先日ドラマの「ルーツ」を見たこともあり、奴隷制度についてもっと深く知りたいと思い読んでみました。これは今年の2月に出た本で、著者はペンシルベニア大学の教授。
本のカバーには「17世紀から19世紀半ばまで、アメリカの発展は奴隷の労働力を搾取することでもたらされた。その傷は癒えることもなく、奴隷廃止から160年がたつ今も、社会の分断を引き起こす。」とあります。
「14歳から考えたい」とある通り、かなりわかりやすい言葉で書かれており、人名や事件については同じページの上の欄に注釈があるのでかなり親切な本です。当方58才、一般男性ですがおかげでスイスイと読めました。
私は奴隷制度というと、つい「ルーツ」の世界とリンカーンによる奴隷解放宣言のあたりだけ考えてしまいますが、この本では1441年の大西洋奴隷貿易の話から始まります。それはポルトガルのエンリケ王子の命によって西アフリカの海岸へ向かった船の記録から。奴隷制度がアメリカの発展を支えたのは確かですが、アメリカだけの話ではないんですね。当たり前ですが。
さらに奴隷制度というと、それぞれが好き勝手に始めたのがズルズルと続いたかと思ったら、その時代によって法律でも細かく制度が決められていたのですね。
そもそもアメリカの独立宣言には「すべての人民は法のもとに平等である」と謳われており、それを基に奴隷制度の廃止を訴える動きももちろんあったのですが、ある時は法律によって、ある時は宗教的に、ある時は科学的に、とにかく黒人は白人より劣っており、奴隷として使われることが天の真理であるかのごとく主張する説が時代が変わっても出てくるので、読んでいると本当にムカムカ来ます。
当初は先住民族を奴隷にしたこともあったのが、報復を受ける恐れや様々な問題もあってそれは法律で禁止して「奴隷は黒人のみとする」ということを定めたことも知りました。アフリカ人であれば土地の事をよく知らず、逃げ帰る家もなく、報復を仕掛けてくる家族もいないので、連れてくるのに金はかかるが面倒は少なかったということなのですね。
とにかく、いかにこれまでの自分の知識が浅かったかというのを思い知ったのでした。14才というと中学生ですが、これは中学校の夏休みの課題図書にして欲しいものです。私なんぞはますますアメリカ人が嫌いになりました。お勧めの本です。