コロナ禍で突然できた時間を利用して、旧作(1999~2002)の弦楽四重奏曲の多重録音というのをやってみたのです。
当時活動していた弦楽四重奏団の演奏会のために書き下ろした作品群ですが、今見返すと、クラシック音楽のスタイルの啓蒙を必死に模索していた30代の自分が見えてきます。
ポピュラー音楽で使われていた「循環コード」をロンド形式に当てはめた《春る・る・る》。
だじゃれの音楽《日本茶・茶・茶》。
弦楽四重奏界のルロイ・アンダーソンを目指した《せみ・くらしっく》。
毎回、何か面白いことをやれば、少しずつでも聴衆が増えてくれるのではないかと、あれやこれや考えた結果の作品群です。
残念ながら弦楽四重奏団はその後解散し、私自身も弦楽四重奏だけがやりたい事でもなかったので、それから再演される事もなく、長い時間が経ちました。
その間、時代は変わり、インターネット上にないものは世の中にないもの、と言われる時代になっています。そうなると、旧作が休眠状態というのは良くない!と思う訳ですね。
それで、チェロだけ頼むと弦楽四重奏ができる!と気づいて、チェロを九州交響楽団の重松さんにお願いしてできたのが、このアルバムです。
ところが、できてみるとヴァイオリンとヴィオラが揃い過ぎていて、「3音出せる弦楽器」とチェロの二重奏みたいな妙な感じも出てきました。(一方で、その3音が全く揃わない箇所もありますが。)
そして、携帯電話で聞いてみると、低音が全くというほど聞こえない、というバランスのマズさも感じます。
チェロの重松さんからは、彼女の視点で音楽的に納得できないから、公表するなら名前を出さないでくれと言われました。(それ以前にチェロがあまり聞こえないことは、大変申し訳なく思っています。)
それでも、なぜ公表するか。
それは、まず先ほど述べた通り、世の中にないものにしたくなかったことがあります。
では完成度の低いものを、なぜ敢えて公表するか。
それは、ここからの出発だと思っているからです。
「スター・ウォーズ」の音楽、1978年に発表された時、当時の高校生でもひどく雑然とした演奏だな、と思ったものです。でも、誰もそれを問題にしませんでした。
とは言うものの、今回の録音、それよりもさらにレベルが下がるところがあるので、それを引合いに出してはいけないかもしれません。
私の場合、完成度を求めていたら、そのうち死んでしまいそうな気がします。
(それでも、録音し直したいところは多々ありましたが、世の中が動きだし、時間の余裕がなくなって時間切れになってしまったのが本当のところです。)
そして、現在新作の準備もしております。
今からの時代、こうして次々と新作を出すことが「私のあり方」かと思い始めました。
今回のアルバムを聴かれて「良いな」と思ってくださった方には、今後を期待して応援していただければと思いますし、「聞けたものではない」と思われた方は、今後を期待していただければと思います。
また、ついでに1曲だけアート作品《レゲンデ》を入れました。黒田寛賢氏との合作で、2019年の新作になります。(バランス的な問題は一番少ないです。)
合わせてお楽しみください。
ここまでの長文を、読んでいただき、ありがとうございました。
今後、時間を見つけて一曲ずつ紹介したいと思います。
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