★ 案外ドイツの近代史や現代のことは「週刊誌」レヴェルしか知らない、あるいは誤解している人が多いと思う。私は音楽家なので音楽史やヴァーグナーなどの研究やイタリアとの比較でおぼろげながら全体像を想像していた。
しかしこの本を手にして、知りたかった疑問が一気に解けた感激が大きく、これを読まなければドイツのことは何を読むの?というほど、充実した内容だった。
クライン孝子氏は戦場にも軍隊と共に行動され、命がけで取材を重ねられた。男性以上の獅子奮迅ぶりである。だから私はクライン女史を「女傑」とお呼びしているが、強い女性ほど優しいもので、「一見優しく見えて実はえげつない女性」が多い中で、純粋な優しさを感じさせるお方だ。苦労を重ねていらっしゃるからこそであろう。
ドイツのことを書いた本は他にもあるが、それはバスの中から街を見たくらいの「案内本」あるいは「週刊誌」のようなおぼろげに輪郭をふんわりと書いたものに過ぎなかったように思う。私も実は何冊も持っているからである。
この本が他のそういう種類の本と一線を引くのは、クライン孝子氏が命をかけて得た取材からのもので、「想像」のものではない、観光案内を少し詳しくしたような類の本とは全く異なる貴重な取材からのものであるということ。
目次をご覧になっただけでもおわかりと思う。しかしアマゾンをはじめどの書籍販売会社でも目次すら載せていないので驚いた。目次をご覧になったらきっと興味津々なことでしょう。
「日本人の知らないスパイ活動の全貌」
著者 クライン孝子、出版社 海竜社
http://www.kairyusha.co.jp/ISBN/ISBN978-4-7593-1609-4.html
情報戦を制する者は、国際政治を制する!著者自ら取材し、体験し、洞察した国際的事件の裏側!そこには必ずスパイの暗躍があった!ドイツから警告する!平和ボケ、情報戦オンチの日本への警鐘!!
★ シュタージとは・・・東独秘密警察のこと
目次
1、ドイツ銀行頭取暗殺事件~シュタージと日独赤軍ハイジャック合戦
2、プーチンの警戒洞察力~KGB
3、ある東ドイツ・スパイの忠告~CIA
4, ある核科学者のスパイ力~M15
5、世界情報戦に勝利してきた英語圏だが~シギント諜報活動
6、見事なり、イスラエルの対米諜報~米海軍犯罪捜査局分析官
7、「難民助け屋」の本音~ドイツ弱体化工作
8、仕掛けられた日本嫌い、ドイツ嫌い~韓国諜報活動
9、 バチカンの情報力の勝利~バチカンとCIA
10. オバマのブレーン活用術~CIA
11, 情報機関の作成に後手後手の日本~ドイツでは『連邦情報局』
12, 一枚上手の情報作戦のノウハウ~「シュタージ・ファイル」
13, 「アンネ」破壊は「ニッポン」破壊か~KCIS
14, 対仏略奪戦に勝利したイギリスの過去1~植民地ビジネス
15, 対仏略奪戦に勝利したイギリスの過去2~ナチスの誕生
16, 対仏略奪戦に勝利したイギリスの過去3~EU脱退の真相
17, 米露情報戦の明暗~ロシア連邦保安庁(FSB)
18, 日本の情報戦略~日本版NSC
19, EUが恐れるもの~英国の戦略
20. 偉大なコールのドイツ魂~東西ドイツの情報力
【著者紹介】
クライン孝子 : 1939年(昭和14年)旧満州生まれ。岐阜市立女子短期大学英文科卒。1968年渡欧、ガイドや通訳をしながらチューリッヒ大学、フランクフルト大学でドイツ文学・近代西洋政治学を学ぶ。現在、フランクフルト郊外に在住。ドイツ・ジャーナリスト連盟会員
★★ 私は音楽家だが、クラシックは長い歴史の中で培ってきたものなので、クラシック音楽を究めようとすると当然その国だけでなく周辺諸国の歴史の勉強をしたくなるものだが、学校ではほとんど教えない。そこで「歴女」のごとく、独学で勉強せざるを得ない日々だったが、いつもクライン孝子氏のお話を聴いて、いろいろわからなかったことを私なりに察することができるような気になって嬉しかった。
さらにこの本を手にしてゆっくり丁寧に読み込むことにより、学ぶ楽しさを一身に感じている。
クライン孝子氏に心から感謝する次第です。
ブログのティールーム
本日は無双のヘルデン(英雄)・テナー、マックス・ローレンツが歌うヴァーグナー「ニュルンベルグのマイスタージンガー」~朝の光は輝いて
歌合戦に優勝すれば美しい娘エヴァ(ドイツ語ではイーファ)をお嫁さんにできる、彼女に憧れる青年が歌合戦に見事優勝、エヴァの美しさを讃えて歌う名場面。(・・・女性にとっては最高に嬉しい歌でしょう)
100 Singers - MAX LORENZ