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カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

骨董品に関する物語・ボヘミアンガラスのカップ&ソーサー

2019-07-25 22:44:07 | 突発お題

「この前手に入れた茶器セットには少々謂れがあってな」
「呪いでもかかっているのか」
「最初の持ち主からずっと、この茶器を使う人間は必ず亡くなるのだそうだ」
「既にオチは見えたが言ってみろ」
「百年以上経った今、最初の持ち主だった家族は残らず墓の下だそうだ」
「所謂『ファラオの呪い』」
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旅路その53・双塔の学舎にて

2019-07-24 22:48:44 | 旅人の記録
たかあきは初春の地方都市に辿り着きました。名所はツインタワー、名物は肉料理だそうです。

 更に「彼」が示してきたのは入学式を迎えた学校だった。左右対称の塔を思わせる建物に入っていく新入生の希望に満ちた表情は、やがて日常と言う化け物に惰性か絶望か諦念に塗り替えられ校舎から吐き出される。私の中で「学び」と言う概念が揺らぐと、学生はその抱いた希望ごと容赦なく咀嚼されて社会人に変貌すると彼は言った。
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旅路その52・駅にて

2019-07-23 22:19:01 | 旅人の記録
たかあきは西域の地方都市に辿り着きました。名所は駅、名物は海鮮鍋だそうです。

 次に「彼」が示したのはどこか見覚のある駅だった。事あるごとに不快だからと感情的に怒鳴り散らす友人が予約していたのは新鮮な貝料理が売りの店で、子どもの頃貝毒で酷い目に遭った話はしていた筈だと私の中で「友人」の概念が揺らぐと「彼」は火を通しますか?と訊ねてきた。だが一体何に火を通すというのだろう?
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骨董品に関する物語・デスカード

2019-07-22 21:42:09 | 突発お題

 もう当の本人すら覚えていないだろうが、孫娘が小さい頃天使の絵を描いて私にプレゼントしてくれたことがある。白い翼を持つ金髪の天使はお世辞にも優美な姿とは言えないのだが、いずれ私を蝕む病によって肉体が土に還り魂が神の御許に召される時は、きっとこの絵と共に逝こう。

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旅路その51・水族館にて

2019-07-22 19:43:54 | 旅人の記録
たかあきは熱月の辺境に辿り着きました。名所は古い水族館、名物は飴菓子だそうです。

 最初に「彼」が示してきたのは夏の水族館だった。田舎町の寂れた建物の中に設えられた幾つもの水槽の中で泳ぎ回る、狭い空間を満たす水の中でしか生きられない筈の魚たちは、それでも今の私より遥かに伸び伸びと幸せに暮らしている気がして、だからまず「自由」の概念が揺らいだ私に「彼」は飴を一粒くれた。
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骨董品に関する物語・ヘンゼルとグレーテルの絵葉書

2019-07-21 19:56:02 | 突発お題

 私の兄はグリム童話が大嫌いで、中でもヘンゼルとグレーテルの話を異常なまでに忌み嫌っていた。ある日学校の観劇途中でいきなり口元を抑えてその場から走り去る兄の後を追って理由を尋ねたが、お前はもうあの黒い森を覚えていないのだろう、だから絶対に教えたくないと断言された。
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骨董品に関する物語・銀製の髑髏のリング

2019-07-21 12:43:49 | 突発お題

 病は不平等だが死は等しく総てを覆い尽くすと、父は指に嵌めていた指輪を形見分けだと乱暴な動作で僕に放ってくる。結局、搔き集めた家財も肉体も削れるだけのものを削り落しても執拗に絡み付く罪はその重みで俺を地獄に落とすだろうというのが、周囲に暴虐の限りを尽くした父の最期の言葉だった。
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旅路その50・いにしえの都

2019-07-21 11:57:35 | 旅人の記録
たかあきは早朝の王都に辿り着きました。名所は古墳、名物は飴菓子だそうです。

 友人が通っていた学校の修学旅行先は嘗てこの国の都だったことがある街だが、土産物の飴菓子を渡してくれた友人曰はく、あまりその旅行にも街にも愉快な思い出は無いらしい。多分あの街のルールを理解していなかったのと運が悪かったせいだと思うと前置きしてから話してくれた体験は、不気味なくらい私がその街で体験した内容に酷似していた。
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旅路その49・エキゾチックジャパン(多分)

2019-07-20 17:48:45 | 旅人の記録
たかあきは初夏の宗教都市に辿り着きました。名所はツインタワー、名物は海鮮鍋だそうです。

 ツインタワーのある街の駅に降り立つと、ようやく代々続いた正当な皇帝が存在する憧れの国を歩けると喜ばれた。この国の基本的な統治システムを云々する気もヤツが言う皇帝について詳細を語ってやる気も無かったので、とにかく熱望しているスシを食わせてやる為に回転する寿司屋を目指すことにした。
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夏の創作怪談・蛇の目でお迎え嬉しいな

2019-07-18 22:16:56 | 旅人の記録

 昔、雨の日に傘を持って保育園まで迎えに来た女の人はとても優しそうな、だが全く知らない顔だった。しかしその頃の私は気分次第で些細なことでも激しく怒鳴り散らす母を心底嫌っていたので、もう何があろうと構わないと彼女について行った。結局家には何事もなく着いたのだが、その日から私の母は彼女にすり替わり、元の母は痕跡すら残さぬまま何処にも居なくなった。
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