■未経験 / 中野美紀 (ビクター)
1980年代のアイドル業界で、ひとつのキーワードになっていたのが所謂「ポスト百恵」であり、また既に「百恵フォロワー」が本家引退前から次々に登場していたのも、昭和歌謡曲における歴史のヒトコマだと思います。
そこで昭和57(1982)年3月、本日掲載のシングル盤をデビュー作に登場した中野美紀は、まさに山口百恵の再来を強く感じさせる存在として、サイケおやじは強い印象を覚えましたですねぇ~~♪
それはまず、ちょっぴり翳りが滲む彼女の面立ち、さらには仄かに色っぽい佇まいがナチュラルに山口百恵を思い出させてしまういう、そのあたりの魅力はリアルタイムで接しておられなかった皆様にも、ジャケ写から伝わってくると思いますが、いかがなものでしょう。
そして作詞作曲:松宮恭子による肝心の収録A面曲「未経験」が、これまた強烈なインパクト!
なにしろ歌詞の内容が、おそらくは高校生であろう女子の妊娠&中絶、初体験の顛末や不良男子生徒に恋心を抱く純真な処女の気持という、これは当時としても、アイドルソングを逸脱寸前のなかなか過激なものでして、それが萩田光雄が施した、如何にも山口百恵っぽい、アップテンポの歌謡ロックサウンドで歌われるのですから、たまりません!?!
しかも中野美紀の声質や節回しの妙が、これまたほとんど「山口百恵」なんですから、ここまで狙いが明確な売り出し方があれば、あとは自ずとっ!
売れると思いきや、ほとんど空振りだったのは、厳しい現実というよりも、サイケおやじにとっては解せない不思議というのが今も偽りのない気持ちです。
だって、デビューした頃はテレビにもちょくちょく顔を出していましたし、プロモーションもしっかり行われ、また歌の実力にしても例のテレビスカウト番組「スタア誕生」のグランドチャンピオンという実績があるのですから、業界内環境や芸能的資質は申し分ないはずが……。
結局、これっきりみたいなフェードアウトは如何にも残念でした。
ただし、未確認ではありますが、どうやらかなり後になって、シングル盤をもう1枚残しているという噂(?)を耳にしておりますので、本当は探索しなければいけないのですが、サイケおやじとしては、気が抜けたというか、このデビューシングルだけで、中野美紀は「永遠の幻」にしておきたいのが本音です。
ということで、「ポスト百恵」という問題は中森明菜の登場によって、ひとつの結論が提示されたという歴史的解釈もございますが、だとすれば、中野美紀がブレイク出来なかったのは、あまりにも本家に拘ってしまったからでしょうか?
真相はどうあれ、「幻」は美しいというのも、またひとつの真実だと思っています。