「ザッツ」については、その後の情報により、東京でも使われていることがわかった。何のことはない、いつの間にか短く呼称されていたのに、私がついていってなかっただけのことだった。それでも、例えば「アイザツ」と省略していますよ、などという地方はないものかと淡い期待はしたのだが・・・。
[余談]「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」は「アイネク」と省略されるのが一般的ですが、「アイクラ」と呼ぶ人がまれにいます。方言かどうかはわかりませんが、「リモコン」「デジカメ」という省略法から考えると「アイネク」の方が実は変。「リモトコ」「デジタカ」と言っているようなものですからね。
オーケストラの不思議な用語はまだまだある。
オーケストラ演奏会の典型的プログラミングは「10分前後の管弦楽曲」「30分程度の協奏曲」「40分前後の交響曲」というもの。協奏曲や交響曲は、その規模の管弦楽曲に代わることもよくある。
問題は、その呼び方。九州・山口地方(だと思うが)では「序曲/オープニング」「サブメイン」「メイン」と呼ぶのだ。最初は、福岡だけの呼称かと思っていたら、今年になって山口県の某オケHPで、ご丁寧に解説までついていたから、本州にも存在するということだ。
「スラヴ行進曲」をやろうが交響詩「フィンランディア」をやろうが、「序曲」。でもこれはまだいい。「序曲ouverture」には「開く」、つまりオープニングという意味があるのだから。
「メイン」という考え方に縛られている気の毒な人が結構いる。プログラム後半に「モーツァルトの交響曲」とラベルの「ボレロ」というのを提案したら「では、ボレロがメインですか?」ときかれた。何でもいいじゃない、決めなきゃだめ?と思い、
「ウィーン・フィルのニュー・イヤー・コンサートはなにがメインなの? 青きドナウ? あれは多分アンコールだよ」
「私たちはウィーン・フィルではありませんから」
そりゃそうだ。まあ、良いでしょう。一番長い曲を中心(メイン)に感じるのは、自然な成り行きだ。
それに引き替え「サブメイン」とは珍妙な! サブが何曲もあって、そのなかのメインというならばわかるが、一曲しかないんだから「サブ」だろう?
と、年甲斐もなく学生に楯ついていたら、いつの間にか「序サブ」と、さらに省略を始めた。山本譲二と北島三郎が「与作」を歌っているようで、笑ってしまう。「ジョサブは木を切る・・・」
と、九州出身で東京に出ている知人に話したら、
「そりゃやっぱり、前プロ・中プロ・本プロだろう」
は? ナカプロとはけったいな。今度は長風呂を連想してしまう。関東地方では、かなり一般的に言われているようだ。
「1曲目、2曲目でいいのにね。」
と、関東出身で関東在住の友人に言われて、ようやく落ち着きを取り戻した。
ところが最近、中プロという言葉を使った福岡の学生を目の当たりにした。どうしても2曲目ではダメのようで・・・。
ちなみに、合唱と吹奏楽では「ステージ」という言葉を使う。この「ステージ」は小曲の集合である。オーケストラも時には、このような小曲の集合であるコンサートをやってもいいと思うのだが、滅多なことではやらないのである。みんな交響曲が好きなんだねぇ・・・。