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弱肉強食の「通貨戦争」、その実態   文科系

2015年05月06日 11時26分45秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 ツッコミさんのご期待に応えて、世界各国大小の「バブル」に仕掛けられる通貨戦争、「過大評価されている市場がおもちゃにされる」実態をご紹介してみたい。

 先ず、08年まで38年間のIMF発表のこの概要。
『実際、リーマン・ショックとほぼ同時期、2008年9月に発表されたIMF(国際通貨基金)の一調査によれば、1970年から2007年までの38年間に、208カ国で通貨危機が、124カ国で銀行危機が、63カ国で国家債務危機が発生しています。金融危機は、先進国、新興工業国、開発途上国を問わず、アジア、ヨーロッパ、南北アメリカ、アフリカを問わず起こっていたのです。これに対し、第二次大戦後1970年以前の時期には、国際金融危機や大規模な一国金融危機はほとんど発生していません。第二次大戦後に限れば、金融危機は1970年以降の現象だったのです。なぜ、1970年代以降、金融危機が繰り返し発生するようになったのでしょうか。また、これらの金融危機の背後にはどのような事態が存在するのでしょうか』(岩波ブックレット12年刊 伊藤正直・東京大学大学院経済学研究科教授「金融危機は再びやってくる」P3)
 この文章の後の「背景説明」3点はこうなっています。①基軸通貨の弱化から国際金融システムの不安定化。②新自由主義政策、至上主義的経済政策。③G7の弱体化、G20の台頭など。

 タイへの自己実現的通貨投機から始まったアジア通貨危機について、次に見てみます。通貨危機は、世界金融資本の最大暗躍手段・場所の一つであって、世界各国から「通貨戦争」とも呼ばれています。なお、このタイ通貨危機は、97年の東アジア通貨危機の発端・震源地になった事件として非常に重要なものです。
『「投機家はタイに自己実現的通貨投機をしかけた。一ドル二五バーツに事実上固定していたタイ・バーツが貿易収支の悪化から下落すると予想し、三ヶ月後に二五バーツでバーツを売りドルを時価で買う先物予約をすると同時に、直物でバーツを売り浴びせた。タイ中央銀行は外貨準備二五〇億ドルのほとんどすべてを動員して通貨防衛を試みたが力尽きた。」(東洋経済「現代世界経済をとらえる VER5」二〇一〇年。一二一頁)』

 毛利良一・日本福祉大学経済学部教授著「グローバリゼーションとIMF・世界銀行」(大月書店2002年刊)243~244頁から、上のことの詳論を抜粋してみたい。
『通貨危機の震源地となったタイについて、背景と投機の仕組みを少しみておこう。タイでは、すでに述べたように経常取引と資本取引の自由化、金融市場の開放が進んでいた。主要産業の参入障壁の撤廃は未曾有の設備投資競争をもたらし、石油化学、鉄鋼、自動車などで日米欧間の企業間競争がタイに持ち込まれた。バンコク・オフショアセンターは、46銀行に営業を認可し、国内金融セクターが外貨建て短期資金を取り入れる重要経路となり、邦銀を中心に銀行間の貸し込み競争を激化させて不動産・株式市場への資金流入を促進し、バブルを醸成した。
 このようにして流入した巨額の国際短期資本は、経常収支赤字の増大や大型倒産など何かきっかけがあれば、高リターンを求めて現地通貨を売って流出する。投機筋は、まずタイ・バーツに仕掛け、つぎつぎとアセアン諸国の通貨管理を破綻させ、競争的切り下げに追い込み、巨大な利益を上げたのだが、その手口はこうだ。
(中略)1ドル25バーツから30バーツへの下落というバーツ安のシナリオを予想し、3ヶ月や半年後の決済時点に1ドル25バーツ近傍でバーツを売り、ドルを買う先物予約をする。バーツ売りを開始すると市場は投機家の思惑に左右され、その思惑が新たな市場トレンドを形成していく。決算時点で30バーツに下落したバーツを現物市場で調達し、安いバーツとドルを交換すれば、莫大な為替収益が得られる。96年末から始まったバーツ売りに防戦するため、タイ中央銀行は1997年2月には外貨準備250億ドルしかないのに230億ドルのドル売りバーツ買いの先物為替契約をしていたという。短期資本が流出し、タイ中央銀行は5月14日の1日だけで100億ドルのドル売り介入で防戦したが、外貨準備が払底すると固定相場は維持できなくなり、投機筋が想定したとおりの、自己実現的な為替下落となる。通貨、債券、株式価値の下落にさいして投機で儲けるグループの対極には、損失を被った多数の投資家や通貨当局が存在する。
 投機を仕掛けたのは、ヘッジファンドのほか、日本の銀行を含む世界の主要な金融機関と、大手のミューチュアル・ファンドをはじめとする機関投資家であった。また、1999年2月にスイスのジュネーブで開かれたヘッジファンドの世界大会に出席した投資家は、「世界中を見渡せば、過大評価されている市場がどこかにあります。そこが私たちのおもちゃになるのです」と、インタビューで語っている。』

 このアジア通貨危機について、ある学者の見解の変化を振り返っておきたい。ジョセフ・スティグリッツ。世界銀行の副総裁経験者にして、ノーベル経済学賞受賞者でもある彼の変身のことだ。彼は初め、アジア通貨危機についてこう述べていた。「主流派の内因説も、外因説の方もそれぞれのイデオロギーに過ぎない。対するに、グローバル化はイデオロギーではなく、システムそのものの不可避的な進行なのである」と。まー「自然にこうなったのだ」というところだろう。それが後にはこう変わっていった。
『「ゲームのルール作りとグローバル経済の運営を託された国際機関は、先進工業国の利益のため、もっと正確にいうなら先進国内の特定の利権(農業、石油大手など)のために働いている」と指摘し、「アジア諸国が健全な金融システムと適切な政策を保持していたにしても危機は発生しえた」と主張しました。
 この見方は、当初は少数意見でしたが、その後、J・パグワッティ、J・サックスのような新古典派経済学の主流部分にも同調者が広がりました』(「金融危機は再びやってくる」)


 上の文中でこの二つを僕は特に強調したい。
『「世界中を見渡せば、過大評価されている市場がどこかにあります。そこが私たちのおもちゃになるのです」と、インタビューで語っている』
『「ゲームのルール作りとグローバル経済の運営を託された国際機関は、先進工業国の利益のため、もっと正確にいうなら先進国内の特定の利権(農業、石油大手など)のために働いている」と指摘し、「アジア諸国が健全な金融システムと適切な政策を保持していたにしても危機は発生しえた」と主張しました』

 なお、日米が通貨危機を引き起こしたという場合、主体は国家ではありません。そこの金融機関のことです。国家はそれを見て見ぬ振りをしている。不振の物輸出に対して、これが外貨獲得の最大手段になっているからです。
コメント (16)
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