カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

作品その47・師匠の誠意

2018-10-02 22:15:30 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『琥珀』と『切り取った青空』を材料に『雨粒のタコ型縫いぐるみ』を錬成しました。用途は不明です。

 お前は確かに人間だ。そして、私が今言えるのはそれだけだ。
 だが、お前が今一番訊きたいことを話してやったのだから文句はあるまい。

 そう言って話を打ち切った師匠は、そんなことよりこの蛸型戦闘鎧改良型をどう思う?従来のモノより遥かに操作性が向上してなどと、本気でどうでもいい話を始めてしまった。こうなると僕も今ここで師匠から有益な情報を得ることは不可能だと諦めざるを得なかった。
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骨董品に関する物語・ボンボニエール・その2

2018-10-02 19:38:35 | 突発お題

 貴族だった曽祖父は若い頃に森で狩りをするのが趣味だったが、ある秋の日に一度だけ鹿の王と出くわしたことがあるそうだ。
 曽祖父の頭蓋など、その逞しい脚の一蹴りで容易く砕いてしまいそうな巨大な鹿は、しかし人間の存在など歯牙にもかけることなく悠然と森の奥にその姿を消し、黄金に色付いた秋の森には曽祖父がただ一人で残されたという。

 やがて時が過ぎ、曽祖父が亡くなり、森が消えた今でも、あの時の鹿の王の姿は曽祖父が作らせた黄金色の菓子器と共にある。
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