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随筆 「今時の共働き仲間たち」   文科系

2015年05月24日 21時18分04秒 | 文芸作品
 僕の正面二〇メートルほどにある大型滑り台には、四人ほどの子ども。赤青黄色など何本もの滑り台が付いている二つの塔を吊り橋で繋いだ大きな遊具だ。その上をあちこち行き交っているのだが、速い子、所によりおそるおそるに近い子と様々であるのに思わず目を細めたりしていた。一人の男性が、その場面のあちこちをカメラで撮ってまわっているのが見える。その向こう二十メートルほどに、今まさに高速で回っている黄色くて丸いジャングルジム。大人の男性二人を上の方に乗せて、子どもたちだけでジムの同一円周上を汗水垂らして走り回っている真っ最中である。

 四~五歳ほどが主体と思われる子どもが十人近くと、父親四人。その内の一人はベンチに座って、赤ん坊にお茶を飲ませている。街中のちょっとした公園、五月のある日曜日昼のこの光景を僕は今、全体が見渡せるベンチから眺めている。さっきから何度も微笑みが浮かび、心が温かくなっていた。僕の孫娘、ハーちゃんの保育園同級生とそのお父さんたちなのである。先程までハーちゃんの家でこの全員でハーちゃんパパが作った焼きそばの昼食を平らげ、好きなお父さんたちは缶ビールを一本ずつほど干しあって、ここに遊びに来てからでもほぼ二時間近くになる。お母さんたちはといえば、今日はイタリアンランチの昼食会で、あるトラットーリアに出かけている。今頃はきっと、お喋りも大詰めでさぞ盛り上がっていることだろう。お父さんの何人かと僕が子守を引き受けたから成立した企画であって、こと更にイクメンなどと連呼される今の日本だが、こんな光景は昔からあるところにはあったと僕はよく知っている。ある種の保育園では年中行事になっているとでも言えるように。

 ここにやってきてからでも二時間は経って十五時に近くなった頃、公園の一角がにわかに賑やかになった。大型のワゴン車二台が到着して、車から続々と出て来た十人を越える若いママたち。それぞれおしゃれした姿は最近の流行なのか黒を基調とした中でも、人によって色とりどりで眩しく、またまた微笑ましく眺めることになった。子どもたちが一斉にそこに駆け付けていく。大急ぎの子、ゆっくりの子と、様々であるのに、又目が細くなっていた。

 さて、僕はここまでで家に帰ったのだが、その後も娘の家で有志によるパーティーが続いていたようだ。今度は父母合同だったのだろう。家に帰ってかなり経ってから、こんな電話があったから分かったことだ。電話に出たらいきなり「ハッピーバースデー・トゥー・ユウ」の混声合唱が聞こえる。暫くして娘の声で「まだみんなでやってるよ! おめでとう!」。僕はすっかり忘れていたのだが、この日は僕の七十四歳の誕生日だった。
コメント (1)
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