日中因縁のアジアインフラ投資銀行を巡って重大な政府方針転換が余儀なくされたようで、この問題を大きく振り返りつつ、方針転換の現状を見ていく連載をやってみたい。
初めに述べておくが、これは良いことである。お隣の中国に「過去はご破算願いまして、こちらから歩み寄らせていただきます」というのだから。ただしこの問題、安倍政権の歴史修正主義絡みとアジア開発銀行総裁を出している日本の意地とも重なって過去にはこんな調子だったと、古い拙稿を今回は先ずお読み願いたい。過去の安倍政権がこんな態度だったからこそ、今のところは安倍が必死にプロポーズを開始した日中首脳会談は袖にされているということなのである。このAIIB問題は、日本にとっては『中国の「一帯一路」開発戦略に参加させて下さい』という日本政府方針転換の問題でもあって、これで一体「東南海・海洋自由航行」の問題も振り上げた拳はどこへ行くのだろうか。
日本財務省などは過去には、以下のように、これに対する敵意満々だったのである。
【 亜インフラ銀行と、情けない日本 文科系 2015年03月25日
英独仏伊に続いて、スイス、オランダ、ルクセンブルグ、ニュージーランドが入った中露肝いりのアジア・インフラ開発銀行。今度はカナダが入ったようだ。そしたら、アメリカのオバマ大統領までが早くも、「世銀、アジア開発銀行と協力協同で行きましょう」と半分白旗を揚げたエールを送ったではないか。これには、とにかく驚いた。従来国連のこの二つの機関がいかに中小国に人気がなかったかを自覚しているような言動に見えたのである。
これに対して、中韓ヘイトスピーチの手前、その意地なのかどうか、世界一の大バカは誰あろう我が安倍政権とその取り巻きマスコミなどだ。23日夜にある民放特集番組を僕としては本当に珍しく全部観たが、その内容の酷いことったら無かった。あんなのを観たら、よほどの人でもコロッと騙されるだろう。
亜インフラ銀行解説を特集したBSフジ「プライムニュース」なのだが、最初からこの機関を嘲笑するような態度で始まったのである。特に酷かったのが、司会の狐目・太った赤ら顔と、3人の有識者の内の榊原英資。初めに、こんなことを言う。
『従来中国という一国家がやっていたODA機関(他国家支援機関)みたいなもんだよ。責任者も財務の人だし』
この言葉から始まって、番組冒頭にはこんな調子が続いていく。
『中国流の事務のいい加減さなどが出るに決まってる。きちんと動くのは、ずっと先の話』
『基金1000億ドルの内、中国だけで500でしょ?西欧諸国は商売上のおつきあい程度だよ。他が金も出すのかどうかとかね』
『人民元の国際化なんて狙いの実現はまだまだ。40年も先の話だよ』
などなどと、嘲笑いを交えて語るのである。アジア開発銀行の歴代総裁国・日本(旧大蔵省)のメンツ丸潰れという、そんな憎しみをみなが感じたことだろう。
たまりかねたか、もう一人の有識者・自民党財政金融部会副会長とやらが、前後関係なしにまとめるとこんな反論をしていたと言える。
『(榊原が言うように)中国財政部の出先機関のようなものではありません。財務出身と言ってもこの中国責任者は財政ならぬ金融の専門家ですし、リーマン以降イギリス・シティー(金融街)が人民元を非常に重視しだしたそのイギリスの動きとも連動しているのです。『ブレトンウッズ体制を変える「勢い」』も中国にはありますし、そもそもこの動きの始まりを振り返れば、こういうものだったんだと思う。90年代アジア通貨危機の後始末論議で日本が出した宮沢構想に中国が強力に賛成、連動したことがあったが、アメリカの反対で日本政府が折れてしまった。あの失敗こそ、今回のアジアインフラ銀行構想の出発点なんですよ』
この旧大蔵省出身若手議員の最後の言葉は、僕にはこう聞こえたものだ。
『あの時大蔵省などが頑張って、アメリカに折れず宮沢構想を通していれば、この屈辱はなかったはずだ。それどころか、アジアの皆が当時の日本にあれを懇願しに来たのだから、各国に大きな恩を売ることさえもが出来て、今の中国にも遙かに多く物が言えたことだろう』
この自民党国会議員は財務省官僚出身の30代かとも見える若手で、小林鷹之という。職場の先輩官僚である榊原によくこんな昔話まで上げて楯突けたもので、後半の榊原がちらちらと彼の目を見ながら、大人しくなっていたと感じたほどだ。
さて、榊原やニュース編集部のこれへの対応、態度は、日本のメンツ丸出しというだけ。「アジア開発銀行歴代総裁国が、中国に出し抜かれた」という気分だけなのだろう。この過小評価しすぎでさえもが、従来の反中態度の延長を変えられないポーズだけなのではないかとさえ思えたものだ。
経済大国へと世界に羽ばたいていく国の勢いというものは、そこに数々の壁、問題があるにせよ急加速度が常だ。世界実体経済景気が恐慌状態に近いとはいえ、なんせ中国に替われる国がないのだから。日本人としては、戦後60~70年代の自らを顧みたらよいのである。当時の日本同様に、環境(四日市公害)、エネルギー(石油、「原子力」?)、人材(理工系超偏重)などなど数々の問題がある国だが、これを乗り越えていくエネルギーはあるはずなのだ。当面肝心になってくるであろう内需拡大課題でも、日本よりもはるかに有利な状況にあると観ることが出来るし。アベ内閣がいくら「賃金上げて」と叫んでみたところで、会社人間・ムラ社会日本人は、中国以上にそんなことが出来るわけがないのである。
これら中国の将来動向観測は、中国好き嫌いとか、是非論とかの問題ではなく、将来事実に関わる問題なのである。
対する日本経済、社会はもう、かってのような公正ささえ存在していないのだから、人々の真のエネルギーなど出てくる訳もない。公民がいなくって、会社人、ムラ人間ばかりになってしまった。そもそも、公民視点の論議さえできない国になっている。このことは、日本マスコミの旗艦・NHK現会長が最もよく示しているではないか。「近代」すら経ていないと見えるあの化け物はどうだ! しかも、あれこそ日本経済人の顔なのだそうだ。こんな国に誰が献身的なエネルギーを出せるというのか。こういう新自由主義経済30年ほどの産物、その後世へのツケは、限りなく大きいと思う。
競争社会とは、自己利益だけを信じる社会を作り上げようとしてきたこと。まさに、そんな国に成り果ててしまった。日本の支配者たちが特にいけない。NHK化け物会長の他にも「八紘一宇女性議員」、「補助団体から献金を貰って恥じない国会議員たち」。外務省僚たちはアメリカに内通してきたとウィキリークスに暴露されたのだし、政財官界人の誰1人もフクシマに責任を取らない。政権から独立しているはずなのに、政権の顔ばかりを伺っている最高裁判事たちも・・・・。】
安倍の幻想的・反立憲主義的国家戦略は、諸外国によって正されていく。
(続く)
初めに述べておくが、これは良いことである。お隣の中国に「過去はご破算願いまして、こちらから歩み寄らせていただきます」というのだから。ただしこの問題、安倍政権の歴史修正主義絡みとアジア開発銀行総裁を出している日本の意地とも重なって過去にはこんな調子だったと、古い拙稿を今回は先ずお読み願いたい。過去の安倍政権がこんな態度だったからこそ、今のところは安倍が必死にプロポーズを開始した日中首脳会談は袖にされているということなのである。このAIIB問題は、日本にとっては『中国の「一帯一路」開発戦略に参加させて下さい』という日本政府方針転換の問題でもあって、これで一体「東南海・海洋自由航行」の問題も振り上げた拳はどこへ行くのだろうか。
日本財務省などは過去には、以下のように、これに対する敵意満々だったのである。
【 亜インフラ銀行と、情けない日本 文科系 2015年03月25日
英独仏伊に続いて、スイス、オランダ、ルクセンブルグ、ニュージーランドが入った中露肝いりのアジア・インフラ開発銀行。今度はカナダが入ったようだ。そしたら、アメリカのオバマ大統領までが早くも、「世銀、アジア開発銀行と協力協同で行きましょう」と半分白旗を揚げたエールを送ったではないか。これには、とにかく驚いた。従来国連のこの二つの機関がいかに中小国に人気がなかったかを自覚しているような言動に見えたのである。
これに対して、中韓ヘイトスピーチの手前、その意地なのかどうか、世界一の大バカは誰あろう我が安倍政権とその取り巻きマスコミなどだ。23日夜にある民放特集番組を僕としては本当に珍しく全部観たが、その内容の酷いことったら無かった。あんなのを観たら、よほどの人でもコロッと騙されるだろう。
亜インフラ銀行解説を特集したBSフジ「プライムニュース」なのだが、最初からこの機関を嘲笑するような態度で始まったのである。特に酷かったのが、司会の狐目・太った赤ら顔と、3人の有識者の内の榊原英資。初めに、こんなことを言う。
『従来中国という一国家がやっていたODA機関(他国家支援機関)みたいなもんだよ。責任者も財務の人だし』
この言葉から始まって、番組冒頭にはこんな調子が続いていく。
『中国流の事務のいい加減さなどが出るに決まってる。きちんと動くのは、ずっと先の話』
『基金1000億ドルの内、中国だけで500でしょ?西欧諸国は商売上のおつきあい程度だよ。他が金も出すのかどうかとかね』
『人民元の国際化なんて狙いの実現はまだまだ。40年も先の話だよ』
などなどと、嘲笑いを交えて語るのである。アジア開発銀行の歴代総裁国・日本(旧大蔵省)のメンツ丸潰れという、そんな憎しみをみなが感じたことだろう。
たまりかねたか、もう一人の有識者・自民党財政金融部会副会長とやらが、前後関係なしにまとめるとこんな反論をしていたと言える。
『(榊原が言うように)中国財政部の出先機関のようなものではありません。財務出身と言ってもこの中国責任者は財政ならぬ金融の専門家ですし、リーマン以降イギリス・シティー(金融街)が人民元を非常に重視しだしたそのイギリスの動きとも連動しているのです。『ブレトンウッズ体制を変える「勢い」』も中国にはありますし、そもそもこの動きの始まりを振り返れば、こういうものだったんだと思う。90年代アジア通貨危機の後始末論議で日本が出した宮沢構想に中国が強力に賛成、連動したことがあったが、アメリカの反対で日本政府が折れてしまった。あの失敗こそ、今回のアジアインフラ銀行構想の出発点なんですよ』
この旧大蔵省出身若手議員の最後の言葉は、僕にはこう聞こえたものだ。
『あの時大蔵省などが頑張って、アメリカに折れず宮沢構想を通していれば、この屈辱はなかったはずだ。それどころか、アジアの皆が当時の日本にあれを懇願しに来たのだから、各国に大きな恩を売ることさえもが出来て、今の中国にも遙かに多く物が言えたことだろう』
この自民党国会議員は財務省官僚出身の30代かとも見える若手で、小林鷹之という。職場の先輩官僚である榊原によくこんな昔話まで上げて楯突けたもので、後半の榊原がちらちらと彼の目を見ながら、大人しくなっていたと感じたほどだ。
さて、榊原やニュース編集部のこれへの対応、態度は、日本のメンツ丸出しというだけ。「アジア開発銀行歴代総裁国が、中国に出し抜かれた」という気分だけなのだろう。この過小評価しすぎでさえもが、従来の反中態度の延長を変えられないポーズだけなのではないかとさえ思えたものだ。
経済大国へと世界に羽ばたいていく国の勢いというものは、そこに数々の壁、問題があるにせよ急加速度が常だ。世界実体経済景気が恐慌状態に近いとはいえ、なんせ中国に替われる国がないのだから。日本人としては、戦後60~70年代の自らを顧みたらよいのである。当時の日本同様に、環境(四日市公害)、エネルギー(石油、「原子力」?)、人材(理工系超偏重)などなど数々の問題がある国だが、これを乗り越えていくエネルギーはあるはずなのだ。当面肝心になってくるであろう内需拡大課題でも、日本よりもはるかに有利な状況にあると観ることが出来るし。アベ内閣がいくら「賃金上げて」と叫んでみたところで、会社人間・ムラ社会日本人は、中国以上にそんなことが出来るわけがないのである。
これら中国の将来動向観測は、中国好き嫌いとか、是非論とかの問題ではなく、将来事実に関わる問題なのである。
対する日本経済、社会はもう、かってのような公正ささえ存在していないのだから、人々の真のエネルギーなど出てくる訳もない。公民がいなくって、会社人、ムラ人間ばかりになってしまった。そもそも、公民視点の論議さえできない国になっている。このことは、日本マスコミの旗艦・NHK現会長が最もよく示しているではないか。「近代」すら経ていないと見えるあの化け物はどうだ! しかも、あれこそ日本経済人の顔なのだそうだ。こんな国に誰が献身的なエネルギーを出せるというのか。こういう新自由主義経済30年ほどの産物、その後世へのツケは、限りなく大きいと思う。
競争社会とは、自己利益だけを信じる社会を作り上げようとしてきたこと。まさに、そんな国に成り果ててしまった。日本の支配者たちが特にいけない。NHK化け物会長の他にも「八紘一宇女性議員」、「補助団体から献金を貰って恥じない国会議員たち」。外務省僚たちはアメリカに内通してきたとウィキリークスに暴露されたのだし、政財官界人の誰1人もフクシマに責任を取らない。政権から独立しているはずなのに、政権の顔ばかりを伺っている最高裁判事たちも・・・・。】
安倍の幻想的・反立憲主義的国家戦略は、諸外国によって正されていく。
(続く)