僕はスポーツを身体芸術という文化と捉えてきたから色々熱心にやってきたせいか、その見方にも拘る。すると、スポーツ評論家などがその見方などをまとめたりしたものを案外観たことがないことにも気付いた。「観戦理論」のようなものがないので、勝手な評論が横行しているようにも観てきた。サッカーは、これと比べれば野球が基本的には個人プレーと言えるほどに組織が分からないと楽しめないスポーツでもあるのに。僕と違って、スポーツを単なる見せ物興行とか娯楽、遊びとだけみなすせいかなとか、思ったりもした。
サッカーの基本的見方自身が、野球などよりも遙かに難しい。その理由はこういうことだ。サッカーの攻守には、野球のように1人で1点取るホームラン王や、相手を1点台に押さえるエース投手のような個人は存在しない。ホームラン王やエースは基本的にそういう個人技を磨けばよいのだが、サッカーはいくら個人技があってもチームに溶け込めなければ1得点だって上げられない。ついで、その攻守が野球のようにはきちんと分けられず、良い守備が得点を産んだり、良い攻撃が守備時間(失点の可能性がある時間)をどんどん減らしたりと、攻守が相互に影響し合う度合いが野球などよりも遙かに大きい。攻守ともに組織が観えなければその面白さが全く分からないに等しいということだ。
① サッカーの最も初めの見方はこうだろう。ボールの動きを目で追っかけて、「今誰それが、パスミスした」とか「あそこの彼が、今ボール奪取ができたのに!」とか。ただこれは、誰でも見えること。よって次にはこうなる。身方からパスを上手く受けるために誰がどこへどう走っているかとか、敵のパス回しを潰すために身方選手らがどう走り込んでいるかとか。こうして、それぞれのチーム攻守の要の選手なども見えて来る。
② あるゲームで①を観ていると、どちらが優勢であるかが次第に分かってくる。良い位置、良い機会の敵ボール潰しが上手いらしくて、あるいはボール繋ぎ自身が上手くて、敵ゴールへのチャンスが多い方が優勢なのだ。
例えば、ボールを持っている時間がいくら長くても、そのボールを後ろとか横に回しているだけなら、優勢とは言ない。敵のボール奪取力を怖がっている(自分らのパス回し力と比較しての話だが)とも言えるからである。
逆に、いつも守っている方が劣勢とも言えない。後ろで良い機会に敵ボールを奪って、一気に敵ゴールに迫るカウンター・シュートが何度か成功しているならば。ちなみに、ボールキープ率30%でも勝つという例などは、サッカーではいくらでもある。
③ ①②から言えることだが、サッカーのこの基本、攻撃と潰しとはいつも、チームとして行われている。そこで問題になるのが、攻撃と守備との組織、選手配置とその流動性である。
守備組織には、身方陣地前に守備ブロックを作るやり方と、身方DFラインを上げてFWとの間を縮めたコンパクト・ゾーン・プレス守備とがある。前者で敵ボールを奪って攻撃に転じるときには長短のパスを多く繋がなければ敵ゴールには迫れないが、後者を高い位置に設定して上手く敵ボールが奪えればたった一本のパスから、あるいはたった一人のドリブルからシュートまで持ち込めることもある。。後者の新しい戦法を引っさげて世界に台頭してきたのが、2010年頃のドイのドルトムント(のゲーゲンプレス)だ。現在ドイツが世界最強になったのも、この戦法が、得点に繋がる攻撃的守備組織という形でドイツで発展を遂げたからだと言われている。
④ なお、「コンパクト・ゾーン・プレス・ディフェンス」というのは、縦に狭い「地帯」に身方を密集させるから敵ボールを奪ってよいシュートまで持ち込みやすい半面、敵にボールを奪われたら一気に身方の薄いゴール前に押しよせられる危険性もある。この危険に備えるべく二つの道を用意するのが普通だ。一つは、オフサイドトラップと言い、敵がボールを奪った瞬間に身方DFラインを押し上げて、敵が前へ蹴るそのボールを受けてシュートまで持ち込もうとする敵FWを後ろに取り残してオフサイドに引っ掻けるやり方。今一つは、身方ゴールキーパーが猛然と前に出てきて、敵が大きく蹴ったボールを奪うやり方である。この後者については、ブラジルW杯優勝のドイツのゴールキーパー、ノイアーの広大な守備範囲に驚かれた方も多いはずだ。ドイツはあのノイアーの広大な守備範囲の分、攻守ともに身方組織が高い位置で構えていて「敵ゴール直結ボール奪取」を狙っていたわけである。
ブラジルW杯のドイツは、このやり方で個人技世界1と言って良い開催国を、7対1で破り、世界を驚かせた。サッカーでは、個人よりも組織が大事という典型的な歴史的語り草になっていくはずだ。
⑤ ドイツ対ブラジルの7対1という歴史的「事件」からも分かるようにまた、サッカー界でも良く語られる「結局は個人能力」というのも、嘘である。世界的にはほとんど無名の弱小選手たちのチームがチャンピオンズリーグなどに急台頭してくる時などには、③のドルトムントのように新しい組織的闘い方を身に付けている場合が多いものである。
こうして、組織規律性がドイツ人と同様の民族性と言われる日本人は、サッカーに向いた最大長所の一つを持っているわけである。
⑥ サッカーの攻撃組織は、いろんな得点法という形になる。サイド攻撃は、敵ゴールまで左右から走り込んでゴール前へクロス・パスを出してシュートを狙うのだし、アーリークロスと言って斜め後方から早めに敵ゴールへ走り込む身方に合わせるパス(いわゆるスルーパスの一種)もある。敵ゴール正面攻撃にはパスを普通に繋いで迫ったり、ポストと言って背の高い身方FW目差してパスを放り込み、彼が後ろに短く返すボールめがけて身方が一斉に走り込んでパスを繋いでゴールに迫るやり方もある。
なお、こういう得点法の全てに共通して、敵ゴール前のDFの人数をなるべく減らす工夫も必要になる。ザックはよく、こんなことを語っていた。
「敵の守備陣形を縦にも横にもなるべく広げること」
広い範囲に敵DF陣を分散させるわけである。これが上手く行った時には、敵ゴールすぐ前などに「身方の数的優位」が出来たりするわけだ。プロの世界において、敵ゴール前のDFよりもその周囲の身方FWらが多数だというのは、得点目差して非常なチャンスを得たということ。なお「スペース」と言う言葉が一般的によく使われるが、これは空いている空間をいち早く見つけてそこに走り込めば楽に身方ボールが受けられて、余裕を持ってパスが出来るということ。こういう大きなスペースをゴール前などで見つけて走り込めれば、自らシュートなり、絶好のシュート目差したよいアシストなりが可能になるということである。
サッカーの基本的見方自身が、野球などよりも遙かに難しい。その理由はこういうことだ。サッカーの攻守には、野球のように1人で1点取るホームラン王や、相手を1点台に押さえるエース投手のような個人は存在しない。ホームラン王やエースは基本的にそういう個人技を磨けばよいのだが、サッカーはいくら個人技があってもチームに溶け込めなければ1得点だって上げられない。ついで、その攻守が野球のようにはきちんと分けられず、良い守備が得点を産んだり、良い攻撃が守備時間(失点の可能性がある時間)をどんどん減らしたりと、攻守が相互に影響し合う度合いが野球などよりも遙かに大きい。攻守ともに組織が観えなければその面白さが全く分からないに等しいということだ。
① サッカーの最も初めの見方はこうだろう。ボールの動きを目で追っかけて、「今誰それが、パスミスした」とか「あそこの彼が、今ボール奪取ができたのに!」とか。ただこれは、誰でも見えること。よって次にはこうなる。身方からパスを上手く受けるために誰がどこへどう走っているかとか、敵のパス回しを潰すために身方選手らがどう走り込んでいるかとか。こうして、それぞれのチーム攻守の要の選手なども見えて来る。
② あるゲームで①を観ていると、どちらが優勢であるかが次第に分かってくる。良い位置、良い機会の敵ボール潰しが上手いらしくて、あるいはボール繋ぎ自身が上手くて、敵ゴールへのチャンスが多い方が優勢なのだ。
例えば、ボールを持っている時間がいくら長くても、そのボールを後ろとか横に回しているだけなら、優勢とは言ない。敵のボール奪取力を怖がっている(自分らのパス回し力と比較しての話だが)とも言えるからである。
逆に、いつも守っている方が劣勢とも言えない。後ろで良い機会に敵ボールを奪って、一気に敵ゴールに迫るカウンター・シュートが何度か成功しているならば。ちなみに、ボールキープ率30%でも勝つという例などは、サッカーではいくらでもある。
③ ①②から言えることだが、サッカーのこの基本、攻撃と潰しとはいつも、チームとして行われている。そこで問題になるのが、攻撃と守備との組織、選手配置とその流動性である。
守備組織には、身方陣地前に守備ブロックを作るやり方と、身方DFラインを上げてFWとの間を縮めたコンパクト・ゾーン・プレス守備とがある。前者で敵ボールを奪って攻撃に転じるときには長短のパスを多く繋がなければ敵ゴールには迫れないが、後者を高い位置に設定して上手く敵ボールが奪えればたった一本のパスから、あるいはたった一人のドリブルからシュートまで持ち込めることもある。。後者の新しい戦法を引っさげて世界に台頭してきたのが、2010年頃のドイのドルトムント(のゲーゲンプレス)だ。現在ドイツが世界最強になったのも、この戦法が、得点に繋がる攻撃的守備組織という形でドイツで発展を遂げたからだと言われている。
④ なお、「コンパクト・ゾーン・プレス・ディフェンス」というのは、縦に狭い「地帯」に身方を密集させるから敵ボールを奪ってよいシュートまで持ち込みやすい半面、敵にボールを奪われたら一気に身方の薄いゴール前に押しよせられる危険性もある。この危険に備えるべく二つの道を用意するのが普通だ。一つは、オフサイドトラップと言い、敵がボールを奪った瞬間に身方DFラインを押し上げて、敵が前へ蹴るそのボールを受けてシュートまで持ち込もうとする敵FWを後ろに取り残してオフサイドに引っ掻けるやり方。今一つは、身方ゴールキーパーが猛然と前に出てきて、敵が大きく蹴ったボールを奪うやり方である。この後者については、ブラジルW杯優勝のドイツのゴールキーパー、ノイアーの広大な守備範囲に驚かれた方も多いはずだ。ドイツはあのノイアーの広大な守備範囲の分、攻守ともに身方組織が高い位置で構えていて「敵ゴール直結ボール奪取」を狙っていたわけである。
ブラジルW杯のドイツは、このやり方で個人技世界1と言って良い開催国を、7対1で破り、世界を驚かせた。サッカーでは、個人よりも組織が大事という典型的な歴史的語り草になっていくはずだ。
⑤ ドイツ対ブラジルの7対1という歴史的「事件」からも分かるようにまた、サッカー界でも良く語られる「結局は個人能力」というのも、嘘である。世界的にはほとんど無名の弱小選手たちのチームがチャンピオンズリーグなどに急台頭してくる時などには、③のドルトムントのように新しい組織的闘い方を身に付けている場合が多いものである。
こうして、組織規律性がドイツ人と同様の民族性と言われる日本人は、サッカーに向いた最大長所の一つを持っているわけである。
⑥ サッカーの攻撃組織は、いろんな得点法という形になる。サイド攻撃は、敵ゴールまで左右から走り込んでゴール前へクロス・パスを出してシュートを狙うのだし、アーリークロスと言って斜め後方から早めに敵ゴールへ走り込む身方に合わせるパス(いわゆるスルーパスの一種)もある。敵ゴール正面攻撃にはパスを普通に繋いで迫ったり、ポストと言って背の高い身方FW目差してパスを放り込み、彼が後ろに短く返すボールめがけて身方が一斉に走り込んでパスを繋いでゴールに迫るやり方もある。
なお、こういう得点法の全てに共通して、敵ゴール前のDFの人数をなるべく減らす工夫も必要になる。ザックはよく、こんなことを語っていた。
「敵の守備陣形を縦にも横にもなるべく広げること」
広い範囲に敵DF陣を分散させるわけである。これが上手く行った時には、敵ゴールすぐ前などに「身方の数的優位」が出来たりするわけだ。プロの世界において、敵ゴール前のDFよりもその周囲の身方FWらが多数だというのは、得点目差して非常なチャンスを得たということ。なお「スペース」と言う言葉が一般的によく使われるが、これは空いている空間をいち早く見つけてそこに走り込めば楽に身方ボールが受けられて、余裕を持ってパスが出来るということ。こういう大きなスペースをゴール前などで見つけて走り込めれば、自らシュートなり、絶好のシュート目差したよいアシストなりが可能になるということである。