ずっと梅鶯林道のことを考えているのだが、そうするとなかなか結論の出ない問題が多々あることに気づく。
ちっとも新しくない「新しいヴァイオリン教本」、その5巻までは、ステップ・バイ・ステップで編集されており、とても使いやすい。ただ6巻との間に少し段差を感じる。
鈴木の教本は7巻と8巻の間に段差があるとは良く言われる。が、いずれにしてもモーツァルトの協奏曲で終わり、にはならないケースが大半を占めるだろう。実際、スズキ・メソードは、その後の曲目のコースがあって、メンデルスゾーンが最終教材だと聞いた。(チャイコフスキーをやっていた人も聞いたことはあるが。)
モーツァルトの協奏曲はオーケストラの入団試験にもよく課せられる。モーツァルトの協奏曲が弾けるのは、ヴァイオリニストとして最低条件、あるいは「ヴァイオリンが弾けるというのはモーツァルトが弾けるくらいのことだ」と見なされていることに異論はない。
では、その後はどうするか。現在、日本で一般的に取り上げられる楽曲に、以下の4曲がある。
・ブルッフ「協奏曲第1番」
・ラロ「スペイン交響曲」
・サン=サーンス「協奏曲第3番」
・メンデルスゾーン「協奏曲」
これら4曲は小学生で弾く人もいるし、音楽大学で勉強する人もいる。このあたりがまともに弾ければ、専門家並と言っていいだろう。換言すれば、そのくらい難しい。モーツァルトの次に挑むには、これまた段差を感じざるを得ない。
その間に別の曲をはさむことが考えられる。それが、以前に述べた「梅鶯林道・1級」から「初段」あたりに相当する曲になる。
実際、そうされている実例を見聞することは少なくない。ただ、それでうまくいっている例は、少ないようだ。
上述の4曲に共通した特徴がある。それは、左指を速くうごかすパッセージが比較的長く続く部分を持っていること。そして、一つの楽章の演奏時間が長い。小品の経験を積み重ねても、それに対応する力は身に付かないだろう。
では、どうすれば良いか?
やはり「スケール」と「アルペジオ」の練習ではないか、と思うのである。特に「アルペジオ」である。
モーツァルトの協奏曲にもスケール、アルペジオは含まれている。だから、これを弾く限りにおいては、それほどの重要性を感じなくても無理はない。しかし、この段階で大量のアルペジオが弾けるようにしておくと、上述の4曲にスムーズに移行できるのではないだろうか。
ブルッフには連続の三重音、コーレ、フェッテ、急速なアルペジオ等、白い本の5巻までや鈴木にはほとんど出てこなかった技術が頻出する上に、ロマン派特有のねばりも要求される。これを、他の曲で補うことを考えるより、アルペジオをたくさん練習しておく方が、はるかに実際的だと思う。
そろそろモーツァルトの協奏曲=そろそろアルペジオをたくさん、を提言しておこう。
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