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随筆 「回春のアルト・ワークス」  文科系

2020年04月23日 14時15分24秒 | 文芸作品

 振り返れば五十数年前のこと、結婚してすぐに自動車免許を取り、その後でわざわざ自動二輪の免許を取りに行った。大学一年から付き合い始めて六年越しで結婚した連れ合いを、国語教師をやっている県立高校まで送っていくためだ。我が家から名古屋市東北部の丘陵いくつかを日によっていろんなルートで越えて、市の北東端近くまで雨の日を除いて通った二五〇CC中古バイクの、あの日々! 当時はまだ未舗装の山道にいきなり入り込んで、連れ合いの悲鳴を面白がった日もあった。六年子どもができなかったのでこんな日々がしばらく続いた後に、やがて子どもが生まれその保育園含めた共働きの送迎生活ではバイクが車に替わったが、あれ以来僕はいわゆる中高年バイク族になる夢を忘れたことはなかった。が、七〇を越えてからは流石にこの夢は萎んでいき、今年五月でもう七九歳とあっては普通自動車免許さえ「返上」と、これは連れ合いの、例によって大きな声だ。そんな僕に今、あの頃の夢がかなったような体験が・・・。

  さて、そんな僕がこれまで乗っていた軽自動車、アルト・ターボ・五速マニュアルシフトからそのスポーツタイプ、アルト・ワークスへと、一二年ぶりで車を替えた。前と同じマニュアルシフトのターボエンジン車。加えて、僕としては初めての四輪駆動車で、車体はさらに一段と軽くなっている。この車のクラッチ・シフト操作にも慣れ始めた約一週間後の今の感じは、アマチュアではあるにしても文筆家の端くれとしてはどうしても表現してみたいという対象になった。結論を言えば、僕にとってこれまでは機敏な脚以外の何物でもなかった車が、心身を揺さ振ってくれる高級なおもちゃに化けてしまったのである。高級なおもちゃとあっては、前とは打って変わって綺麗にもしておきたい。「その靴を拭って!」などと声を荒げては、連れ合いや孫を驚かせている始末だ。「よく走る軽ターボ」というのは前と同じなのに、はて、どこでこれほど揺さ振られたのだろう。
 噂に聞いてはいたが、四輪駆動車は機敏に回る。その時の地面に描く曲線が身体に直に伝わってくるのだ。遊びの揺れが少ない固めの車体バネと、シートにぴったりとくっつけた身体を側面まですっぽりと包み込んでくれるレカロシートとを通して。このシートがまた、嵌まりが心地よいシフトが回すターボエンジンと地面をがっちりと捉える四輪駆動とが生み出す加速感をも身体によく伝えてくれる。加速感はもちろん、地面や走行曲線を運転者にきちんと伝える必要があるというこの車は、もう完全なスポーツカーなのだ。と考えてみれば、前二座席と好対照に間に合わせのように作ってある後部座席も、「これは倒して使うもの」、「トランクが大きいツーシーター車だからね」と主張しているようで、かえって面白くなった。トランクが大きい2シーター四輪駆動といえば、これは二人用のRVにも使えるというものだ。

 車を買い換えて一週間、これだけ毎日毎日自分にあるいは家族に理由を作ってはどこかに出掛けていくというのは、かつて覚えの無いことである。横に連れ合いを乗せたり、四年生になった女の孫ハーちゃんを乗せたり、あるいは一人だけでほんのちょっと遠出をしたり、自由自在になり始めて機敏に応えてくれる回転や加速を、カチッと決まるシフトとシート越しに楽しむ毎日が続いている。七〇〇CCバイク族を夢見たその夢の実現さながらに。

コメント (2)
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