岡上淑子
『はるかな旅』
幻のフォト・コラージュ作家
半世紀の時を超えて国内初の作品集
待望の刊行
自選作品77点および全作品一覧表収録の決定版!
自選作品77点および全作品一覧表収録の決定版!
1950年代、瀧口修造により「現代版不思議の国のアリス」 と評される
鮮烈なフォト・コラージュ作品を発表した岡上淑子、 国内初の作品集、待望の刊行!
--------(抜粋)
彼女の誕生に、新な期待と不安を覚えながら私の指がはしゃいだ日
海を翔る性、苦悩のレダ、郷愁の罠……と青い空気の中で彼女達の歌声は鮮でしたのに。
海を翔る性、苦悩のレダ、郷愁の罠……と青い空気の中で彼女達の歌声は鮮でしたのに。
(中略)
薔薇を手折った棘の痛みが
彼女達に対する唯一の挨拶と変わってしまったのでした。
実らぬ花の種を蒔いた咎を受けたかのように、 私は咲いた女の怨に狼狽します。
けれども深い皺に刻まれた掌には派手すぎる彼女達の装に、
思わず目をそむけると、彼女達は誇らしげに囁くのでした。
“私達は自由よ”と。
薔薇を手折った棘の痛みが
彼女達に対する唯一の挨拶と変わってしまったのでした。
実らぬ花の種を蒔いた咎を受けたかのように、
けれども深い皺に刻まれた掌には派手すぎる彼女達の装に、
思わず目をそむけると、彼女達は誇らしげに囁くのでした。
“私達は自由よ”と。
--------(「私とコラージュ」1953年より)
文体や語り口も上品であり美しい不思議なコラージュ