音楽業界は、このところ壊滅的な打撃を受けて、そこに身をおく人間には、改めてこの国の腑甲斐無い実情を再認識せざるを得ない。
端的に表現すると「この国の文化は、自然発生で充分」ということになるだろうか。
音楽関係者は、しばしばドイツを引合いに出す。メルケル首相が、即時給付金を出したり、「芸術家は必要な存在」宣言をして、さらに補助金を出したりと、目に見える成果があるからだ。
これは素直にうらやましい。
ただ、我が国で文化があまり重視されていないのは、今に始まったことではない。
私の実感では「エコノミック・アニマル」という言葉が現れたあたりから、軽視が始まったような気がする。およそ50数年前、である。
私は生きていたが幼稚園児、もちろんそこまでの事情は知らない。業界の大先輩方が、ぶつぶつ呟いていたから、後から知っただけのことである。
なぜ、こんなに脆弱な意識なのか。
これはひとえに、文化が潰される危機が生じないからだろう。
島国だから、とも言える。
日本語がなくなる危機も、今のところ無い。
これが、ヨーロッパのどこでも良い、文化を取っ払ってしまったらどうなるか。
あっという間に隣国に飲み込まれる危機に満ちあふれている。
フランスが飲み込まれる危険はないかもしれないが、フランスは文化のお陰で愛国心が芽生え、実はかなり腹黒い国であることを見事にカモフラージュしている。(カモフラージュcamouflageフランス語だ!)
ドイツは音楽を除いたら、実につまらない国になる。ヨーロッパで一番勤勉かもしれないが、最近はチャイナと手を組むことを宣言した。ドイツ音楽を愛する身としては、甚だ残念至極なのだが、日本と一緒にやっていける国ではなくなった。
そうでなくても、第二次大戦では同盟してエライ目にあった。縁起が悪い。
日本は、そこまでカモフラージュしなければならないひどい国ではないから、文化の存在理由がそこまで強くない。
なので、自然発生で充分じゃね?
ということなのだろう。
正直言って、文化より優先して然るべきものまで、日本政府の政策として不充分なものが目につく。
国防と教育である。
これは毎日気が気でならない。
朝鮮半島が共産党に支配されたら、と思うと……。
しかし、そこまでにはまだ余裕がある。それまでに日本文化を強くして、日本人を精神的な強者にするのが、今やるべきことだと考えている。