以下、架空のテレビ番組のオーディションが行われた後の、爺さんたちのおしゃべり、いや重鎮達の審査会、というフィクションである。かたや細川隆元風の四角い顔、かたや小汀利得風の細面(50代以上の方々にしか通じない例え方で申し訳ない)、どちらもオーケストラ活動に長年携わる方々で、このところ事務局で働いているが、元々は弦楽器奏者である。
オーディションを受けたのは20代の音楽家達で、専門は様々。弦楽器、管楽器、打楽器、声楽、ピアノ・・・。その中から番組に出演してもらう5,6人を選ばなければならない。
最近のフルートはみんな上手いねぇ。
ああ本当。だから差がつかないよね。
もう、これ以上やりようがないって感じだよなぁ。
だけどね、この間パユを聴いたんだけどさぁ、すごいよぉ。最後のディミヌェンドなんかスーッと消え入る超絶技巧!
ああパユは俺も聴いた。だから、やりようあるんだよな。
でも管楽器誰か入れた方がいいでしょう?
だから、このクラリネット。
えっ、あのピッチ上ずりっぱなし、リードミスしまくりのクラかい?
でも、音楽としては表情豊かで面白かったよ。ピッチが下がっているのは気持ち悪いけど、元ヴァイオリン弾きとしてはピッチ高いのは気にならないのよ。あ、あんた低弦だったね。低弦は上ずると気持ち悪いわなぁ。
ちょっと待ってよ。フルートの方が正確だったじゃない?みんな上手くて、これ以上やりようがないとか言わなかったっけ。クラリネットはリードミス7回だよ。あんまり多いからメモしてたんだ。こんなのオケじゃ危なくて使えないよ。
でもフルートはやっぱりつまんなかったから、今回採るのはクラリネットね。
審査会はまだ続く。