料亭・明月
所在地:墨田区向島5-23
建設年:1945(昭和20)頃
構造・階数:木2
備考 :2008.2解体
Photo 2007.5.27
料亭明月は、一年近く前に解体された老舗料亭。向島の料亭街に残っていた古い建物の中では、規模が大きく立派だった。跡地にはマンションが建つという。
以下、情報はリンク先のブログ記事を御覧下さい。私自身は二度ほど外から見ただけで詳細は知らないので、ここでは若干の外観写真のみに留めます。
月刊旧建築 > 向島の老舗料亭「名月」取り壊しへ(正しくは「明月」)
2007年春に向島界隈を訪れた時、立派な料亭があることを知った。向島界隈にはあまり詳しくなかったので、このような大きな料亭が昔のままの様子で残されていたのには少々驚いた。料亭じたいは都内でもまだところどころにあるが、大きなお店の場合、建て替えられて近代的なビルなどになっていることが多く、木造二階の古い建物で大きな庭を持つ料亭は、貴重だったのではないだろうか。ただ、下見の時点で既にお店の名前が消されていたので、そのうちに無くなってしまうのかもしれないなとは思っていた。
その後、講座での街歩き当日に通りかかったら、既に「解体工事のお知らせ」が板塀に貼られ、内部でも関係者が解体の準備を始めていた。そして、2008年になったら新聞にも記事が載った。最近は現地を訪れていないが、2月にも取り壊しとあったので、既にこの景色を見ることはできなくなったのだろう。
改めて写真を見ると、立派な枝振りの木が庭に何本もあることに気づく。マンションにする際は、これらの木もなくなってしまったのだろうな。
築60年余、確かに登録文化財級の建物だが、仮に文化財に指定されたとしても、保有して維持するのは大変だっただろうと思われる。このような物を残すためには建物を残すだけでなく、使いながら維持するための手段を考えなければならないのだろう。とすると料亭文化じたいを残さねばならないことになるが、時代、社会構造の変化もあり、これを取り巻く状況は厳しい。あとは区などに寄贈、移管して建築展示物として保存する方向だろうか。
他の近代建築や町屋などの場合もそうだが、暮らしたい都市の姿、都市の構造、そこでの生活のあり方、すなわちライフスタイルと、これらの古い建物の存亡は、結局は関連がある。建物や文化を残し、維持して行くために、少しの不便を我慢し、あまり「発展」しない、変化が緩やかな社会を選ぶか、発展し続け、古い物をどんどん捨て去る社会の流れに任せるか。究極的には、そのへんの選択が関わってくるような気がする。そう考えると、それは今後の私たちの生き方と根底ではつながっている。
地方都市に比べると東京は、変化しないことを選択するのが難しい都市だと、改めて思わずにいられない。
2010.11.09 訂正 正しい名称表記は「明月」でした。
Tokyo Lost Architecture #失われた建物 墨田区 #遊興施設