバーとあって、ミディアムテンポでソフト&メローな演奏を聞かせてくれますが、ここでもコーラスボーカルが良い味出しまくり ♪♪~♪
 またメルヴィン・スパークスのアドリブが、これまたヘタウマ寸前の匠の技とでも申しましょうか、ツボをしっかり押さえた歌心は侮れませんし、レオン・スペンサーもニクイばかりですよ ♪♪~♪
 そして個人的にはジェリー・ジェモットのベースが地味~~に素晴らしくて、シビレます!

A-3 If There's Hell Below (We're All Going To Go)
 これがまた問題の演奏というか、全篇で鳴り響くファンキーなリズムギターはワウワウも使っているようですし、ビシバシのドラムスとパーカッションにグルーヴィなリフを重ねるエレキベース、さらにはボトムから盛り上げていくオルガンは過激にノリますからねぇ~~~♪
 もはやルー・ドナルドソンは、神棚の親分みたいな感じですが、惚けたリードボーカルが御本人かと思えば、ここぞっ! で入ってくるシンプルなアルトサックスの意味付けも確かなんでしょう。
 と、書いてしまうのは、やっぱりここでもリズム隊各人のプレイばっかりに耳が惹きつけられるからでして、良くも悪くも、これは凄い演奏と思うばかり ♪♪~♪
 特に終盤、トランペットのアドリブのバックのリズムセクションは強烈ですよっ!
 ちなみに原曲はカーティス・メイフィールドが自作自演した1970年のニューソウルな人気名曲なんで、こちらも機会があればお楽しみ下さいませ。シングルバージョンが殊更に熱いです。

B-1 Caracas
 さてさて、A面が相当に過激だった所為でしょうか、B面ド頭にはルー・ドナルドソンが1954年にレコーディングした陽気な自作曲が再演されていて、ちょっとした安心感を与えてくれるのは流石、名門「ブルーノート」の品格でしょうか。
 しかしそれでも演奏は緩やかなラテンロック気味であり、これはまあ、当時の流行のひとつでもあったんですが、テーマメロディをユニゾンするコーラスボーカルがあってこそ、レイドバック(?)したルー・ドナルドソンのアルトサックスには和んでしまいますし、何故か途中に妙なエコーというか、オクターヴマシーンが使われたようなサウンドになっているのは、これでいいのかっ!?
 そしてここではエド・ウィリアムスのトランペットが伸びやかな下世話さを発揮していて、サイケおやじは好きですし、メルヴィン・スパークスも敢闘賞ですよ ♪♪~♪
 もちろん、レオン・スペンサーは言わずもがなの快楽主義ということで ♪♪~♪

B-2 I'll Be There
 これまたジャクソン5の大ヒット曲をジェントルに演じてしまったというシャリコマ路線と言うなかれ!
 ここまで衒いの無い姿勢こそがルー・ドナルドソンの持ち味でしょう。
 その所為でしょうか、メルヴィン・スパークスが歌いまくったアドリブを披露するんですが、途中から妙にアウトスケールの迷い道に入り、最後はきっちり纏めるという憎らしさ!?
 ですからレオン・スペンサーのオルガンには一層夢中にさせられるのでした。

B-3 When You're Smiling
 オーラスは一番に「らしい」という4ビートによるスタンダード曲の演奏ですから、イノセントなジャズファンにも必ずやウケる快演が、ここに楽しめます ♪♪~♪
 それは エド・ウィリアムスのトランペットが楽しく歌えば、メルヴィン・スパークスのギターやレオン・スペンサーのオルガンが正統派の実力を披露し、いよいよ登場するルー・ドナルドソンの露払いを立派に務めるのですから、親分も大ハッスルと書きたいところなんですが、さあ、これからってところで無慈悲にもフェードアウト……。

う~ん、ということで、冒頭でターニングポイントと書いたのは、実は最後の「When You're Smiling」があまりにもルー・ドナルドソンにハマリ過ぎて、かえってアルバム全体が中途半端な印象になっている感じが残るからです。

もちろん、そんな気分はサイケおやじだけなんでしょうが、それにしても個人的には、ここでのリズムセクションだけの演奏を延々と聴いていたいという不遜な気持ちを打ち消せません。

それほど、このアルバムでの彼等のグルーヴは強烈な快楽感に満ちているんですよっ!

裏を返せば、ここでの参加メンバーは当時のルー・ドナルドソンのバンドではレギュラーだったと思われますし、日本では一般に無名なトランペッターの エド・ウィリアムスにしても、一緒にレコーディングを残した数枚のアルバムが確認されているんですから、ライブギグの日常では、これに近い演奏を繰り広げていたのかもしれません。

そんな中、ルー・ドナルドソンが浮いていた場面があったとすれば、もう……、そろそろ自分は4ビートでの勝負の場に戻る決意というか、きっかけを模索していたんじゃ~なかろうか……?

なぁ~んて、とんでもない妄想を抱いてしまうんですよ、このアルバムを聴いている時のサイケおやじは。

当然ながら、ルー・ドナルドソンは以降もクロスオーバーやイージーリスニングに接近したアルバムを出していくんですが、ここまでの過激さは薄れていき、むしろ保守的なスタイルに輝きを増していた事は、残されたレコーディングに接すれば、なんとなくでも感じられてしまうのですが、いかがなものでしょう。

うむ、確かにジャケ写に登場している親分は、何かを考えているようだ……。
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レオン・スペンサーは何処へ

2019-09-17 20:30:49 | Soul Jazz
Bad Walking Woman / Leon Spencer (Prestige)

今となっては、その全盛期に、全く我が国のジャズマスコミやジャズ喫茶から締め出されていたプレイヤーが少なくなかった現実の中で、本日ご紹介のLPを1972年に出したレオン・スペンサーも、そ~したオルガン奏者のひとりでありました。

もちろん、やっていたのはソウルジャズそのものでしたから、コルトレーンが神様になっていた当時の日本のジャズ喫茶じゃ~、無視されて当然の音楽性とはいえ、ちょうどその頃からジワジワと勢力を拡大していたロックジャズや未だクロスオーバーと呼ばれていたフュージョンが侮れない流行となれば、そこで注目を集めていたミュージシャンが参加しているレコードが漁られるのは自然の理、まさに未知との遭遇が求められていたように思います。

で、このLPにおけるサイケおやじのそのポイントからのお目当てはヒューバート・ロウズ(fl) やジョー・ベック(g)、ソニー・フォーチュン(as) という、ちょうどその頃にクロスオーバーを牽引していたレーベルだったCTIの諸作やマイルス・デイビスのバンドで一躍注目され始めた面々でしたので、肝心の主役であるレオン・スペンサー(org) 以下、ヴァージル・ジョーンズ(tp)、バズ・ブラウナー(fl) 、デイブ・ハバード(ts)、メルヴィン・スパークス(g)、アイドリス・ムハマッド(ds)、バディ・コールドウェル(per) 等々の参加している他のメンバーについては知っている人もいれば、名前ぐらいしか……、という感じで、まあ、正直に言わせていただければ、関心は無いに等しかったんですよ。

ところがそんな気分で針を落としてみたら、これがいきなり自分の感性にジャストミート ♪♪~♪

ソウルもロックもブルースもジャズもゴスペルもラテンもゴッタ煮の美味しい闇鍋なんですねぇ~~ ♪

しかも収録全曲がレオン・スペンサーのオリジナルとクレジットされていながら、どっが聞いたことがあるよなぁ~~、これって! というニンマリ感もたまりません。

A-1 Hip Shaker
 ミディアムテンポのシャッフル系ソウルジャズで、デイブ・ハバードの正統派タフテナーやレオン・スペンサーのハードバップがモロ出しのオルガンが、それこそたっぷりのブルースフィーリングを提供してくれますが、メルヴィン・スパークスとアイドリス・ムハマッドが打ち出してくるタテノリファンキー(?)なリズム&ビートが快適過ぎて、クセになりそうな演奏です。

A-2 Down On Dowling Street
 初っ端からブルース&ソウルなオルガンが導く、これまたミディアムスローのブルースインストでありながら、メルヴィン・スパークスのギターソロはジョージ・ベンソンがグラント・グリーンをやっているような似非モダンな感覚があり、同時にペンタトニック多様気味ところはブルースロック!? しかし続くレオン・スペンサーのオルガンのアドリブは本人が喚きちらして歌うが如きシャウト入りですから、その対比の真っ黒さがニクイばかりです。

A-3 In Search Of Love
 一転して、今度はストリングスオーケストラが入ったラウンジ系のソフトなボサロックと申しましょうか、アレンジはビリー・ヴァー・ブランクとクレジットされていますが、どことなくイナタイ雰囲気の中、ここでいよいよフルートのアドリブソロが聴かれますが、これをヒューバート・ロウズと思いたいサイケおやじの思惑とは離れたところで、バズ・ブラウナーのクレジットが一緒にあるのは気になるところです。
 また、ここでのボサノバっぽいリズムギターはジョー・ベックなんですが、レオン・スペンサーのオルガンも含めて、これをソウルジャズと括るのは、まあ、ど~でもいいか ♪
 気持ちイイ~ですからねぇ~~ ♪

A-4 If You Were Me And I Were You
 これまた最初っからストリングスやフルートが絡んでくる軽妙洒脱なモダンジャズなんですから、前半の黒っぽさは何処行ったぁ~~~!?
 それでもグビグビと淀みなく弾き続けるレオン・スペンサーのオルガンプレイには迷いが無いようで、中盤以降は相当にアグレッシブなフレーズ展開をやってくれるのは、それも新しい感覚の追求なんでしょうかねぇ~~!?
 本当に摩訶不思議な気分にさせられてしまいます。

B-1 Bad Walking Woman
 まさにアルバムタイトル曲だけあってホーン&ブラスセクションも入ったファンキー&グルーヴィンな演奏で、メルヴィン・スパークスのリズムギターも心地良く、レオン・スペンサーのオルガンも王道路線 ♪♪~♪
 もっと長くやって欲しかったですよ。

B-2 When My Love Has Gone
 なんだか知っていたような曲タイトルではありますが、粋なストリングスとメロウムードが滲み出るオルガンの存在感が胸キュン系のメロディを紡いでくれるのは高得点 ♪
 コンガが絶妙なアクセントのリズム隊、またモード風味のアドリブに踏み込んだりするレオン・スペンサーのフュージョン感覚が意外にイケている気がします。
 
B-3 When Dreams Start To Fade
 これまたソフト&メロウな演奏でジョー・ベックのアコースティックギターによるリズムカッティング、膨らみのあるストリングスのアレンジ、そしてメロディ優先主義のオルガンに専心するレオン・スペンサーがニクイばかりではありますが、おそらくはヒューバート・ロウズと思われるフルートが手の込んだアドリブを披露しているあたりはジャズ者も納得するしかありません。
 だからだでしょうか、後半ではレオン・スペンサーもプログレのオルガンみたいな世界に入る瞬間までも聞かせてくれるのは、果たしてこれがソウルジャズ?

ということで、これはプレフュージョン的な演奏が目立つ内容かもしれません。

しかし、サイケおやじにはレオン・スペンサーの演奏からソウルジャズの土台が確かに感じられますし、それが決して新しくないのに、前を向いているムードがジワッと伝わってくるんですが、いかがなものでしょう。

この当時残されたレコーディングはプレスティッジに幾つかあるんですが、個人的には「CTI~ Kude」レーベルに吹き込んでいたら、相当に面白いアルバムが作られたように思います。

ちなみに後に知ったことではありますが、レオン・スペンサーはルー・ドナルドソン(as) のバンドに入って、この売れっ子リーダーのブルーノート諸作にレコーディングを残していますが、そこでもグルになって盛り上げていたドラマーのアイドリス・ムハマッドが、このアルバムでも強い印象!

うむ、演目によってはラウンジ系BGMにもなりかねないトラックから、それでもジャズソウル味が失せないのは、そんな盟友関係(?)があるんでしょうかねぇ~~。

ということで、レオン・スペンサーも日本じゃ~あまり知られることのなかったオルガン奏者だったんですが、近年は隠れ人気があるらしく、CD復刻されたアルバムも幾つかあるようです。

最後になりましたが、掲載したLPのジャケ写は小さくて判別も難しいとは思いますが、これが実物大となれば、そこにはびっしりと「イイ尻」がねぇ~~♪

CDが出ていたとしても、こ~ゆ~愉しみがありますから、アナログ盤LPの良さは不滅と思うばかりです。
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ディスカバー・ジャッキー・アイヴォリー

2019-09-06 17:58:33 | Soul Jazz
Soul Discovery / Jackie Ivory (Atlantic)

  A-1 High Heel Sneakers
  A-2 Freddy The Freeloader
  A-3 So What
  A-4 I Left My Heart In San Francisco
  A-5 The Monkey Woman
  B-1 Lonely Avenue
  B-2 Do It To Death
  B-3 Sister Sadie
  B-4 Thank Heaven

本日の掲載盤もジャッキー・アイヴォリー、あるいはジャッキー・アイボリーかもしれませんが、これまでほとんど無名に近いと思われるオルガン奏者のソウルジャズ♪♪~♪

しかし告白すると、サイケおやじはそんなこたぁ~~全然知らず、実はジャケットの雰囲気と発売レコード会社「アトランティック」のイメージから、これはてっきりアメリカは南部系ディープソウルな黒人歌手のアルバムかと思い込み、さらに売っていたのがイギリスの中古レコード店の安売コーナーだったもんですから、裏ジャケの曲目さえもロクに確認せず、他に釣り上げたブツと十把一絡げ的にゲットしてきた1枚でありました。

ですから、実際に針を落として、これがオルガンとテナーサックがメインのインストによるソウルジャズだった事に気づかされた時、初めて主役のジャッキー・アイヴォリーがオルガン奏者であったと知ったわけですし、もちろんサイケおやじにはそのあたりについての何の知識もありません。

ただ、このLPが世に出た1965年は、当地イギリスがビートルズやストーンズ等々の所謂ブリティッシュビートの大ブームに沸いていた頃であり、そんな中のモッズ族と呼ばれるファン層にはオルガンを使ったロックやソウルが好まれていたそうですから、アメリカ産のオルガンジャズ~ソウルジャズのレコードもイギリス盤が発売されていたのは需要の高まりだったのかもしれません。

もちろん掲載の私有盤もイギリスプレスなんですよ。

で、気になる演奏メンバーはジャッキー・アイヴォリー(org)、ポール・レンフロー(ts)、ビル・ニックス(ds) という、日本の常識では無名のトリオ編成で、えっ!? ギターもパーカッションも入っていないのっ!?

という不安の先入観は確かにございますが、どっこいっ! これがこのトリオだからこその遠慮会釈の無い真っ濃い演奏!

まずはド頭「High Heel Sneakers」は当時ストーンズも十八番にしていた本場アメリカのR&Bヒットですから、快適なテンポで演じられるブルース&ソウルはお約束とはいえ、ジャッキー・アイヴォリーのオルガンからは強靭なベースのグルーヴとモリモリと放出されるソウルフィーリングがテンコ盛り♪♪~♪ またポール・レンフローのテナーサックスもシンプルながらガッツ溢れる音色には大いに気を惹かれること請け合いですよ。

ですから、アッと驚くというか、マイルス・デイビスのモードジャズが完成されたとする名盤アルバム「カインド・オブ・ブルー」からの「Freddy The Freeloader」と「So What」が続けて演じられるのは、いきなりの違和感&先入観がっ!?!

う~ん、案の定、クールなブルースの前者は無難な仕上がりになっていますが、マイスル・デイビスのオリジナルスタジオバージョンに比べればグッとテンポアップして演じられた「So What」は、その勘違い的な解釈に逆に血が騒ぐとでも申しましょうか、ひたすらに突進するトリオの勢いが憎めないところで、野太いテナーサックにハードロック風味も感じられるオルガン、残響音を活かしたゴスペルチックなドラムスがイイ感じ♪♪~♪

と思った次の瞬間に置かれているのが「I Left My Heart In San Francisco」、つまり邦題「思い出のサンフランシスコ」という、誰もが耳にしたであろう人気曲の暑苦しいカバーバージョンなんですから、たまりません。

おぉ~~、ポール・レンフローのテナーサックスはある意味、その神髄に迫っていると思うのはサイケおやじだけでしょうか? この熱気と埃っぽさがクセになっちまいますよぉ~♪

そんなこんなの雰囲気はAラス「The Monkey Woman」の熱血ゴスペルジャズ、「Do It To Death」や「Thank Heaven」といった、おそらくはジャッキー・アイヴォリーのオリジナル曲と思われるトラックにも充満しており、このあたりがソウルジャズそのものに対する踏絵とでも申しましょうか、好き嫌いが十人十色の感性の確認になるような気がしますし、その意味でレイ・チャールズの代名詞「Lonely Avenue」での力強く、押し出しの効いた演奏に圧倒されるサイケおやじは、完全にこのアルバムに洗脳されたぁ~~、と痛感させられてしまいましたですよ。

あぁ~~、このファットなオルガンの響き、グイノリのドラムスにハードパップを体現したテナーサックの音色とフレーズの熱さが最高に好きですっ!

そしてそんなこんなが盾の両面の如く演じられているのが、ホレス・シルバーの当たり曲「Sister Sadie」で、本家に負けないアップテンポのハードバップ解釈が尚更にシンプルで潔し! ほとんど後半がヤケクソ気味に突っ走っている感じが素晴らしいですねぇ~~~♪
 
それもまた、ジャズの魅力であり、ソウルジャズの中毒性を示すひとつの恒例と思うばかりです。

ということで、全篇がイケイケの仕上がりで、こんな凄いアルバムがリアルタイムの我が国では紹介されていたんでしょうか?

正直に言わせていただければ、オルガン主体のソウルジャズには聊か気抜けのビールみたいな、事なかれ主義のアルバムも少なくない中にあって、曲毎の演奏時間は短くとも、ここまでガッツ溢れるトラックばかりというLPは裏名盤、あるいは好事家のコレクターズアイテムになっていると確信する次第です。

そして全くの偶然からこのLPに出会ったサイケおやじは、その幸運と至福に感謝するばかりですし、それを少しでもお裾分けしたい気持ちで、この文章を綴っております。

ど~か皆様には、何かの機会に一度はお楽しみいただきとうございますし、もしも現在まで、未CD化であったとすれば、逸早い復刻を強く願っているのでした。
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ファンクなエレキベースに酔いしれて

2019-09-03 19:40:01 | Soul Jazz
Soul Sugar / Jimmy McGriff (Captol)

  A-1 Sugar, Sugar
  A-2 Ain't It Funky Now
  A-3 Signed, Sealed, Delivered, I'm Yours
  A-4 Dig On It
  A-5 Bug Out
  B-1 The Now Thing
  B-2 You're The One
  B-3 Fat Cakes
  B-4 New Volume
  B-5 Spirit In The Dark

ジミー・マグリフは今日まで、様々なレーベルに多くのレコーディングを残してきたオルガン奏者なので、我が国でも殊更ソウルジャズのファンならずとも名前ぐらいは知られている思います。

しかも、そのスタイルは当然ながら第一人者たるジミー・スミスの影響下にあるとはいえ、さらにスマートな黒っぽさを発揮するかと思えば、時には逆にドロ臭いイモっぽさを滲ませたり、演目によってはロックバンドに入っていても不思議じゃ~ない様なプレイさえも披露するんですから、侮れません。

もちろん、それは時代に沿った変化変遷でありましょう。

しかし、同時に忘れてはならないのがジミー・マグリフの信念というか、頑固さと申しましょうか、常にリスナーを楽しませるというプロとしての姿勢は、決して独善的ではないと確信させられてしまうのがサイケおやじのジミー・マグリフに対する尊崇の念!?

平たく言えば、それが4ビートだろうが、ズンドコファンクだろうが、このプロフェッショナルなオルガン奏者の作ったレコードは何時だって気持ちの良いものなんですよ♪♪~♪
 
時には企画の勢いに乗ってのオルガンによるバトルセッションのライブ盤まで出してしまうのは、その実力の証明と思います。

で、本日ご紹介のLPにしても、まさに1970年に発売されたに相応しい内容で、それは収録演目からも一目瞭然、当時の洋楽ヒットに如何にものオリジナル曲を混ぜ込んで、しかもレコード片面に5曲ずつという構成は、ほとんど3分前後のトラックばかりという短さが逆にイイ感じ♪♪~♪

それは全くの個人的な思い入れと言われれば反論の余地なんて皆無なんですが、実はこのアルバムの最大の魅力はジミー・マグリフのオルガンよりも耳を惹きつけられてしまうリズム隊の存在で、特に全篇に蠢いてドライヴしまくるエレキベースの凄さは、それだけ聴いていても最高の快感なんですねぇ~~♪

なにしろ時として、うっ! これって……、ジャコ!?

と思わせられる場面さえもあるんですからっ!

またギターがこれまた素晴らしく、ファンキーなリズムプレイや味わい深いオカズ、さらにはツボを外さないアドリブソロには強引に耳を奪われるはずです。

そしてほとんどがアップ&ミディアムテンポの演奏をガッチリと支えているのがドラムスとパーカッションが提供する熱いファンクビートで、もはやジミー・マグリフのオルガンは、ど~~すんのぉ~~!?

と、不遜なことを書いてしまうほど、このアルバムはハナからケツまでファンク&ファンキーなビートに支配されているんですねぇ~~~♪

ところがなんとっ!

これほどの強烈に熱い演奏を聴かせてくれる件のメンバーが誰なのか、そのクレジットがジャケットには全く記載されておりず、また安定感のあるホーンセクションの構成メンバーも同様の扱いであり、アレンジャーの名前さえ明らかじゃないんですから、プロデューサーのソニー・レスター以下製作者側はあくまでも「ジミー・マグリフ」と「当時のヒット曲」で売りたかったのでしょうか?

裏を返すというか、実はそれが本来の目的なんでしょうが、それだけジミー・マグリフはアメリカでは絶対的な人気があったという証明であり、発売元が大手のキャピトルレコードというあたりも流石の腰の据わり方と思うばかりです。

最後になりましたが、既に述べたとおり、ここに収録の演目は当時のヒット曲で、「Sugar, Sugar」はアーチーズのバブルガムヒット、「Ain't It Funky Now」はジェームス・ブラウンの代名詞的十八番、「Signed, Sealed, Delivered, I'm Yours」は邦題「涙をとどけて」で知られるスティーヴィー・ワンダーの特大ヒットですから、各方面で夥しくカバーバージョンが作られてきたとはいえ、やはりここまでジャズファンクをやられてしまうと、たまりませんよ、実際!!

またスライストーン絡みのリトル・シスターがヒットさせた「You're The One」の潔さ、あるいはアレサ・フランクリンの「Spirit In The Dark」におけるジワジワとしたゴスペル風味の盛り上げも素晴らしく、このあたりは演奏時間の短さゆえのフェードアウトが残念至極……。

そ~した傾向は、アルバム全てのトラックに確かに残る不満であって、ジミー・マグリフのオリジナル演目であろう「Dig On It」「Bug Out」「The Now Thing」「Fat Cakes」においても、まさにオルガンによるアドリブソロのイイところでフェードアウトされしまうという恨みは偽らざるサイケおやじの本音です。

しかし、それでもこのアルバムが大いに魅力なのは、しつこく訴えたくなるほどに強力なリズム隊による全篇ファンクなリズム&ビートの嵐!
 
特にエレキベースが凄すぎますよっ!

思わず腰が浮き、グッと気持ちが熱くなってしまいますよっ!

そしてそれをフィ~ルソ~グッに和ませてくれる「New Volume」の甘ぁ~いスローなラテンファンクが身に染みるというわけです。

いゃ~~、やっぱりソウルジャズって、素晴らしいですねぇ~~~♪
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オーデル・ブラウンがオーティスに会ったなら

2019-09-02 17:37:35 | Soul Jazz
Odell Brown Plays Otis Redding (cadet)
 
  A-1 Hard To Handle
  A-2 Try A Little Tenderness
  A-3 Let Me Come Home
  A-4 I've Been Loving You Too Long
  A-5 Any Ole Way
  B-1 Good To Me
  B-2 Pain In My Heart
  B-3 Sitting On The Dock Of The Bay
  B-4 Good To Me
  B-5 Fa-Fa-Fa-Fa-Fa (Sad Song)

オルガン奏者のオーデル・ブラウンの我が国での知名度は決して高いとは言えないと思いますが、その演奏スタイルはソウルジャズの愛好者にはグッと惹きつけられる魅力があって云々と書けば、各方面からのお叱りは覚悟しているサイケおやじです。

実は不肖サイケおやじにしても、ほとんどオーデル・ブラウンについては知る事もなく、それでいて気になる存在になったのは、偶然にも聴くことが出来た本日ご紹介のLPによってなんですが、いゃ~~ぁ、それこそがひとつの幸せでありました♪♪~♪

なにしろ演じられているのがアルバムタイトルどおり、ソウルシンガーの大御所にして、このレコードが世に出た1969年には既に不慮の飛行機事故で天国へ召されていたオーティス・レディングが十八番のヒット曲集なんですから、たまりませんっ!

しかも、ここでやってくれているのが、オーティス・レディングがその天才的な歌声と共にあったメンフィス所縁のスタックスサウンド、つまり重心の低いリズム隊と迫力に切れ味を加味したブラス&ホーンセクションのコラボレーションをきっちりそれなりに狙ったものなんですから、オーデル・ブラウンのオルガンプレイからは黒っぽさが遺憾なく発揮されているのもムベなるかなっ!

そして相当にジャズっぽいフレーズや複雑なイントネーションを含んだアドリブも、ストレートに楽しめてしまうのは、プロデュースとアレンジを担当したジーン・バージの流石の手腕と思います。

なにしろ、これは後に知った事でもありますが、ジーン・バージは本職がサックス奏者で、1950年代からソウル畑で活動し、1960年代に入っては様々なR&RやR&Bのヒット曲制作の現場に携わり、有名なところではゲイリー・US・ボンドのトンデヘレヘレでお馴染み「真夜中のロックパーティ / Quarter to Three」とか、同じくフィンガー5の「学園天国」の元ネタである「New Orleans」等々、とにかくこの黒人ロックボーカリストが1960年代に出したレコードの多くで作編曲に関わり、テナーサックスを吹きまくっていたのがジーン・バージで、そのキャッチーな感性が業界で重宝されていた事は、その頃に出回った他の歌手やボーカルグループのレコードに沢山刻まれていますし、そんな流れからチェス&カデットレコードでプロデュースの仕事もやっていたのだと思います。

ちなみにブルース・スプリングスティーンは幼少期からゲイリー・US・ボンドの大ファンで、ついには1980年代にこの憧れのスタアの新作レコードを製作し、嬉々として共演までしていた事は、今やロックの歴史のひとつでしょう。

閑話休題。

で、肝心のこのアルバムは、残念ながらレコードジャケットに演奏メンバーの記載は無いものの、ヘヴィなドラムスや蠢くエレキベースのグルーヴ感が素晴らしく、その現場のセッションプレイヤーの実力も確かだと思います。

と同時に、それゆえに継子扱いというか、当然ながらリアルタイムじゃ~、我が国のジャズファンからは見向きもされなかったと思われますし、所謂レアグルーヴのブームがあった時でさえも、そんなには騒がれなかったのでしょうか、CD化されたという噂も耳にしたことがありません。

実は冒頭に述べたように、サイケおやじが偶然にもこのアルバムを聴けたという場所は1990年代初頭のドイツでの話で、なんとっ!?!

それはおそらく現地でプレスされたドイツ盤LPだったんですから、世界は広いようで狭いというか、良いものには壁も垣根も無いんですよねぇ~~~♪

ということで、もちろんオーデル・ブラウンは他に幾枚ものアルバムを出していますし、セッション参加したレコーディングも相当にあるんですが、ソウルジャズが気になる皆様には、まずはこのLPあたりからお楽しみいただきたいと切に願うのは、全くサイケおやじの老婆心(?)であります。

そしてオーデル・ブラウンというオルガン奏者にシビレるのも、密かな楽しみと思うばかりです。
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春にはソウルフルなストラット

2017-04-02 18:13:56 | Soul Jazz
Soulful Strut / The Young-Holt Unliited (Brunswick / テイチク)

ソウルジャズのインストもまた、サイケおやじの大好物なんですが、それに火をつけた(?)名曲名演のひとつが本日掲載のシングル盤A面曲「Soulful Strut」であります。

ご存じのとおり、演じているザ・ヤング・ホルト・アンリミテッドと名乗るバンドはエルディ・ヤング(b) とレッド・ホルト(ds) のリズム隊コンビがやっていたプロジェクトで、この2人組はラムゼイ・ルイス・トリオに在籍して、例えば「The "In" Crowd」等々幾多のヒット作に関わった事から名を挙げ、1966年に揃って独立して以降の活動が、このザ・ヤング・ホルト・アンリミテッドなんですが、そんな事はこの「Soulful Strut」を最初に聴いた瞬間にシビレた1969年当時のサイケおやじには知る由もありません。

とにかく、その頃のラジオから頻繁に流れていた「Soulful Strut」のワクワクするR&Bとジャズのフィーリングが好きでたまらず、キャッチーなブラスのリフ、哀愁滲むメロディをシンプルに弾くピアノ、そして蠢くベースとちょっぴりイナタイ感じのドラムスのビートが作り出す不思議と都会的なソウルフィーリング♪♪~♪

と書いたのは、今にしての具体的な感想であって、リアルタイムでは既に知っていた同系グループのブッカーTとMGs に比べれば、格段にオシャレな感じだっんですよねぇ~~♪

もちろん、両方のグループには単純に比較出来ない奥深さがある事は言うまでもありませんし、サイケおやじはどっちも大好きなんですが、そのあたりの好みのポイントのひとつが、エルディ・ヤング(b) とレッド・ホルト(ds) がシカゴという黒人音楽の拠点のひとつをベースに活動していたというルーツがあり、これはサイケおやじがアメリカの大衆音楽を今日まで聴き続けて来た履歴を振り返ると、ブルースでもジャズでもソウルでもロックでも、件のシカゴという地域から登場し、作られていった楽曲やレコードのほとんどが自分の好みにジャストミートの現実に符合しているのですから、この「Soulful Strut」が好きになった時は中学生だったサイケおやじにしても、あらためて自らの趣味嗜好を再認識させられるわけです。

すると実はこの素敵なソウルインストには元ネタがある事も追々に知ってしまい、それがバーバラ・アクリンという、これまたサイケおやじが大好きな女性ソウルシンガーのバーバラ・アクリンが放ったヒット曲「Am I The Same Girl?」でありまして、なんとっ!
 
エルディ・ヤング(b) とレッド・ホルト(ds) は、そのバック演奏に参加していたところから、ボーカルパートを抜き、前述したとおり、ピアノをダビングしての改作が「Soulful Strut」だったとか!?

その背景には、同曲を書いたシカゴソウル界の才人たるユージン・レコードとアレンジャーのサニー・サンダースの目論見があったようで、前述のバーバラ・アクリンは当時、ユージン・レコードと夫婦関係にあったという真相も意味深ではありますが、とにかく元ネタとなった彼女の「「Am I The Same Girl?」とそのインストバージョン「Soulful Strut」は切っても切れない魂の絆でありましょう。

ちなみにユージン・レコードはシャイ・ライツのリードヴォーカリストとしても活躍した、まさにシカゴソウル界の大立者ですから、リスナー十人十色の好みの問題は当然ありますが、それでも関わった作品にはハズレがほとんどありませんので、要注意ですよ。

ということで、春にはオシャレなソウルジャズのインストでも聴きながら、ウキウキするのも悪くありません。

実際、サイケおやじは、これまで集めたザ・ヤング・ホルト・アンリミテッドのレコードやCDからお好みのトラックを選び出して纏めたファイルを車の中で鳴らしては、イイ気分に浸っています。

あぁ、こうしていられる現在の幸せに感謝です。
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ハンク・クロフォードとの出会い

2016-09-21 16:14:06 | Soul Jazz
It's A Funky Thing To Do / Hank Crowford (Cotillion)
 
我が国のイノセントなジャズファンからは、ほとんど人気も得られないハンク・クロフォードではありますが、サイケおやじは妙に肩入れしたくなるサックス奏者でして、そのきっかけとなったのが、1971年にアメリカで発売された本日掲載のLPでした。
 
しかし、告白すれば、サイケおやじがこれをゲットしたのは決してハンク・クロフォードを聴きたくてじゃ~なくて、バックを務めるリズム隊の凄い顔ぶれを裏ジャケ記載のクレジットで確認したからであって、そこにはなんとっ!
 
エリック・ゲイル(g)、コーネル・デュプリー(g)、リチャード・ティー(p,el-p)、チャック・レイニー(el-b)、ロン・カーター(el-b)、バーナード・パーディ(ds) というニューヨーク派のジャズソウル系セッションミュージシャンが集結しており、加えてアルバムタイトル曲「It's A Funky Thing To Do」にはジェームス・ブラウンのバンドで音楽監督を務めていたピィー・ウィー・エリスが特に作編曲とエレピで参加しているという豪華さですよっ!
 
つまりサイケおやじは、その面々が作り出すグルーヴに酔いたかったのが真相でありまして、折しもチャック・レイニーのリーダー盤に感化されていた1974年当時、所謂「虫の知らせ」とでも申しましょうか、その頃の銀座にあった「ハンター」という中古屋で邂逅した瞬間、これは何かあるっ!?!
 
という気分に急かされ、前述したとおりにアルバムジャケットを裏返しての吃驚仰天というわけです。
 
ちなみにハンク・クロフォードについては、もちろんその頃はクロスオーバーと称されていたフュージョンというジャンルで売れていた「CTI~Kudu」レーベルの人気スタアとして、我が国でも局地的な人気はあったと思うんですが、未だジャズ喫茶という独自の文化が栄えていた状況の中では、そのあまりにシンプルなソウルっぽいスタイルは軽く扱われ、そこで堂々と鳴らされるなんてことは無かったように記憶しています。
 
それでもハンク・クロフォードが後に少しは注目されたのは、フュージョン系人気アルトサックス奏者のデヴィッド・サンボーンが強い影響を受けた尊敬するプレイヤー云々という逸話が伝わってきたり、タモリが自分のラジオ番組でハンク・クロフォードを絶賛した翌日から、急にハンク・クロフォードのレコードが売れ出したという伝説も残されているほどで、失礼ながら他力本願といえばミもフタもないわけで……。
 
確かにテクニックや音楽理論、あるいは精神性とか社会状況を踏まえて演奏することが不必要とは思いわないまでも、もっとストレートにハート&ソウルを感じさせてくれるプレイヤーだって、この世には必要とされるはずという真実からすれば、ハンク・クロフォードの妙に逆らい難い魅力にも素直になっていいはずです。
 
また、追々に知る事になったその芸歴にしても、生まれ育ったメンフィスでは幼少期からピアノを習い、教会ではゴスペル聖歌隊に入っていた少年時代を経て、高校生の頃には後にモダンジャズの世界で大物となるジョージ・コールマン(ts) やブッカー・リトル(tp) と一緒にアマチュアバンドでアルトサックスを演奏していたそうですが、そんな日々の中、ついにレイ・チャールズに見出され、御大のバックバンドに入団するや、主にバリトン&アルトサックスを担当し、後には現場の音楽監督も任されていたというのですから、既にその時代から自己名義のアルバムを幾枚も出せたという実績も納得するしかありません。
 
しかし、そうしたウケの良さは、悩んで聴くのが本物という認識が強かった我が国の正統派ジャズファンには通用しなかったわけで、生粋のR&Bに染まったハンク・クロフォードの演奏を収めたレコードが、その頃までに日本盤で何枚発売されていたのか?
 
そんな疑問さえ無意味に思えるほど、ハンク・クロフォードという存在が広く洋楽ファンに知らされていなかったのは確かでしょう。
 
極言すれば、似た様な共通項をルーツにしながら我が国でも受け入れられたサム・テイラーというテナーサックスの偉人が既に存在していたのですから、もしもハンク・クロフォードが歌謡曲を吹いたイージーリスニング盤を出していたら?
 
なぁ~んていう妄想も捨てきれないのがサイケおやじの本音であり、つまりはそれほどストレートに琴線に触れてくる「ソウル」が、ハンク・クロフォードのアルトサックスには感じられるのですが……。
 
A-1 It's A Funky Thing To Do
 アルバムタイトル曲は既に述べたとおり、ファンクを創生した縁の下の力持ちともいうべきピィー・ウィー・エリスの提供作ですから、イントロからずっしり重心の低いリズム隊のグルーヴが素晴らしく、おそらくは左チャンネルのエレピがピィー・ウィー・エリス、そして右チャンネルのリズムギターはコーネル・デュプリーでしょうか、いゃ~、本当にたまりませんねぇ~♪
 肝心の主役たるハンク・クロフォードは、それが熟成された中盤から登場し、伸びやかな泣き節を披露していますが、ミステリアスな甘さが魅力です。
 そして全篇、3分半ほどの演奏ですが、聴くほどにシビレが強くなっていく感じです♪♪~♪
 
A-2 If Ever I Should Leave You
 グッと落ち着いたスローな演奏で、おそらくは歌物スタンダード曲だと思いますが、ハンク・クロフォードの人気がアメリカで高いのも、こ~ゆ~正統的な分かり易さがあるからかもしれません。
 というか、モダンジャズでは、もっと崩したテーマ解釈をやらなきゃ~いけない? みたいな強迫観念が滲んでしまうんじゃ~ないでしょうか?
 あえて、それをやろうとしないところにハンク・クロフォードの評価が分かれる要因があるような気がしますが、個人的には、これは好きです。
 ちなみに左チャンネルでオカズに専念するギターはエリック・ゲイルでしょうか、なかなかにジャズっぽい正統派ですから、ほとんどストレートにテーマメロディを吹いているハンク・クロフォードには最良のサポートだと思います。
 
A-3 Hills Of Love
 ラテンリズムのライトタッチな演奏で、イントロだけ聴いているとフュージョン期の渡辺貞夫が出てきそうな雰囲気ですが、ハンク・クロフォードも負けて(?)いません。
 この曲、このカラオケで、両者の競演があっても違和感は無いような気がするほどです。
 また、左チャンネルのラウンジっぽいギターはエリック・ゲイル、ベースはロン・カーターと思われますが、いかがなものでしょう。
 
A-4 Sophisticated Soul
 如何にもという曲タイトルだけでワクワクさせられるハンク・クロフォードのオリジナルですが、やってくれるのはサイケデリックなギターも印象的なジャズファンクで、左チャネルからのギターソロはエリック・ゲイルなのか、ちょっと推察に自信は持てませんが、イカシていますよ♪♪~♪
 そしてハンク・クロフォードの程好いヒステリー節(?)からは、ソウルジャズの魅力が放出されまくっています。
 ただし、個人的にはバーナード・パーディのドラムスにもうちょっとツッコミが欲しかったような……。
 
B-1 You're The One
 ミディアムアップのシャッフルビートも心地良い、これぞっ! ファンが期待するハンク・クロフォードのジャズ&ブルースソウルが全開の楽しさが満点!
 左チャンネルからのファンキーなギターはコーネル・デュプリーでしょうか? ニクイほどにカッコイイ~~♪
 しかし、それが左~右へと移動しては戻って来るというミョウチキリンなミックスになっているのは、如何にも時代ってやつなんでしょうかねぇ~~!?
 それでも、おそらくはチャック・レイニーと思われるベースとバーナード・パーディのドラムスによるグルーヴコンビネーションは鉄壁!
 
B-2 Parker's Mood
 モダンジャズを創生した天才アルトサックス奏者のチャーリー・パーカーが十八番のスローブルースですから、ハンク・クロフォードも神妙です。
 しかし、このリズム隊がバックアップするのですから、ゴスペル味はお約束以上で、だからこそハンク・クロフォードの個性も存分に発揮された、これはこれで名演だと思いますし、物足りないと感じるのも、イノセントなジャズファンの気持ちかもしれません。
 ちなみに人気者のリチャード・ティーが、いよいよここで本領を発揮しているのも嬉しいところでしょう。それに煽られて激情のブローに入って行くハンク・クロフォードに熱くさせられてしまうのが、サイケおやじの本音です。
 
B-3 Kingsize Man
 オーラスは、これまた如何にもというハンク・クロフォードのオリジナルで、アップテンポのソウルジャズが存分に楽しめますよ。
 もちろんリズム隊の強靭なノリは最高で、蠢きまくるチャック・レイニーのベース、ファンキーなリズムギターでキメまくるコーネル・デュプリー、リチャード・ティーのエレピも気持ちが良いですし、ビシッとツッコミがタイトなバーナード・パーディは言わずもがな、ハンク・クロフォードも主役の存在感を堂々と示してくれます。
 あぁ~、これの生演奏に接することが出来るなら、そのまんま昇天するのが幸せってやつかもしれませんねぇ~~♪
 
ということで、このアルバムに出会って以降のサイケおやじは、ようやくハンク・クロフォードの諸作を様々に聴いていこうという気持ちになったわけで、しかも前述したとおり、その頃にはちょうどクロスオーバー&フュージョンのブームが到来していた運の良さもあったもんですから、新旧のリーダー盤に何枚か接してみたんですが、結果的にこのLPが今でも一番好きです。
 
確か以前にはCD化もされていたはずですので、気になる皆様は、ぜひっ!
 
 
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オルガン婦人のヒップ&ソウル

2014-10-26 14:36:34 | Soul Jazz

Hip Soul / Shirley Scott (Prestige)
 

先日掲載した内藤やす子のジャケ写を眺めていたら、急に聴きたくなったのがシャーリー・スコットというわけで、理由は言わずもがな、ルックスが似ている事は掲載したLPの表ポートレイトで納得いただければ幸いでございます。

で、彼女はオルガンの女王とまで称されたジャズプレイヤーで、そのスタイルはハードパップ~ソウルジャズ、そしてラウンジ系のライトな演奏まで心地良く聴かせてくれるんですが、特徴的なのは所謂オルガンジャズでは当然とされるフットペダルとのコンビネーションによるベースパートをあまり弾かない事から、そこに拘るマニアにとっては二流の烙印が……。

しかし、それゆえにあえて本職のベース奏者を入れた演奏には独特のスイング感やグルーヴが表出されているのも確かであって、サイケおやじは大好きなんですよ♪♪~♪

そして前述したフットペダル云々については、本当にそれで強靭なドライヴ感を出せるプレイヤーは現実的に少ないという真相が否めず、特に我が国においてオルガンジャズが好きではないというリスナーが案外と多いのは、そのあたりにも原因があるとあるとすれは、シャーリー・スコットの演奏こそはストレートに楽しめるものと思うのですが、いかがなものてしょう。

さて、そこで本日ご紹介したのは、1961年頃に発売された1枚で、メンバーはシャーリー・スコット(org) 以下、スタンリー・タレンタイン(ts)、ハービー・ルイス(b)、ロイ・ブルックス(ds) という強力布陣! 録音は同年6月2日とされています。

A-1 Hip Soul   
 初っ端からグルーヴィなベースの4ビートウォーキングとナチュラルなソウル風味が滲むオルガンのイントロに導かれ、ダークな音色のテナーサックスがブルースリックを吹いてくれる、もう、それだけでグッとシャーリー・スコット・カルテットの演奏に惹きつけられること請け合いのツカミですよ、これはっ!
 地味ながら、的確なビートを打ってくるドラムスも良い感じ♪♪~♪
 ご存じのとおり、シャーリー・スコットはタフテナーの王様たるエディ・ロックジョー・デイビスのバンドで一躍名を上げた事から、テナーサックス入りの演奏ではツボを外さないサポートの上手さ、そしてブルース&ソウルの味わいを決して無駄遣いしないプレイは好感が持てるところです。
 そして、おそらくは当時から既に夫婦関係にあったと思われれるスタンリー・タレンタイとの相性も素晴らしいかぎりです。

A-2 411 West
 これまたミディアムテンポのブルースながら、グッとハードパップの本質に迫っているのは、どっしりと重心の低いビートを提供するハービー・ルイスの基本に忠実なベースワークの所為でしょうか。このあたりにフットペダルを使わず、あえて本職のベース奏者を起用した成果があるように思います。
 うむ、スタンリー・タレンタインの硬質なソウルフィーリングが、たまりません♪♪~♪

A-3 By Myself
 前2曲もよりもテンポが速い演奏で、一応は歌物の体裁ではありますが、メンバー揃ってやっている事はソウルフルなハードパップに他なりません。
 そして特筆すべきは似たような感じの演奏がLP片面で続いているにはかかわらず、聴いていてダレるなんてことが少しも無いのは、シャーリー・スコットが持ち前の、良い意味での「軽さ」があるからかもしれません。
 所謂コテコテではないブルースフィーリングが絶妙の歌心に結び付いているんじゃ~ないでしょうか。
 そしてアドリブパートに入ってからのスピードアップした演奏の爽快感は、即興でありながら随所で「お約束」のキメを出しまくるという、まさにファンが望むところを具象化しくれますから、相互作用的なノリの良さが、このセッションの魅力と痛感!
 
B-1 Trane's Blues
 タイトルどおり、ハードパップ時代のジョン・コルトレーンが数回レコーディングも残している十八番のオリジナル曲ということで、ど~してもスタンリー・タレンタインとの比較が優先してしまうのはジャズ者の宿業でしょうが、そんなの関係~ねぇ~~! 
 ミディアムテンポの力強い4ビートグルーヴの中で唯我独尊、自分が信ずるままを吹きまくるスタンリー・タレンタインは流石と思うばかりです♪♪~♪
 バシャバシャと鳴らしてくれるロイ・ブルックスのシンバルも大好きです♪♪~♪

B-2 Stanley's Time
 これぞっ! ハードパップの魅力が噴出の演奏で、絶妙のマイナースケールを入れたテーマからアドリブパートの構成は、参加メンバー全員の意思の統一が強く感じられますねぇ~~♪
 まさに「資質に合った」とは、こういう演奏を云うんじゃ~ないかと思います。
 う~ん、もっと長い時間、聴かせて欲しかったですよ。 

B-3 Out Of This World
 オーラスはジャズでも幾多の名演が残されているスタンダード曲ということで、リスナーも気楽に構えていられるわけですが、ここではちょっぴりモードっぽい解釈のテーマ部分から一転、アップテンポのアドリブパートに突入してからはスタンリー・タレンタインが燃えまくり、続くシャーリー・スコットも減速しませんから心底、スカッとしますよ♪♪~♪
 ちなみにここではハービー・ルイスが抜けているようで、つまりはシャーリー・スコットがフツトペダルとのコンビネーションでベースパートもオルガンで出しているようですが、それほど本職の不在は気にならないと思えば、レギュラーバンドのほとんどにあえてベース奏者を入れていた意図のあれこれを考えてしまうとはいえ、結果オーライなんで、まあ、いいか……。

ということで、こういう演奏があまりウケない我が国の状況は、特にジャズ喫茶が全盛だった昭和50年代までの話で、レアグルーヴとかコテコテとかいう大義名分が通用している現代であれば、サイケおやじがここでクドクドと述べてきた事なんかは余計なお世話でしょう。

告白すれば、こうしたジャンルが昔っから大好きだったサイケおやじは、しかし中古屋でブツを漁っていながらも、実は周囲の目を気にしていたという見栄っ張りがありました、恥ずかしながら。

誰に遠慮する事なく、自分の好きなレコードを楽しめる状況は本当に大切ですよねぇ~~♪

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