■Eric Clapton & His Rolling Hotel Special “J” Edition (Idrl Mind = DVD)
エリック・クラプトンの全盛期に作られながら、結局は一般公開もされず、「幻」となっていたドキュメント映画「Eric & His Rolling Hotel」の復刻DVD最新版を、金曜日にゲットしてきました。
もちろんプートですが、「Special“J”Edition」のサブタイトルに偽り無しの日本語字幕付き♪♪~♪ 作品の性質からして、これは嬉しいところです。
内容は1978年秋の欧州巡業の日々、もちろん演奏シーンも楽しめますが、特筆すべきはツアーの移動や日常生活に特別借り切りの列車を使っていたことから、エリック・クラプトンやバンドの面々、友人やスタッフ達のリラックスした様子が上手く纏められていて興味深々♪♪~♪
そしてこの復刻DVDは、そこに細かくチャプターが付けられていますし、画質もこれまでで最高でしょう。
01 IMP Slate
02 Smile ★
03 Opening Title - Layla
04 The Rolling Hotel
05 Lay Down Sally
06 Backstage
07 Layla ★
08 Patti And Eric
09 Tulsa Time ★
10 The Guys In The Band
11 When Did You Leave Heaven ★
12 Tour Management
13 Roadies
14 Loving You Is Sweeter Than Ever ★
15 Got My Mojo Working / Muddu Waters ★
16 Mannish Boy / Muddu Waters ★
17 Eric's Dicisions
18 Badge ★
19 Song Writing
20 Wonderful Tonight ★
21 I Owe My Life To E.C.
22 The Wrong Bloke
23 Further On Up The Road
24 Th Make Somebody Happy ★
25 Robert Johnson & Jimi Hendrix
26 Double Trouble ★
27 Backstage
28 Cocaine ★
29 Nine Months Out Of This Year
30 Further On Up The Road ★
31 Got Something To Do
32 Ending - Lay Down Sally
まず冒頭、移動中の列車内で「Smile」を素で歌うクラプトンが憎めません。既に述べたように、この作品はドキュメントですから、全てが歌や演奏の場面ではありませんが、それゆえにこうした軽い部分やリハーサル、曲作りや弾き語りを披露してくれる「エリック・クラプトン」という神格化されたミュージシャンの自然体が最高に輝いています。
一応、実際の演奏や歌のパートには★印をつけておきましたが、映像のBGM部分にも公式テイクと異なるバージョンがあるようですから、それも要注意でしょう。
で、その中ではビッグ・ビル・ブールンジーでお馴染みのブルース歌謡曲「When Did You Leave Heaven」の弾き語りが、もう感涙してしまうほどに、せつない名演! クラプトンの枯れた歌の節回し、アコギの何気無い上手さ♪♪~♪ ここを見るだけで、このフィルムの価値があると断言しても、決して後悔は致しません!
またフォートップスのヒット曲をカバーした「Loving You Is Sweeter Than Ever」はリハーサルでの映像で、これはこの巡業中に正式な演目に加えられ、後に未発表ライブテイクを纏めた4枚組CDセット「Live In The Seventies (Polydor)」でも聴けますが、それまでの経緯が楽しめるというわけです。
ちなみに当時のバンドはエリック・クラプトン(vo,g) 以下、ディック・シムズ(p,key)、カール・レイドル(b)、ジェイミー・オールデイカー(ds,per) という4人組のため、ギターパートは全てクラプトンが担当するというシンプルさが、逆に緊張感満点!
ただし当時のバンドは1974年以来のレギュラーということで、慣れ合いや倦怠、マンネリ気味だったことも事実ですし、その中には酒とギャンブル、セックスとドラッグが万延していたのも事実でした。当然ながら、クラプトンも……。
そのあたりは流石にこの作品の中では触れられていませんが、それにしても悪いクスリにどっぷりと浸かっていたクラプトンが「Cocaine」の熱演を聞かせてしまうのは皮肉です。まあ、個人的にはクリーム時代の「Sunshing Of Your Love」の二番煎じみたいなアレンジが好きなれませんが、ライブの現場では強烈至極なギターソロが格別ですし、観客の熱狂も当然だと思います。
そして気になるのは、やはりパティ・ボイドが登場していることでしょう。
彼女はご存じ、クラプトンの大親友だったジョージ・ハリスンの元妻で、まだ人妻だったパティに横恋慕したクラプトンが、史上最高の不倫ソング「Layla / いとしのレイラ」を書いたのは有名な話ですよね。
その甲斐あって、パティはクラプトンの気持ちを受け入れるのですが、やはりジョージへの罪悪感は打ち消せず、2人は決別……。それからしばらくの間、クラブトンは酒と悪いクスリに溺れた隠遁生活を送ったのは皆様がご存じのとおりです。そして1973年にどうにか再起するにあたっての裏話も含めて、ここでは「Patti And Eric」のパート、そして作品全体の随所でそれが語られていきます。もちろんパティの美しき熟女の存在は強烈! いゃ~、クラブトンが惑わされるのも無理からん……。
もちろん当時の2人は内縁関係でしたし、その日常生活の中から生まれた人気曲「Wonderful Tonight」の大サービスも「お約束」でしょうね。当然ながら曲が作られた有名なエピソードもクラプトン自身が語っています。
そして2人は翌年に結婚するのですが、既にこの頃から酒と悪いクスリで体がポロポロになっていたクラプトン、また同じく酒に耽溺していたパティ……。結局、クラプトンは病気でダウンしての療養生活に入り、再び再起するのですが、パティは酒を捨てられず、2人は破局を迎えることを知っていれば、尚更にこのドキュメントは痛切です。
まさに自然体でブルースを演じていたエリック・クラプトン!
その意味でも、この巡業で前座を務めてくれたブルースの巨匠たるマディ・ウォーターズの熱演が2曲も楽しめるのは最高です。しかも激ヤバの歌詞を意訳した日本語字幕がありますので、これはお茶の間じゃ気まずいかもしれませんよ。
ということで、とにかく素晴らしいドキュメント作品だと思います。
既に述べたように、当時のクラプトンは人気盤「Slowhand (Polydor)」の大成功、そして新作アルバム「Backless (Polydor)」を出した直後の絶頂期とあって、その音楽的な充実度は言わずもがな、爛熟して退廃した70年代ロックの王道を邁進していたのです。
それはマンネリの心地良さでもあり、当然の煮詰まりでもあったのでしょう。このツアーが終了して間もなく、バンドメンバー全員に解雇が言い渡され、その失意からでしょうか、カール・レイドルは悪いクスリと酒に溺れ、1980年に亡くなっています。
そうした諸々を知り得た今になって接するこの作品の味わいは、本当に深いところ……。日本語字幕という仕様もありがたく、これは実にじっくりと楽しめるブツでした。
そしてクライマックスでの「Further On Up The Road」は、ジョージ・ハリスンとエルトン・ジョンが飛び入りした痛快なブルース大会で、これも貴重なプレゼントになっています♪♪~♪