遅ればせながら、芥川賞受賞作「火花」と「スクラップ・アンド・ビルド」を読んだ。
一読者の個人的な感想を書く。
まず、ピース又吉に関する過熱気味の報道が先行し、もうひとりの、あるいは又吉でないほうの芥川賞作家と称された、羽田圭介にとってはなんとも不運というか、気の毒だったように思う。
又吉より歳は若いが、キャリア的にも前評判的にも上のランクだったし、受賞発表待ちのデーモン風メイクも、一人受賞を意識した、その後の自己アピール用のキャラ設定に違いない。
それが同時受賞ということで、完全に又吉の影に霞んでしまった感が否めない。羽田君、腐るなよ。
さて、受賞作の感想だが、「火花」も「スクラップ・・・」も自分の周りの極狭い世界の物語だ。
その狭さを丹念な心情描写で過剰装飾しているが、どちらも暗い。
奈落の圧倒的暗さだったらいいが、どこかに薄明かりが垣間見える中途半端な暗さだ。
純文学的私小説という枠組みを破れない、変に老成を感じさせる作品だ。どちらかというと直木賞的作品だ。
文章の上手さ、巧みさは随所で見られるも、エンターテインメント性を求めるわけではないが、ワクワク、ドキドキの面白さは見当たらなかった。
学生時代に読んだ「限りなく透明に近いブルー」のハチャメチャな衝撃には及ばなかった、というのが私の感想だ。