岸田がその経済政策として「給料アップと景気との好循環」を唱え始め、春闘時期目指してそういう会社が珍しく実際に増えている。来年以降もこうなっていくのかどうか、大いに注目したいところだ。
さて、ところが、今の会社は標記のような「株価主義」で成り立ってきた。株価さえ上がっていれば経済順調というように。特に、外国からの機関投資家やその社外取締役などは株価主義の観点からこの「好循環」に容易には乗らない必然性を持っている。
昔、トヨタの奥田社長が、「人件費を上げた時、米格付け会社がトヨタのランクを下げて、株価が急落した」と猛烈に怒っていた事件なども思い出すことが出来る。ゴーンが日産にやって来たときに、真っ先にやったのが人員削減だったというのも有名な話だ。輸出ばかりして輸入をしない国、自国通貨を実際よりも安く操作している国を近隣窮乏化国と呼ぶが、人件費が安くて製品原価が安く、それだけで儲かっている会社は近隣窮乏化会社と言える。社員の給料が安い分社会の一般消費、有効需要創出に貢献していない会社ということになるからだ。この30年の日本はそういう安易な会社ばかりで、会社としてのイノベーションも政治家がやるべき政治的イノベーションも弱かったからこそ、先進国一の賃金安国へと落ち込んでしまったのだ。
この流れを絶って、賃金を上げ、国内一般消費を高め、好循環経済に踏み切っていくことができるかどうか、今後数年の変化を大きく目を開いて見守っていきたい。我々の孫、日本の希望する若者たちがちゃんと結婚できて、子を持てる社会がもう一度戻ってくるように。
因みに、アメリカの主要企業経営者団体で作るビジネス・ラウンド・テーブルは、2019年8月19日にこんな声明を出している。これが本気かどうか、僕はまだ眉唾なのだが。
『これまでの米経済界は株主利益最大化方針でやってきたがこれを見直し、従業員や顧客、地域社会など全ての利害関係者の利益を尊重する行動指針をここに表明する』。