これは、私が一人暮らしをしていた時のこと。
残業を終え、家に帰り、ほっと一息つこうとした瞬間、息を飲み込んだ。
! 蛾。
大至急、弟に電話。
「今、家にな、蛾がおんねん来て!…いや、でけへん、私には無理。
面倒臭いってすぐそこやん…なあ、どうやってだすん?…違うねんて、普通の蛾じゃないねん!!
めちゃくちゃでっかいねんて!!!ちょっと待って、ちょっ」
……だめだ、触れない。窓をあけて、ここから出て行ってもらおう…
「もしもし、全然、蛾が動いてくれへんねんけど、どしたらいい?…ちょ」
誘導しやな…電気、つけたり消したり、窓の方、手のなる方へ…
と、突然、蛾が 私目がけて飛んできた。お、おなかがっ! めちゃでかい~「キャー」
…はっ、やっと出て行ってくれた。ほっと一息ついてすぐ、再び心臓が飛び出しそうになる。
今度はドアをドンドン叩く音。
「もしもし、なんか私の家のドア、ドンドン叩く人がおるねん すぐ来て!
まだ叩いてる~ちょっと真剣怖い。どうしよう…」(注:のぞき窓がないドアだった)
誰?こんな時間に…怖い。携帯がなる。弟だ!「出てこいって。警察や…」
?
ドアをあけると、警官が二人立っていた。
「いるんなら、ドアを叩いてるのにどうしてすぐ出てこないんだ」いきなり怒鳴られた。
「すみません。どなたとも名乗らないし、こんな時間にドアを叩く音だけで、私、一人で怖くて…」
「あのね、普通でてくるでしょう?…云々」 すみませんと頭を下げる。
(本当に実家のすぐそばだったので) 心配で駆けつけた父も母も弟も謝っている。かたじけなし。
「女性の悲鳴が聞こえたとの通報を受けてね、あなたですか?」 悲鳴…
!! 「はい…え?どうして…あの~家に入った蛾を外に出そうと試みた時に、
蛾が 私目がけて飛んできて…それで一度だけ悲鳴を…
大きな悲鳴? 蛾を出そうとして、あけた窓のそばであげてしまいましたから…」
「蛾? あのね、こっちは忙しいんだから…かんぬん」
警官の一人が怒って、先に帰ってしまう。
私自身が蛾が出た助けてほしいと通報したのなら怒られても当然な気もするが…
残った警官が「誰が通報したかは保護の為いえないんですよ。
それでは、仕事ですから…「名前は?」「年齢は?」 面目なし。
私、被害者じゃないの? 迷惑をかけたとして加害者なの? 蛾で調書…なさけなし。
一家で警官に謝罪し、一件落着となった。
が、私は腑に落ちなかった。警察はご近所への影響を考慮し「警察だ」と名乗らないそうだ。
そこまでは理解できる。ただそこまで怒ることなのだろうか…
果たして、女性が夜遅く、激しくドアを叩かれて「は~い」といって気軽に出て行けるのか…。
男性の力強さで叩くドアの音に感じた身の恐怖と怒る警官、
女性と男性の違いを感じずにはいられなかった。
「蛾ですか…よかった何事もなくて…」
そんな一言に私は救われたであろうに…。
※この話は過去に劇団カプチーノHPに掲載されたものです。
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