井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

小学生が弾く曲(3)

2010-01-14 00:17:52 | 梅鶯林道

 今回は,小学生が弾くには難しすぎるかもしれない,というレヴェルの紹介と考察である。(ザスマンズハウスのグレードをS,Mr. Jubin MatloubiehのものをJと呼ぶことにする。)Sは6,Jは9,例によって結構難しい曲もあったりする。

 まずS。

 【無伴奏】

・バッハ:無伴奏パルティータ第3番 ホ長調
・バッハ:無伴奏パルティータ第2番 ニ短調(シャコンヌを除く)

・ヒンデミット:無伴奏ソナタ第1番
・ヒンデミット:無伴奏ソナタ第2番
(バッハをやるので精一杯で,ヒンデミットまではとても手が回らないケースが多いのでは?)

・プロコフィエフ:無伴奏ソナタ
(音大生は時々弾く人がいる。クレメラータ・バルティカは十数人の斉奏で演奏していた。)

 【ヴァイオリンとピアノ】

・ベ-ト-ヴェン:ソナタ第1番~第8番
(手始めは第1番,第5番で,第3番,第6番以降は少し難しいと思う)

・ブロッホ:ニーグン

・ブラームス:ソナタ第1,2,3番
・ブラームス:FAEソナタ
(難易度とすればこのあたりかもしれないが,基本的には大人の音楽だと思う)

・ファリャ:スペイン民謡組曲
(コハンスキーが編曲した「七つのスペイン民謡」,ラロやサラサーテよりずっとスペイン色が強いので,勘が働かないと演奏はかなり難しい)

・フォーレ:ソナタ第1,2番
(かなり難しい。それ以上にピアノ・パートはさらに難しい。)

・グリーグ:ソナタ第2,3番
(ここに載せたソナタの中で,一番気楽に弾けるのではないだろうか。良いピアニストが見つかると,なかなか幸せな時間を過ごせる。現在公開中の映画「のだめカンタービレ」では,マルレ・オケのリハーサルが終わり千秋が疲れきって控室に戻ったシーンで使われていた。第2楽章のヴァイオリンが出てくる直前までであったが。)

・アイヴズ:ソナタ第4番
(知らなーい。でもアイヴズはなかなか愉快なおじさんである。)

・クライスラー:プレリュードとアレグロ
(日本では小学生に弾かせたがる曲だ。でもスピッカートができて重音の基礎があり,右手首を柔軟に使えないと弾けないので,このレヴェルが妥当かもしれない。)

・クライスラー:愛のよろこび
(この重音はとても難しい)

・クライスラー:美しいロスマリン
(筆者は,小学生の時,スラーを全部切って弾いた。スラーをつけるか切るかで難易度は全然違うが,演奏会で弾くのなら,スラーを切ったところで不満に思う人はいないだろう。)

・クライスラー:中国の太鼓

・ルクレール:ソナタ ニ長調

・メシアン:主題と変奏
(知らない!)

・プロコフィエフ:ソナタ第2番 ニ長調
(これはやはり「フルート・ソナタ」,興味の無い人は弾くべきではないと思う。)

・サラサーテ:バスク奇想曲
(これは,種々のボウイングの練習,実践にとても良い曲)

・サラサーテ:ハバネラ
・サラサーテ:アンダルシアのロマンス
(このあたりは,演奏会にお薦め)

・シンディング:組曲
(疑似バロックのB級作品かとも思うけれど,非常にヴァイオリニスティックで,特に1曲目は「ハッタリ」が効く。)

・ストラヴィンスキー:デュオ・コンセルタンテ
・ストラヴィンスキー:イタリア組曲
・シマノフスキー:神話
・シマノフスキー:夜想曲とタランテラ
(演奏会で近代的なものを入れたい時にはお薦め。教材として使うものではないだろう。)

・ヴュータン:アメリカの思い出「ヤンキー・ドゥードゥル」
(こんなのあるんだ・・・フルートの曲でやはり「ヤンキー・ドゥードゥル」をテーマにした曲をドップラーが作っている。ゲテモノだと思うが,聴衆はとても喜ぶのだそうだ。)

・コープランド:ソナタ
(アメリカでは演奏されているのだろうか?)

・フランク:ソナタ
(これも大人の音楽。ピアノ・パートは無茶苦茶難しい。)

 【ヴァイオリンと管弦楽】

・バルトーク:ラプソディー第1番
・バルトーク:ラプソディー第2番

(もっと難しいと思うけど)

・ベートーヴェン:三重協奏曲(ヴァイオリン,チェロ,ピアノのための)
(ピアノが易しく,チェロが一番難しいと言われている。教材には不向き。)

・メンデルスゾーン:協奏曲 ニ短調
・メンデルスゾーン:二重協奏曲 ニ短調
(何もこんな珍曲を載せなくたっていいのに・・・)

・モーツァルト:協奏曲第1番 変ロ長調
・モーツァルト:協奏曲第5番 イ長調
(Suzukiの9巻にはこの第5番が掲載されていて,レヴェル5になっているのに何故ここに挙がっているのか?)

・ヴォーン=ウィリアムス:揚げひばり
(英米圏ではポピュラーなのか?)

・ヴィオッティ:協奏曲第22番 イ短調
・ヴィオッティ:協奏曲第23番 ト長調
(これは小学生が弾く曲でしょう!)

・バルトーク:協奏曲第1番
(技術的には確かにこのレヴェルかもしれないが,何とも静謐な第1楽章のあの世界を表現するのは大変難しいと思う。)

・ハチャトゥリアン:協奏曲
(オイストラフのイメージが付きまとうので,もっと難しいと思っていたが,よく考えると確かにこのあたりが妥当かもしれない。)

 Jの【レヴェル9】。こちらはジャンル分けは無い。

・バルトーク:ラプソディー第1番
・バルトーク:ラプソディー第2番

(・・・どうして?・・・)

・ブルッフ:協奏曲第1番 ト短調

・ハチャトゥリアン:協奏曲

・リムスキー=コルサコフ:熊蜂の飛行
(効果的なハイフェッツの編曲が一般的。ちなみに原曲のオーケストラ・パートはもっと難しい。)

・サン=サーンス:ハバネラ
(最後のアレグロはもっと難しいと思うけど)

・サン=サーンス:協奏曲第3番
(非ヴァイオリニスティックの代表的存在だと思う。筆者としてはもう1レヴェル上にランクしたい。)

・サラサーテ:序奏とタランテラ
(スピッカート,リコシェ,付点のエチュードとしても使える)

・サラサーテ:サパテアード
・チャイコフスキー:ワルツ・スケルツォ
(どちらも結構難しいと思うけど)

・ヴィエニアフスキー:協奏曲第2番 ニ短調

・シマノフスキー:協奏曲第1,2番
(これは弾いたことがないのでわからない)

全般的に,レヴェル8と9の差が大きいように思われる。英検1級と2級の差のように。ただひょっとしたら準1級レヴェルの曲というのが,あまり無いのかもしれないが。


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
あげひばり…地元のヴァイオリン指導者の演奏(引退... (Sママ)
2010-01-14 21:01:31
あげひばり…地元のヴァイオリン指導者の演奏(引退コンサート)で聴きました。そして、キム・ヨナの演技(三年前)でも有名です。私は大好きですが、小学生でこれを…?!とは思います。
返信する
なるほど,キム・ヨナですね。フィギュア・スケー... (井財野)
2010-01-15 08:29:30
なるほど,キム・ヨナですね。フィギュア・スケートには向いているような気がしてきました。

本文で触れるべきでしたが,ここで取り上げたリストの作成者達は「小学生が弾く」ことを前提にしている訳ではないので,私が勝手なひとりごとを書いていますが,これは作成者に責任があるものではありません。小学生用に読みかえてしまう私に非があるとも言えます。大人の初心者もいる訳ですから,大人用の曲も含まれて当然なのですよね。

詳しくは次回の記事で書きますね。
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うちの娘は小学2年生。ということもあり、梅鶯林道... (kohji)
2010-10-21 01:27:50
うちの娘は小学2年生。ということもあり、梅鶯林道のエントリ、いつも興味深く拝見しております。先日、娘の通っている教室の発表会がありました。娘と同じ先生に習っている2年生が3人出演。一人目。クライスラー・プレリュードとアレグロ(抜粋)。この楽器を初めて3年目で、こんなに弾けるって、のびのび成長していますね!という感じ。二人目。ヴィエニアフスキ・華麗なるポロネーズ(抜粋)。この子はいつもながら上手。持ち替えたばかりの3分の2、まだまだ鳴らしきれてない様子ですがこれを十分鳴らしきれるようになるのは時間の問題かな??という感じ。三人目。最近入門した女の子。バッハ・パルティータ三番のプレリュード。この子は2年生の中では一番小柄で、楽器もまだまだ2分の1、落ち着いた様子でするすると難なく弾いて行った感じ。もっと楽器をフルに鳴らしきって弾けたら、どこに出しても恥ずかしくない、という感じでした。

。。。。。こんなに凄い門下に入っていたとは、うかつにも、存じませんでした。で、久しぶりにこちらのエントリを拝見した次第です。うちの子は今年は出番がありませんでしたが、まだまだですね。でも、毎日コツコツ積み上げて行けば、どの曲もいつか必ず上手に弾けるようになると信じて、今日もセブシック、フリマリーにカイザー練習♪と参ります。
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この記事はコンスタントに読まれています。小学生... (井財野)
2010-10-21 22:49:04
この記事はコンスタントに読まれています。小学生に向く曲と向かない曲が併記されていて、とても読みにくいものになっているのですが・・・。
梅鶯林道の方に整理したつもりでしたが、現在も修正を加えつつあるところで、初段以上は全く未発表のままですね。
難易度というのは全く難しいです。
この読みにくさにも関わらず、読んでくださっている皆様に感謝いたします。
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