元慰安婦調査の検証「国会質問に感謝」 首相、維新・山田氏に
(14.2.24 毎日新聞)
安倍晋三首相は24日、政府が1993年に行った元従軍慰安婦への聞き取り調査の検証について、国会内で日本維新の会の山田宏衆院議員に「(一部報道機関の)世論調査で高い支持率を得ているのは山田さんが質問してくれたおかげだ」と述べた。維新関係者が明らかにした。
山田氏は20日の衆院予算委員会で「聞き取り調査について政府がチームを作って検証してほしい」と質問。首相はその際、答弁に立った菅義偉官房長官に繰り返し声を掛けており、その後菅氏は「(検証を)検討していきたい」と答えていた。
報告書は慰安婦への旧日本軍の関与を認めて謝罪した「河野談話」の根拠になっている。首相の発言は談話見直しを巡って考え方の近い山田氏に謝意を伝えた形で、山田氏は「政府だけではできないこともあるので協力していきましょう」と応じた。
□□――――――――――――――――――――――――――――――――――――――□□
文中の「報告書」とは、河野談話を出す前に政府が元従軍慰安婦に行った聞き取り調査の結果の報告書のことです。
日本維新の会の山田宏氏は今月20日の衆院予算委員会に維新の会の要請で参考人として出席した石原信雄元(河野談話を出した当時の)官房副長官に対して河野談話作成の経緯について質しました。
石原元官房副長官は「彼女たちの証言の中に、『募集業者の中にかなり強引な手段で募集し、だまして連れてこられた。募集の過程で当時の官憲が関わった。かなり脅しのような形で応募させられた』と証言する方がおり、それをもとに最終的に河野談話としてまとめた」と答えました。山田氏は「慰安婦だった方の証言の事実関係を確認するための裏付け調査を行ったかどうか」を質問し、石原氏は裏付け調査は行っていないことを明らかにし「当時の状況としては、裏付けを取ることをできる雰囲気ではなかった」と答えています。
日本維新の会は河野談話の見直しを掲げており、「強制連行はなかった」と主張したいようです。一方安倍首相は表面的には河野談話を否定していませんが、第一次内閣のときに「政府が発見した資料には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述は見当たらなかった」と発表しており、村山談話とともに否定したいと思っています。答弁に立つ菅官房長官に何度も声を掛けたのは、「検証を検討したい」と言わせるためだったのでしょう。それで山田氏の質問に感謝したのです。
でも、従軍慰安婦は軍の強制ではなかったということを元官房副長官に言わせようとした質問を「おかげで内閣支持率が上がっている」と結びつけるのはどうでしょうか。靖国神社参拝や首相が任命した人たちの言動が諸外国から「安倍氏はナショナリストだ」と批判が出ているようですが、首相は右寄りの傾向を強めている日本維新の会を政府・自民党の補完勢力と考えて、ますます抱き込もうと考えていることの現われでしょうか。
大西 五郎