お屋敷の前を通ると何故か視線を感じるので顏を上げると、いつも二階から僕を見下ろしてくる病弱なお嬢さんの金茶色をした瞳がそこにあった。そんな時はいつも無言のまま目礼してから通り過ぎていたが、やがてお嬢さんが亡くなって葬儀が終わった後に何故か僕宛で届けられた包みを開けると、入っていたのは常に僕を見下ろしていた精巧な金茶色の瞳をした義眼だった。
お屋敷の前を通ると何故か視線を感じるので顏を上げると、いつも二階から僕を見下ろしてくる病弱なお嬢さんの金茶色をした瞳がそこにあった。そんな時はいつも無言のまま目礼してから通り過ぎていたが、やがてお嬢さんが亡くなって葬儀が終わった後に何故か僕宛で届けられた包みを開けると、入っていたのは常に僕を見下ろしていた精巧な金茶色の瞳をした義眼だった。
たかあきは『まがい賢者の石』と『金色朝顔の種』を材料に『風に乗るタコ型縫いぐるみ』を錬成しました。用途は飲用です。
師匠はたまに、全く以て理解不能の謎物質を僕に錬成させることがあるが、それはまだ僕が錬金術師として必要不可欠な柔軟思考を備えていない故だと言い張る。つまり、子供が飛ばして遊ぶような凧の改良強化型を使って空のエーテル水を集めるような手段を思い付くのが真の錬金術師だと言いたいらしい。
師匠はたまに、全く以て理解不能の謎物質を僕に錬成させることがあるが、それはまだ僕が錬金術師として必要不可欠な柔軟思考を備えていない故だと言い張る。つまり、子供が飛ばして遊ぶような凧の改良強化型を使って空のエーテル水を集めるような手段を思い付くのが真の錬金術師だと言いたいらしい。
私がお話を書く人になりたいと宣言したら、叔父さんは万年筆とブルーブラックのインクが詰まったガラス瓶をプレゼントしてくれた。このインク瓶の中身を使い切るくらいにお話を書いたら大作家になれるよと言われた私はお話を書き続けたが、数十年使ってもインクは減る気配もない。こうなると私が後世に残るような大作家になるのか、それとも売れない物書きのまま一生お話を書き続けるのかは微妙な気もするが、どちらに転んだとしてもそれなりに充実した人生であることは間違いない。
そのペンで何かを書いていると、時々僕の筆跡ではない単語や文章を勝手に綴ることがあった。ある日「君は誰」と書くと返事が返ってきて、それ以来僕らは文字通りの文通仲間になったが、やがて「楽しかった、ありがとう」と書かれて以来、ペンが僕以外の筆跡を綴る事はなくなった。