「バンドワゴン」のテーマ曲にして、MGMミュージカル映画の集大成映画のタイトル名でもある。が、段々通じなくなっているのが寂しいところだ。名曲なのに・・・。
ただ、ここで話題にしたいのは、そのことではない。頻繁に「ザッツ」という言葉を使う人間が身近にいるので、その度に、気持ち悪いやら可笑しいやらで楽しい(エンターテイメント)からである。
どういう風に使うかと言うと・・・
「ザッツを出すと・・・」
「ザッツがわからないから・・・」
どうやら「アインザッツ Einsatz」の省略形のようだ。オーケストラでは、あるパートが演奏し始めるところを「アインザッツ」と言っていた。過去形として述べるのは、例えば斎藤秀雄とか山本直純の著書にアインザッツという言葉は出てくるのだが、筆者が学生時代を過ごした1980年代、既に使われなくなっていたような気がするからだ。日本語に訳して「入り」と言うのが一般的だったと思う。他にも「タクト」「アコード」などが気障なドイツ語として、避けられる傾向にあった。(一方、ドゥア、モール、アウフタクト、プルト等は健在である。)
ところが、筆者の住む福岡では、この「ザッツ」という言葉をよく耳にするのである。意味は「入り」のことではなく、指揮者やコンサートマスター等が出す「入りの合図」のことである。
東京で仕事をしていた時は何と言っていたかというと、「合図」と言っていた。味も素っ気もないが、そのものズバリでわかりやすい。
ある仕事場(東京)で、筆者がコンマスの隣席(トップサイド)に座っていた時、後方に座っていた先輩から言われた。
「あのさあ、ちょっと『振って』くれない?今日のコンマス『振れ』ないでしょう?だから代わりに・・・」
この先輩は「振る」という表現。これも珍しいけれど「ザッツ」とは言わなかった。
これは方言なのだろうか?オーケストラを始めてまだ数年の学生が、しきりに(多分専門用語のつもりで)「ザッツ」「ザッツ」と言っている姿は、可愛げがあって微笑ましいのであるが、よその地域に行ったらどうするのか、と余計な心配もしてしまう。
皆様の住む地域で何と言っているかコメントしていただけると大変嬉しい。焼き鳥屋のキャベツが千切りか角切りかと同じくらい興味のあることだ。