1992.10.7(Wed) Vladivostok
辛うじて水は出るが、本日もお湯は出ないとのこと。連日埃っぽい野外でフィールドワークをしているのに、ウラジオに来てからまだ一度も風呂に入っていない。未開の地や山岳、砂漠地帯とかならともかく、人口50万強の都市にいるのに風呂抜きである。だが、私たちが風呂に入りてぇ!と言っていたのを知ったのか、平和委員会(ビザ取得のための名目上の招待者)の人がサウナを予約してくれた。
18:30 一同、勇躍サウナへ向かう。サウナは街からかなり離れた郊外にあるそうで、いつものマイクロバスは舗装の悪い道をかなりのスピードでぶっ飛ばして行く。でも馬力がないので上り坂になると十数人を乗せたバスはいきなりスピードが落ちてしまう。ここらへんなんだかこのバスは可愛い。
ロシアでもいわゆる「ねずみ取り」をやっているようで、捕まっているのをところどころで見かける。そういえば駅前広場の片隅には交通事故の写真が数枚貼ってあった。事故直後の写真で死亡者の遺体かと思われるものがそのまま写っており、安全運転啓発のための写真とはいえ、そのあまりに直接的で、インパクトに訴えかけるやり方に非常に驚かされた。そんなものを見た後、不安定な感じでぶっ飛ばして行くバスに乗ったので、私は次第に目の前の把手をしっかり握ってしまった。とにかくサスペンションがあまり良くないのと、舗装が悪いため、体がピョンピョン跳ねてしまうのだ。
ところでロシアの信号は青から青の点滅になり、それから赤になる。これは日本の歩行者信号のやり方と同じ。一方スタートの時は、赤から赤と黄色の両方の点灯に変わり(つまり赤に加えて更に黄色が点灯して)、その後で青になる。赤と黄色を同時に出すことによって「もうすぐ青になるぞー」と知らせるのだが、事実上この赤+黄でGo!になっていて、みんな走り出してしまう。そうなっている意味がなんだかよく理解できないパターンだ。
19:00、サウナに到着。とても立派な建物でびっくりする。なんでもゴルバチョフやエリツィンが滞在したそうで、日本からは渡辺美智雄氏も来たというスゴイ所だった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/25/2a/b8cce07f39442030d9659683eb3fb092.jpg)
サウナの玄関ロビー(現地のパンフレットから)
とにかく私は本格的なサウナというモノは初めてだった。いやみんなだって本場のサウナは初めてだった。サウナというものは、本当はまず暖室に入って汗をかくもので、そして水に浸した柏の葉で、軽く身体を擦ったり撫でたりしてよく汗をかき、次に冷水につかるのだ、とアレクサンドル氏が身ぶりで教えてくれた。そしてこれをくり返した後、最後にシャワーを浴びて出るものだという。
私たちもそれに倣ってまず汗をかく。そして柏の葉で身体を叩く。でもなんだか変な儀式をしている様で妙に可笑しい。その後冷水につかろうとして正方形をしたプールに入ろうとしたが、これが非常に冷たい。プールは二つあって水温が若干違うのだが、どちらも結構冷たい。そして立たないと溺れてしまうぐらい深い。皮膚に温度差で刺激を与えて、毛穴を開いたり閉じたりするのが目的らしいが、この刺激は結構過激だ。下手をすれば心筋梗塞になってしまうのではないかと思ってしまう。結局冷たい方のではなく、ぬるいプールに浸かっただけでまた暖室に駆け込んでしまった。冷たい方にはK氏以外は結局誰も入らず、入ったK氏も冷たさからキャーキャー叫んでいた。
サウナを出てからおいしいお菓子を食べてチャイを飲む。泊まることもできるらしいが、当然やたら高いという。泊まれるものなら勿論泊まりたいものだとも思ったが、珍しい体験をしただけで満足。広々としたサウナはとても気持ちよく、それに他と違ってここはかなり清潔だった。というわけで私たちはとにかく豪華なサウナを満喫して帰途についたのだった。
20:45、サウナを出発。
1992年10月 ロシア日記・記事一覧
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