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現代の戦争を振り返ると・・・   文科系

2017年09月15日 17時29分05秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など
 戦争に対して、抵抗力が多い時代と、これが少ない時代というものがあるように思う。そして、こういう知識は少なくとも100年ほどの世界史を見て来なければ、分からないものだとも。以下のように。


 戦争への抵抗力が少ない時代とは、やはり失業者が多く、生きていくのが苦しくって、個人も集団、国も競争、追い落としが激しい時代。1929年前後の世界大恐慌時代とか、2008年のリーマンショック前後の大消費不況から今も打ち続くマネーゲーム、超格差、慢性的失業者などの時代がこれに当たるだろう。激しい競争のために、人間性も損なわれていく時代とも見うるのではないか。

 戦争への抵抗力が大きい時代の時代内容とは、戦後一時期あったような弱者にこそ社会の目が向けられた民主主義発展の時代。

 この二つをケインズ流に言うと、こうなるのだろう。供給サイド経済の時代(金融本位の時代)と、需要サイド経済の時代(給与生活者本位の時代)と。ここで経済というのは普通の意味とちょっと違うのであって、世界の人々が普通に食っていけること、そして子どもを二人以上生み育てられて、その将来にも安心できそうだという時代。そんな程度の意味なのだろう。
 今は全くこんな時代ではなくなっている。世界全体もそうだが、日本は特に。若者に失業者(「完全失業率の発表」が落としている潜在的失業者を含む)、不安定雇用者があふれて、結婚も出来ない少子化時代というのがその証拠だ。「景気が良くなるなら何でもやってくれ」という機運に満ちた1930年代は08年以降の今に似ていると言われてきたが、30年代は軍事大拡大の時代であり、ヒトラーや、満蒙・侵略・開拓の日本が出現した。出現しただけではなく、人々は彼ら、その施策を熱狂して迎えた。

 こうして、今英米が作ってきた新自由主義時代とは、本当に悪い時代なのだと思う。そして、歴史の当事者がこれを分からないことが人間の悲しさだとさえも。イラクで関連死含めて50万人とか、シリアでそれを上回る死傷者が出て、南欧、アジア、アフリカ、南米では失業者をあふれさせている時代! 特に若者の失業者大群の時代! 右派が国粋主義を唱い、軍拡も進んで行くような時代! 物が有り余るようなこんな豊かな世界が一体何故、どうして??
 歴史は時代に浸かっている目では何も見えて来ないと思う。浸かっていない目で少なくとも百年程度は見て、今を客観視できる目が大切ということではないか。アメリカのように国連さえ見ない、無視するのであれば、何をか言わんやだが。


 1990年までは冷戦の時代であった。これは、軍拡競争に敗れたソ連ゴルバチョフが降参と両手を上げたから、無事に終わることが出来た。その直後に起こったのが湾岸戦争であり、中東の時代。やがて「テロとの戦い」の時代が始まった。アフガン戦争、イラク戦争、シリア内乱戦争などは膨大な死者、難民を出し、いまなお三つとも戦乱下にあるのだが、早くも次の戦争の時代、仮想敵国が現れたようだ。米中問題を含む北の核問題として。
 こうして僕は北の核問題をば、9・11や「イラク大量破壊兵器」、「シリア政権の化学兵器使用問題」などと並べて考えてみるのである。すると、米中の経済・軍事・政治的な競り合いという次の時代が見えて来たような気がする。
 すると次には、こんなことに気付く。冷戦、アフガン、イラク、シリア、そして北、中国と戦争の相手、場所は変わっても、「こちら」は全ていつもアメリカなのだと。それも、自国だけではなくその都度参戦国仲間を募って、そこも軍拡させてきた。結果として、戦後50年続いた厳しい米ソ冷戦時代に比べてさえ、今の米軍事費は2倍になるに至っている。

 はて、こうして歴史を長い目で見てくると、こんな疑問が湧いてくる。「邪な敵」がいるから軍事費を増やすのか、軍事費を増やし続けるために常に新たな敵を作ってきたのか。アメリカはもちろん前者を吹聴しているが、僕は後者のように思えてならないのである。いわゆる「産軍複合体」が政治をも巻き込んでいく自己増殖運動。

 思えば、第二次世界大戦直後に今を予言し、警告を鳴らした大統領がいた。第34代アメリカ大統領アイゼンハウアー。警告を発したのは1960年頃のことである。大戦が終わっても相変わらず自己増殖に励んでいた軍事関係者に、時の大統領自らが脅威を感じたことは明らかなのである。
コメント (6)
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掌編小説  魂は存在するか?   文科系

2017年09月15日 11時39分50秒 | 文芸作品
「いろいろ考えてみたんですが……、一番聞いてみたいことで……。Tさんは、人の魂ってあると思われてますか?」
 高校二年と聞いていた細い肩が目立つ小柄なその女の子は、予めMさんから僕が打診されていた相談話の一番の核心をいきなり切り出して来た。母方の祖母であるMさんが孫のRちゃんのことで僕に相談を持ちかけてきたのは、僕が大学院の哲学科を出ていることと、十数人で十年近く続いたギターパーティー常連同士で気心知れた仲とからのようだ。

 この日僕がMさん宅のベルを鳴らしたのは、七月上旬午後の猛烈な日差しの中の、ジャスト二時。白に近いベージュ地に濃いダークブラウンのアクセントを付けた洋風の家は、ここを永住の地と決めて六年前に建てられたばかり。玄関から続く三メートルほどのアプローチ左脇の真っ赤なカンナの花がすくっと伸びた姿に歓迎されるようにして通い慣れたリビングダイニングに通されたのだった。このリビングは二階までの吹き抜けになっているのだが、これも含めて、ギターパーティー会場などにと目論んだ空間なのである。

「先ず、君の意見とその理由を聞きたいな。今日は聞き役に回る積もりで来ましたから」
「私は、無いと考えるようになりました。人間の心だけが他の動物のそれとは違うって、おかしいと思うんです。旧約聖書の創世記のような考え方がおかしくって、進化論が正しい訳なんでしょうし……」。
 単刀直入のこんな物言いに驚いた僕は、この子の勉強ぶりをもっと知ってみたくなった。
「アメリカのかなりの州が進化論を教えず、旧約聖書の創世記だけを教えていることも、そして、例えばドーソンの曙人を巡る考古学上の論争史なんかも、勉強されてご存知なんですね? そして、人の魂が無いなら神は居ないと?」
 彼女の目を見ながら話したから、この全てを彼女が肯定しているのは明らかだったが、Rちゃんはすぐにこの世界史に残る大偽造事件、曙人論争部分を引き継いでくれた。
「人類の頭頂骨を古い類人猿の下顔骨にくっつけて考古学的な化粧を施した化石を一九一〇年頃に発見したという事件で世界を大騒ぎさせてまで、人間の心だけが神の似姿なのだと抵抗してきた論争が、人類化石五百万年の発達解明でも完全に否定されたのだし、……… ある人の魂と言っても〇歳と九十歳とでは、全く変わっていく。老人の認知症なんかも含めてみれば、魂って何歳のソレって感じですよね。そして何よりも、神は居なくなる。人間の肉体を離れて魂がないとすれば、その魂の造物主も不要になるからで……」

 いろんな周辺知識をネットで調べる現代っ子流儀から得られた限りのものでも何回も予行練習を重ねてきたような話しっぷりに若く健全な好奇心が伺われて、僕は嬉しくって仕方なくなった。紅いセイロン紅茶を運んだ後、顔が見えるキッチンから耳を傾けているやのMさんも、気持ち良さそうな微笑みを彼女に投げかけている。僕は、自分の意見は抑えて聞き手に回ると決めたギリギリの応答内容を今ここで語って、彼女を励まそうと思い立った。

「どんな新聞などにも宗教欄はありすぎるほどあっても、神とか、人を超越した神聖な存在とかを否定する議論の紹介って、君も見たこと無いでしょ。これってやっぱりおかしいと、僕はいつも思ってきたよ。アメリカのいくつもの州みたいに地球や人類の誕生について創世記だけを教えるのと大して変わらないよね。無神論にも一応触れなきゃねー。ところで、神がいないとなった時には、罪とか愛、人生の価値とかはどうなるのだと、この事も考えたんでしょ?」
「はい『それら』もこの世の人間関係の中から生まれたんだと思います。島国に一人で生きてたら、便不便はあっても罪はほぼないのだろうし、物の価値の世界とは別の正義とか愛とかいうのは、他の人や擬人化されるような動物に対してのものなんじゃないかと……」 
 鉛筆を舐め舐め人生そのものへの答案を書いている真っ最中のような彼女は、僕の人生をも洗い直してくれるようだ。

「人の死は、どうなの。神の王国がなくってこれが待っている以上、人生の一切が無意味だという人もいるけど……」
「はい、私がこんなことを考え込むようになったのは、中学時代の親友が一年ほど前突然亡くなってしまったから。彼女はもうどこにも居ません。もちろん、自分がどこにもいないことも知りません。夢も見ない永遠の眠りですから、彼女を覚えている人もやがて誰もいなくなるでしょう。生きている私たちは、そこに至るまでは色々考え、悩むかも知れませんが、たった一度の人生を精いっぱい頑張って良いものにしようということでいいんじゃないでしょうか。Tさんたちがギターを一生懸命やっているように、私もピアノを頑張ってますし、勉強も楽しくやれてます」

 ここにいたって、見事至極と以外の言葉を僕は思いつけなくなっていた。この子は人文系学問の天才である。何よりも言葉による思考の整理・推進力が。こんな力を持っている子なら学科などは授業だけで分かってしまうに違いないのである。ある授業の焦点をすぐに嗅ぎ出して、そこの周辺だけを集中して学ぶことによって。Mさんも語っていたように、あらゆる種類の読書やネット検索を猛然と重ねて来た結果なのだろうが、それにしても……。
コメント (13)
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