OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ジョンの輪廻宿業、そして解脱

2023-12-08 17:02:27 | Beatles

インスタント・カーマ / Plastic Ono Band (Apple / 東芝)

悲劇は避けられないからこそ、悲劇である ――

―― そ~ゆ~惹句を用いたくはありませんが、それにしても、あの日突然の出来事から天国へ召されたジョン・レノンが果たして、現在の世界情勢に如何様な言葉を発するのか……?

それこそ悲劇は避けえないという真実を尚更に我々に示してくれる様な気がしております。

さて、そこで本日は1970年2月、ジョン・レノンがオノ・ヨーコと共にプラスティック・オノ・バンド名義で発表した信念の名曲「インスタント・カーマ / Instant Karma!」を聴き直してみました。

今となっては広く知られているとおり、ここで歌われている「Karma」とは、日本語で云うところの「業」であり、現世における「因果応報」「悪因悪果」等々、主に仏教思想に基づくと思われる所業をジョン・レノン流儀で解釈した歌の世界なんでしょうが、これが世に出た当時のサイケおやじには、掲載した日本盤シングルの裏ジャケットに記載の歌詞を辞書を頼りに訳詞てみても、なかなか理解出来るものではありませんでした。

もちろん、それは自らの人生経験の浅さにも起因するものですし、だからこそ、老い深まりて分る様な部分もあるわけですが、当時のジョン・レノンにしてみたら、ビートルズ分裂騒動の諸々、愛妻ヨーコと前夫の間に生まれたキョーコの親権問題等々から、自らの行動・言動が如何なる因果関係を生み出すのか……、等々を考えていたと云われていますから、あえて「インスタント」な「業」、つまりは「インスタント・カーマ / Instant Karma!」という楽曲を書いてしまったとしても、我々は素直に聴き入るのがジョン・レノンと同じ時空に生かされていた幸せの証だったのでしょうか。

しかし、それでもロック曲としての「インスタント・カーマ / Instant Karma!」は厳かなピアノの響きからジョン・レノンでしか在りえない、あの感覚のメロディラインとリズム&ビートで力強く歌っていく、それは実にサイケおやじの心を直撃した傑作!

ちなみに後に知ったところでは、なんとっ!

この名曲「インスタント・カーマ / Instant Karma!」は僅か1時間ほどで書かれ、レコーディングも1日で終了・完成されたという、正に集中力の成せる技!

もちろん、このセッションのプロデューサーがフィル・スペクターだった事から、例の「ウォール・オブ・サウンド」を実践するべく、ストリングスまでもダビングしようとしていた逸話が残されておりますが、ジョン・レノンは逆に徹底したシンプルな力強さを演じる決意から、ジョージ・ハリスン(g)、ビリー・プレストン(key)、クラウス・ブァマン(b)、アラン・ホワイト(ds) という、今では夢のオールスタアズと作り上げたバンドサウンドに拘り、1950年代の音作りを要求した結果、最小限のダビング作業でコーラス等々をミックスし、これを仕上げたと云われていますが、なるほど……、現在聴いても、実にパワフルなロックサウンドですよねぇ~~ (^^♪

それと余談かもしれませんが、ここでのコーラスはスタジオ近くのパブに参集していたお客さん!?

その真偽は定かではありませんが、実に羨ましいですよねぇ~~ (^^)

そ~ゆ~因果は大歓迎なわけですが、きっと前世の行いが良かったんでしょうねぇ~~、件のお客さん達はっ!?!

また、掲載した私有盤のジャケ写に登場しているジョン&ヨーコは思いっきりロングヘアという佇まいではありますが、このシングル盤「インスタント・カーマ / Instant Karma!」が世に出た当時は、夫婦揃って断髪というか、短い髪形になっていた実相に洋楽雑誌のグラビアで接したサイケおやじは、なんともミョウチキリンな気分にさせられたものでした (^^;

そのあたりは後々になってゲットしたアメリカ盤ピクチャースリーブのポートレートでも明らかにされたとはいえ、ジョン・レノンの心境の変化には……。

ということで、毎年書いておりますが、この時期は個人的に心が弱くなってしまいます。

そしてジョン・レノンの歌声に勇気とパワーを与えられ、年末を乗り越えんとする気構えが出来ているのでした。

ジョン・レノン、永遠なれっ!

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今も世界を見ているにちがいない

2022-12-08 16:06:59 | Beatles

今年も否応なく……、12月8日となりました……。

告白すれば、もう……、何年も、サイケおやじにとっては、今日のこの日が1年を回想する、大晦になっております。

そして、今年は間違いなく、人類の歴史は悪い方向へと進んでいるのを感じるばかり……。

異常気象、天変地異、疫病蔓延、戦争、経済低迷、思想の分断、人間不信、貧富の格差の増大、さらには嘘の上塗り等々、全く混迷に歯止めが効かない現状には、彼岸のジョン・レノンも何を見ていいのか、草葉の陰で面食らっているんじゃ~ないでしょうか?

そんな不遜な下種の勘繰りもあって、今年の掲載盤は如何にもシニカルなジョン・レノンの視点を映像化した様なジャケ写の1枚となりました。

楽曲そのものは皆様ご存じ、「真夜中を突っ走れ / Whatever Gets You Thru The Night」をA面んに入れた1974年発売のヒットシングルなんですが、レコード本体はサイケおやじが異郷の地へ島流しにされていた1990年に入手したフランス盤であり、もちろん、ジャケ写に幻惑されたというわけです (^^;

しかし、ジョン・レノンは、ちゃ~んと見るべきものを見ていたと思いますねぇ~!

そして今も、我々を見つめているにちがいありません。

合掌。

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届いたぜっ!Get Back

2022-07-13 17:40:32 | Beatles

The Beatles Get Back Blue-ray Collectors Set (Apple / ウォルト・ディズニー・ジャパン)

ついに、ついに……、ビートルズの「ゲットバック」ドキュメント映像作品を収めたブルーレイ3枚組が届きましたっ!

例によって、このブツは世界各国でブルーレイの他にDVDも出ているんですが、サイケおやじは掲載した画像のとおり、ブルーレイ日本盤3枚組を選択しております。

そりゃ~~、何故って?

もちろん、日本語字幕があるからですよ (^^;

なにしろ、大元の所謂「ゲット・バック・セッション」は、これまでに音源だけでも膨大な時間の記録がブートで流通しており、そこでは歌と演奏以外にビートルズやスタッフの面々による会話が、それこそリアルタイムの状況を今に伝えていたわけですが、やはり現地語(?)と業界用語、さらには内輪のスラングが入った諸々は、なかなかサイケおやじには理解不能な部分が多々あり、加えて人間関係の複雑さ等々も公然の秘密の如く知る事が出来そうなので、やはり「日本語字幕」は必要という気持ちです。

で、その日本語字幕制作は翻訳:風間綾平&監修:藤本国彦という責任の所在が明記されているところも、なかなか良心的と思いました。

さて、そこで肝心の本篇なんですが、もちろん仕事場宛で本日届いたばかりなんで、未だ開封鑑賞は出来ておらず、ただただ……、現物を目の前にして感慨と妄想に急き立てられながら、この文章を入力している次第……。

そして正直、観るのが怖い!?!

というのが、本音でもあります (^^;

ちなみに、この映像作品の原点となったのは映画「レット・イット・ビー」である事は言わずもがな、その経緯云々については拙ブログで続けて掲載しておりましたので、ご一読願えれば幸いでございますが、そこから再編集された映画「ゲット・バック」が本年、ようやく我が国でも2月に劇場公開されながら、コロナ禍等々もあり、サイケおやじは未鑑賞でありました。

ですから、この映像セットの発売には心待ち以上の大きな期待があったのは事実であり、特にリハーサルから録音セッションの間でビートルズというバンドが音楽を作り上げていく状況が、前述の映画「レット・イット・ビー」以上に生々しく描かれているという予想は、3枚のブルーレイに収録された総計約467分の映像が証明してくれると信じております。

 

また、この商品でウリとなっている、あの伝説のルーフトップ・コンサートをノーカット収録という見所については、何を基準に「ノーカット」としているのか?

その点が些か不明ではありますが、個人的には屋上以外の場所、つまり周囲の建物や階下路上に集まった幸運な人達の状況も気になるところで、それは長年の「やらせ疑惑」を解明する証拠物件かもしれないなぁ~~ (^^;

という下種の勘繰りもあったりします (^^;

そして気になるのは、これでオリジナルの映画版「レット・イット・ビー」の公式盤は、ど~なるのか?

そんなこんなも含めまして、本日は早く帰宅するべく、頑張っていかねばっ!

最後になりましたが、一応の予告編がネットにありましたので、葉っておきますね (^^)

「ザ・ビートルズ:Get Back」7.13 Blu-ray コレクターズ・セット/DVD コレクターズ・セット発売  予告編

いゃ~、やっぱりビートルズは不滅ですねっ!

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今日の祈り

2021-12-08 16:38:15 | Beatles

Chico Celoso / John Lennon (Odeon / EMI)

毎年思う事ではありますが、やっぱり……、12月8日は重苦しい気分に苛まれます。

それはジョン・レノンの命日であり、また日米開戦となった真珠湾攻撃の日でもあり、未だ平和とは程遠い世界の現状を鑑みて、感慨は深くなるばかり……。

しかも現在、世界的に疫病が蔓延し、収束するどころか段々に悪い方向へと事態が動いている感がありますから、そんな疑心暗鬼な日常が普通になってしまうとすれば、ジョン・レノンが思い描いていたであろう未来との差異は、如何許りかと……。

それでも、ひとつだけ真実なのは、ジョン・レノンが残してくれた歌の数々は何時如何なる時でも、リスナーの心に響く「何か」があるという事!?

さて、そこで掲載したのは、1981年にスペインで出されたとされるシングル盤で、収録A面曲「Chico Celoso」とは説明不要の大名曲「Jealous Guy」のスペイン語(?)表記だったんですねぇ~~!?!

実は……、告白すれば、これをドイツで発見した時のサイケおやじは、てっきり「英語以外」の言語で歌うジョン・レノンの未発表曲なのかっ!?

なぁ~んて、自分勝手な思い込みに幻惑されてしまったんですが、今となっては、まあ……、いいか (^^ゞ

ということで、ど~やら我が国でも医療従事関係者や高齢者をメインにワクチンの3回目接種がスタートし始めましたが、サイケおやじとしては、これからは子供達への接種を、まずは始めた方が得策じゃ~ないか?

なぁ~んて、トーシロ考えにとらわているんですが、ど~なるんですかねぇ……。

そりゃ~、人体実験が済んでいないという真相は理解出来ますが……。

安全安心、何処にある!?

うむ、あらためて世界・世相を自分なりに考えてみるという、それが「12月8日」の意義なのかもしれませんねぇ~。

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帰って来たレット・イット・ビー

2021-10-16 19:58:51 | Beatles

Let It Be Special Edition (Super Deluxe) /The Beatles 
   (Apple / ユニバーサルミュージック=5SHM-CD+Blu-ray Audio)

ついに……、やって来た……、この日がっ!

ということで、以前から発売が予告されながら、諸事情で延期になっていたビートルズ最後のオリジナルアルバム「レット・イット・ビー」の特別復刻盤を昨日ゲット (^^♪

もちろん、当初の企画では所謂「50周年」だったところから1年遅れとはいえ、やはり期待が大きかったのは、拙ブログでも独善的に書いていた当時のビートルズの新作レコーディングに纏わる人間関係とビジネスの成り行き、そしてビートルズならではの創作過程が歴史として成り立っている現在からの考察に、ひとつの回答が得られる様な気がしていたからです。

で、今回の復刻プロジェクトからは例によって何種類かの商品が市場に出たわけですが、とりあえずサイケおやじが入手したのは、CDが5枚にブルーレイオーディオ盤を加えた6枚組なんですが、発売元は我が国のユニバーサルミュージックでして、それは輸入盤に日本語解説を入れた限定版仕様になっていました。

まあ、価格的にも純粋な輸入盤と変わりなかったもんですから、それなら子細な英文ライナーを日本語で読めれば疲れないという事情も大きく、それが掲載した画像にあるとおり、ボックス系アルバム本体をビニール袋に入れ、その上から国内仕様を明らかにするシールを貼り付けたというブツになっておりました (^^;

そして昨夜から本日の明け方まで、一応は通して聴いてみたんですが、個人的には正直、物足りなかったのが本音です……。


★Disc One:New Mix Of Original Album
   01 Two Of Us
   02 Dig A Pony
   03 Across The Universe
   04 I Me Mine
   05 Dig It 
   06 Let It Be
   07 Maggie Mae
   08 I've Got A Feeling
   09 One After 909
   10 The Long And Winding Road
   11 For You Blue
   12 Get Back
 最初のディスクにはアナログ盤LPと同じ曲順でアルバムが構成され、しかも「2021 Mix」と明記された、つまりは新しくリマスター&リミックスされた「レット・イット・ビー」が聴けるという事なんですが……。
 サイケおやじとしては新鮮な気持ちと違和感が入り混じった気分でして、オリジナルバージョンや後々の再発バージョン等々との細かい聴き比べに心を導かれているというか、ちょいと落ち着いて聴いていられませんでした (^^;
 つまりは……、結論先送りというこで、ご理解くださいませ <(_ _)>

★Disc Two:Get Back - Apple Sessions
   01 Morning Camera (Speech - Mono) / Two Of Us (Take 4)
   02 Maggie Mae / Fancy My Chances With You (Mono)
   03 Can You Dig It?
   04 Don’t Know Why I’m Moaning (Speech – mono)
   05 For You Blue (Take 4)
   06 Let It Be / Please Please Me / Let It Be (Take 10)
   07 I've Got A Feeling (Take 10)
   08 Dig A Pony (Take 14)
   09 Get Back (Take 19)
   10 Like Making An Album? (Speech)
   11 One After 909 (Take 3)
   12 Don't Let Me Down (First Rooftop Performance)
   13 The Long And Winding Road (Take 19)
   14 Wake Up Little Suzie / I Me Mine (Take 11)
 2枚目のディスクは主にアップルスタジオでのレコーディングから、アウトテイクやリハーサル音源を抜粋し、上手く流れを作り出した構成になっているんですが、このあたりは付属の解説書を読みながら聴くと、なかなか興味深いものがあります。
 ただし、これまでに出回っている海賊盤では、もっと大量の音源や音声が時系列というか、そのまんまの未加工で聴けてしまうので、音の良さという利点はあるものの、なんとも物足りなさは否めません……。

★Disc Three:Get Back - Rehearsals An Apple Jams
   01 On The Day Shift Now (Speech – mono)
         / All Things Must Pass (Rehearsals – mono)
   02 Concentrate On The Sound (mono)
   03 Gimme Some Truth (Rehearsal – mono)
   04 I Me Mine (Rehearsal – mono)
   05 She Came In Through The Bathroom Window (Rehearsal) 
   06 Polythene Pam (Rehearsal – mono) 
   07 Octopus’s Garden (Rehearsal – mono)
   08 Oh! Darling (Jam)
   09 Get Back (Take 8)
   10 The Walk (Jam)
   11 Without A Song (Jam) – Billy Preston with John and Ringo 
   12 Something (Rehearsal – mono)
   13 Let It Be (Take 28)
 3枚目のディスクには、主にトゥイッケンナム・フイルム・スタジオでのリハーサルからの音源をメインにしつつも、アップルスタジオでのレコーディングから幾つかの音源を組み合わせて、これまた上手い流れを構成していると思いました。
 しかし、ここもまた……、これまでたっぷりブート音源で親しんだ(?)歌や演奏があるもんですから、やはり…… (^^;
 それでも、これを契機にビートルズを聴いてみようと決意されているお若い皆様にとっては、何も夥しく虚しささえ感じさせられるブート音源に時間を費やすよりは、ここに収められたCDの2&3枚目を存分に聴きまくられる事をお勧めするばかりです。 
 つまり、なかなか、これはこれで素敵なアルバムなのかもしれませんよ、この2&3枚目は、ねっ!?!

★Disc Four:Get Back LP - 1969 Glyn Johns Mix
   01 One After 909
   02 I’m Ready (aka Rocker) / Save The Last Dance For Me
             / Don’t Let Me Down
   03 Don’t Let Me Down
   04 Dig A Pony
   05 I’ve Got A Feeling
   06 Get Back
   07 For You Blue
   08 Teddy Boy
   09 Two Of Us
   10 Maggie Mae
   11 Dig It
   12 Let It Be
   13 The Long And Winding Road
   14 Get Back (Reprise)
 実は、これこそが今回の記念盤の目玉と申しましょうか、今に続く「レット・イット・ビー」というビートルズ最後のオリジナルアルバムの原初的なスタイルを確認出来るパートでありまして、それが当初は「ゲット・バック」と題され、グリン・ジョンズによって纏められたLPの1969年バージョンなんですねぇ~~!?
 それらの経緯については以前に拙ブログで書き連ねてありますので、ご一読願いたいところなんですが、ここに収められたのは、その最初の完成形と云われる「Get Back with Don't Let Me Down and 9 other songs」を新規リマスターしたものというクレジットがあり、そこでこれまでに出回ってしまっていたブートと聴き比べてみたんですが、妙に音が綺麗過ぎて、当初、ビートルズが狙っていたラフ&ワイルドな質感が損なわれている気がします……。
 しかし、同時に、これはこれでロックの歴史的な醍醐味を堪能出来る名作かもしれませんよ (^^♪
 ちなみに、今回の記念エディションに収められた6枚のディスクは、それぞれがミニLPスタイルの紙ジャケットに入っており、この4枚目は当然ながら、最初に企画されたジャケットデザインが使用されていたのは、なかなか嬉しかったですねぇ~♪

★Disc Five:Let It Be EP 
   01 Across The Universe (1970 Glyn Johns Mix)
   02 I Me Mine (1970 Glyn Johns Mix)
   03 Don’t Let Me Down (Single Version)
   04 Let It Be (Single Version)
 5枚目のCDは所謂ボーナスディスクみたいな感じで、上記のとおり、「レット・イット・ビー」関連音源からシングルバージョンや別ミックスの楽曲を4曲集めてはいるものの、それが逆に今回の復刻の中途半端な印象を強めている感があります (^^;

★Disc Six (Blu-ray) 
 これは所謂ブルーレイオーディオ盤で、1枚目のCDに収められていたオリジナルアルバムの新規ステレオミックスのハイレゾ(96kHz/24-bit)、5.1サラウンドDTS、ドルビー・アトモス・ミックスが収録されています。
 それらが満遍なく再生出来る環境の皆様であれば、聴き比べも存分に楽しめるでしょう。
 残念ながら、サイケおやじの貧弱オーディオセットでは、それが無理ではありますが、確かにブルーレイならではの音像が聞こえている気はしています。
 そして本音では、せっかくのブルーレイなんですから、映像を入れて欲しかったですよねぇ~~~!
 これは全人類の希望だったと思うのですが…… (^^;

 

ということで、まだまだ聴き込みが不足しておりますので、本日は……、ここまでとさせていただきます。

冒頭で述べたとおり、個人的には物足りなさを感じておりますが、ひとつの商品としての纏まりとしては、それなりに上出来かもしれません。

なにしろ、ここに一緒に付属されているブックレットはポール・マッカートニー直々の序文、ジャイルズ・マーティンによるイントロダクション、グリン・ジョンズの回想記、ビートルズ研究家のケヴィン・ハウレットによる詳細な解説、ノンフィクションライターのジョン・ハリスが書下ろしのエッセイ等々が掲載され、さらにイーサン・ラッセルとリンダ・マッカートニーが撮影した未公開写真、手書きの歌詞、セッションのメモやスケッチ、ビートルズのメンバーが交わした手紙、テープボックス等々の未公開画像も様々収録されているんですから、持っていないと安心出来ないという感情が沸き上がって来るのですよっ!

実際、これを眺めているだけで、幸せな気分になりそうな自分を感じて、面映ゆいです (^^ゞ

そして、申し訳なくも中断している拙ブログの「The Beatles Get Back To Let It Be」を再開させねばならないという、独り善がりの決意を固めておりますので、よろしくお願い致します <(_ _)>

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あれから…、40年目の空の下

2020-12-08 16:36:31 | Beatles

現在の地球上の混乱をジョンは、どんなふうに見ているのでしょう。

疑心暗鬼に満たされている今こそ、何かを夢想したくなるのは、生かされている我々の宿業かもしれません。

合掌。

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The Beatles Get Back To Let It Be:其の拾八

2020-09-11 18:03:14 | Beatles

映画「レット・イット・ビー」からの流出サウンドトラック音源を、最も早く海賊盤として纏めたものが「Sweet Apple Trax Volume 1」「同 Volume 2」で、発売されたのは1973年の事でした。

これは各々が2枚組で、総計約90分の音源が収められており、その音質が良かった事から初回プレス分は忽ち売り切れました。

このブツを発売したのは「Contra Band Music」、通称CBMという業者で、すぐに大量の追加分をプレスしましたが、同時に他の業者もコピー盤やジャケット違いで同内容のLPを出してしまったので、ビートルズの海賊盤の中では最高の売上げ枚数になった作品です。

で、その中で最も良く売れたのが「Newsound Records」と名乗る業者が発売した本日の掲載盤でした。

これは前述した2セット、4枚のレコードを2枚組にした物で、しかも海賊盤としては当時珍しかったカラージャケットになっていました。

それが今日「Sweet Apple Trax」として定番化している名盤(?)です。

尤も、これは最初に同音源を発売した「CBM」が、レーベル名を変えて発売したというのが今日の真相ですが、その内容は――


A-1 Two Of Us
 アップテンポのアレンジで曲の途中からフェードインして始まります。
 ポールのベースラインがドライブしていて、実にカッコイ~ィ~ですねぇ~♪
 この後、お喋りや楽器のチューニングの状況が続き、ジョンの鼻歌とか、何かの曲のギターリフが聞かれます。

A-2 Don't Let Me Down
 かなり出来上がっており、ジョージのワウワウを使ったギターのオカズが気持ち良いです。
 スタートのところでジョンのギターから音が出ずに、やり直したりするところがリアルです。
 そして軽く歌っても、やっぱりジョンは凄い! とシビレる素敵な演奏です。
 もちろん、ポールが寄り添うハーモニーも、一瞬のビートルズ・マジック!

A-3 Suzy Parker
 映画でも観る事が出来た、即興でジョンが作ったロックンロールです。
 仕事を超えた楽しい部分があると感じるのですが……。

A-4 I've Got A Feeling
 これもかなり出来上がっているトラックです。
 一部、映画に使われていた演奏かもしれません。

A-05 No Pakistanis
 「Get Back」の原型です。
 歌詞の内容は、当時イギリス政府が国内にやって来たパキスタン人労働者の強制送還を目論んだ政策を皮肉った内容です。「パキスタン人がみんな仕事を奪ってしまうのは、気に入らないぜ、元いた所へ返れ!」等々と歌っていた所為で、各方面からの様々な圧力によって歌詞が変えられたらしく、という事は当時から、この曲の存在は有名だったのでしょうか……?
 演奏はかなりワイルドで、ジョージのギターがヘビメタ風に炸裂している瞬間や、ポールのインディアンみたいな掛け声が入ったりして、サイケおやじは好きです。

A-6 Get Back
 未完成品ですが、かなりロックンロール味の強いアレンジです。

A-7 Don't Let Me Down
 これはエレピが聴こえるのでビリー・プレストンが参加しているのでしょうか……?
 だとすれば、アップル・スタジオに移ってからの音源だと思います。

B-1 Be Bop A Lalu
 チューニングやハウリングの音に続いて、ジョンが何となく歌い始めます。
 オリジナルはジーン・ビンセントが1956年にヒットさせたロックンロールの古典で、ジョンのお気に入りでした。これは後にジョンのソロ・アルバム「ロックンロール」で素晴らしいカバー・バージョンが披露されるのは、皆様ご存知のとおりです。

B-2 She Came In Through The Bathroom Window
 アルバム「アビー・ロード」に収録された曲の断片がリハーサルされています
 テンポや曲調を少しずつ変えて何度か歌われていきますが、曲を完成させていく過程が、彼等のお喋りと共に良く分かります。

B-3 High Heeled Sneakers
 これもR&Bの古典ですが、全く断片だけの演奏です。
 ちなみにオリジナルはトミー・タッカーが1964年に放ったヒット曲ですが、ローリング・ストーズも取上げています。

B-4 I Me Mine
 ジョージの名作オリジナルですが、ほとんど前半はインストの演奏だけですので、これもビートルズが曲を完成させていく過程が良く分かるトラックです。
 最初は、ちょっとスパニッシュ調の味付けになっているのが興味深いところですし、ワルツテンポという事からでしょうか、途中でポールがスタンダード曲の「ドミノ」を歌ってしまう部分は、ちょっと意地悪です。
 そして後半、ようやくボーカルパートが入るものの、直ぐに中断……。

B-5 I've Got A Feeling
 曲の断片とリハーサル場面だけです。

B-6 One After 909
 これもチューニングや打合せ、そして曲の断片だけです。

B-7 Norwegian Wood
 チューニングでポールが弾いた同曲のベースラインから、ほんの少しだけ、ギターでメロディが流れる程度です。

B-8 She Came In Through The Bathroom Window
 「B-2」同様、これも曲を完成させる過程のトラックですが、かなり出来上がっています。

C-1 Let It Be
 これもリハーサルですが、ポールが主導権を握り、メンバーに曲の構成を教え、演奏の雰囲気を指示して、グループをリードするという興味深いトラックで、ジョンがカウンターの別メロディを付けたり、そこからコーラスのパートを発展させたりして、ビートルズの曲創作の秘密の一端がはっきり分かるという、このアルバムのハイライトだと思います。
 この場面は続いてポールのオリジナルの「La Penina (A Long Road)」という曲になりますが。これは翌年に完成され、ジョッタ・へールというオランダ人歌手にプレゼントされます。

C-2 Shakin' In The Sixties
 ジョンの未発表曲で、アップテンポのロカビリー調の曲です。

C-3 Good Rockin' Tonight
 前曲から続いている雰囲気です。実は「Move It」という曲が前半に演奏され、メドレー形式になっていますが、それでも短い演奏です。
 しかし流石のノリ、このグルーヴ感! ポールのエルビス調のボーカルが良い味です。

C-4 Across The Universe
 ここは編集によるものかどうか、前曲からの続きという雰囲気です。ビートが強く、かなりロック色が強いアレンジで、個人的には大好きな演奏です。
 ボールのハーモニーも素敵ですし、ジョージのギターもツボを掴んでいて、ステージで生演奏されるとしたら、こ~ゆ~雰囲気になっていたかもっ!?
 そこまで思わせられますよ♪♪~♪

C-5 Two Of Us
 これまたアップ・テンポのロック色の強いアレンジで演奏されています。残念ながら中断してしまいますが、その後にメンバーが各々のリフを組み立てる部分が聴かれます。

C-6 Momma, You'er Just On My Mind
 生ギターのフィンガーピッキングによる演奏が延々と続きますが、時折ジョージと思われるボーカルが入ります。後半は、もしかするとボブ・ディランの「Mama, You Been On My Mind」という曲かもしれません。
 かなり長い演奏ですが、聴いていて意外に気持ちが良くなります。

D-1 Tennessee
 これもロックンロールと言うよりも、ロカビリーの古典です。ボーカルはジョンで、下積み時代のビートルズが十八番(?)にしていたらしいです。
 ちなみにオリジナルはカール・パーキンスです。

D-2 House Of The Rising Sun
 我国では「朝日のあたる家」として知られ、原曲はアメリカのニューオリンズ周辺の黒人俗謡です。多くの歌手やバンドが取上げておりますが、ビートルズも一時期レパートリーにしていました。

D-3 Back To Commonwealth
 ポールのオリジナルですが、これも「No Pakistanis(A-5)」同様に「Get Back」の原型です
 ジョンの素っ頓狂な合の手にポールが吹出すほど、和気藹々とした雰囲気がイイ感じ♪♪~♪
 リンゴのドラムスの上手さが分かるトラックでもあります。

D-4 White Power / Promenade
 前半の「White Power」はポールの一瞬のアドリブですが、ソウル調の素晴らしい曲です。
 それが後半はシャッフル調のブルースロック系ジャムセッションに発展しますが、この部分が「Promenade」という事でしょうか、実はロック調の「Dig It」なのです。
 そして、これが映画「レット・イット・ビー」ではビリー・プレストンを交えてソウル調のジャムセッション「Dig It」になるのですが、ここでの演奏も素晴らしい! ジョンとジョージのギターの絡み、リンゴのドラムスも最高のノリです。
 さらにポールとジョンのウィットに富んだ単語の掛合いは、ラップの趣さえ感じられます。
 サイケおやじは大好きです、これがっ!

D-5 Hi Ho Silver
 前曲の素晴らしいノリを受け継いで、いつの間にかロックンロールのジャムが続きます。
 演奏されているのはロックンロールの古典「Yackety-Yack」とスタンダード・ナンバーの「Hi Ho Silver」を混ぜ込んだもので、この演奏形態は、当時多くのバンドがやっていたスタイルです。
 いゃ~~、ジョンの歌とギターが最高のノリで、中断が惜しい!

D-6 For You Blue
 と思いきや、続けて演奏されるのがこの曲で、最高の雰囲気が持続されています。
 あぁ~~、これがロックだっ! ロックンロールだっ!

D-7 Let It Be
 そして非常に上手い編集で、ここに繋がります。
 「C-1」を受継いで演奏は出来上がっていますが、かなりラフ!?
 しかし、それが力強く、ゴスペルの高揚感が良く出ていると思います。
 ただし……、それが本場物に比べると勘違いしているのが良く分かる部分もあります。
 う~ん、この辺りがビートルズならではの個性かもしれませんねぇ……。


 という上記の様な歌と演奏が収められたこのアルバムは、そのほとんどが、1969年1月8~9日の音源と思われます。

 そして途中に入る「ピー」という音とトラック・ナンバーを告げるアナウンスは、撮影しているカメラのフィルムと同期させるためのもので、ここからその音源が未発表サウンドトラックだった事が分かるのです。

 当然、音質もかなり良く、また編集も巧みですから、海賊盤でありながら、とても聴き易く、何と言ってもビートルズの音楽創造の現場状況が良く分かるのが最大の魅力です。

 そして聴くほどに、メンバー4人の創造的な姿、緊張と緩和の和気藹々としたところが強く感じられ、当時のマスコミ報道で伝えられたり、映画「レット・イット・ビー」で観られた様な険悪な雰囲気が、それほど伝わってこない事に気がつきます。

やっぱり……、あの映画は、ある種の編集意図が存在していたのだと思わざるを得ません。

ということで、このアルバムは大ヒット! 以後続々と同種の音源が海賊盤化されるのでした。

参考文献:「ビートルズ・レコーディング・セッション / マーク・ルウィソーン」


注:本稿は、2003年11月3日に拙サイト「サイケおやじ館」に掲載した文章の改稿です。

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The Beatles Get Back To Let It Be:其の拾七

2020-09-10 19:39:59 | Beatles

海賊盤アルバム「KUM BACK」は、大変な反響を呼び、その頃のイギリスとアメリカだけで300万枚近くが売れたと云われています。

そして、この成功により、ビートルズ物だけでなく、あらゆる人気アーティストの海賊盤が夥しく市場に流されるのですが、ビートルズ物の「レット・イット・ビー」関連で、次に業者からターゲットにされた「お宝」が、映画「レット・イット・ピー」のサウンドトラック音源でした。

あらためて述べさせていただくと、「レット・イット・ビー」の関連音源では、アルバムやシングル盤で聴く事が出来る曲と、映画を観て聴く事が出来る曲は、ほとんどが別物なのです。

それでは映画ではどの様な曲が演奏されていたのか、本篇の流れに沿ってみると――


01 Piano Theme(1969.01.03)
 撮影準備最中のスタジオにあるピアノで、ポールがなんとなく弾いている曲です。
 淋しげな調子の練習曲みたいです。横ではリンゴがそれを眺め、やがてジョージもやってきます。
 ここから「13」までが、トゥイッケンナム・フイルム・スタジオでの場面になります。

02 Don't Let Me Down(1969.01.08)
 前の場面に続き、いきなりジョンのアップで曲が始まります。
 「裏切らないでくれ~」という歌詞のところで、ヨーコがアップで映し出されるという編集は、意味深……。

03 Maxwell's Silver Hammer(1969.01.03 & 07)
 ポールが主導権を握って曲のコード進行を教えていきますが、リンゴの不満顔が印象的です。
 そしてポールは途中でベースからピアノに代わりますが、彼だけが楽しそうで、ジョージは自分のマイクで感電してます。
 皆様ご存知のとおり、結局このセッションでは完成させる事が出来ず、後のアルバム「アビー・ロード」におけるセッションで再録音されました。

04 Two Of Us(1969.01.08)
 完成バージョンと比較して、かなりテンポが速い演奏です。
 一本のスタンド・マイクで歌うジョンとポール、おどけてギターを弾くジョンは、ライブショウのリハーサルのつもりでしょうか?
 所謂「ビートルズ・マジック」が、一瞬だけ再現されています。

05 I've Got A Felling(1969.01.08 & 09)
 リハーサルですが、ギターの弾き方についてポールが口を出します。
 リンゴは白け顔で、ここでもポールだけがノリノリです。
 その所為でしょうか、ジョンのあきらめた様な歌い方が、逆に凄みを滲ませます。
 脱力的終わり方も印象的でした。

06 Oh! Darling(1969.01.09)
 後のアルバム「アビー・ロード」に収録される名曲ですが、この時点では未完成です。
 ポールがピアノで、最初のワン・フレーズだけ歌っています。

07 One After 909(1969.01.09)
 彼等が十代の頃に作った曲なので、演奏前にポールが当時の思い出話をします。
 演奏は、それなりにノッていますが、ジョージの無気力が目立ちます。

08 Whole Lotta Shakin' Goin' On(1969.01.14)
 ポールとリンゴがピアノの連弾で演奏します。
 原曲はジェリー・リー・ルイスが、1957年にヒットさせたロックンロールの古典です。

09 Two Of Us(1969.01.09 & 10)
 イントロが一瞬「Get Back」しています。
 ところが直ぐに中断し、上手くいかず、ポールとジョージの口論に発展する有名な場面です。
 リンゴは完全に呆れ顔……。

10 Across The Universe(1969.01.07)
 「私の世界は変えられないをやろう」という台詞で始まります。
 前の場面が険悪だったので、この曲でホッと和みますが、もちろんその時とは別の日の演奏です。
 曲は途中で中断しますが、絶妙の編集でした。

11 Dig A Pony(1969.01.07)
 ジョンがデモ的に曲を披露していますが、その場のダレ方に呆れた雰囲気で中断し、「もっと早い曲を!」と言い出して次に移ります。

12 Suzy Paker(1969.01.09)
 多分ジョンが即興的に作ったロックンロールです。

13 I Me Mine(1969.01.08)
 ジョージが作ったばかりの曲をリンゴに歌って聞かせます。
 そしてその後、バンド演奏になり、ワルツ曲なのでジョンとヨーコがスタジオで踊ります。
 演奏は残る3人ですが、ラフな中にも良い雰囲気で、作品中でも名場面でした。
 演奏も相当にカッコイイので、これは何とか活かして欲しかったと思います。

14 For You Blue(1969.01.25)
 ここから場面はアップル・スタジオに移り「24」まで続きます。
 演奏をバックにメンバーがオフィスにやって来る映像に続き、ジョージのボーカルで演奏が楽しめますが、これはかなり出来上がっています。
 この演奏の後にジョンの「~私はピグミーを偏愛する~」というお喋りがあり、それはアルバム「レット・イット・ビー」に収録された「Two Of Us」の前に編集して付け足されました。

15 Besame Mucho(1969.01.29)
 ラテンの名曲をポールが楽しそうに歌い、メンバーもそれなりにノッてバックをつけています。
 ちなみにビートルズは同曲を、1962年に受けたデッカ・レコードのオーディションでも演奏しましたが、結果はご存知のとおり、不合格でした。

16 Octopus's Garden(1969.01.26)
 アルバム「アビー・ロード」に収録されたリンゴの持ち歌で、ジョージがギター、リンゴがピアノを弾き、2人だけのリハーサルですが、この時点で原型が出来ていた事がわかります。
 そして途中からジョンがドラムスで参加♪
 しかし、そこへポールがやって来て演奏が中断するという、いはやはなんともの編集です。

17 You Really Got A Hold On Me(1969.01.26)
 ここからビリー・プレストンが画面に登場します。
 演奏される曲はモータウンレコードから放たれた大ヒットの古典で、ビートルズは初期のアルバム「ウイズ・ザ・ビートルズ」で録音しています。
 残念ながら、ここでは最後まで完奏していませんが、雰囲気は上々♪♪~♪
 ビリー・プレストンの如何にも黒人っぽいファッションのシャツ、そして何気なく入れてくるオルガンのフレーズがファンキーで素敵ですねぇ~♪

18 The Long And Winding Road(1969.01.26)
 リハーサルですが、ジョンのアドバイスも真剣です。
 ちなみにジョンは、6弦のエレキ・ベース、ボールはピアノをプレイしています。

19 Shak Rattle And Roll(1969.01.26)
 1954年に大ヒットしたロックン・ロールの古典を演奏、とても楽しい雰囲気は「ビリー・プレストン効果」の証明でしょうか?

20 Kansas city - Miss Ann - Lawdy Miss Clawdy(1969.01.26)
 ロックン・ロールの古典をメドレーにして、同日の演奏が続きます。
 「Kansas city」はビートルズがアルバム「フォー・セール」で取上げていましたが、ここでは別アレンジにしています。「Miss Ann」は1957年にリトル・リチャードが大ヒットさせた曲で、ポールのお気に入りらしく、続く「Lawdy Miss Clawdy」は、1952年頃にR&B歌手のロイド・プライスがヒットさせた自作自演曲でした。
 映像では、やがてポールの義娘になるヘザー・イーストマンが登場、演奏に合わせてクルクル回って踊り、最後に転んでパンツがチラリ、!?!
 このあたりにも楽しい雰囲気を掴んだ映像の編集が施されています。

21 Dig It(1969.01.26)
 アルバムでは、とても短く編集されていましたが、この楽しそうなノリは最高です。
 もちろん演奏の中心はビリー・プレストンで、彼に煽られたのか、既にバラバラ寸前のビートルズがバンドとしての一体感を表出させた、実に素敵な一瞬が味わえます。
 しかし……、この後にポールがジョンに対して、今回のプロジェクトの意義やジョージとの問題について、しつこく言い訳をする場面へ映像が変わります。
 ポールの気持ちは痛いほど分かりますが、ジョンは困り顔……。

22 Two Of Us(1969.01.31)
 ここから「24」まで、完成された曲が演奏される場面が続きます。
 撮影はすべて1月31日で、つまり屋上ライブ・セッションの翌日ですが、このトラックは、アルバム「レット・イット・ビー」収録のバージョンに限りなく近いものです。

23 Let It Be(1969.01.31)
 コーラスもブラスも入っていない、バンドだけのシンプルな演奏で、ビリー・プレストンのオルガンが流石に良い味です。
 既に何度か述べてきたとおり、これも公式音源の元になった演奏です。

24 The Long And Winding Road(1969.01.31)
 これも同様にバンドだけの演奏で、またしてもビリー・プレストンのオルガンが素晴らしい隠し味になっていて、個人的には非常に好きな演奏です。
 う~ん、このシンプルで切々とした雰囲気に接してしまうと、フィル・スペクターの装飾に異議を唱えたポールの言い分が理解出来る様な気が致します。


 「25」から「30」までは1月30日に行われた屋上のライブ演奏です。内容については既に「其の四」で述べましたので、割愛させていただきます。


25 Get Back(1969.01.30)
26 Don't Let Me Down(1969.01.30)
27 I've Got A Felling(1969.01.30)
28 One After 909(1969.01.30)
29 Dig A Pony(1969.01.30)
30 Get Back(1969.01.30)

31 Get Back(Reprise)
 曲の一部分だけがエンド・ロールで使われました。
 ビートルズは映像に登場しておりません。


ということで、あらためて映画の流れを整理すると「01」~「13」までが1969年1月2日~15日にかけてトゥイッケンナム・フイルム・スタジオで行われたリハーサルです。

ここで無気力と険悪な雰囲気をしっかりと伝え、次にアップル・スタジオで1969年1月22日~31日にかけて行われた「14」~「24」の場面で創造的な姿、ビートルズとしてのプライドを見せつける編集は流石と思います。

そしてその中で行われた1969年1月30日の屋上でのライブ「25」~「30」を最後に据えて、素晴らしい演奏とバンドとしての一体感を、警察官までもが登場する騒動と共に見せつけてのクライマックスにしてしまったのは、とても上手い構成でしょう。

もちろん、巧みなフィルム編集によって、演奏された曲の順番が入れ替えてあるのは言うまでもありません。

ちなみに上記曲名の後に付けた日付は、その音源が演奏された日を、サイケおやじが映像と手元にある海賊盤音源から推測してみたものにすぎません。

これは、ぜひとも、皆様のご意見をお聞かせ願いたいところです。

で、肝心の音源ついては、撮影フィルムに同期させたサウンドトラック音源と、レコードやテープとして正規発売するために録音した音源の2つに分けられます。

後者については、アップル・スタジオに移動してから録音しており、それはマルチ・トラックで約28時間分存在していると云われておりますが、問題は前者のシンクロ音声トラックです。

既に「其の五」で映像フィルムが約38時間分、シンクロ音声トラックが約96時間分残されたと書きましたが、何故音声の方が長く存在しているかと言えば、それは映画の撮影が2台のカメラで行われたからです。つまりその2つのカメラに連動させた2台のオープンリール・テープレコーダーが存在しており、同じ演奏でも2種類のテープが残されたのです。

しかも、そのテープは1本につき10~15分位しか録音出来ないため、後に編集して使えるように、テープ交換のタイミングをずらして使用されていたからだと推察しております。

で、映画フィルムでの音源は、全篇このシンクロ音声テープからのトラックが使用され、モノラルになったのは、その所為でした。

そして件の映画は、1時間28分に編集されていましたので、業者が目を付けたのが、この音源の残りテープです。

それが纏まって海賊盤として登場したのは、1973年頃の事でした。

参考文献:「ビートルズ・レコーディング・セッション / マーク・ルウィソーン」


注:本稿は、2003年10月29日に拙サイト「サイケおやじ館」に掲載した文章の改稿です。

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The Beatles Get Back To Let It Be:其の拾六

2020-09-09 17:28:43 | Beatles

1970年12月、欧米では誰も知らなかったビートルズのアルバムが凄い勢いで売れていました。それが「KUM BACK」という海賊盤(通称:ブート)で、それには幻となったアルバム「ゲット・バック」からの音源が収録されていたのです。

ここで述べる海賊盤(通称:ブート)と云うのは非合法レコードの事で、いくら売れてもミュージシャン側には一銭も入らないという迷惑極まりないものですが、それが生まれるのは、やはりマニアの情熱によるところが大きく、その存在自体も、20世紀初頭から確認されております。

海賊盤(通称:ブート)については、いずれ別項を設けて詳しく取上げる予定ですので、とりあえずここでは簡単に言うと、大きく分けて次の3項目に分類されるのが定説です。


●カウンターフィット盤(Counterfiet Recordings)
 正規のレコード盤を完全コピーして廉価で販売しているもので、ジャケット、内容、カタログ番号までもがそっくりそのまんま、複製されている違法商品です。ビートルズに関しては初期音源が、アメリカではキャピトルが契約を握るまでに弱小レーベルで販売されていたので、そこから出されたアルバムやシングル盤は大変貴重であり、そのマニア性から、こういう完全コピー盤が出回りました。

●パイレート盤(Pirate Recordings)
 これも正規盤レコードから針落とし、あるいは正規版音楽テープからのコピーで作られますが、ジャケットやレーベルはオリジナルの物が多く、またその内容も、ビートルズの場合ばファンクラブ用に配付したクリスマスレコードや、各国でオフィシャル音源として発売されながら、英国オリジナル盤とはミックスや収録時間等が微妙に違う曲が主に用いられます。

●ブートレグ盤(Bootleg Recordings)
 これが一般には海賊盤(通称:ブート)と呼ばれる種類のブツです。内容はコンサートのライブ音源、テレビやラジオ出演時の音源、あるいは未発表スタジオ音源、デモテープ製作時の私的な簡易レコーディングや練習音源等々が用いられます。これらは正規音源に比べると音質的にも劣る場合がほとんどですが、最もマニア心を刺激するのが、これです。


で、問題の「KUM BACK」は3番目のブートレグ盤に相当するもので、オリジナル盤はイギリス製ともカナダ製とも云われており、1969年末から出回っていたという説もありますが、それは忽ち売り切れてしまい、直ぐに再発盤・コピー盤が出回りました。

その体裁は、レコードを入れる白いボール紙製ジャケットにタイトルだけがスタンプ押しされていたり、ありがちなグループショットの写真や曲目等を入れた印刷物を貼り付けたブツが一般的です。この「KUM BACK」はコピー盤を含めて、その当時だけでおよそ20以上の業者が作ったと云われており、その他に同内容でジャケット違いの物が数多く存在します。

で、肝心の内容は以下のような曲が収録されておりました。


A-1 Get Back
 基本的にはアルバム「レット・イット・ピー」収録と同じバージョンですが、最期のお喋りはカットされています。

A-2 Can He Walk
 アメリカのブルース・シンガー=ジミー・マクラクリンが1958年に大ヒットさせた曲「The Walk」の一部分が短く収録されています。これは後にポールの 2ndソロアルバム「ラム」に「3 Legs」として改変され、収録されました。

A-3 Let IT Be
 この時点までに発売されてきた公式シングル盤、及びアルバム収録のバージョンとは歌詞を一部違えて歌っており、スタートにはカウントも入っています。おそらくテイク違いと思われます。もちろんブラスやコーラスも入っていません。

A-4 Teddy Boy
 「7」で既に触れたように、ジョージ・マーティンのプロデュースにより、1969年夏に発売予定とされた「ゲット・バック」、あるいは「レット・イット・ビー:Let It Be and 10 other songs」と題されたアルバムの収録曲として曲名が発表されたトラックのひとつです。
 作者はポールで、結局はボツになりましたが、後に自身のソロアルバム「マッカートニー」に改変版が収録されました。一方、ビートルズによる演奏は後に「アンソロジー3」に収録されましたが、それは再編集されたトラックの様です。

A-5 Two Of Us
 1969年1月24日に録音されましたが、同日録音の「アンソロジー3」のテイクとは完全に別物です。ここではスタートを2回やり直している会話とイントロの部分を注ぎ足して、ライブっぽい雰囲気を作っております。

B-1 Don't Let Me Down
 シングル盤で発表されたバージョンとは違うテイクで、後の資料から1969年1月22日に録音され、おそらくはグリン・ジョンズが採用しようとしていたのが、これです。

B-2 I've Got A Felling
 「アンソロジー3」と同じテイクで、録音は1969年1月23日です。

B-3 The Long And Winding Road
 後に「アンソロジー3」で正式に発表されたバージョンと同じでしょう。すなわちアルバム「レット・イット・ビー」に収録された大改装バージョンから、オーケストラ等の装飾を取り払ったものです。ポールのボーカルには、そこで聴く事の出来なかったパートもあり、シンプルな演奏は聴くほどに味わいが深くなる様に思います。
 ちなみに、これは映画に用いられたバージョンとも違う、1969年1月26日の演奏です。

B-4 For You Blue
 1969年1月25日に幾つか録音されたテイクのひとつですが、途中でフェード・アウトされております。

B-5 I Dig A Pony
 1969年1月23日に録音されたテイクで、アルバム「レット・イット・ビー」や「アンソロジー3」とは別物です。
 ちなみに「レット・イット・ピー」には1969年1月30日録音の屋上ライブバージョン、「アンソロジー3」には、1969年1月22日録音のテイクが使用されました。

B-6 Get Back(Medley)
 シングル盤とも、アルバム「レット・イット・ビー」収録のバージョンとも違うテイクです。
 出だしを間違えてやり直す雰囲気が入っており、ビリー・プレストンのエレピは相変わらずファンキーでカッコイイ! 曲タイトルの後に(Medley)とあるように、曲の終わりに「I've Got A Felling」のイントロと、よく分からない音が繋がっております。


このアルバムの一番のウリは、冒頭で既に述べた様に、結局は未発表に終わったビートルズの幻のアルバムからの音源という真実(?)で、それは生演奏の雰囲気を大切にするという、所期の目的に従ってグリン・ジョンズが仕上げたマスター・テープ!?

つまりは正規盤「レット・イット・ビー」で施されていた装飾の無い、ある種のオリジナルの音が聴ける事でした。中でも「The Long And Winding Road」に関しては、フィル・スペクターによってダビングされたオーケストラ&コーラスについてポールが異議を唱えていた事から、それではポールが意図していた完成形は? 

という部分に、一番の注目が集っていたと思います。

サイケおやじが、このブート盤LPを初めて聴いたのは、1972年になってからでした。

その頃には、この「KUM BACK」の存在は有名になっており、収録曲に関する情報にしても、かなり知ってはいたのですが、それでも初めて聴いた時の驚きは大きく、それが何時しか、ある種の感動に繋がりました。

もちろん非合法レコードですから、盤質そのものが粗悪な塩化ビニールで作られ、音も正規盤より悪く、ジャケットに「ステレオ」の表示があるにもかかわらず、全曲モノラル収録になっておりました。

しかし、そこから再生される「音」には不思議な迫力がありました。

サイケおやじが、あっ、イイなっ!

と、思ったのは、まずその部分でした。

それがつまり、グリン・ジョンズの「音」だったのです。

ビートルズが、というよりも、ポールが最初に目指していたのは、この「音」の雰囲気、ライブの迫力が感じられる「音」だったのではないでしょうか?

グリン・ジョンズは「其の五」でも触れたとおり、この頃までに所謂ロックの名盤・名曲の製作に数多く関わってきておりました。それらが名盤・名曲と評価されたのも、グリン・ジョンズの作り出す「音」があったからではないでしょうか? 例えば同時代の「トラフィック(2nd)/ トラフィック(1968年)」「レッド・ツェッペリン(1st)/ レッド・ツェッペリン(1969年)」「レオン・ラッセル(1st)/ レオン・ラッセル(1970年)」、あるいは後年の「ステッキィ・フィンガース / ローリング・ストーズ(1971年)」「フーズ・ネクスト / ザ・フー(1971年)」等々のアルバムに入れらていた「音」を聴いていただければ、生音感覚を大切にしながらも、エッジのはっきりした音作りの迫力や素晴らしさをご理解いただけるかと思います。

一方、フィル・スペクターが「レット・イット・ビー」で作り出した「音」は、奥行きや膨らみはありましたが、すでに同時代の「音」、つまり「ロックの音」では無かったと、サイケおやじは思います。中には「Let IT Be」の様に、かなりイケてるトラックもあったのですが……。

で、それを証明するかの如き出来事が、この当時発生しております。

それはエリック・クラプトンの新バンドであったデレク&ドミノスのデビューシングル盤「Tell The Truth c/w Roll It Over」の回収事件でした。

この2曲は、エリック・クラプトンが率いるデレク&ドミノスのメンバーが当時、フィル・スペクターのプロデュースで進められていたジョージのソロアルバム「オール・シングス・マスト・パス」の録音に揃って参加していた流れから、フィル・スペクターにプロデュースされたものでしたが、結局メンバー全員が意図した「音」が出ていないという事で、1970年9月の発売直後に店頭から回収されたのです。

それでも「Tell The Truth」だけは、1972年にエリック・クラプトンのオムニバス盤「エリック・クラプトンの歴史」に収録されたので聴く事が出来たものの、やたらにエコーばかりが強い、モヤモヤした演奏になっていました。

そして、この2曲は、1970年末に発表されたデレク&ドミノスのアルバム「レイラ」で再演されますが、そこで聴くことが出来るバージョンはテンポが落とされ、アナログ独特のモコモコした響きにはなっているものの、芯がはっきりとある、実に野太い雰囲気になっていましたので、機会があれば皆様には、ぜひとも聴き比べていただきとうございます。

ちなみに、このアルバム・バージョンのプロデュースはトム・ダウトとデレク&ドミノスでした。

また、この問題の2曲は、1988年に発売されたエリック・クラプトンのアンソロジー「クロスロード」にも収録されましたが、それはミックスをやり直したバージョンになっていた事からも、そのあたりの事情がうかがえると思います。

しかし、この時製作されていたジョージの「オール・シングス・マスト・パス」が、今日でも非常な名盤である事に変わりはありません。

それは極言すると、こ~した出来事をきっかけにして、フィル・スペクターが同時代の「音」を意識したに違いないからだと思います。それまでにフィル・スペクターが確立し、多大な評価を得ていた「フィル・スペクターの音」=「ウォール・オブ・サウンド / 音の壁」の特徴は、同じ楽器奏者を複数起用し、大人数で一斉に演奏させることによって生じる微妙なズレを、思い切ったエコーをかけて増幅させる事から生み出されるスタイルだと推察しておりますが、そこでの常連スタッフだったミュージシャンは、そのほとんどがスタジオでの仕事を主にしている者ばかりでした。したがって譜面に強く、またその場の指示にも従順に、そして的確に従っていたはずです。

ところが「オール・シングス・マスト・パス」のセッションに集められたミュージシャンは、英米混成であり、スタジオ系のプレイヤーも当然参加しておりましたが、どちらかと言えば観客を前にして自己の演奏をやっていた、つまり自己主張が強い者達でした。しかも彼等は、当時の最新流行になりつつあった「アメリカ南部の音」=「スワンプ・ロック」というルーズで粘っこいノリを追求していたのです。

したがって、フィル・スペクターも上手く彼等をコントロールする事が出来ず、加えて玄人筋からの「レット・イット・ピー」のプロデュースに対する不評、さらには前述の様な事件等々から、目が覚めたというか、これまでの自分のやり方を変化させたのではなかろうかと思います。

それは演奏者達の自己主張を殺さない様にして、フィル・スペクターの特徴である「音の壁」を作り上げる事に他なりません。しかも主役であるジョージの作る曲は、起伏の乏しいメロディーと精神性の強い愛・内なる真世界という部分を追求した歌詞という、どちらかと言えば浮世離れしたものでしたから、これはある種のドリーミーな世界なので、まさにフィル・スペクターの全盛期に生み出された名曲の数々に共通するところがあり、それ故に当時最新の録音技術で作られた強烈な音圧を伴った「音の壁」にバックアップされた楽曲の数々は、完全に独立した不滅の輝きを今日まで持ち続けているんじゃ~ないでしょうか?

まあ、以上は例によって、サイケおやじの独断と偏見による妄想ではありますが、本気で思うところもあります。

一方、グリン・ジョンズはこの後、アメリカ西海岸のバンドであるイーグルスのプロデュースを手がけ、そこで生み出された「イーグルス(1st)/ イーグルス(1971年)」は、当時非常に新鮮な音作りで、大ヒットになりました。

それは従来のハリウッド系西海岸ポップス、例えばビーチ・ボーイズあたりのカラッとした「音」やサンフランシスコ周辺のバンドが得意としていたサイケ調の底力的「音」とは一線を隔した、力強くて余韻が感じられる、そして膨らみのある音が特徴でした。

聊か確信犯的な書き方ではありますが、それこそはハードな部分と懐かしさや哀愁が漂う部分の両立という、フィル・スペクターの持っていた基本部分を隠し味として取り入れた結果だと思います。

そして、ここで提示された「音」が、1970年代ウエスト・コースト・ロックの聖典となり、音楽産業の要となってしまうのです。

つまり、そんな諸々は、両者がお互いに影響し、且つ影響されていたという事で、ビートルズの出現によって時代遅れにされたフィル・スペクター流ポップスのアメリカへの帰還であり、アルバム「レット・イット・ビー」は、そ~ゆ~流れにおいても重要な役割を果たしていたという、それも今や歴史でありましょうか。

以上は例によって、サイケおやじの独断と偏見による妄想ではありますが、本気で思うところもあります。


ということで、だいぶ回り道をしてしまいましたが、肝心の「KUM BACK」音源の出所については下記のような推測があります。


●アラン・クライン説
 「其の九」でも触れたように、1969年夏に発売が予定されていた新アルバムとして、アラン・クラインがアメリカやカナダの関係者や放送局に送ったアセテート盤が音源になったという説です。

●ジョン・レノン説
 1963年9月にジョンがトロントのロック・フェスティバルに出演した際、地元の取材記者に渡されたアセテート盤が音源と言う説で、これがラジオ局に流れ、放送されたと言われております。

●アップル・コアの社員説
 アラン・クラインの主導で、当時急速に進められていたアップル・コアの事業縮小・整理の対象でクビになった社員から流れたという説です。


現在までのところ、何れも信憑性があり、しかしまた、確証もありません。

唯一真実だったのは、ビートルズの公になっていない音源が、またまだ沢山埋もれているに違いない、ということだけでした。

そしてそれは、ファンにとっては嬉しい期待となり、続々とビートルズの珍しい音源を収録した海賊盤が世に出されてしまうのでした。

 

注:本稿は、2003年10月26日に拙サイト「サイケおやじ館」に掲載した文章の改稿です。

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The Beatles Get Back To Let It Be:其の拾五

2020-09-08 18:11:49 | Beatles

ビートルズは歴史なので、今でこそ様々な資料が掘り起こされ、当時の一連の流れを眺める事が可能です。

しかし当時は、殊更日本では、そ~ゆ~情報に時間差があり、ポールの脱退&解散騒動は、一般紙でも報道されましたが、その頃のサイケおやじに分かっていたのは、ビートルズのメンバー同士の仲が悪くなっている程度の認識でした。

しかし……、映画「レット・イット・ビー」を観てしまった後になると、それは納得するしかない部分が確かにあったのです。

さらに、それよりも驚いたのは、新作アルバム「レット・イット・ビー」の評判が、特に評論家の先生方の間で、全く良くない事でありました。

それはもちろん当時、その製作に関するゴタゴタ諸々について、こちらが知らなかった所為もあるんですが、中でも個人的には気に入っていた「The Long And Winding Road」にポールが異を唱え、一部の音楽マスコミがボロクソに書いていた事は、ど~しても理解出来ませんでした。

それでも…… 暫くして、大きな要因はプロデューサーのフィル・スペクターが元々の素材を大改造してしまった所為と知れるのですが、その問題の「The Long And Winding Road」における、ポールに無断(?)で勝手にダビングされた大仰なストリングスパートのアレンジが、実はサイケおやじは大好きで、それが高じて、ついにはビートルズの曲をストリングスで演奏しているアルバムまで買ってしまったという、いやはなんともの告白をせねばなりません。

ですから、今でもフィル・スペクターは悪い事はしていないと信じているのですが、ただ確かに、アルバム「レット・イット・ビー」には、何とも言えない違和感がありました。

結論から言うとそれは、このアルバムは「ロックの音」がしていないっ!

と、いう事です。

もちろん、この結論は後付でサイケおやじが捻り出したものですが、最初に気が付いたのは、この作品の前に発表されたアルバム「アビー・ロード」との音の差異でした。

「アビー・ロード」には、何故あれほどまでの聴覚的快感があるのか?

それは曲が良い、曲の配列が良い、構成の妙がある等々の要因に加えて、音が見事にロックしていたからだと、サイケおやじは考えます。

そして、今にして想えば、それは「1970年代ロックの音」を先取りしていたと思うのです。

対して「レット・イット・ビー」はどうでしょう。

確かに膨らみと温かみのある音でした。しかし、そこからロックのエネルギーが感じられるでしょうか? あの細密に創りあげられた「サージェント・ペパーズ」でさえ、強烈なロックのエネルギーを放っていたというのに……。

もし……、フィル・スペクターが間違いを犯したとされるなら、サイケおやじは、この点だと思っています。

其の拾参」でも少し触れた様に、フィル・スペクターのプロデュースの最大の特徴は厚みのある音作りです。それは演奏者の大量動員、例えばギターやピアノや打楽器等々のプレイヤーを複数集めて、一斉に演奏させる事や、出来上がったカラオケや録音したボーカルに過剰なエコーを施して生み出されるものですが、ひとつハズしてしまうと、本来迫力があるはずであった音がモコモコになってしまう、つまりエッジの無い音になってしまうのではないか? 

と、思います。

その原因は、当時のレコード盤の状況にあり、フィル・スペクターが敢て、そういう手法で生み出した作品が最高の迫力で味わえるのが、モノラルの45回転シングル盤の世界でした。

特にフィル・スペクターが活動のベースにしていたアメリカでは、シングル盤のカッティング・レベルがとても高く、それは出力レベルの低い小さなレコード・プレイヤーやジューク・ボックスで使用されたり、あるいはAMラジオで放送されたりする事を前提にしたものでした。

ですから、それを基準にして作っていた所謂スペクター・サウンドは、当然33回転LPにも収録して当時から出回っていましたが、やはり回転スピードが遅いためにシングル盤と同じ迫力が再現出来ていませんでしたし、もちろんステレオ・バージョンも作られ、LPでは聴けましたが、矢鱈エコーばかりが強くて、これもダメ!?

以下はサイケおやじの完全なる独断と偏見です。

フィル・スペクターが全盛期に作り出していた楽曲の多くは、甘く切ないドリーミーな世界です。そういうものでは温かみがあり、膨らみがある音が合っていたからこそ、数多のヒットが生まれたのです。

ところがビートルズの出現により、彼の作り出していた音は時代遅れになりました。

それが何故かと言えば、ビートルズは所謂アメリカンポップス以前のアメリカの音、つまりチャック・ベリーやリトル・リチャード、そして初期エルビス・プレスリー等の粗野な音を持っていたからです。それがロックの音でした。さらにビートルズが新鮮だったのは、そうした音で、アメリカンポップスの香りが感じられる楽曲を歌い、演奏していた事でした。

もちろん、そこに自然な英国風の味付けが施されていたのは言うまでもありません。

ただし、これは彼等の勘違いから生まれたものだ、とサイケおやじは思っています。

それはビートルズが生まれ育ったイギリスのリバプールが、田舎であるにもかかわらず港町という事で、アメリカの流行歌のレコードが入荷し易く、多くの若者がロックンロールの洗礼を受けていた事と平行して、当時最新流行の音楽にも逸早く接する事が出来たという下地があったのですが、やはり情報不足は否めず、おそらく彼等は本格的にバンド活動を始めた60年代初期において、本場アメリカではロックンロールもアメリカンポップスも同時に流行っていると思っていたのではないでしょうか? 

そして、その両者を上手く交ぜ合わせれば、素晴らしい音楽になるに違いない!?

アメリカでも成功するに違いないっ!

と、ある種の勘違いをしていたのでは……。

ところがリアルタイムのアメリカにおける芸能界の実情は、エルビス・プレスリーが兵役に取られていた事を筆頭に、チャック・ベリーはある事件でリタイア中、バディ・ホリーは飛行機事故で他界する等々、50年代に熱狂をまきおこしていたロックンロールは下火になり、代わって職業作家によって作られた楽曲を歌うアイドルの全盛時代になっていました。

で、その職業作家達、例えばその代表がバリー・マンやキャロル・キング、ニール・セダカ等で、フィル・スペクターも、その中に入っていたのですが、そ~ゆ~ソングライター達はロックンロールの8ビートに、それまでの主流だったジャズ系ポピュラーソングのコード進行に基づいたメロディーを乗せた楽曲を量産しておりました。

ただしそれは、ほとんどが白人ティーンエイジャーに向けたものですから、ロックンロールの毒気はシュガー・コーティングされた世界になっていました。

つまり、一番肝心の部分である、リズム的興奮が抜け落ちていたのです。

そこへ、ビートルズの出現です。

ビートルズの音楽は、その容姿共々に大人達からは顰蹙物でしたが、何故アメリカで受け入れられたかと言えば、黒人的でありながら黒人的ではなかったからだと思います。

その点は黒人的感覚で歌う白人歌手というエルビス・プレスリーのデビュー時もそうでしたし、また当時、ビートルズに唯一対抗出来たアメリカ産流行歌である黒人ポップスのモータウン・サウンドは、スペクター・サウンドの黒人的展開でした。

突き詰めれば、ここでサイケおやじが言及する「黒人的」とは、ビートを強調した強いリズム感覚、「黒人的では無い」とはジャズ系ポピュラーソングにおけるユダヤ人的感覚、あるいは北イギリス的感覚という白人的なメロディの導入です。

そして、この時点で「ロックンロール」は、今に続く「ロック」に変化したのだと、サイケおやじは妄想してしまうのですが、いかがなものでしょう。

結果として、フィル・スペクターは、その「ロックの音」に気がついていなかったと言うよりも、それでも頑なに自己の音世界に拘ったのではなかろうかと思います。このあたりは、スペクター的中華思想というか、彼の天才性の証明かもしれません。

そこで「レット・イット・ビー」ですが、「スペクターの音」は「Two Of Us」や「Across The Universe」、あるいは賛否両論あるにしろ「The Long And Winding Road」といった柔らさが持ち味の曲では、とても良く合っていると思います。

しかしながら、「One After 909」等々の屋上ライブで演奏された楽曲では、必ずしもそうではありません。

ここでは一応、既発曲であった「Get Back」が「スペクターの音」で収録されておりますが、それにしても、その味は薄めになっておりますし、より黒っぽい「Don't Let Me Down 」がアルバム「レット・イット・ビー」に入れられなかったのも、シングルB面はLPには収録しないという慣例に従った事ばかりでは無いと思うばかりです。

以上、サイケおやじが独断と偏見で思うところは申し述べました。

もちろん皆様からの、お叱りは覚悟しております。

ということで、アルバム「レット・イット・ビー」は「ロックの音」がしないという物足りなさを決定的に証明したかの様な事件が、1970年末に発生するのでした。

注:本稿は、2003年10月13日に拙サイト「サイケおやじ館」に掲載した文章を改稿したものです。

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