第114話 片想いの終わり

2006年03月07日 02時05分25秒 | Weblog

今、1ヶ月間もの片想いが無事に終わって…ほっとしている。

結婚披露宴でのスピーチを依頼されて(第110話参照)から、
5日の式の日まで、ずっと彼女の事を思いながら過ごした。
新婦は新郎を想い未来に向かう中、私は新婦を思い過去に遡っていく。
心に残る断片は不思議だ。
不意に、何気なくつかんだ彼女の肩の細さが蘇る。
10年分の思い出の中で、なぜ、あの時の感触が…理由を探す。
その瞬間、明るさに隠れがちな彼女の繊細さに触れた驚きがあったのだ。
彼女の心のうちに触れた気がした。だからだ。
夜ごと記憶のかけらを集めては、彼女を見つけていく。
かくして、スピーチはできあがった。
できあがったスピーチは彼女と私との思い出…
ここで披露する許可は彼女に得ていないので…

彼女の結婚を祝しまして…私の好きな詩、吉野弘さんの祝婚歌。

二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい
立派すぎることは
長持ちしないことだと気付いているほうがいい
完璧をめざなないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
二人のうち どちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで
疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい
立派でありたいとか
正しくありたいとかいう
無理な緊張には
色目を使わず
ゆったり ゆたかに

光を浴びているほうがいい
健康で 風にふかれながら
生きているなつかしさに
ふと胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そして
なぜ 胸が熱くなるのか
黙っていても
二人にはわかるのであってほしい


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