この文章は言わば書評に当たるもの。熊倉正修著「日本のマクロ経済政策」(岩波新書 2019年6月第一刷発行)という本をさしあたりざっと拾い読みした。「安倍・黒田の財政ファイナンス」と、その現在までの国家危機的結末とを根本的に批判して、「未熟な民主政治の帰結」という副題を付した本だ。ちなみに、国家が平気で財政赤字を積み上げ続けて、その分日銀に円をどんどん刷らせて穴埋めしていくやり方を財政ファイナンスと呼び、従来の国家財政学としは禁じ手とされてきたものだ。なお、今朝の新聞報道によると、今年中に日銀がGPIFを抜いて、日本株の最大株主になる見通しだとあった。
さて、この書の中にあった表記の言葉「シルバー民主主義」が強く印象に残った。日本の財政危機の原因としてよく上げられる、「有権者に占める高齢者の比率が高まると若年層を犠牲にして高齢者を優遇する政策が行わ行われやすくなる」という議論のことだ。その上で著者は、財政危機の原因を、こういうシルバー民主主義にあると強調しすぎる風潮に対して、西欧先進国と日本を比較した上で民主主義の未熟さそのものにあると説くのである。
この「シルバー民主主義」論はどうも、政府筋やこれを支援するマスコミから流れているようだ。それも、若者を与党に引きつける一種の陰謀として。ちなみに、こういう急下降経済・税収減から急激な少子化日本や、財政危機やを作ったのは自民党自身、特に小泉・安倍政権だということを忘れてはならないだろう。ここの拙稿で繰り返して言及してきたように、前世紀末世界順位一桁中位にあった日本国民1人当たり購買力平価GDPを今や31位にまで落として、「50歳まで一度も結婚したことがない男性が4人に1人」とか、「ここ130年なかったような出生数減少の急激少子化日本国」とかを誰がもたらしたのかちゃんと見ないと、この陰謀に引っかかることになる。
この優れた著作についてはまた、いろんな事に触れていくつもりだ。既に大失敗が明白になったアベノミクスの失敗因を究明した著作である。国民1人当たり購買力平価世界順位は台湾にはもうとっくに抜かれ、1位下にいる韓国にも間もなく抜かれることは明きらかである。韓国現政権は内需拡大を重視して、不安定労働者らの最低賃金を大幅に上げたと聞いている。