今年はある事情から、大好きな生牡蠣がイケナイとか、値段が安いとか、喜んでいいんだか、悪いんだか、分からない按配ですね。
しかし本日の宴会では、生牡蠣を食いまくりたい! と、密かに計画しています。
ということで、本日の1枚は――
■Plenty, Plenty Soul / Milt Jackson (Atlantic)
ミトル・ジャクソンはアドリブの大名人!
これは誰しも認めるところでしょう。深みのあるヴァイブラフォンの音色も、また魅力です。
で、この人はモダンジャズ・カルテット=MJQの看板スタアでありながら、同時に自分のグループでも大活躍していたわけですが、個人的にはMJQでの演奏に愛着があります。
というのは、ご存知のように、このバンドはアレンジがガチガチに決まっているうえに、お約束は絶対に外さないという安心感がウリでしたが、その中から奔放に抜け出ようと暴れるところに、ミルト・ジャクソンの存在価値があったと思うからです。
実際、MJQの演奏が、綿密なリハーサルの結果として生み出された完成アドリブ=出来上がった存在のアドリブだとしても、瞬間芸というジャズの本質を何時も感じさせていたのは、ミルト・ジャクソンのおかげではないでしょうか?
ですから、ミルト・ジャクソンのリーダー盤では、よりアドリブの要素が濃いものもけっこうですが、個人的にはアレンジがびっしり決まったセッションが好みです。
その意味で、このアルバムはクインシー・ジョーンズが作編曲に関わった秀作で、録音は1957年1月、メンバーはAB面で異なっておりますが、ファンキー度が極めて高い演奏ばかりです。
まずA面は、ミルト・ジャクソン(vib)以下、ジョー・ニューマン(tp)、ジミー・クリーブランド(tb)、キャノンボール・アダレイ(as)、フランク・フォスター(ts)、サヒブ・シハブ(bs)、ホレス・シルバー(p)、パーシー・ヒース(b)、アート・ブレイキー(ds) という、今では夢のメンバーです♪ ちなみにキャノンボール・アダレイは契約の関係で、ロニー・ピーターズとクレジットされています――
A-1 Plenty, Plenty Soul (1957年1月5日録音)
ミディアムテンポでグルーヴィに演奏されるファンキー曲で、ちょっとカウント・ベイシー楽団のような雰囲気が漂うのは、ご愛嬌以上の楽しさです。なにしろホレス・シルバーが音符を切詰めたベイシー・スタイルで迫れば、続くフランク・フォスターはリアルタイムで同バンドのレギュラーだった貫禄を聴かせてくれます。
またキャノンボール・アダレイは、十八番の黒~いフィーリング♪
さらにアート・ブレイキーのゴスペル・ドラムスが最高ですねぇ~♪
そして、満を持して登場するミルト・ジャクソンは倍テンポで暴れ、タメのブルース感覚を撒き散らしますから、もう、その場はファンキーどっぷりです!
おまけに後を引き継ぐジョー・ニューマンが、たまらないフレーズの連発なんですから、あぁ、これはハードバップのルーツを感じさせてくれる名演だと思います。
A-2 Bogity Bogity (1957年1月5日録音)
アップテンポでグイグイ迫るハードバップですが、全体のアレンジがカウント・ベイシー調なのがミソというのが、楽しい限りです。
キャノンボール・アダレイも好調ですが、やはりホレス・シルバー&アート・ブレイキーというリズム隊は流石のグルーヴを生み出しています。ただし録音の按配からベースがほとんど聞こえないのが、残念な減点です……。
それゆえにミルト・ジャクソンの大ハッスルが、逆に物足りません……。
A-3 Heartstrings (1957年1月5日録音)
重厚なアレンジに彩られたミルト・ジャクソンのオリジナル曲で、スローでハードボイルドなテーマメロディとアドリブは、往年の日活アクションの劇伴のようで、グッときます。
う~ん、それにしてもミルト・ジャクソンのアドリブは完成度が高く、しかもアレンジと対峙していこうとする気概に満ちていて、本当に素敵です♪
さてB面の録音は2日後に行われ、メンバーはミルト・ジャクソン(vib)、ジョー・ニューマン(tp)、ラッキー・トンプソン(ts)、ホレス・シルバー(p)、オスカー・ペティフォード(b)、コニー・ケイ(ds) という、こちらも豪華絢爛です――
B-1 Sermonette (1957年1月7日録音)
キャノンボール・アダレイが書いたウルトラ級のゴスペルハードバップ曲です。
残念ながら、ここには作者が加わっていませんが、指パッチンからエッジの鋭いベース、ザラザラのドラムスがミディアムのグルーヴを生み出し、ミルト・ジャクソンが初っ端から黒~いフレーズを撒き散らしていますから、いきなり感涙悶絶は必至という素晴らしさ♪
クインシー・ジョーンズのアレンジも許容度が高い雰囲気ですから、全篇が、これファンキーの塊のような出来だと思います。
コニー・ケイのドラムスのメリハリも最高ですねっ!
そしてラッキー・トンプソンのテナーサックスが、これまた良いんですよ♪ ジョー・ニューマンの忍び泣きも、OKです。
B-2 The Spirit-feel (1957年1月7日録音)
ミルト・ジャソンが書いた軽快な曲をクインシー・ジョーンズが上手くアレンジした快演です。
まずジョー・ニューマンが温故知新で炸裂すれば、ホレス・シルバーは我が道を行くファンキーグルーヴ! コニー・ケイが、ここでも最高です。
そして主役のミルト・ジャクソンは最初っから余裕を感じさせつつも、バックのリフに煽られて燃え上がっていくあたりが強烈! これがジャズですねぇ♪ コニー・ケイのゴスペルドラムスも捨てがたいです!
B-3 Ignunt Oil (1957年1月7日録音)
これもミルト・ジャクソンのオリジナルという黒いハードバップです。
もちろんアドリブパートもファンキーなフィーリングがテンコ盛り♪ この当たり前さ加減が、たまらんですねぇ~♪ ホレス・シルバーとの相性もバッチリです。
そしてラッキー・トンプソン! この人は我国では過小評価気味ですが、私は大好き♪ 男気があって物分りが良く、スジを通す任侠テナーサックスだと思います。
B-4 Blues At Twilight (1957年1月7日録音)
クインシー・ジョーンズが書いた哀愁のブルースで、ほとんど映画サントラみたいですが、ミルト・ジャクソンとホレス・シルバーには似合いの世界なんでしょう、スバリ、快演です。
特にアドリブパートでのミルト・ジャクソンのイキイキした躍動感は、独特のタメとグルーヴィなノリがドバッと出ています。
また中盤からビートを強めていくリズム隊とジョー・ニューマンの絡み、オスカー・ペティフォードの押さえた存在感、ラッキー・トンプソンのハードボイルドな風情も素敵です。
ということで、A面はカウント・ベイシーがファンキーしたような雰囲気、B面はゴスペル味が濃厚な演奏という、一粒で二度美味しい、グリコ盤♪ ちなみにミルト・ジャソンは、この味が忘れられなかったのか、後年、本当にカウント・ベイシーのオーケストラと共演盤を作っています。
ところで、アトランティックという会社は、何故か録音がイマイチ、チープなんで、ミトル・ジャクソン独特の緩い音色のヴァイブラフォンが、このセッションではクール度を増したという、結果オーライになっていると思います。
そして現在、紙ジャケット仕様で復刻されている日本盤CDは、マスタリングの良さから、そこにエグミが付加されて、一層魅力のある仕上がりになっていますので、激オススメです。